スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

雇用契約書

2006-04-29 17:12:50 | スウェーデン・その他の社会
ヨーテボリ大学から、早々と来年度から(9月~)の雇用契約書が送られてきた。

博士の3年目からは月給が17900クローナになる、とのこと。一ヶ月ほど前に組合と雇用者(大学)との賃金交渉があり、少し引き上げられたようだ。17900クローナというと268500円だが、所得税(地方税分、つまり市税と県税)が30%かかるので、手取りは12530クローナ(187950円)になる。これとは別に雇用者側は、社会保険料を国に払っており、これが給料の約30%だ。だから、計算してみると私の手取りの86%が、手取りとは別に所得税・社会保険料として国に支払われている計算になる。つまり、雇用者にとっての私の労働コストは、私の手取りの1.86倍ということになる。(計算、合っています?)

雇用契約書には、労働時間と休日についての規定も書かれている。Allmänna löne- och förmånsavtal(給与と福利に関する一般協定) と共に、大学関係者の属するSACOやSEKOといった労働組合と雇用者の結んでいる協定に基づくと書いてあるから、業種や職種ごとに違いはありそうだ。

◎ 事務職の職員の労働時間は
- 9/1~4/30は、一日8時間10分で、通常は7:50~16:30とする(昼食の30分を除く)。
- 5/1~9/31は、一日7時間30分で、通常は7:50~15:50とする(昼食の30分を除く)
つまり、秋・冬・春の間に、10分間長めに働いて、その分、夏の間は早めに仕事を終えよう、ということ。ただ、夏にはほとんどの職員が1ヶ月近い夏休みを取るので、その間の勤務時間なんて関係ないから、結局は雇用者側が得をしていることになるか。

◎ 教官や研究者、博士課程の者の労働時間は、別の基準に従え。(って、どこにもそんなもの書かれていないので、勝手にやれ、ということだと認識)

◎ いくつかの国民の休日の前日は、2時間もしくは4時間の労働時間の短縮。(それぞれの休みが挙げてあるが、省略)

年間の有給休暇の数は、
- 29歳以下が 28日
- 30歳以上40歳未満が 31日
- 40歳以上が 35日

私はまだまだ若いので(笑)、休みは28日間。これをすべて夏休みに充てようと思ったら、5週間半も休みが取れるのだ(土・日は有給休暇とは別なので)!

◎ 有給休暇の次の年への持ち越しも可能。

◎ 有給休暇には、通常の給与のほかに、給与の0.44%の「semestertillägg(休暇上乗せ)」が支払われる。← ある意味、ボーナスだ。私の場合、28日分の「休暇上乗せ」は77クローナ(1160円)となり、大した額じゃない。アイスクリームでも買って食べてね!ということだろうか・・・?

市の職員の「休暇上乗せ」はもっと多かった記憶があるけれど。

ネタ国家・スウェーデン : その2

2006-04-28 07:15:21 | スウェーデン・その他の社会
「ハテナ・ダイアリー」に書かれたスウェーデン情報に対するコメント
(以前のブログ参照:ネタ国家・スウェーデン

別に、スウェーデンの肩を持ちたいわけでは無いけれど、こんなテキトーで短絡的な議論が平気でなされているのには我慢できない。漠然としたイメージだけで、もっともらしいことを言うのはどうかと思う。いい加減な二次情報に惑わされないで欲しい。二次情報を使うのは構わないけれど、その質の吟味は自分でしっかりしなきゃ。(ちなみに、すべてがデタラメ、と言いたいわけではなく、高齢者福祉について書かれた部分は、頷けるところも多々あると思う)


スウェーデンは巨大な軍事産業国家
→ スウェーデンの武器輸出は知られているが、スウェーデンが巨大な軍事産業国家と呼ばれるほど、スウェーデン経済の大半を牛耳っているわけではない。武器輸出に関しては、あくまでその国の防衛のために使われること、また、紛争地、および世界平和を脅かす地域には輸出しない、というガイドラインを定めている。武器輸出そのものを直ちに中止すべき、という声は常に国内からも上がっている。また、ガイドラインも、厳格に適用されている、とはいえないケースもいくつかあり、常に議論を呼ぶテーマである。

ほぼ100%外資依存体質
→ そんなことはありません。一方で、グローバリゼーションの中で、他国の資本との提携は盛んに行われているが、それはスウェーデンに限らず、先進国の多くで見られること。

赤字国債を倍増
→ 1999年~2002年、および2005年は財政黒字でした。スウェーデンでは1996年から、財政の規律を正して、安易な公共支出の拡大を困難にするように、先3年の歳出に上限を設ける「キャップ制」を導入し、効果をあげている。

スウェーデンの和食店がまずい
→ これは、スウェーデンの食文化そのものがあまり発達しておらず、味に対して鈍感であることが原因なのであって、それを福祉の充実度と関連付けるのは、ちょっと考えすぎ。年金制度、云々の話は、ここの話での関連性がよく分からん。


このようなスウェーデン否定論が他方で叫ばれる背景には、日本でしきりに持て囃される「スウェーデン」=「夢の国」論があるような気がする。スウェーデンのことを話題に出すときには必ずといっていいほど、「福祉国家の」とか、「環境立国の」いう枕詞が付く。それがいつもいつも繰り返されられるものだから、イメージばかりが先行してしまう。日本人の間で、そんなイメージばかりが先行すると、マスコミもスウェーデンについて伝えるときには、そのイメージにあったスウェーデン・ネタを探して伝えようとする。すると、間違ったイメージもさらに強化されてしまう。そんないい加減なイメージ作りが、スウェーデンをますます分からない国に仕立て上げて、冷静な議論を阻んでいるように思えて仕方がない。

