スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

サマータイム その後

2005-03-29 06:25:12 | コラム
いつもブログを読んでくださる「双子の母」さんの家では月曜日の夜になるまで、サマータイムになったことを知らなかったのだそうだ! 丸二日間、そのアパートの空間だけ、周りの世界より一時間遅れだったなんて、ちょっとしたタイムスリップ 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」!? ちょうど休日だったから、何の支障もなかったんですね。

何しろ生来のスウェーデン人でも、先週末に時間が変わったことを知らなかった友人もいたから、われわれ外国人が知らなくても無理はない。僕もその前日は8割方、確かだと思っていたが、確認したかったので、メディアやラジオで調べてみたけど、そんなに情報が出ていない。朝刊の一面をよく見ると、隅っこのほうに時計の絵が載っているだけだった(前回、掲載の写真)

たまたま思いついて、携帯メールで知らせてあげた友人は、僕の書き方が悪かったみたいで、昼間の2時に切り替わるかと思ってしまったらしい。さて、深夜じゃなくて、昼間に1時間、時計の針が進んでいたらどうなっていたか・・・?

・電車はその瞬間に自動的に1時間遅れ。午後2時発と3時発の特急は、2編成連結して運行。夏時間を知らなかった鉄道職員が遅刻し、一部の電車が運休。
・この日は日曜日なので一般の仕事場はお休みだけど、たとえば、医療・介護の職場ではお昼2時半のフィーカ(コーヒー休憩)がとばされ、カフェイン不足でうたた寝をする職員がでる。
・駐車場では、1時間分、余分にパーキング料を取られ、人々の不満が高まる。

・・・とまあ奮って書き始めたけれど、大した事思いつきませんでした。

(これは夏時間とは全然関係ないけど、日本のある田舎のローカル線では、運転手さんが時間を勘違いして、1時間早く汽車を出発させた。ワンマンカーだったから、乗務員は運転手だけ。いつものごとく(?) お客さんはいませんねーぇ、と思いながらトコトコと汽車を走らせ続けて、1時間。反対側からやってきた電車の運転手に指摘されてやっと自分が勘違いしていることに気づいた、なんて笑い話もあったらしい・・・。スウェーデンでも夜中の貨物列車の運転手はそんな経験ないのかな?)

明日は、朝九時から、マクロ経済学Iの試験。ちゃんと目覚まし時計をセット。もし、万が一、遅刻してしまったら、時計を見計らって1時間遅れで試験会場に入室して、夏時間をぜんぜん知らなかったフリをしよう。

サマータイム制

2005-03-26 02:28:19 | コラム
朝刊1面より

ヨーロッパでは「サマータイム制」なるものが存在する。夏の間だけ、時計の針を通常よりも1時間進めるのだ。だから、本来なら基本的にお昼の正午に太陽が真南に差し掛かるのが、サマータイム制の下では13時に南中することになる。

サマータイムに切り替わるのが、毎年3月の最後の日曜日の早朝2時だ。つまり今日なのだ。

以前に書いたように、スウェーデンの春は突然やってくる。以前のブログ. 均衡が崩れた途端に、急に暖かくなり、太陽がきらきらと輝き始める。この頃までには日も十分に長くなっており、朝も比較的早くから明るくなっている。そんな急激な春の訪れにさらに拍車をかけるのが、サマータイムへの切り替え。日の入りがらに1時間も遅くなるのだ。

朝は外の明かりで早くから目が覚める。しまった8時だ! 寝過ごした! と思って時計を見るとまだ6時前ということもある。こんな急激な春の訪れに、体が適応しないのではないかと思うくらいだ。まるで、寒く暗い冬の間に冬眠していた熊が、春になって地上に出てきて、あまりの眩しさにひるんでいるかのようだ。

サマータイムは今晩から始まり、4月から10月までの7ヶ月間続く。だから、本来の時計の決め方(つまり、太陽が真南に来たときが正午)に基づくのはたったの5ヶ月しかないから、どっちが“通常”なのか判らなくなる。しかも、北欧はただでさえ夏の間、日が長いのに、どうしてサマータイム制が必要なの? と以前は疑問に思っていたが、多分これはドイツやフランスなどの他のヨーロッパ諸国と時間を合わせるためなのだろう。

サマータイムに変わるのは日曜日の朝の2時。2時がいきなり3時になるのだ。そうすることで夜中が一時間短くなる。


今日と明日、一日違うだけなのに、日の出・日の入りが1時間ずれているでしょ
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さて、土曜日の夜は実は夜行バスでヨーテボリからヨンショーピンに帰ることになった。これはちょうどよい! 以前からずっと抱いていた疑問を解明することができる。さて、夜行バスや夜行列車はこの夜、どうやって時刻表通りに運行させるのか? サマータイムから通常時間に戻るときは、1時間夜が長くなるのだから、どこかで1時間休憩すればよいだけの話だろうが、その逆は簡単には行かない!

<私の仮説> 1時間分の遅れを取り戻して、次の朝、予定通りに目的地にたどり着くために、爆走する。夜行列車はこの日だけ超特急の車両を使って、思いっきり飛ばす。夜行バスは、この日だけ、高速道路を時速200キロでブッ飛ばす許可をもらっている。

私のこの思い込みが正しいのか、今日確認できるというわけだ。さて、ワクワクしながら夜行バスに乗車する。運転手もなんだか今晩はやる気がみなぎっている印象を受ける。大爆走中に車内で振り回されても大変なので、私もしっかりとシートベルトを締める。そして、いよいよバスが走り出す。そして、車内アナウンス...。

「今晩はサマータイムへの切り替えのため、途中の町には午前2時以降は定刻よりも1時間遅れて到着することになります。よって終点のストックホルムにも1時間遅れで到着いたします。」

