スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

飛べないSterling Airlines

2008-10-30 06:19:26 | コラム
デンマークの格安航空会社Sterling Airlinesが、破産を申請。ヨーロッパ各地を結ぶすべての便が今朝から欠航することになった。

この航空会社は、主にデンマークのコペンハーゲンを中心にヨーロッパの大都市やリゾート地などを結んでいるが、スウェーデン国内では、ストックホルム-コペンハーゲンの他、ストックホルム-ヨーテボリストックホルム-マルメといった国内主要都市間の便も持っている。

Sterling Airlinesはデンマークを中心に従業員1100人を抱える。ここしばらく収益性が悪く、リストラなどの措置が取られたものの、経営状況が改善しなかったという。そこに、燃料代の高騰がさらに拍車を掛けた。今年初めにアイスランドの投資家に買収され、多額の資本を投入することが約束されていたはずだったのに、今の金融危機のおかげでアイスランドは経済全体が火の車。約束された資本も滞ってしまった。なので、金融危機の余波を受けての倒産ともいえる。

被害を受けた客はヨーロッパ全体で3万人から4万人といわれている。会社が破産したため、航空券の払い戻しはなし。また代替便も用意されることはなく、別の航空会社の便を新たに買わなければならなくなる。特に被害を受けるのは、すでに旅行先に飛んでしまった人。自分で自腹を切って、自宅に戻らなければならない。

しかし、彼らにとって朗報なのは、SAS(スカンジナヴィア航空)Malmö AviationNorwegianなどの航空会社や、チャーター便を飛ばしている旅行代理店などが、今や紙切れ同然となったSterling Airlinesの航空券を手にし途方にくれている人々に、自分たちの便の余った席を提供していることだ。


ラジオのニュースを聞いていたら、スウェーデンのある男性は、年末年始を国外で過ごそうと、何と昨日の23時にネット上で航空券を買ったばかりだったという! 「今朝のニュースで倒産したと聞いた時、たちの悪いジョークかととっさに思った。」

彼にとって救いなのは、支払いを銀行のクレジットカードで行った場合、各銀行はSterling Airlinesへのお金の送金を差し止めてくれるだろうから、もしお金がまだ銀行の手元にある場合は、払い戻しを請求できる可能性が高いということだ。

また、旅行代理店の販売しているパッケージ旅行の一部としてSterling Airlinesの航空券を買った場合は、旅行代理店が責任を持って別の交通手段を確保することが消費者保護法で規定されているようなので、これらの客も安心できそうだ。

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そういえば、スウェーデンでも一年半前に、同様の格安航空会社Fly meが倒産したのも記憶に新しい。

2銀行の流動性確保と、クローナの続落

2008-10-27 07:17:19 | スウェーデン・その他の経済
週明けの今日、スウェーデンの金融市場ではちょっとしたニュースが2つあった。

スウェーデンの大手銀行であるSwedbank(スウェードバンク)が、新株発行によって120億クローナに及ぶ資金を調達すると発表した。

またスウェーデン中央銀行は、投資銀行の一つであるCarnegie Investment Bank(カネーギー投資銀行)に対し、10億クローナの特別融資を行うと発表したのだ。

この2つの金融機関とも、資金の流動性が低下して資金繰りに苦労し、バランスシートが不釣合いになる状況に陥っている。そのため、新株発行および中央銀行による特別融資という形で、流動性の確保を行ったのである。

しかし、今のところ問題なのは、短期的な資金繰りだけであって、長期的に見た銀行の資産構造は磐石だ、と言われている。ラジオや新聞で紹介されている専門家のコメントを見ても、この2つの銀行が近いうちに破綻するというような懸念は見られない。

カネーギー投資銀行に特別融資を決定したスウェーデン中央銀行の記者発表では、

Riksbanken bedömer att Carnegie Investment Bank AB (publ) är solid. Finansinspektionen har gjort samma bedömning. Riksbanken grundar sitt beslut på en bedömning att banken har tillfälliga likviditetsproblem, men att dess solvens inte är hotad. Lånet lämnas mot säkerhet och ges tills vidare.
(スウェーデン中央銀行は、カネーギー投資銀行の財務状況が磐石である、と判断している。金融監督庁も同様の判断を下している。中央銀行は、カネーギー投資銀行が一時的な流動性問題を抱えているだけで、支払い能力には問題がないという認識のもとで、特別融資を行う決定を下した。この特別融資は担保を確保した上で提供される。期限は設けないものとする。)

と、あくまで一時的な問題を抱えているだけ、という点を強調している。(つまり、もしかなりヤバイ状況であったのなら、そもそも特別融資なんかしないよ、ということ。)

また、Swedbank(スウェードバンク)も先週発表された2008年上半期の業績をみると、予想を大きく上回っていた。一方で、リーマンブラザーズの社債の焦げ付きで大きな打撃を受けた上、バルト三国での融資分の不良化が懸念されるため、市場での資金繰りに苦労しているようだ。それに加え、貸し出しに対する自己資本比率も低いと、経営陣自ら認めている。そのため、自己資本の確保のための新株発行でもあるようだ。

ただし、市場を安心させるための弁明である可能性もあるので、これからどうなるのか、様子を見守りたい。
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それにしても、スウェーデン・クローナが続落している。

それぞれの通貨がスウェーデン・クローナに対してどれだけ
高いか・安いかを、2008年9月初めの水準を1として、それ
以降の推移を示している


クローナが安くなっている背景には、いくつかの理由が考えられる。一つは、少し前に紹介したように、(1) 世界的な金融危機の中で、世界中の投資家がリスクを抑えるために投資先を変えるという、調整過程にあるためというものである。この点に関しては、異論を挟む者はいないようだ。