マスコミにだけ責任があるわけでも無さそうだ。経済や財政の専門家が書いた本の中にも、かなりの美化と誇張が含まれていることが少なくない。

こうやってあまりに美化させられるものだから、少しでも悪い所が見つかると、ケチを付けたい人は逆にトコトン貶(けな)す。美化論に対する反動としての「スウェーデン全くダメ」論だ。こんな単純な議論では、ナイーブ、と言われても仕方がない。美化論と同様、ここでの議論も、とかくイメージ先行だ。スウェーデンは巨大な軍事産業国家、とかほぼ100%外資依存体質などがいい例だ。これらのイメージの背後には、綺麗ごとの裏には必ずトリックがある、とか、税金が高いなら、外資依存でもおかしくない、といった短絡的な連想があるのだろう。そういった議論、それ自体には一理があるとしても、それを極端に誇張するのでは幼げない。

すべてを白黒で判断してしまって、「100%パラダイス」説と「100%ダメダメ」説に二極化してしまいがちなのは、どうも幼すぎる。ある国にしろ、ある政策にしろ、ある出来事にしろ、いい面もあれば悪い面もあることが普通なので、その両面性を認識すべきだと思う。

センセーショナルなマスコミがそういうことをするのは、ともかくとしても、少なくとも、大学の研究者や大学教育を受けたものなら、分かりやすくて単純な見解に惑わされず、もっとニュアンスを交えた分析を行っていかなければならないと思う。そうじゃなきゃ、何のための大学教育や教養だか分からなくなってしまう。

分かりやすい話はまず、疑ってかかろう!

2度目の挑戦!

2006-04-26 05:50:45 | コラム
って、何のことかといえば、もちろんIKEA

アドレスはもちろん www.ikea.jp

スウェーデンの家具メーカーIKEAの初めての店舗が東京郊外の船橋に開店した。“初めて”といっても、本当の初めてではない。実は1984年にも日本進出を試みているのだ。このときは、日本の企業との提携でスウェーデンの家具を売り込もうとしたのだけれど、うまく行かなかった。日本の市場を開拓するだけの力がIKEAにはまだなく、一方で、スウェーデンの家具やデザインに対する関心もまだ日本では高くなかった。

世界のほとんどの先進国に進出してきたIKEAも日本の市場は難関だと考えた。日本の住宅環境は、西洋とは異なり、大きな家具は好まれない。それから、日本人は好みにうるさく、世界で最も“気難しい”お客さん、という認識があったからだ。気を取り直しての再度のチャレンジは2002年の春に発表された。企業の経営陣や、1984年当時の失敗を経験したベテラン社員は及び腰だった。それでも、現在の社長は、大きな一歩を踏み出すことにした。日本が不況をようやく脱し、購買力が高まっていること、スウェーデン・デザインに対する日本人の高まる関心を考慮すれば、今ほどいいチャンスはない、と見たからだ。

日本の消費者の好みを知るべく、数々のリサーチが行われた。日本の狭い住居にあわせて、販売する家具のレパートリーを多少変える。しかし、そうやってIKEAのほうが日本の住宅環境に一方的に合わせるだけではなく、IKEAも西洋の、そしてスウェーデンの住文化を積極的に日本に持ち込んでいきたい。「日本人の多くが布団で寝たい、といえば、IKEAも布団の開発に力を入れるべきかもしれないが、IKEAはあえて『ベットで寝るのも悪くないよ』と、IKEA得意のベッドを売り込んで行きたい」と、かなり強気だ。ただ、IKEAのジンクスとして、その国の文化・習慣に適応していかない時は、なぜかうまく行かない、というのがあるそうだから、適応とわが道、のバランスにも気を遣っていかなければならない、という自覚も忘れてはいないそうだ。

日本進出プロジェクトの発表以来、IKEAには就職希望の問い合わせが相次いだらしい。現地、日本での採用はもちろんだが、IKEAはスウェーデンからも人材を確保して、日本に送ろうと考えた。2003年の秋に、IKEAはスウェーデンの全国紙に特大の求人広告を掲載した。「IKEAの日本プロジェクト。日本語・英語・スウェーデン語の3カ国語ができる人を、スウェーデンから30人、日本へ送り込みます! まずは説明会に来てみて!」 当時、私は博士課程の応募に失敗し、次回の応募を待つためにヨンショーピン大学で研究アシスタントをしていたけれど、どうせ博士課程が無理なら、IKEAも悪くないかもと思った。同じオフィスで働いていた日本留学の経験がある女の子と説明会に参加し、面接のためにストックホルムに足を運んだけど、最終的にはやはり研究の道を選ぶことにした。(それが正しかったかどうかは、もうすぐ分かる・・・はず?)

IKEAの企業文化は、他のヨーロッパ企業とは違うことで有名だ。将来、購買担当になる人であろうが、マーケティング担当になる人であろうが、ファイナンス担当になる人であろうが、みな始めは店舗で接客やレジという基本から積み上げていくのだ。そういう点では、日本の企業に似ているのかもしれない。(IKEAに本格的に就職したいなら、学生時代からIKEAでアルバイトをしていると有利、と聞く。)

こうして、現場(=店舗)で鍛え上げられるスタッフに求められるのは、創造力問題処理能力。世界規模の展開ということで、アメリカの大手スーパー「Wal-Mart」と比較されがちなIKEAだが、IKEAに言わせれば「Wal-Martの店員は缶詰やシリアルの配置ができれば十分かもしれないが、IKEAでは自らインテリアもできなければ店員にはなれない」のだそうだ。そういった心構えもあってか、先週、米ビジネス誌“ビジネス・ウィーク”が発表した「世界で最もクリアティブな企業」では、小売・デパート部門で見事No.1に輝いている。