な~んだ。そんなことだったのか。と、落胆しながら、普通に走るバスに揺られながら帰路につく私。

中央アジア・キルギスタン

2005-03-25 06:40:07 | コラム
スウェーデンは一足早くイースター休暇の真っ直中。大きなニュースが無い中、伝えられるのはキルギスタンの政変。民衆が大統領府を襲撃し、現役の大統領に退陣を迫ったのだそうだ。勢いに乗って、民衆が暴徒と化し、無法状態が続いているという。

2000年代に入ってから、旧共産圏のいくつかの国で政変が起こった。セルビアではユーゴ内戦で暗躍したミロシェビッチ大統領が民衆によって退陣に追い込まれ、その後、オランダ・ハーグの国際司法裁判所に移送された。その後、グルジアでも不正選挙によって旧体制を維持する大統領に国民の堪忍袋の緒が切れ、政変が起こった。そして、去年の暮れのウクライナでは、これまた不正な選挙で勝利した新大統領に、改革派の支持者が抗議活動を繰り返した結果、ウクライナ最高裁は選挙のやり直しを命令。そして、改革派が勝利した。

この一連の出来事では「民主化運動のフランチャイズ化」という言葉が聞かれた。セルビアの民主化で勝利した民衆の指導者が、グルジア政変に際してグルジアに赴き、自らの経験を分かち合い、戦術を伝授し、ソフトの面でで積極な支援したとのことだ。そして、ウクライナの際には、セルビア人もグルジア人もが知恵を出し合って、政変を成功へと導いていったという。まるでドミノ倒しのようだ。腐敗政治が横行する旧共産圏の民主化は時間のかかるプロセスだが、国境を越えた協力によって、民主化のうねりを造り出そうとしているのは、とっても面白い。

今回のキルギスタンの政変はまだまだ渦中のようだ。キルギスタンは中央アジアにある小国で、テレビ局の特派員もいない。ここで今、ニュースの脇役として、刻々と変わる現地の情報をスウェーデンへ伝えているのは、なんとスウェーデンからの留学生。電話を通じたリポートで、公共放送にも民放にもラジオのニュースにも登場して、一躍、時の人になっている。ずいぶん若い男の子だが、キルギスタンにいる数少ないスウェーデン人として、貴重な存在のようだ。彼にとっても、またとない歴史的な瞬間を目の当たりできる絶好の機会なのだろう。小国に留学中の皆さん、こんな事態もあるかもしれないので、しっかりリポートできるようにしておきましょう!

ここヨンショーピン大学は、タジキスタンとは交換留学提携を結んでいるが、キルギスタンとはまだないはずだ。(?)

それにしても、キルギスタンなんて地図を見るまで場所が分からないような所だ。ニュースで映る映像を見ていると、アジア系でモンゴルの人によく似た顔立ちの人が、ロシア文字を使ってロシア語みたいな(それとも、ロシア語そのもの?)言葉をしゃべっているのは面白い。世界はまだまだ広い。見知らぬ国がたくさんある。

今日は計量経済学の試験(の はず?)

2005-03-24 04:33:10 | コラム
今日24日は、計量経済学Iの試験。

この科目は秋学期のミクロ経済学や数学に比べたら、かなり面白い。試験勉強を進めるにつれて、今まで不明確だったところが少しずつ分かってきて、あぁ、そういうことだったのか何度もうなずくことができた。興味のある科目は一つ一つ理解しながら勉強していきたいと思うものの、いつものことながら試験が差し迫る頃には時間がなくなってしまって、理解せずに詰め込み勉強をしないといけない部分も出てくる。あぁ、もう少し早めに手をつけておけば良かったと後悔するのは、いつものこと。

昨日の夜、さぁ明日は試験で朝の電車も早い便になるから、と目覚まし時計をセットする。寝る前に、何かスケジュールの変更が無いかどうか、最終確認をするために、大学の学部ホームページにアクセスする。するとそこには、「計量経済学Iの採点結果」というタイトルでワード文書が添付してある。去年の試験結果がそのままになってるんだな、と理解し、念のためにいざ開けてみると・・・。

「2005.03.23:計量経済学Iの問題と解答。各学生の成績・・・」・・・とここまで読んで、実は試験が僕が考えていたより一日早く行われていたことに気づく。そんなことは無い、と手帳を開くがそこにはちゃんと24日(木)と書いてある。書き込みミスというそんな単純なことは無いはずだと思い、講座の日程表を見てみると「Exam: Thu 23 March」つまり23日(木)と書いてある。教官側の曜日の書き間違え。"Thu"だけを見て、自分の手帳の木曜日24日の欄に“試験”と書き入れていたのであった。

というわけで、夕べはショックで寝るに寝られず、泣くに泣けず。今日はショックで落ち込む暇もなく、来週の試験、マクロ経済学Iの試験勉強に取りかかる。昼過ぎに友達Jerryが「試験はどうだった?」と電話をくれた。悔しいので、「いや、今日は試験監督がみんな病欠(sjukskrivna)で、試験はなかったよ」ととぼけておく。

今回逃した計量経済学の試験は夏休み明けの追試を受けることになります。

(それにしてもこの教官、試験結果の即日採点・即日発表とは気合い入っている。別の科目の教官には4週間も待たされたことあるのに)

今日の一言:「踏んだり蹴ったり」
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今日は多くの職場が半日扱い。明日からイースターの休暇が始まるためだ。スウェーデンではpåsk(ポスク)という。小さな子供がずきん姿の老婆に変装して、近所の家を回って、お菓子をねだるのが習慣とか? ポスク休暇は月曜日まで。

(だから、こんな半日扱いの日に試験なんて変だと、ちょっとは不思議に思っていたのだが)

曲がり角にきたアルコール規制政策 (下)

