礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

降伏文書調印と岡崎勝男

2016-08-25 04:46:11 | コラムと名言

◎降伏文書調印と岡崎勝男

 二一日からの続きである。岡部英一さんの『緑十字機の記録』(岡部英一、二〇一五)は、いろいろな意味で興味深く、かつ勉強になる本だが、これを読んで、ひとつ認識をあらたにしたのは、岡崎勝男(一八九七~一九六五)という人物である。
 同書七二ページにある「軍使名簿」には、一七名の名前があり、ナンバーが振られているが、その筆頭(ナンバー1)は、外務省調査局長の岡崎勝男である。ただし、全権は、参謀次長の河辺虎四郎陸軍中将(ナンバー3)、主席随員は、海軍軍令部出仕の横山一郎少将である(ナンバー11)、ちなみに、「ナンバー2」は、外務省書記官湯川盛夫。
 岡崎勝男は、この軍使となったことで、一九四五年(昭和二〇)九月二日の降伏文書調印式にも、日本側随員のひとりとして、ミズーリ号の甲板に立つことになった。
 同書一六九ページに、ミズーリ号の甲板に立つ、日本側全権および随員、都合一一名の写真が載っている。
 一一名は、計三列に並んでいるが、最前列の二名は、シルクハット、モーニング姿に杖を持つ、重光葵〈シゲミツ・マモル〉政府全権(外務大臣)、その左側が、梅津美治郎〈ウメヅ・ヨシジロウ〉大本営全権(陸軍参謀総長)である。
 二列目には、五名が並んでいるが、うち、二名がシルクハット、モーニング姿。このうち、右から二番目にいるのが、岡崎勝男である。
 三列目には、四名が並んでいるが、うち、右から二番目に、上下白のスーツ、白の靴を着用した人物がいる。
 シルクハット、モーニングが姿三名、上下白のスーツ一名、これ以外の七名は、すべて陸海軍の軍服に身を包んでいる。
 同書一七〇ページにも、日本側全権および随員一一名の写真がある。ここでは、岡崎勝男が、重光葵の後ろから体を曲げて、署名用のテーブルを覗き込んでいる姿が写されている。
 ところで、先日、観た映画『マッカーサー』(ユニバーサル、一九七七)では、ミズーリ号における降伏文書調印式の模様が、かなり詳細に再現されていた。もちろん、この調印式を仕切っているのは、ダグラス・マッカーサーである。
 映画では、日本側随員のうち、ひとり、緊張感のない表情を見せている人物がいる。その位置などからいって、この人物のモデルは、おそらく、岡崎勝男であろう。
 さて、『緑十字機の記録』によれば、岡崎勝男は、この降伏軍使となったことで、マニラで、リチャード・サザーランド参謀長(陸軍中将)と面識を持った。同書の著者・岡部英一さんによれば、実はこのことが、その後の対日占領政策の動向を決定する意味を持ったという。このことについては、同書一七四~一八〇ページの記述に譲る。

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