問題処理能力というのは、日々、店舗で直面する問題を、上司の指示を待たずに、現場の自分たちで解決していくというイニシアティブ。社長は既に「日本人はとかく上司の指示やマニュアル通りに動くのは得意だが、自らのイニシアティブに欠ける」と厳しい判断を下している。現場の人間のアイデアによるボトムアップは、スウェーデン的なものかもしれない。

そういえば、日本ではあまり知られていないかもしれないが、IKEAの創業者、Ingvar Kampradは健在で、ビル・ゲイツに次ぐ、世界の億万長者リストの第2位だ。さらに面白いことに、IKEAは株式会社ではなく、必要な資金はすべて自分の企業グループ内で賄っている(内部留保を溜め込んできたということだろうか)。数年前から、スウェーデン国内ではIkano Bankenという銀行業も始めている。


Ingvar Kamprad

ともあれ、このまま順調に行けば、9月15日に横浜に一店舗、2008年には神戸にも一店舗がオープンする。こんな調子で、5年以内に、8~12店舗を確保していく考えらしい。

ネタ国家・スウェーデン

2006-04-24 04:30:11 | スウェーデン・その他の社会
インターネットで、たまたま日本の「ハテナ・ダイアリー」というサイトを見つけた。そこに、誰でも自由に質問を投げかけることができて、それに対して誰でも答えられる、というコーナーがあった。

そこで、こんな質問を見つけた。

Q:「スウェーデンって税金は高いけれど充実した年金や福祉などにより老後は保障されていたり社会不安などとは皆無の国みたいにマスコミは取り上げていますよね。でもそんなおいしい話が本当にあるのか疑問です。スウェーデンの光と闇について語ってください。

それに対する答えが、かなりいい加減で面白い。

A: 「スウェーデンは巨大な軍事産業国家です。国民の福祉を海外への莫大な利益をもたらす軍事産業が支えているのです。サーブは表向き良質な車(高級車?)のイメージですが実は知る人ぞ知る短中距離爆撃機製造会社として有名です。」

A: 「高税で国内企業を一掃。ほぼ100%外資依存体質。雇用不安が一番の問題になっている。近隣の諸国に労働力を輸出させる。赤字国債を倍増させている。」

A: 「スウェーデンの和食店がまずい。おいしい店にありつけたことがありません。聞いてみると、社会福祉が充実しているため、苦労して、日本料理の修行をする人がほとんどいないといいます。年金制度に対する不満の声がまだまだ、小さすぎるからだと思います。」

A: 「あぁ、私も若かりし頃はスウェーデンを理想的な国と思っておりました。しかし、キレイ事を主張し、実行はするものの、国民のタカリ性ですぐにダメになってしまってしまう、ネタ国家と今は認識しております。高福祉もいつダメになるのか興味深いところではあります。」

...だそうです。 詳細はこちら

スウェーデン、そしてスウェーデンの福祉政策は、100%外資に依存した巨大な軍事産業に支えられているのだそうです。そんな恐ろしい国だったなんて・・・。赤字国債は倍増しているんですか? 知らなかった・・・。でも、いつの話・・・? おまけに、すぐにダメになっちゃうネタ国家だったなんて。もしそうなら、そもそも、スウェーデンが持て囃されることはなかっただろうし、今頃スウェーデンは後進国に転落してんじゃないの? 極めつけに、ネタ国家って何だよ!さぁ、スウェーデンにお住まいの皆さん、ネタのウソがばれてしまう前に、そして、スウェーデンがポシャッてしまう前に、とっととスウェーデンを離れたほうが無難かもしれませんよ。私も、そろそろ荷造りを始めなきゃ!

って、こんな短絡的な議論があっていいの? 続きは次回。

予算案提出 → 今度は野党の出番

2006-04-22 14:51:23 | スウェーデン・その他の政治
ストックホルム商科大学でゲーム理論の講義。Philippe Jehielを招いた特別講義で、“限定合理性における戦略行動”の説明だったのだけれど、勉強不足のために、話が抽象的過ぎて、ほとんどついていけなかった。自分に落胆し、終了後は真っ先に講義室を飛び出してしまった。

―――
ビールで気分を紛らわすべく、友人とガムラスタンで夕食をとる。この友人もヨンショーピン時代からの友達で、ヨンショーピン大学で修士号をとった後は、同じ大学で私と一緒にresearch assistantとして統計処理や経済調査の仕事をしていた。

その後は、道路交通局で調査の仕事をしたあと、今は中央党の政策秘書をやっている。国会議事堂の横の建物に各議員や党関係者のオフィスがあり、彼のオフィスもそこにある。廊下がかなり広く、彼の部屋も大きかった。ドラマで見た官庁のオフィスの雰囲気とほとんど一緒だった。かつては主要政党の一つだった中央党も、最近はかなり小さくなってしまって、国政レベルでは6%の得票率しかない。中央党をはじめ、その他の小規模の政党(キリスト教民主党・左党・環境党・自由党)が同じ建物にオフィスを構えていた。一方、与党の社民党と、野党第一党の保守(穏健)党は規模がでかいために、独自の建物を持っているのだそうだ。

ちょうど、与党から春の予算案が提出されたばかりで、現在はそれにじっくり目を通している真っ最中らしい。これから2週間以内に、中央党として、そして野党連合としての独自の予算案を提出しなければならなく、それに追われているとのこと。もちろん、以前から党としての対抗予算案のアイデアはあったのだけれど、与党が予算案を提出したことで、国の財政にどれだけの余裕が今あるのかが、より明確になったので、中央党としてもより具体的な対抗案が出しやすくなるのだそうだ。

こうして、提出する対抗予算案も、実際に影響力持つことはない。社民党と閣外協力の左党・環境党が国会で多数を形成しており、この3党の間で既に合意が得られている。それでも、中央党としてのプロフィールと独自性を対抗案の中で打ち出さなければならない。スウェーデン国会に議席を獲得するためには、最低4%の得票率を確保しないといけないが、中央党はかろうじて水面に顔を出している感じだ。しかも、野党連合の中では、比較的大きな保守党や自由党に押されて、存在感もほとんどない。だから、独自性を出すことは党の死活問題に関わってくる。(一方で、地方政治のレベルでは、中央党は今でもかなり有力)ちなみに、政策秘書としての彼の雇用も、9月の総選挙までで、それ以降どうなるかは、選挙の結果次第だとか。(4%のハードルをかろうじて越えられるか・・・?)