2005-03-22 07:22:04 | コラム


隣の国と陸続きであったり、橋で簡単に行けてしまうヨーロッパの各国では、人々の移動や物の流れは、国内の政策をも左右してしまう。ヨーロッパ全体が一つの市場になるほど統合はされてないにしても、同じ品物が他の国で安ければ、最近では簡単に輸入できるようになった。

去年の暮れにSonyのデジカメを買った。日本の“価格.com"と同じように、こちらでもウェブ上で様々なお店の値段を比較することができるのだが(例えば、www.pricerunner.sewww.msn.se/shopping)、スウェーデンのお店だけではなく、他の国のお店でも、スウェーデンに配送サービスを行っているものであれば、そこでの価格とも比較できるのだ。もちろん通貨が違うが、配送料も含めて、自動的にユーロからクローナへ換算される。比較の結果、フランスのとある販売店に注文。クレジット決済。なんと約束通り、48時時間以内に配送してくれた。電源アダプタはちゃんとスウェーデン型。

お酒はさすがに、個人で輸入することは許されていない。しかし、車で持ち込むことは許されている。人と物の国境を越えた流れがこれだけ激しくなった今、税関の検査もできないという理由で、数量制限も撤廃された。

物価がヨーロッパで一番高いといわれるノルウェーでは、お酒も高い。だから、ノルウェー人はスウェーデンにお酒の買い出しにやってくる。ノルウェーとの国境に近いStrömstadは小さな町なのに、それに似合わないほど大規模なSystembolaget(国営のお酒販売店)がある。スウェーデン人はスウェーデン人で、お酒が安いフィンランドかデンマークに買い出しに行く。じゃあ、デンマーク人はというと、彼らはさらに安いドイツに行く。と、ドイツ人はどうかというと、ポーランドやチェコ、ハンガリーなどの東欧へ行く・・・。

国内と隣国との値段の格差と、時間的距離が関数となって、人々の流れが決まる。

そんな中で、昨年デンマークが酒税の切り下げを決定した。スウェーデン人にとって、デンマークへのお酒の買い出しがさらに魅力的になったのだ。エォーレスンド橋を越えて、南スウェーデンの人々がデンマークの首都コペンハーゲンに押し寄せる。コペンハーゲン周辺では、スウェーデン人相手の酒屋がスウェーデン語表示で軒を連ねる。

さらに業者による密輸も増加。デンマークからスウェーデンを陸路で通過し、ノルウェーへ搬送するという名目で税関の通過許可をもらったアルコール類が、実はスウェーデン国内で闇で販売されていることが発覚した。他には、ヨーロッパ中を駆けめぐるトラックの運転手が、ヨーロッパのどこかで安く買ったお酒をストックホルム近郊のトラック駐車場で、闇で売り渡して小遣い稼ぎをしていることも明らかになっている。(注:個人での持ち込みはよいが、それを販売して収入を得るのは違法)

そんなこんなで、スウェーデンのSystembolagetは売り上げがさらに激減。酒税からの税収が大きく減ると共に、国内の酒造業が大きな痛手を受けることになった。価格の違いが大きくなれば、Systembolagetがいかに“手取り式”や“土曜日営業”で客を呼び寄せようと思っても、もうお手上げだ。

先週17日木曜日に、政府の調査会から仮の提案がなされた。ウオッカ・ウィスキーなどの強酒にかかる酒税を40%減、ワイン・ビールの酒税を30%減らすというものだ。こうすることで、隣国との価格の差を少しでも縮めるのがねらいだ。

これが現実化すれば、国民の健康や暴力・交通事故を考慮したこれまでのアルコール規制政策が大きく転換されることになる。提案に反対する者は「発火した火事を灯油をかけて消そうとするようなモノ」と声を荒立てる。アルコールの消費に歯止めがかからなくなるのは必死だが、現実問題として、既に他国から大量に流れ込み、消費量も増え続けている。放っておけば、スウェーデンでの税収減を含めて、さらにマイナスの結果になることも懸念される。政府調査会の座長は「(昔のようにというのが理想だが、そうはもはやいかない) 守りきれるものだけでも守り抜こうというのが提案の狙いだ」と、スウェーデンのアルコール政策が抱えるジレンマを端的に表した。

このように、国境のもっていた意義が薄くなり、人と物がより自由に移動できるようになると、国内政策も他国の政策との調和という妥協を余儀なくされる。これは、アルコール政策だけにとどまらないようだ・・・。

曲がり角にきたアルコール規制政策 (上)

2005-03-21 08:22:02 | コラム


スウェーデンでのお酒の流通は国の独占だ。ビールやワイン、ウオッカが欲しければ、国営企業である「Systembolaget(システム・ボラーゲット)」に足を運ばなければならない。手に入る品物は全国ほぼ一律で、価格も統一されている。北欧では、隣国ノルウェーもアルコールの流通を国が牛耳っている。ノルウェーの国営企業の名は「Vinmonopolet(ヴィーン・モノポーレット)」。vinはワインのことだが、ここではアルコール類の総称として使われているのだろう。だから、「アルコール専売企業」なんていう、直訳すればとっても響きの悪い名前になる。スウェーデンの「Systembolaget」を直訳すれば「システマティックな企業」と何だか訳が分からないが、多分、現代的で斬新なイメージを持たせようとしているのかもしれない。人によっては「システマティック」=「規制によるがんじがらめとと官僚による肥大組織」と悪口をいう人もいる。

一昔前までは、月曜日から金曜日までしか開いていなかった。お店に入るとまず番号券をもらって、自分の番を待つ。番号が呼ばれると、カウンターへ行き、カタログに書かれた商品番号と数量を店員に告げる。そうすると、店員が小型の押し車を押しながら、カウンター裏の倉庫へ行き、お酒を集めてきて、お客に売り渡す。「国営」という名がこの時代遅れの“システム”を物語っている。

