暑中お見舞い申し上げます。
この言葉を聞いても、数年前までは、なんだか儀礼的な気がしていたものだ。
お見舞いを受けるほど、ひどい暑さではないじゃないか、なんて思った年も多くあったのだ。
それが、ここ数年は違う。
特に、今年は違う。
本当に暑い日が続く。
だから、お互いこの暑さは大変ですけど、なんとか乗り切っていきましょうね。
そんな気持ちを込めて、「暑中お見舞い申し上げます」という言葉を交わしたい気がするこの頃だ。
その言葉を口にすると、頭の中に、ある曲のイントロが流れ出す。
その曲は、その言葉を歌い出す。
♬暑中お見舞い申し上げます
こう歌われて、さわやかな風が吹くような気がした曲があった。
ご存じ、キャンディーズの「暑中お見舞い申し上げます」である。
私の学生時代、1977年の夏の歌である。
古いなあ…。
でも、若い時の曲って、いつ聴いてもいいものだよ。
馬飼野康二が編曲したしゃれたイントロが流れ、3人の「♬暑中お見舞い申し上げます」というハーモニーで、この歌が始まる。
まぶたに口づけ 受けてるみたいな
夏の日の太陽は まぶしくて
キラキラ渚を 今にもあなたが
かけてくる しぶきにぬれて…
なんとも夏らしい輝きを感じるこの歌詞。
はじけるように明るいキャンディーズの3人娘にぴったりだった。
この歌の作詞は、あの「神田川」の喜多条忠だったのだ。
ある種の暗さを感じる「神田川」とは、全く正反対の明るいイメージのこの歌が、彼の作詞だったなんてオドロキだ。
3分もしないうちに聴き終わってしまうこの曲は、元気が出て好きだった。
ところが、この歌がヒットしているうちに、あの、突然の解散宣言、
「普通の女の子に戻りたい」が出たのだった。
そこから翌年に向けて、解散・引退への道を進むことになるのだが、そうなるとどうしても、彼女たちのあの明るさはなくなっていくのが残念だった。
「春一番」や「暑中お見舞い申し上げます」のような明るい歌は出せないままになってしまった。
惜しかったなあ…、なんて思う。
この暑い日はいつまで続くのだろう。
CDでキャンディーズの懐かしい歌声を聴いて、少し涼んだ気分になることにしよう。