スウェーデンの国政政党の左右スペクトラム
幅の大きさは議席数とは無関係
左3党が左派ブロック、右4党が右派ブロック

スウェーデンの政党は党自体に調査部門を設けて、政策の策定や、ある政策がとられたときの効果の推計に関して、自分たちでやってしまうのか、と思っていたけれど、大きな社民党や保守党を除いては、そのような余裕はなく、たいていの場合、国会事務局の調査部門に依頼するのだそうだ。日本と同じなんですね。(日本では国会図書館に似た部門があるとのこと)

いろんな話が聞けて面白かった。
寝袋持参なので、その晩はアパートのソファーで寝かせてもらう。
その晩からストックホルムはまた雪に包まれる。

春の補正予算案

2006-04-19 05:57:30 | スウェーデン・その他の政治
春の補正予算案が今日、スウェーデン国会に提出された。

秋に行われる本予算と春の補正予算の提出の際には、財務大臣が財務省から国会議事堂までの数百メートルを、予算案を片手にしながら行進するのが恒例になっている。

かつては、予算案の文書を一束にして、スウェーデン色(つまり青と黄)のリボンで括って、見せびらかしながら歩いていたのだけれど、時代も変わり、最近では、文書ではなくCD-ROMを手にしながら行進するようになった。

しかし、時代の流れは速く、今日の補正予算の行進では、なんとUSBメモリーになっていた。なんだか、冴えないな~。




上:ちょうど1年前。まだCD-ROMだった。
下:今日の行進。首からぶら下げるUSBメモリー。

文書の束なら、ずっしりとしていて、予算案の重要さとこれまでの折衝の苦労を感じさせてくれるけれど、それがCD-ROMになり、今またUSBメモリーになり、軽くて小さくなるたびに、なんだか内容も軽くなってしまったみたいに感じるのは、私だけ・・・?

かというと、実際はそうでもなく、今回は内容盛りだくさん。なんといっても、9月に総選挙があるからね。与党は人気挽回を図って、少しでも多く票を獲得するために、選挙の当落を左右する「Vård, Omsorg, Skola (医療・福祉・教育)」の各分野で多額の公共支出を約束している。それに加え、失業者対策のために、11000人の政府雇用を行うとも言っている。大学生には学生補助金を月300クローネ(4500円)上乗せ。

スウェーデン経済は2004年、2005年に引き続き、今年も絶好調。去年の実質経済成長は2.7%、今年は3.6%になると予想されている。これに伴い、税収も着実に伸び続けており、ここ数年は財政黒字を達成している。野党に言わせれば、それだけの余裕があるならば、減税をすべき、ということなのだけれど、与党は選挙を眼前に控えて、票稼ぎをしなければならないので譲れない。

余談だが、財務大臣のこのパレード。観光客がごった返すDrottningsgatan通りを歩く。毎回、右派左派それぞれのデモが周囲で行われ、SPによる警護も堅い。そんななか、たまにハプニングも起こる。2002年だか2003年には、大臣めがけてケーキ(パイ)が舞った。


ずるい、後ろからなんて! 周りでは小さなデモ。「また奴らは間違った予算を作った」の文句。この頃はまだ予算案が文書の束だった。

1キロ1000円のお菓子(godis)・・・!?

2006-04-18 07:19:50 | スウェーデン・その他の社会
最近、ニュースでfetmaという言葉をよく見聞きする。「肥満」という意味だ。アメリカほどはひどくないにしろ、スウェーデンでも肥満が問題になりつつある。特に、子供の肥満が深刻らしい。

砂糖のたっぷり入ったチョコレート・ドリンク、砂糖の多い朝食シリアルなど、知らず知らずのうちに砂糖をたくさん摂取してしまう。それから、ファースト・フード。昼ごはん時に、ピザ屋やマクドナルドで、食事をする高校生をよく見かける。

お菓子についていえば、スーパーにしても、小さなお菓子屋にしても、キャンディーやグミ、チョコレートが量り売りで売られている。店頭に100グラムあたり何クローネと書いてあるので、自分で好きな種類のお菓子を自由に組み合わせることができる。相場は100グラムあたり70~130円くらいだろうか。安い店頭表示を見ると、私もつい立ち止まって買ってしまうが、安いものほど、砂糖ばかりで甘ったるく、おいしくない。おまけに砂糖摂取量大、とダブルパンチ!


ついついたくさん取ってしまう・・・。私は辛党なので大丈夫!