なぜ、お酒の販売まで国が独占するのかというと、北欧にはもともとウオッカなどの強酒を一度に大量に飲む習慣があったそうで、アル中者が続出。国民の健康に対する懸念が国内問題となった。これは他の国でもそうで、よく知られるように1920年代(?)のアメリカで禁酒法が可決される。スウェーデンでは、禁酒法の導入を問う国民投票が行われたが、それが可決されることはなかった。その代わり、アルコールに高い税金を掛け、消費を減らし、しかも限られた場所で限られた時間のみ販売することで、手がなかなか届かないようにしようとした。

ビールを含む5%以上のアルコール類は、このSystembolagetでしか買うことはできなかったが、2%~3.5%までの軽ビールは一般の商店でも販売することが許される。税金も安い。そうすることで、本当だったら普通の5%ビールを買ったであろう人が、より手軽に手に入って、しかも安い軽ビールを買うようにと暗黙的に促す仕組みもつくってある。(ミクロ経済学でいう価格による“代替効果”!!)そうやって国民が軽ビールでより満足するようになれば、健康に対する被害も減って、医療支出も減り、しかも、しっかりと働いてくれる!というわけだ。(ちなみに、この軽ビールというのは、まずい。まさに水で薄めたビール。しかし、炭酸が利いている間は、そこそこいける。これとは逆にSystembolagetには10%のビールというのもある。これは、ビールにジンを混ぜて飲んでいるようで、まずいし、悪酔いする。)

そんな国営の流通であったにも関わらず、品揃えは昔から良かったのらしい。この国にもワイン好きの人がそこそこいたので、彼らの要求に応えなければならなかった。価格も手ごろ。1000円も払えばまずまずのワインが手にはいるし、2000~2500円ともなれば、まずまず上等。一方で、40%以上の強酒は、税金のおかげで格段に高い! スウェーデン製のAbsolute Vodkaは日本では本国の1/3の値段で手に入る。

そんなSystembolagetも90年代から大きく変わり始めた。競争相手が出てきたのだ。といっても、国内の流通は相変わらず独占。敵というのは、個人旅行者による外国からの持ち込みや、大挙した外国への買い出しなのだ。特に南スウェーデンとデンマークを結ぶエォーレスンド橋ができてから、一気にこの勢いは強まったのだ。橋を越えた向こう側、デンマークへはスウェーデン第3の都市、マルメから車で1時間もかからない。橋は有料道路なので、瀬戸大橋なみの通行費を考えたとしても、友人や親戚から注文を集めて、車一台で買い出しに出かけ、トランク一杯にしてスウェーデンへ戻ってくれば、それで元が取れるのだ。なかには、夏休みに車でヨーロッパを旅行した帰りに、ドイツでたんまりと買って帰ってくる人もいる。(ドイツはさらに安い)

そんなわけで、Systembolagetも負けじとサービス向上に努める。各地のお店を改装して、スーパーのようにお客が自分で品物を手にとれるようにした。それから、人々が大挙してデンマークへ出かけるのは週末が多いので、Systembolagetも土曜日に店を開くという実験をまずスウェーデン南部で行った。その実験に一定の成果があったのか、土曜日開店は全国的に普及することになった。

私がスウェーデンへ来た2000年頃が、ちょうどその移行期で、ウプサラ中心街のSystembolagetが“手取り式(スーパー式)”に改装されたり、ヨンショーピンでも町にあった2店舗のうち1つが土曜日開店をすることが決まった。その頃は「おい、どっちの店なんだ?」「あれは、次の週末からだよ」などと口づたいに人から人へと噂が広まっていった。”självplockning”(手取り式)や”lördagsöppet”(土曜日開店)という造語がその頃のちょっとした流行語にもなったくらいだった。

(長くなったので、続きは明日)

春分の日

2005-03-20 07:38:41 | コラム
春分の日。

今日の朝刊DNのネット版に、なぜ地球の地軸の傾きと、地球の公転との関係が動画で掲載されていた。これを見てみると、春分・秋分の日になぜ昼間と夜間の長さが同じになるのかが分かるだけではなく、夏至の頃にはどうして北欧が白夜になり、冬至の頃は太陽が昇らないのかも分かる。

日本語訳は追って掲載するとして、ひとまずは動画だけでもご覧下さい。
クリック ("Nästa"をクリックして次に進もう)
http://www.dn.se/DNet/jsp/polopoly.jsp?d=149&a=392489&previousRenderType=3

不具合発生!!しばらくお待ち下さい!!

隠れた春の息吹

2005-03-19 09:50:03 | コラム
1月から春分までのこの季節は毎年、不思議な気分になる。というのも・・・、

日の長さは日一日と長くなって明るくなっていくのに、気温はそれに反してどんどん下がっていく。 雪の量も1月・2月が一番多い。 雪が地面を覆い、それを太陽が照らすから、日の長さに加えて、さらに世の中が明るくなっていく気がする。太陽が照らし青空が広がっているから、暖かそうだと思って油断して外に出ると、実は零下15℃だったなんてこともこの時期はよくある。

まるで、二つの相反する力がぶつかり合って均衡状態が続いているようだ。1月・2月の本格的な寒波の裏側の見えないところで、春の準備がちゃくちゃくと進められているのだ。そして、3月になってその均衡がふと崩れたとき、突然、春が始まる。それも、萌える春。燃える緑。まさに緑が爆発する春だ。

そんな春ももう一週間もしないうちにやってくるのだろう。

Aiさん提供:ヨンショーピンのStora Hotell前の運河
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路上の雪ももうだいぶん溶けたので、今日からジョギングを再開。毎日、動き回ることが多いので、歩いたり自転車に乗ったりしているだけでも、よい運動になるのだが、30分なら30分、集中して走れば、ストレス発散にもなるのだ。

今朝は早起きして、気合いを入れてジョギングに出かけるも、輝く朝日と真っ青な青空とは裏腹に、額が凍りつき、手もカチンカチンになる。これは油断!

