◎適性検査は「頭の働き」を見る
雑誌『航空少年』「少年飛行兵号」(一九四三年九月)から、「少年よ大空へ 陸軍少年飛行兵志願案内」という記事を紹介している。本日は、その三回目で、「受験準備」の節を紹介してみよう。
受 験 準 備
「志願票」を出してしまへば、あとは、試験官から試験の期日を知らせて来るのを待つばかりである。
試験は、身体検査と学科試験の二つであるが、受験準備としては「体の準備」が第一である。荒鷲になるには、何よりも体が丈夫でなくてはならないから、試験は、学力よりも体格が重く見られる。
では、「体の準備」は、どうすればよいか。
まづ栄養をつけよ。といつても、ぜいたくなものを食へといふのではない。食物に好ききらひをいはず、つかれすぎないやうに注意し、体力を養ふことを心がけねばならない。
規律正しい生活、ほどよい運動は、この上もない体の受験準備である。そのほか、懸垂もよし、また体操を毎日つづけることもよい。学校の先生などとよく相談して、心身を錬ることが大切である。
学科試験は国語と算数の二科目で、国民学校初等科修了程度のやさしい問題である。だか ら、準備といつても講義録などを読む必要はない。教科書をよく勉强して、教科書の中のどこを聞かれても答へられるだけの自信があれば、十分である。
国語は国民学校の読本だけで十分であるが、ただ詰めこみ式の勉強ではだめである。たとへば反対の意味の熟語とか、一つの文句を熟語に作りかへるとか、言葉の組合せとか、自由に応用がきかなければならない。また、答に地方の方言をそのまま書くものが毎年たくさんあるやうだが、これは特に注意してなほさなくてはならぬことである。
算数も、ただ教科書の丸暗記でなく、どんな応用問題が出ても困らないやうに、解き方も身につけておかなければならない。また、飛行兵として必要なのは「時間の問題」とか「速度の問題」あるいは「円周率を使つた問題」といふやうなものである。計算問題が多く出た年もあり、また、ごくやさしい、暗算でもできさうな問題が数多く出た年もある。どんな問題が出ても困らぬやうに力をつけておくことだ。
このほかに、もう一つ「適性検査」といふの がある。適性検査といふと、器械の前に立たされて、むづかしい検査をされるやうに思はれるが、採用試験の時のは、決してさういふのではない。一種の「頭の働き」を見る検査である。ごくやさしい算数の問題を五十題も六十題も出して、それを限つた時間内に解けといふやうなことも、この検査の一つである。
頭が健全なら誰にでもできることで、これは準備などはいらない。準備などすると、かへつて失敗することになる。
試験の日が近づくにつれて、心も落ちつかなくなる。学課の勉強に身を入れすぎて、病気にならぬやう注意が必要である。
なほ今度から、少年飛行兵受験のために自宅から試験地までの往復の旅費は、第一次試験、 第二次試験とも、陸軍から支給されることになつたのである。
このあとに、「受験から合格まで――ある受験生の手記――」などの節が続くが、割愛する。明日は、「身体検査場及学科試験場」の表を紹介する。
今日の名言 2021・7・23
◎四字熟語だけは使ってくれるなと思っていた
7月21日、日本相撲協会は、照ノ富士の横綱昇進を決定し、同日、伊勢ケ浜部屋に高島理事らを派遣し、伊勢ケ浜親方、照ノ富士に決定を伝えた。これに対し、照ノ富士は、「謹んでお受けします。不動心を心掛け、横綱の品格、力量の向上に努めます」と、口上を述べた。この口上について、元横綱・北の富士の竹澤勝昭氏は、「いっときはやった四字熟語だけは使ってくれるなと思っていたのでうれしい」とコメントした(中日スポーツ【北の富士コラム】7・22配信)。
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