政府の機関であるFolkhälsoinstitutet(国民健康機関)のほうも、肥満の増大はどうにかして抑えたい。さすが税金の大好きな国とあって、ファースト・フード税を導入する、とか、砂糖含有量に応じて特別税を課す、というような議論もあったが、これらはちょっと無理っぽい。

それでも、この夏から一つの対策がスタートすることになった。量り売りのお菓子の値段をこれからは100グラムあたりではなく、1キロあたりで表示することを義務付けるのだ。つまり、これまで「100グラム:70~130円」だった表示が、「1キロ:700円~1300円」となるのだ。お菓子ごときに1000円前後の値段が付いていると、案外アッとされて、引いてしまうもの。1キロ単位で買え、という意味ではもちろんなく、今までどおり、少量からでも買えるのだけれど、知覚に与えるインパクトは大きいかもしれない。

効果は他にもある。他の食べ物との値段の比較が容易になるのだ。スウェーデンのスーパーでは、どこでも他社の製品間の値段の比較ができるように、キロ当たりの値段表示がされてきた。例えば、A社のヨーグルトとB社のヨーグルトの一パックあたりの内容量が異なっていても、どちらがどれだけ高いか安いか分かるように、両者にキログラムあたりの価格表示がされているのだ。野菜や果物も、キロあたりの表示で販売されている。これは以前から行われていたことだけれど、量り売りのお菓子も同じくキロあたりで価格表示がされるようになれば、例えば、ちょっとお腹がすいているときに、リンゴやみかんが1キロ500円で、砂糖菓子が1キロ900円なら、じゃあ、果物を選ぼうか、ということになる。

果物をおやつにするのはヘルシーだ、と頭で分かっていても、ついつい甘いものに手が出てしまう。でも、こうして、さらに金銭的な比較ができるようになれば、人々の行動も変わるかもしれない。

オンライン電話帳

2006-04-17 07:33:18 | スウェーデン・その他の社会
この木曜日午後から月曜日までは、イースター休暇なのだ。日本の正月みたいに、実家に戻っている人が多い。

今日は朝、知り合いから電話があった。ヨーテボリの実家でイースターの食事会を開くから、加わらないか?とのこと。ヨーテボリといっても市の北端の方なので、まず路面電車に乗って、次にバスに乗り換えて行かなければならない。バス停で降りてから電話を入れれば、そこまで迎えに来てくれる、とのこと。

言われたとおりに、バス停から電話を入れればいいのだけれど、つながらなかったときのことを考えて、彼女の実家の住所も念のために控えておこうと思った。そんな情報もスウェーデンでは簡単にインターネットで手に入れることができるのだ。家の電話だけでなく、携帯電話も含む電話帳がオンラインで無料で提供されているからなのだ。

手順はこう。
(1) 彼女の下の名前しか知らないから、苗字を知る必要がある。彼女の携帯の番号は知っているから、それを打ち込むと、彼女の姓名と、住まいの住所(実家とは違う)が表示される。

(2) 次に、その苗字を打ち込み、実家のある辺りの地域名で絞り込むと、その苗字を持つ世帯が20に絞られる。

(3) その子は片親は日本人なので、夫婦の名前の片方が日本人っぽいものを探し出す。

(4) クリックすると、電話番号と住所と詳細地図が表示される。電話で教えてもらっていたバス停の場所のすぐ近くなので、ここに間違いないと確信。見事、住所をゲット。

(5) このおかげで、バス停からは電話をせずに、実家へ直行!

スウェーデンではこんな風に、個人の氏名と電話番号、携帯番号(プリペイドを除く)、住所、詳細地図が、ネット上の電話帳で一気に検索できてしまうのだ。

日本ではどうかと思って、ちょっと調べてみたことがあるけれど、いくらネット上でも有料サービスで、やすやすと使えるものではなかった気がする。

政治家や公の人物の情報は公表されないようにしてあるとはいえ、一般の人々の情報がこうやって、簡単に、しかもタダで手に入るのは、ある意味こわい気がする。他方で、使い方を慣れると、連絡を取りたい人の電話・携帯・住所などなど、すぐに手に入って、とても便利なのだ。

ストーカーなどの懸念がないのかと思うが、スウェーデンはわりと平和だ。むしろ、日本のケースのほうが異常な気がする。ただし、スウェーデンでもストーカー被害が少しずつ顕著になってきている、というニュースを最近聞いたので、このようなサービスもいつまで続くのだろうか。

「国」を愛する

2006-04-14 18:45:07 | スウェーデン・その他の社会
日本の教育基本法改正が議論される中で、「愛国心」の表現について「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」とすることが与党で合意されたそうだ。

「郷土を愛する」という表現は、「自分が生まれ育ってきた地域やそこに住む人々、社会を愛する」ことじゃないか、と何となく理解できそうな気がするが、一方で「国を愛する」という表現は、ちょっと抽象的過ぎて分かりにくい。そもそも「日本」という国を愛するとはどういうことなのか? 日本文化を愛することなのか? 日本人としての価値観を愛すること? でもどうやって定義するの? もしくは「政府」を愛せ、ということなのか? となると、例えば、時の政府がどんなことをしようが、国民はそれに付き従っていかなければならない、ということなのか。などなど、分からないことが多い。

そういう懸念を踏まえてか、ひとまず達した与党内の合意では、「国」の詳細について、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国」とすることで「統治機構」の色を薄めたのだそうだ。「『国』という概念に(政府などの)統治機構は含まないという共通理解がある」との説明もなされた。

「国」とか「社会」とか「文化」という問題は、自分の「アイデンティティー」の問題と関わってくるので、重要だと思うけれど、複雑で抽象的で、自分なりの答えはなかなか見つけられない。いつも堂々巡りをしてしまう。

スウェーデンでもこの手の議論は、大きなテーマだ。スウェーデン語という固有の言語を使い、体格の大きさと金髪という“バイキング”時代からの伝統 (???) を受け継ぐ(笑)スウェーデンも、今ではスウェーデン国籍を持つ人の20%近くが、何らかの形で他国の文化背景を抱えている。より正確に言えば、9%の国民が外国生まれの移民(移民第一世代)であり、さらに9%がスウェーデン生まれだが、両親のうち少なくとも片方が外国生まれという“移民第二世代”なのだ。だから、「スウェーデン人」とか「スウェーデンを愛する」という言葉を使う時には、これらの人々をも包括した概念で「スウェーデン」というものを定義しなければならないのだ。

