この時期、道を歩いていると、わりと日当たりのよい場所や芝生の多い場所などに、ネジバナが咲いている。
そのたびに目を細めている。
ネジバナについて、ここで書くのは何度目になるのだろう。
まあ、要するに、それだけ私が気に入っているということでもある。
なにしろその咲き方がいい。
特徴的な小さな花がたくさんついている。
色合いも、ピンクが中心で濃いめのものあり薄めのものあり。
しかも、その名のごとく、花がねじれながら上の方に向かって咲いていく。
実に愛らしい。
別名を「モジズリ」と聞いて、すぐに百人一首のあの歌を思い出した。
陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに 乱れ初めにし我ならなくに
河原左大臣
かつて、この「もぢずり」をネジバナのことだったのか、と思いながら、それならいい歌だな、と思ったことがあった。
自分の解釈では、
「東北地方にいても、あなたを思い、ネジバナのようにねじれるように乱れている私の心。
いつも冷静な私らしくなくなっているのはあなたのせいです」
…のように思ったのだった。
そこで、ちょっと調べてみたことがあった。
すると、現代語訳したものは、こんな解釈だった。
東北で織られる「しのぶもじずり(信夫文字摺)」の摺り衣の模様のように、乱れる私の心。いったい誰のせいでしょう。私のせいではないのに(あなたのせいですよ)。
「もぢずり」とは、現在の福島県信夫地方で作られていた、乱れ模様の摺り衣(すりごろも)のこと。摺り衣は忍草(しのぶぐさ)の汁を、模様のある石の上にかぶせた布に擦りつけて染める方法で「しのぶずり」などとも言われます。この「しのぶ」は、産地の信夫とも、忍草のことだとも言われます。
…そうか、ネジバナのことではなかったのか。
自分なりの解釈もいいと思ったが、やっぱり違っていたか。
まあ、それはそれとして、今日も道を歩いていると、あちこちで見かけた。
今がネジバナの旬ということですな。
う~ん、いいねえ。
見かけるたびにホッとするよ。