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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

狩野直喜博士が見えられ雑話された(河上肇)

2025-04-05 04:10:03 | コラムと名言
◎狩野直喜博士が見えられ雑話された(河上肇)

『回想の河上肇』(世界評論社、1948)から、小島祐馬の「読書人としての河上博士」という文章を紹介している。本日は、その五回目。

 河上博士がスマートの『一経済学者の第二思想』を『経済論叢』に紹介せられたのは大正六年〔1917〕二月であつて、此の手翰の日附よりは一ケ年近くも前のことであるが、博士のその文を読んでから私はロンドンに居た友人に頼んで、此書を二部取寄せ、御自身に此書を蔵有してゐられなかつた博士に一部を呈上したので、手翰の冒頭この事に及んでゐるのである。スマートの手紙の一節を引いたのは、スマートの著述に精進する態度が此頃の博士の研究に没頭せられてゐた気持とピッタリ一致するものがあった為めであらう。質問を受けた富と福との関係について私から一応返事を出して置いたと見え、二三日して次の手翰を寄せられてゐる。

 拝啓芳墨恭く拝誦仕候扨て〈サテ〉昨日狩野〔直喜〕博士当室に見えられ午後二三時間御雑話なされ候其折例之富に就て相尋ね候処大体過日の貴諭と同じやうの事相承り申候只富の義に就て之は単に音を表す為のものなるべく例へば副逼輻等皆然りとの説のみは新らしく承りたる事のやうに存申候右は態〻〈ワザワザ〉御報〈オシラセ〉可申上〈モウシアグベキ〉程の事には無〈ナク〉御座候へ共〈ドモ〉只小生より直接に狩野博士之御意見をも相尋ねたる次第一応申上おき度〈タキ〉為其一筆如此〈カクノゴトク〉御座候狩野博士よりはいろいろ支那人の思想に就て承り申候ミルを中心として経済学の一転化して功利主義と手を分つの機運生ずるに及びては英国一流の経済学者の見地は支那流の思想と相通ずるもの甚だ少からざる事頗る〈スコブル〉興味ありと覚え申候此事ば毎々〈マイマイ〉学兄よりも御漏し被下居〈クダサレオリ〉たる事に御座候へ共狩野博士よりも全く同様の事承り愉快に存じ申候 匆々頓首 一月十八日夜 於研究室 河上 肇 〈21~23ページ〉【以下、次回】

 ここで小島は、「質問を受けた富と福との関係について私から一応返事を出して置いたと見え」と書いている。1月15日付の手紙で、河上は、「拝眉の折の願意を明かにする為め冗言相認申候」としていたが、その意を察した小島は、すぐに、「富と福との関係について」説明した手紙を書き送った。それから「二三日して」、1月18日付の河上の手紙を受け取ったというわけである。

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