もちろん、これは簡単なことではない。

“人種のるつぼ”と言われるアメリカでは、「自由主義」「民主主義」もしくは「アメリカン・ドリーム」とか「強いアメリカ」というような抽象的な言葉で、国民に“アメリカ人”としての共通性を見出させ、それを愛させようと努力してきた。スウェーデンでも様々な試みがされるが、「これがスウェーデンらしい物。だから、それを愛せ」といった定義はしょせん無理な話で、むしろ、そんなことに、こだわるより、日々前向きに生きていこうという、いい意味で“諦め”にも似た雰囲気を、少なくとも私は感じる。

スウェーデンでも何かの歴史的な出来事から「建国記念日」を設けているが、2003年の建国記念日(6月6日)にヨンショーピンの市庁舎前で行われた小さなイベントで、市長か誰かがこんな挨拶をしていたのを思い出す。

「スウェーデン、って何だろうと考えるにつけ、真っ白な空白の国なのじゃないかと考える。抽象的でつかみ所のない国。しかし、そこでは、様々な文化背景を持つ人々が幸せに暮らし、新しいものに常に開かれていて、異質なものをも寛容してしまう。そして、そこでは、一人一人が自分の頭で考えることができ、自分の願望を追求でき、不当な抑圧を受けることがない。そして、そこでは、広大な自然に囲まれて、豊かな人生を謳歌できる。そんな“夢の国”が『スウェーデン』なのだ。スウェーデン人であり、スウェーデンを愛するということは、ありもしないそんな“夢の国”を日々頭に想い描きながら生きていく、ということなのだ。」

何か歴史的なものに「スウェーデンらしさ」の根拠を見出そうとするわけでもなく、何だかあっさりとした、それでいて現実的な考え方だな、と思った。印象に残る挨拶だった。

「巣立ち」の早さ

2006-04-12 15:32:40 | スウェーデン・その他の社会
スウェーデンでは「巣立ち」はかなり早い。高校を卒業すると親の家を出て、自分でアパートを借りて住むのが一般的だ。仕事や大学がたとえ両親と同じ町にあったとしても、実家から通う、なんてことはかなり稀だ。極端な例では、高校生から親元を離れて、別居する若い子もいる。高校が実家から遠いから、高校のある町でアパートを借りる、という場合ももちろんあるけれど、それだけではなくて、親元から離れれば、自由にパーティーもできて、遊べるし、自立ができるという理由で、同じ町でもアパートを探すのだ。

ただ、アパート探しは難しい。大きな町では手ごろな賃貸マンションが不足しているので、家賃は上昇気味。高校生に簡単に手に入るものでもない。よほど運が良くない限り、安いところは見つからない。僕がスウェーデンに来て1年目は、ウプサラの町にある大学生寮で、10人の学生と半共同生活をしていたけれど、隣の部屋の女の子は高校生だった。大学生の知り合いがいて、こっそり又貸しをしてもらったらしい。大学生さながらの生活を満喫していた。

「巣立ち」の早さは、スウェーデンだけではなくて、他の北欧諸国に共通しているようだ。近頃は住宅不足でなかなかアパートが見つからなかったり、若者の失業率も高く、家賃が払えないので、不本意にも親と同居、というケースは増えているようだが。

一方で、南欧ではまったく正反対であって、例えばイタリアでは、男性が親と別居うする平均年齢(正確にはメディアン)はなんと30歳なのだそうだ。日本よりも遅いのだろうか? 結婚後にも親と同居なんてことはあるのだろうか? ちょっと、そこの辺までは分からないが。

北欧と南欧にどうしてここまで違いが見られるのか。理由はいくつかありそうだ。まず、(1) 社会的な規範(ノーム)の違い:北欧では、早い巣立ちが社会一般に受け入れられており、むしろ、そうしないと、ちょっと違う、と思われてしまう。一方で、南欧では家族主義が強くて、親との長い同居が受け入れられている。次に、(2) 福祉国家によるセーフティー・ネットの違い:北欧では一般に低所得者に対する住宅補助金や学生に対する生活補助金や低利ローン、それから失業保険などが整備されているため、ひとり立ちして、たとえ失敗しても、困窮しないような「命綱」が備わっている。だから、一人暮らし、という経済的リスクをあえて侵すことができる。

と、いうのが昨日の労働経済・公共経済セミナーのネタでした。

有名人(?)の集まる飲み屋

2006-04-10 03:07:20 | Yoshiの生活 (mitt liv)
<一つ下の記事の続きです…>

彼も忙しいなりにも、少なくとも週一回は運動をしようと努力しているとのこと。毎週水曜日はInnebandy(床ホッケー)をやっている。しかも、なんと国会議事堂で・・・!?

聞いてみると、どうやら、これまたヨンショーピン時代の知り合いのつてで、左党の若手議員が集まるInnebandy(床ホッケー)のトレーニングに参加することになったのだそうだ。国会議事堂はガムラ・スタン(旧市街)の入り口にある。外見はそれほど大きくないのだけれど、あの建物の地下には体育館やジムもついているのだそうだ。国会関係者は予約を入れれば、自由にスポーツができるのとのこと。部外者は特別なつてがない限り、参加できないらしい。

左党といえば、現在は与党である社民党に閣外協力(大臣職は持たないが、協力関係にある)をしている党。逆に、私の友達のほうは国政に関心があるのだけれど、野党の自由党が気に入っている。だから、ちょっと犬猿の仲っぽいところがあるのだけれど、彼に言わせれば、トレーニング前後の会話の中で議論をすることもあり、そこでは、自分とは異なる見方・考え方が聞けて面白いのだそうだ。あっ、ちなみにそういう場での会話は完全にオフレコで、外部へのリークは厳禁なのらしい!

