【原文】
哀公問社於宰我、宰我對曰、夏后氏以松、殷人以柏、周人以栗、曰、使民戰栗也、子聞之曰、成事不説、遂事不諌、既徃不咎、
【読み下し】
哀公、社を宰我(さいが)に問う。宰我、対(こた)えて曰わく、夏后(かこう)氏は松を以てし、殷人は柏(はく)を以てし、周人は栗(りつ)を以てす。曰わく、民をして戦栗(せんりつ)せしむるなり。子これを聞きて曰わく、成事(せいじ)は説かず、遂事(すいじ)は諌(いさ)めず、既往(きおう)は咎めず。
【通釈】
哀公が[樹木を神体とする土地のやしろ]社のことを宰我におたずねになったので、宰我は「夏の君は松を使い、殷の人は柏(ひのき)を使い、周の人は栗を使っています。[周の栗は社で行う死刑によって]民衆を戦慄させるという意味でございます」と答えた。先生はそれを聞くといわれた、「できたことは言うまい、したことは諌(いさ)めまい。[これからはこんな失言をくりかえさぬように。]」
【English】
The Duke Ai asked Tsai Wo about the altars of the spirits of the land. Tsai Wo replied, "The Hsia sovereign planted the pine tree about them; the men of the Yin planted the cypress; and the men of the Chau planted the chestnut tree, meaning thereby to cause the people to be in awe."
When the Master heard it, he said, "Things that are done, it is needless to speak about; things that have had their course, it is needless to remonstrate about; things that are past, it is needless to blame."
『論語』とは、読んで字の如く「論じ語る」、孔子と弟子達や要人達との間に交された対話録。
『論語』は私たちの生き方の原点を見つめた思索の宝庫であり、人間性を磨く叡智が凝縮した永遠の古典。
読めば読むほど胸に深く沁み込む簡潔な言葉の数々。
『孟子』『大学』『中庸』と併せて儒教における「四書」の一つに数えられる。
全20編(学而第一~堯曰第二十) 構成され、編の名称は各編の最初の二文字を採ったものであり内容上の意味はない。
したがって、学而第一から順に読む必要はなくどこから読んでもかまわない。