除雪車

2005-03-18 07:58:37 | コラム
今年の冬は例年になく長引き、3月の半ばになっても寒い日が続いた。スウェーデンでは湿気が少ないために、寒さから想像できるほどたくさんの雪が降るわけではないのだが、今年の冬はスウェーデン南部に湿気を多く含んだ気流が流れ込み、南部を中心に大雪となった。

でも今、ついに春が目の前まで来ているようだ。日曜日に一時、雪がふるものの、来週のイースター休日にかけて晴れた日が続き、気温が上昇して、本格的な春の到来となるようだ。

スウェーデンでは空気が乾燥していると書いたものの、雪がふるときはそれなりに積もる。そのための除雪作業もいろいろと考えられている。雪が積もり始めると、つかさず除雪車がどこからともなく登場し、雪かきを始める。

京都での大学時代を思い出す。正門前の東一条通に各サークルや団体活動の立て看板が並ぶ。たまに規定以外の場所に立てかけたりする学生がいると、すかさず大学職員が出てきて、撤去してしまう。いつの間にか立て看板が消えてしまう素早さへの驚きと、撤去された学生のいらだちから、いろんな皮肉が聞かれたものだ。「手抜きをした立て看板を作っただけでも“小人さん”が登場して撤去していってしまう」なんて。

ともあれ、雪が積もり始めると、つかさず登場する除雪車を見かけるたびに、そんなことを思い出す。

除雪車にもいろんな種類がある。自動車道には大型車がサクサクと雪を取り除いてしまう。細い車道では、中型のショベルカー、そして歩道では手の付いたトラクターがチコマカ・チコマカと縦横無尽に走り巡っている。車道でも歩道でも、除雪車の後部に塩と砂利が積まれていて、前部で除雪した後に撒かれる仕組みになっている。


小型:後部から砂利と塩を撒く


中型:これで小道もサクサク


大型:これで広い車道も一気に雪かき

ふと思うのだが、もしかして冬の間、耕作ができない農家の人が、市にトラクターを貸し出しているのだろうか・・・? もし本当だったら、とっても効率がいいのだが・・・。

滑り止めのための砂利は、ほんとうにありがたい。氷で道がツルツルになっていても砂利があれば、滑ることがない。しかし逆に困る問題は、雪が解けた後は、道路も歩道も砂利だらけになってしまうことだ。これはどうしようもない。管理している市は春の到来を待って、一気に砂利をかき集める。よく考えられたもので、この時も自動的に路上の砂利をかき集めてくれるトラックが存在する。しかし、たまに気が早すぎて、砂利を撤去した後に、もう一度大雪が降り、砂利を撒くので、また同じことをする羽目になる春もたまにあるが・・・。

童話作家 Astrid Lindgren

2005-03-16 03:28:05 | コラム

世界的に有名だったスウェーデンの童話作家Astrid Lindgren(アストリード・リンドグレーン)が2002年に90歳代の高齢でこの世を去った。彼女の作品は日本でも翻訳出版されているので、名前を聞いたことがある人も多いかもしれない。例えば、「ロンネベリヤ村のエーミル」や「長くつ下のピッピ」などだ。恥ずかしながら私は、長い間“長靴の下の”つまり“長靴の底のピッピ”という意味かと思っていたが、後になって“長い・靴下のピッピ”のことだと分かった。(たぶん、長靴を履いた猫、からの連想)

彼女の童話は分かりやすく、ついでにスウェーデンの文化もちょっと囓れるので、スウェーデン語を習い始めの頃にいくつか読んだことがある。「山賊の娘ローニャ(Ronja Rövardotter)」が個人的には好きだ。

彼女を記念して、世界中の優れた童話作家を表彰する「リンドグレーン童話文学賞」が3年前に作られた。そして、今年第三回の受賞者が今日発表された。選ばれたのは、英国人作家と日本人作家、荒井良二氏だ。5月25日にストックホルムで授賞式が行われ、ビクトリア王女からそれぞれ250万Kr(約3700万円)が贈られるという。

毎日新聞の記事

スウェーデンの地方紙 と ヨンショーピン新聞

2005-03-14 07:06:08 | コラム


スウェーデンは国の大きさのわりに、地方紙の種類が多い。国全体で人口が900万人。ストックホルム首都圏には179万人(ストックホルム市は76万人)、ヨーテボリ都市圏が85万人(ヨーテボリ市は49万人)、マルメ都市圏が53万人(マルメ市は27万人)、四番目に大きい都市ともなるとウプサラ市:人口18万人までに小さくなる。

日本の感覚からいくと、ウプサラ市以降は日本の地方としにも及ばない、田舎町ということになろうか。それだけ町々の規模が小さく、散らばって住んでいる。それだけ人々が散在して住んでいれば、地域ごとの新聞も必要になってくるわけだが、それと同時に、一つ一つの新聞の規模(発行部数)が小さいものとなるならば、商業ベースでは採算がとれなくなると問題が起こる。

このため、スウェーデン政府は毎年、多額の補助金を各地方紙の運営につぎ込む。いくら小さな地域でも、地方紙が存在し、住民が地域社会の出来事に接し、日々の生活について議論できる場(フォーラム)があることは、地域レベルの民主主義の活性化につながるという考えからだ。発行部数を見ると、朝刊紙では最大のDagens Nyheter(全国紙)の36万部(推定読者数91万人)、第二のGöteborg-posten(ヨーテボリ地方紙)25万部(同58万人)から始まり、小さな地方紙にいたると発行部数2000部(同7000人)という小さなものも存在する。