私がこの友人に会った日は、ちょうどInnebandyの日だったのだけど、わざわざ休んでくれていた。ヨーテボリへ帰る特急の時間も近いので駅に急ごうとすると、彼が言った。「毎週トレーニングの後は一杯やりに行くんだけど、今日もみんなで飲んでいると思うよ。行ってみる?」

この党の議員は何人か見聞きしたことはあっても、実際に話をしたことはなかったので、心が躍った。帰りの交通手段は他にあるはず!

地下鉄で官庁街へ。あるパブには、トレーニング帰りの国会関係者が何人かいた。中には30代の左党議員Kalle Larssonの姿も。彼もスウェーデンらしい若い国会議員で31歳で初当選。スウェーデンの国会にも口だけの議員が多いなかで、彼は、議員や政府関係者がもらう高額の報酬や手当てを批判し、自らの報酬も一般の労働者平均を上回る部分は、党に返上しているという徹底さ。話が上手で、テレビなどでの討論では相手をうまく説き伏せてしまう、そんな能力と魅力を持った若者だということは聞いていた。そんな彼と話をする機会ができるとは、思いもしなかった。飲みすぎていなければ、どんな話をしたか、ちゃんと覚えていて、ここに書くことができただろうけど・・・。;-0

かなり酔いながら、結局、夜行バスでヨーテボリに帰ることになった。スウェーデンで国会議員の知り合いか・・・。悪くないかも。自分のキャリアに役立つ? でも、スウェーデンじゃ、あまり意味ないか・・・。いかん、いかん、そんな打算的な考え方は。そんなこんなで頭がボーとしながら、バスで熟睡。

友人の就職祝い

2006-04-08 17:26:37 | Yoshiの生活 (mitt liv)
昨日は、ストックホルム。ストックホルム経済大学 (Stockholm School of Economics) にゲーム理論の分野では著名なJörgen Weibullという教授がいるのだが、彼の講義を聞くためだった。

帰りの特急は夜8:15。それまで、ストックホルムに住んでいる友人と、ビールを飲んだ。この友人、私がヨンショーピンに住んでいるときに一緒に勉強した以来の仲なのだけれど、経済学部を卒業後はなかなか就職が決まらずにいた。求職活動をしながら、ストックホルム郊外の刑務所の看守をやっていた。

スウェーデンの大学の特徴として、大学での教育内容がより実務的であり、取得できる学位も「看護士」「司書」「弁護士」「一般エンジニア」「××系エンジニア」など、具体的な職業に関連した名前を冠していることが多い。これらの学位は労働市場での求職の際には、そのまま一種の資格としての意味を持つ。そのため、求職活動も比較的しやすい。

一方で、経済学や政治学など、実務性が少し薄く、具体的な職業と直接は結びつきにくい分野で学位を取った学生は、なかなか就職が難しいといわれる。実務性が強そうな経営学ですら、近年は供給過多のために厳しいといわれるが、経済学はなおさら難しいようだ。

学位を取得したのに就職ができない人は、大学に残って、何かの勉強をし、国からの学生補助金で生計を立てたり、しばらく別の仕事をしたりしながら、求職活動を行う。ここの学生は、もともと大学に入る前に働いていた経験のある人や、在学中でもサマージョブの形で夏休みに働く学生も多いので、顔見知りの職場に戻って、しばらく働くという手もある。ここに挙げた私の友人の場合もそう。以前に、看守の経験があるので、同じ刑務所で働いていたのだ。(彼は、兵役中も刑務部にいたらしいから、よほど看守が似合うのかもしれない・・・)

そんな彼も今年の初めから、ある大企業の幹部養成プログラムに抜擢されて、ようやく腰が落ち着いた。ビールを飲みながら、それを祝った。私からの祝いは、日本から買って帰ったニッカ・ウイスキー「余市」。

ブッシュ大統領の先祖はスウェーデン人

2006-04-04 07:25:14 | スウェーデン・その他の社会
アメリカにはスウェーデンをはじめとする北欧諸国からの移民の子孫も多い。日本ではちょうど明治維新の頃の1860年代から1900年代初頭にかけて、なんと100万人のスウェーデン人が、新天地アメリカ大陸を目指したとされる。当時の全人口がおよそ400万人というから、なんと4人に1人が国から出て行ったのである。凶作などが原因となり、特に開墾の未発達なスモーランド地方の貧しい農家の次男坊、三男坊が挙って出て行ったらしい。みな、まず陸路でヨーテボリを目指し、ここから大きな汽船に乗ってイギリス経由でアメリカへ渡ったとされる。(自由の女神があるナンとか島(?)の移民博物館にもスウェーデン人の名前がいくつもあった)

アメリカでは、特に五大湖周辺の州に定着するようになったといわれる。スウェーデン人の家族の中には親族の中に、アメリカへ渡った者がいるというケースも稀ではない。既に100年前後が経ち、大西洋をはさんだコンタクトも次第に途絶えてきたとはいえ、移民家族のルーツを辿る家族史研究のほうは盛んだという。

そんな研究のひとつが面白いことを突き止めたのだ。アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュを10世代もさかのぼって行くと、なんとあるスウェーデン人の移民にたどり着くというのだ。しかも、スウェーデンから北米へ大量の移民が出て行った19世紀後半~20世紀初頭の時期ではなく、なんと1630年代の話だというのだ。


おい、そこのカメラマン。君も俺の親戚かい?

