神聖天皇主権大日本帝国政府の「中華民国侵略」における「アヘン政策(戦略戦術)」の目的は、「生産・販売による巨利の獲得」と「中華民国の毒化」であった。
その戦略に対し、蒋介石は1938年12月26日(第1次近衛内閣)、前月の近衛首相の「東亜新秩序声明」(1938年11月第2次近衛声明)を批判した演説の中で以下のように非難した。
「中華民国国民は一度『日本』という言葉を持ち出したら、すぐ特務機関や罪悪を働く浪人の事を思い起こすのである。アヘン販売、モルヒネ売り、コカイン作り、ヘロイン売りなどを連想し、賭博窟を作り、娼妓を一手に引き受け、兵器の密売買、土匪援助、無頼漢庇護、あるいは漢奸を作って秩序を乱し、人民の道徳を頽廃させるなど、毒化、匪化の陰謀を連想する。」
神聖天皇主権大日本帝国政府の「アヘン・麻薬政策(戦略戦術)」は欧米諸国からも非難された。
1938年6月27日付『ニューヨーク・タイムス』は、「ケシ畑」と題する「社説」で以下のように非難した。
「中華民国の日本軍占領地域にあるケシ畑は今満開だとの事だが、……これは大日本帝国政府(軍)が武力と麻酔剤とを併用して中華民国侵略を行っている事を示すものだ。……ここ10年間世界の主要なアヘン配給者であった大日本帝国政府は、今や中華民国中にこの毒を撒布して人心を堕落させようとしている。」
同年7月12日付『クリスチャン・サイエンス・モニター』は、
「宋美齢は大日本帝国政府(軍)が中華民国の国民精神および抗日戦線を弱化させるためアヘンの取引を奨励しているとまで言っている。もちろん宋美齢の言い分は間違った解釈かも知れないが、大日本帝国政府(軍)が中華民国をその統制下に置く事によって、従来アヘンの売買を防止しようとしていた欧米諸国の人道的努力を水泡に帰せしめるような事をしているという事実を隠す事はできない。しかして以上の事実は、わずか半世紀位で世界列強の列に加わった大日本帝国政府(軍)が、西洋文明の外面的模倣即ち工業、軍備および自然科学に関する限り欧米諸国と遜色なきほど能率を挙げているにもかかわらず、道徳的には現代の世界標準に達せず、百年も遅れている事を示すものである。」
1938年8月、上記のような国際世論に対して、大日本帝国政府外務省は以下のような受止めをしていた。
「日華事変の進展にともない我が軍事占領地域におけるアヘンおよび麻薬の事態は列国ことに英米の異常なる注意を惹き、昨冬新政府(中華民国臨時政府)がある程度アヘンの吸食を緩和するにおよび、列国はこれを従来在華一部邦人により行われたる麻薬の密造・密売と牽連せしめ、大日本帝国政府はアヘンと麻薬とをもって中華民国を征服せんとしつつありとの悪声を放ち、国際世論の力をかりて我方を圧迫せんとする情勢にあり。」
(2025年2月14日投稿)