ちょっと余談になるが、スウェーデンというと高福祉高負担で、経済全体における公的部門の割合が相当大きい(60%?)こと、さらに非利益団体(NPO)が映画館や体育ジムなどを運営して経済活動に関与している割合が高いことが有名だが、それは一つには国の規模が小さく、さらに一つ一つの地域の規模が小さいために、福祉部門にしても娯楽部門にしても利益追求の企業では採算がとれずに、経営がやっていけない、という根本的問題もあるのだと思う。(これは私は確証があるわけではないが)

さてさて、そのような政府からの補助金によっても、結局は経営がやっていけず、廃刊になる地方紙が出たり、周辺の地方紙と合併する新聞も過去10~20年ほどの間にあったようだ。それでも、週に3回以上発行している朝刊紙を数えると、未だに148紙もあるというのは驚きに値する。政府の基本的な方針としては、各地域に少なくとも2紙の新聞を存在させて、競合させることなのだ。そうすることで、地域レベルでの議論を活発化させて、民主主義の成熟を保とうというのだ。結果として、多くの地域で、例えば社民党系の左派の朝刊紙と経済リベラル、もしくは保守系の右派の新聞が競合しているという状態が見られるのは面白い。私が住むヨンショーピンはちょっと例外で「ヨンショーピングス・ポステン(Jönköpings-Posten)」の独占市場だ(色は一応、独立系)。

私自身は全国紙のDagens Nyheter(自称、独立系リベラル)の朝刊を講読しているため、あまり地方紙のJönköpings-Postenに目を通すことはないのだが、たまに大学の図書館で読んでみると、面白い記事が見つかることもある。全国のニュースや世界のニュースも一応あるが、半分以上は地域のニュースが多い。

他人の庭にいつも家庭ゴミを捨てる人がいて困るので、堪りかねて、ゴミの中身を見てみたら、中から宛名の書かれた封筒が出てきて、それで張本人が分かったとか、そんな身近なほのぼの(?)とした事件も読める。

今日、私が図書館で爆笑してしまった地域ニュースはこれ。

「ヨンショーピン市郊外のNorrahammar(Råslättのさらに南)に住むある女性が、自宅の窓越しに外を眺めていると、バス停付近にいた若い女性に一台の車が通りがかった。突然、覆面とした数人が車から飛び出し、その女性をテープでぐるぐる巻きにして、車に押し込み、逃げ去ってしまった。
一部始終を見ていたこの女性はすぐさま警察に211番通報。県警は3台のパトカーを現場に急行、すぐさま捜査を開始した。検問が張られ、あたりは騒然とした。
しかし、しばらくして誘拐された女性が、ある誕生日パーティーにいることが分かった。実は、この彼女はこの日、18歳の誕生日で、彼女の友人が“ビックリ”パーティーを企んでいたのだった。この“誘拐”のあとに彼女は誕生パーティー会場に“連行”され、それでドッキリ、というわけだ。
ヨンショーピン県警は“今後このような誕生日パーティーを計画する場合には、事前に警察に連絡するように”と、住民に呼びかけている。」


ということですので、平和なヨンショーピンにお住まいのみなさま、気をつけましょう。


P.S. っていうか、これヤバくないですか? 本物の強盗があらかじめ県警に「今度××を誘拐するけど、これはホンの冗談だから、通報があっても来なくていいよ」って伝えておけば、本当に住民から通報があったときに警察は「ああ、あそこで“オオカミが来た~”って叫んでいる人がいるけど、そのオオカミは無害だからほっとけば大丈夫さ」ってことになりませんか?
どうよ、ヨンショーピン県警?!

「EUROVISION SONG CONTEST」 (中)

2005-03-13 06:18:30 | コラム
前に書いたように、Melidifestivalenに出場するアーティストはそれほどレベルが高くない。えっ、何でこんな曲が? って、スウェーデン人の感性を疑いたくなるような曲も登場する。それでも、面白いことに、予選で披露された曲がラジオで流されるようになり、ふだん何気なく耳にする機会が多くなってくると、だんだんと耳に馴染んできて、あっれ、この曲、実は結構いいじゃない、という錯覚に陥ってくるのだ。(スウェーデン人の友人にこれを話したら、彼らも同じ経験を毎年すると言う声が何人かから返ってきた)例に漏れず今年もそうだ。最近ラジオでよく流れる「Refrain, Refrain」という曲は予選落ちをしたのに、今じゃ何故かヒットリストに名を連ねている。我々の耳も当てになったもんじゃない!

とまあ、曲は二流だけれど、曲だけがMelodifestivalenのすべてではない。アメリカ映画の祭典Oscarが単に映画の表彰式であるだけではなく、衣装やモードを披露する場所でもある。Melodifestivalenでも各アーティストが様々な派手な衣装を駆使して舞台に立つ。こういう意味でも、国民にとっての位置づけとしては日本の「紅白歌合戦」に近いと思う。



昨日の決勝で優勝者が決まり、男性歌手Martin Stenmarckが全ヨーロッパの大会“Eurovision Contest”へスウェーデン代表として出場することが決まった。毎年、前年の優勝国がホスト国となり大会をアレンジするので、今年の全ヨーロッパ大会は昨年の優勝国ウクライナの首都キエフで5月の終わりに行われる。(以前のブログ →クリック

それぞれの国から国内大会を勝ち抜いてきた代表が一堂に会し、今年は史上最多の40カ国が参加する。40カ国にもなると、一晩ですべての曲を披露することができなくなるので、昨年の大会であまり成績がよくなかった国は前予選を通過しなければ、本大会に進めない。

本大会は全ヨーロッパに生中継される。そして、各国内で電話投票が行われ、それをもとに各国での人気順位が決まっていく。そして、それを全ヨーロッパで集計することで、ヨーロッパ全体での順位を決めていくのだ。規模がでっかい! 投票におけるミソは、自分の国の代表には投票できないこと。だから、スウェーデンに住む人はスウェーデン代表には投票できない。