1630年代というとデンマークからの独立を果たしたスウェーデンが次第にヨーロッパ列強に名を連ね始め、ヨーロッパ大陸北部でポーランドやロシアと覇権争いを始める頃。ストックホルムの有名な観光地ヴァーサ博物館に展示の帆船「ヴァーサ号」もこの頃に作られたはず。そんな時代に、スウェーデンもアメリカ新大陸に植民地を建設するのだ。「ニュー・スウェーデン」と呼ばれるこの植民地は、ヨーテボリから出航した帆船「Kalmar Nyckel号」によって、1638年にデラウェア川河口に建設される。

そんな中、スウェーデンのヴァルムランド地方出身と見られる青年Måns Andersson (モンス・アンダーション)が1639年10月にヨーテボリ港から「Kalmar Nyckel号」の第2次航海に同乗し、ニュー・スウェーデンに渡る。後の大量移民時代を飾る「タイタニック号」のような大型汽船と違い、この当時は帆船に揺られること半年で、アメリカにたどり着いたという。だから、渡米も魅力のあることではなく、移民の多くが犯罪者など、国を追われた者だったとか。Måns Anderssonの素性は明らかではない。

さて、渡米後の彼は、タバコ栽培に雇われながらお金を貯め、自らで農園を経営するようになる。この農園につけた名前がSilleryd。スウェーデンのヴァルムランド地方に今でもSillerudという地名が残ることから、彼がこの辺りの出身で、自分の農園に故郷の名前をつけたのではないか、と推測されるのだ。彼の息子はChristopher Månsson(クリストファー・モンソン)といい、隣人からはニックネームでChristopher Mountainsと呼ばれていたらしい。そのために、苗字が次第に変化していき、この娘Annの代にはMountsという苗字に変わっていたとか。このAnn Mountsがジョージ・W・ブッシュの8代前の祖先だということは、以前から分かっていたらしい。つまり、今回の発見によってブッシュ家の先祖がさらに2世代もさかのぼることができたのだ。しかも、Måns Anderssonはヨーロッパ・ルーツの最も古い人らしいのだ。

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今回の発見は、あるスウェーデン日刊紙が第一面に取り上げるほどの扱いだが、もともと移民から成り立つアメリカ。ある人の先祖を辿っていくと、祖先の一人がスウェーデン出身だったなんてことは、全然珍しくないだろう。しかも、10代も前となると、2の10乗=1024人もの人が関わっているのだ。

逆に面白いと思うのは、よくもここまで辿っていけたな、ということ。しかも、その当時から数えて1024人の人々があってこそ、今のジョージ・W・ブッシュ君がいる、という歴史のスケールの大きさ。もしも、Måns Anderssonがヨーテボリ出航の朝、寝坊して、もしくは二日酔いで、船に乗り遅れて、スウェーデンに残ることになっていたら、今頃はブッシュ大統領じゃなくて、別の誰かが大統領になっていたのだろうか。プッシュさんとか。それとも、彼の子孫が今頃スウェーデンの首相になっていて、非同盟を放棄し、アメリカと堅固な軍事同盟を結んでいて、スウェーデンにも米軍基地がゴロゴロしていたとか。

Mr. 時報さん?

2006-04-02 19:12:36 | スウェーデン・その他の社会
スウェーデンでももちろん電話の時報がある。「×時×分×秒」と機械の音声が流れるのだが、日本と同じように女性の声。スウェーデンでは俗に「Fröken Ur (Mrs.時報さん)」と呼ばれている。

昨日のラジオのニュースだと、女性が時報を伝えるというのは、女性が電話交換をしていた頃の古い習慣なので、男女平等の観点から、これからは機械の時報も男性の声に切り替えたい、という提案が国会に提出されたというのだ。つまり、これからは「Herr Ur (Mr.時報さん)」になるのらしい。

これに対して、いくつかの政党の党首が賛否のコメントを発表した。また、国の平等オンブズマンは「男性だけにしてしまうと、これはこれで偏ってしまう。一番いいのは10秒おきに、男性と女性を切り替えること」と、多少批判的。

なんだか、大げさな議論だな。国会を通さないといけないことなのか・・・?と不思議に思った。しかも、10秒おきに声を入れ替えるなんて、面倒だな、と。すると、ニュースの最後に「では、Mr.時報さんならどのように聞こえるのか、試作品を聞いてみましょう。」と、試しに作った時報が流れる。「ピ、ピ、ピ、ピーン。4月1日午後6時をお知らせします。」そして、ニュースが終わる。

まてよ、今日は4月1日。そう、エープリル・フール(Aprilskämt)だったのだ。スウェーデンのメディアは毎年こうやってジョークを流す。しかも、時には本当にもっともらしいので、信じてしまうものも多い。しかも、次の日になるまで、あれは悪い冗談だったと言わない。

ヨーテボリ新聞のジョークはこうだった。「中央駅前のSystembolaget(国営の酒屋)がイメージ・アップを図るために、今日に限って、お酒をドイツ並みの値段に割り引く。ただし、割引が効くのは、去年きちんと税金を納めた人に限るので、去年の確定申告書と納税証明書を持参することが必要。」これで騙されて、Systembolagetに殺到した人が何人もいたとか。慎重な人はSystembolagetに電話を入れえ問い合わせた。そこで、今日は何月何日、と聞き返されて、やっとエープリル・フールに気がついた、なんてこともあったそうだ。

たまに、こうして伝えられた“偽り”ニュースが、外国の通信社にも信じられてしまって、その国の<国際欄>に並ぶこともなる。ストックホルムの日刊紙DNは「ストックホルムでは自転車と歩行者の衝突事故が多発しているので、一部の自転車・歩行者道に20kmの制限速度を設ける」と伝えた。「自転車だけでなく、ジョギング愛好者も20kmをオーバーした場合は、罰則の対象になる」とも書いた。まんまと引っかかったのは、なんとアイスランドの新聞。昨日の国際ニュースの7番目に取り上げられてしまった。

去年のエープリル・フール