さて、ヨーロッパの本大会Eurovision Contestだが、各国を代表するアーティスト達もそれほど、そーれほど、レベルが高いわけではない。しかも、ヨーロッパといっても広い。文化も違えば、好みも異なってくる。だから、ある国で国民の一番人気を獲得した曲が、他の国の人には大したことないどころか、とんでもない駄作!ということもよくあるのだ。

(・・・続く)

イラク系スウェーデン人の誘拐・その後

2005-03-12 08:27:46 | コラム
今晩のテレビは2つの見もの。



まず一つは「メロディー・フェスティバレン(Melodifestivalen)」の決勝戦がストックホルムで行われた。これまでに予選が4回あり、それぞれの予選から2組が、そして敗者復活で選ばれた2組が、計10組が優勝を勝ち取るべく歌を披露した。(大会については、以前のブログをどうぞ →クリック

今晩の開会前から勝ち馬とされた女性歌手と、それほど注目を集めていなかった男性歌手の大接戦となったが、スウェーデンNo.1を勝ち取ったのは、男性歌手のほう。ちょっとした大穴だった。わずか3ポイント差の接戦。私はもう一方のほうを応援していたので、ちょっと残念。男性歌手の曲は典型的ポップ。もちろん新曲だが、絶対にどこかで聞いたことのあるような曲。聞いてもすぐに忘れてしまいそう。それに対し、女性歌手のほうは、力強い曲で、これぞスウェーデンというような曲。

投票方法は、視聴者による電話投票だが、今日の決勝では150万票が集まったという。この電話投票が半分と、残りの半分をテレビ局が各地方ごとに任命する「陪審員」の投票によって、結果が決まる。接戦となったわけは、視聴者側が女性歌手を一番に選び、陪審員側が男性歌手を一番に投票するというように、好みが食い違ってしまったためだった。この「メロディー・フェスティバレン」についてはまた明日改めて書きますね。



今晩のもう一つの見ものは、映画「ノーマンズ・ランド」だ。旧ユーゴ・ボスニアの内戦を風刺的に描いたボスニア製(2001年)の映画だ。前線の真っ直中の塹壕で出くわしてしまう敵同士の兵士。お互いを一人の人間として見始め、殺し合うこともできなくなってしまう。そしてドラマが始まる。戦争の愚かさを描くと同時に、泥沼化する戦争を前に何も積極的なことをせずに、しかも、やる気もないのに世界平和のためと言って、大きなことをしているかのフリをしていた国際社会、特に国連を風刺しているのが面白い。

至る所に風刺やジョークが散りばめられている。ある一場面、ドイツの国連兵士が地雷を除去しようとする場面。フランスの国連兵士が陰で眺めながら、フランス語でつぶやく。「地雷除去部隊なんて、なんてひどい職業だ! 一度でも失敗すればそれでおしまいだ。」それに対して、もう一人のフランス兵士がこう答える。「いや、一度でなくて二度だ。最初の失敗は、彼が地雷除去の仕事を選んだことだ・・・。」

この映画のさらに興味深いところは、セルビア系ボスニア人の人気俳優が、イスラム系ボスニア兵士を演じているところだ。内戦中はこの二つの勢力が主に争っていたのだが・・・。

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以前にイラクで誘拐されたイラク系スウェーデン人のことを書いたが、今日は午前11時にヨンショーピン市の市庁舎前で小規模の集会があった。誘拐されたのはフセイン政権崩壊後にイラクに戻って、イラク・キリスト教民主党を立ち上げて、総選挙に際して政治活動を行っていた、イラク系スウェーデン人の男性だ。(以前のブログ →クリック

ヨンショーピンに住む5人の子供含む家族や親類が今日の集会を主催し、スウェーデンのキリスト民主党党首も駆けつけて、誘拐された男性への支援を表明した。それと同時に、スウェーデンの外務省や警察の活動に対する苛立ちもあらわにした。

息子が伝えるところによると、現在イラクのキリスト教民主党と誘拐グループが身代金の額を巡って交渉している模様。犯人は、身代金目的の誘拐グループのようで、身代金の値下げを示唆しているらしい。

スウェーデン警察庁も現地に捜査員を派遣していると伝えられるが、こちらの側からの捜査活動の進捗状況は一向に明らかにならない。今日は、さらにスウェーデン在住のイスラム教徒の全国組織が、報道機関アルジャジーラを通じて、犯人側に解放を求めるメッセージを送った。

イスラム教団体がキリスト教徒を支援している。本国イラクでもこれを見習って欲しいところだ。

路面電車の走る町

2005-03-10 20:29:03 | コラム


趣があって快適な町は? と聞かれれば、私は、路面電車の走る町、と答えるだろう。スウェーデンでもかつては多くの町で路面電車が走っていたが、市内バスの普及と共に姿を消してしまった。現在でも残っている町といえば、ヨーテボリ(Göteborg)とノルショーピン(Norrköping)くらいだろうか。ストックホルムには、たしか1路線残っているが、週末や夏に観光客向けに走らせているだけだと思う。

路面電車が走る町は趣がある。バスがゴーッと縦横無尽に走る町と比べて、比較的静かでいて、町に動きがある。静かでいて、早く移動ができる。路面電車は「活気のある静かな町」を作りだしている。

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これまで、ヨンショーピンとヨーテボリ間の国鉄の定期券を毎月買っていたが、県営交通の定期券を買えば、さらに安く通勤ができることを知った。スウェーデンの地方鉄道路線はちょっと複雑で、国鉄(SJ)と県営交通が相互に乗り入れをしている。国鉄が運行する電車もあれば、県営交通が運行する電車もある。私が通勤する区間は、どちらの切符でも乗車することができる。

ヨンショーピン-ヨーテボリ間は2県にまたがっているので、その2つの県営交通の定期をそれぞれで買っても通勤できるのだ。しかも値段は国鉄の定期の7割で、しかも、電車だけでなくてバスや路面電車などの市内交通にも、乗れるのだ。

というわけで、今週から新しい通勤生活が始まりました。これまで、国鉄の定期では乗れなかった路面電車にも、乗り始める。これはかなり快適。朝8時半、ヨーテボリ中央駅前はちょうど通勤ラッシュだ。各方面から電車でやってくる人が、路面電車やバスに乗り換えていく。走る人、早歩きの人。駅前には、各方面行きの路面電車がひっきりなしに走り込んでくる。私も大学行きの電車に乗り込む。気分は都会人。

といっても、東京や大阪とは比べものにならないほど、落ち着いてはいるが。これで、これからは行動範囲がさらに広がる!

「ライブ! スウェーデンの中学校」(本の紹介)

2005-03-08 07:50:48 | コラム
先週金曜日はウプサラから夜行便でヨンショーピンに戻り、ほとんどその勢いで地元ヨンショーピン市立のサンダ高校 (Sanda-gymnasiet) の生徒会執行部の総会を見学。なんでまた、高校の生徒会活動かというと、昨年の秋にNHK放送大学の取材班の方々が「スウェーデンにおける学校民主主義の教育と実践」というテーマで千葉大学の先生と取材をしたときにスウェーデン語の通訳としてお手伝いをしたのが、きっかけだった。

ここの国の大学生と話をすると、ちゃんと考えているんだな、とか、分からなくても限られた知識を用いてちゃんと自分の言葉で話しているな、考えが正しい・間違っていると恐れることなく自信を持っているな、と感じることがこれまでよくあった。新聞を読んでいても、テレビやラジオを見聞きしていても、事実の伝達だけではなく、それに対する分析だとか、議論が盛んに行われていることに気づく。メディアでの活発な議論や分析が、人々の日常に何らかの貢献をしているのは間違いない。(もちろん一般的に、という話であって、こういう典型例に当てはまならない人もいる。僕がいいたいのは、一般的にそういう傾向が強いということ、自分のこれまでの経験からそう感じることが頻繁にあるということ)。

話をここであえて大きく飛躍させれば、こういった、自分の意見の表明が自信を持ってできる、分析的で批判的な議論をすることができる、という能力が、この国の民主主義の成熟に大きく貢献しているのではないかと思うのだ。

大学生の例を挙げたが、大学生になったとたんにこういう能力が身に付くというわけでは、もちろんなく、義務教育や高校教育の段階で長い時間をかけて自然に訓練を受けてきた結果なのではないかと思う。すると、次の疑問は、さて小・中・高校で彼らはどのような教育を受けているのか? 当然ながら、この質問は漠然としている。それにスウェーデン人にとってはそのやり方がごく当たり前になっていれば「スウェーデンではどうやっているんですか?」と聞いたところで、質問された側も何を答えたらよいのか分からないだろうから、意味のある答えを導き出すのは、難しいだろう。

ともかく、そんな疑問をずっと持ち続けて、昨秋の通訳を機にその高校の教頭先生と親しくなって、たまに高校を見学させてもらうことがある。しかし、僕の側にこの大問題を解明する能力と、割ける時間もないことがあって、まとまったことが書ける程には進んでいない。

ともあれ、生徒会執行部の総会は執行部員と数人の学級役員の内輪的な会ではあったが、自信を持ってモノを喋る彼らには感心させられた。

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ウプサラに30年以上住む日本人の方と、ウプサラ日本人会を通じて2年前にお会いした。口を開くと、今でもすぐに関西弁が飛び出す、根っからの関西人だ。阪神タイガースが優勝をしたときには、ウプサラでも「六甲おろし」を歌ったほどだ。

その方は、スウェーデンで教員免許を取り1981年からスウェーデンの一般の基礎教育後期(中学相当)で教壇に立っている。その方が最近、1年ほど休職をして本を執筆された。スウェーデンでの教員生活の体験談をまとめたのだそうだ。そして、今回その御本を著者割引で本人から買うことができた。


ライブ! スウェーデンの中学校
-日本人教師ならではの現場リポート -


世界最大の職場である学校という特殊な社会の中で、毎日、何が起こっているのかを知ることは容易なことではありません。しかも、それが外国の中学校となればなおさらです。この本は20年以上にわたってスウェーデンの公立中学校の教壇に立ち、生徒達や同僚達との交流、学校行事などにおけるエピソードを、ちょっとユニークな経験をもっている日本人の私が写真などを散りばめながら彼らのありのままの姿を綴ったものです。
いまや多国籍・多文化国であるスウェーデンでは、海外での出来事も国内ニュースのような早さで生徒や家族に影響を及ぼしています。思春期に入り、精神的に不安定な青少年達の悩みやトラブルに対して、また大人の世界への興味からタバコ、アルコール、麻薬をする生徒達が出てくるこの時期に、この国の学校や社会は一体どうしているのか、また現在の学習指導要領では何が重要視され、そのために何を行っているのかを本書で探っていただければ幸いです。」(帯より)

出版社は北欧関係の本をよく出版する「新評論」。本人曰く、最初は私本的な書き方で自費出版でも、というつもりだったのだそうだが、出版社がつき、大々的な刊行となったのだそうだ。帯の言葉、“海外での出来事も国内ニュースのような早さで伝わってくる”というのは、僕もまさに実感するところ。

さぁ、これから読んで報告を書きますね。


P.S. 今日、高校時代の友人から教員試験合格の知らせを耳にしました。おめでとう。努力の結果だね。