その次は、(2) 金融システムの破綻が懸念されるためというもの。アイスランドの通貨が9月の終わりに極端に減価したのは、まさにこの理由によるものだろう。また、スウェーデンのクローナが今日、大きく減価したのも、上に挙げた2銀行の流動性問題が少しは影響したと見られる。ただし、何度も書いてきたように、スウェーデンの金融機関は他の欧米諸国と比べてもまだ安全だと見られているので、果たしてこの点がここ数週間のクローナ安の主な原因であるかは、専門家によって見方が異なるところである。

もう一つ挙げられる理由は、(3) 実体経済の悪化が懸念されるためというもの。スウェーデンでは自動車産業を中心に、経済が大きく冷え込み始めている。しかし、不景気に突入しているのは何もスウェーデンに限ったことではないので、この説明も今のところは妥当しない、という見方が強い。


現在、日本を襲っている極端な円高は、(1)だけが主な原因だと見られる。つまり、リスクの観点から投資家が投資先を調整しているだけで、実体経済を反映しているものではないと思う。

相次ぐ大幅利下げ

2008-10-24 07:08:14 | スウェーデン・その他の経済
<前回に引き続き、今回も外出先から携帯電話を使って書き込んでいます。頂いたコメントに対する反応が滞っていますが、お許しください。>


経済統計に関するカンファレンス。参加者は40名程と、こじんまりしたカンファレンスなので、参加者の一人である私も大勢に埋もれることなく、統計局の職員やスウェーデンの行政機関の職員と食事やコーヒー休憩のたびに情報交換ができるのが嬉しい。昨日の夜は会場のホテルでディナーパーティーがあった。

さて、2日目。スウェーデン中央銀行の副総裁Svante Öbergを交えたパネルディスカッションが午後から開かれた。その始まりに、彼がパワーポイントを使った簡単なプレゼンテーションをしたのだけれど、ここで彼は大きなニュースを発表した。「スウェーデン中央銀行は今日、政策金利を0.50%引き下げて、3.75%とする決定を下した。」

このニュースはその数時間前に一般に公表されていたのだけど、カンファレンスの参加者はほとんど知らなかったようだ。お互い顔を見合わせながら、「ホント?」って確認し合っていた。

そう。ある意味、驚きのニュースである。つい2週間前に、スウェーデンは欧米6カ国と一緒に、0.50%の協調利下げを行ったばかりだった。世界的な金融危機とそれに続く不況を受けて、今日の中央銀行の定例会合では利下げの可能性があると見られてはいたけれど、せいぜい0.25%だろう、と思われていた。一方で、インフレ率はいまだに高い水準にあるので、インフレターゲットを金融政策目標とするスウェーデン中央銀行としては、次の定例会合まで利下げを見送るのではないか、とも見られていた。(今日の朝刊では、大体そのような見方が大勢だった。)

そのような期待を覆すかのように、一気に0.50%も利下げがされたのだ。今の不況がそれだけ深刻だという証拠であるとともに、中央銀行として金融政策を最大限に使った素早い対策を打ち出すことで、落ち込みを少しでも和らげようとする積極的な意思の表れとも受け取れる。

9月初めに物議を醸した利上げ(0.25%幅)によって、政策金利が4.75%に設定されてから、わずか1ヵ月半の間に1%も引き下げられる結果となった。

<以前の書き込み>
2008-09-09:景気後退局面での公定歩合の引き上げ
2008-09-11:景気後退局面での公定歩合の引き上げ(2)
2008-10-09:国際的金融危機の中でのスウェーデンの現状

利下げは、自国通貨の為替レートを引き下げる。今日の利下げによって、スウェーデン・クローナはさらに弱くなるだろう。ただし、果たしてどこまで悲観的になるべきか疑問だ。輸入品や国外旅行が高くなる一方で、輸出品は外国で安くなり国際競争力が増すので、製造業を中心とした輸出産業にとっては救いになるだろう。

Saltsjobaden(サルトシォーバーデン)へ

2008-10-23 07:38:27 | Yoshiの生活 (mitt liv)
今週は経済統計に関するカンファレンスのため、ストックホルムへ。
会場は、郊外にあるSaltsjöbadenという所。
労働市場における労使間の交渉ルールを定めた歴史的な協定が1938年に結ばれた場所だ。

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毎年開かれているこのカンファレンスには、去年も出席した。そのとき、昼食の席でたまたま隣に座ったのは、スウェーデン中央統計局の上級の職員だった。アメリカで開かれた別のカンファレンスにその前の週に出席したばかりだという。住宅金融のサブプライム問題がちょうど顕著になっていた頃だった。

「アメリカのサブプライムの問題は、世界を騒がせ始めているが、これからどうなると思うか?」と尋ねてみると、この職員は「問題ないよ。問題のある債権は、切り離されて市場で売却され、売却した金融機関は健全になっている。いくらリスクの高い債権でも、市場ではそれに応じた価格が付けられて、買ってくれる買い手がちゃんといる。市場ではすべてのものに価格が付けられるから。」と答えていた。

私はそのときは対して興味がなかったので、あまり突っ込んだ質問はしなかったけれど、あれから1年の間に何が起こったかを知っている今から思えば、こう突っ込んでみればよかったと思う。

「でも、そうやって市場で転がしていくだけで、果たして問題が解決するのか。最後にジョーカーを手元に残した奴はどんな目に合うんだろうね?」

この女性職員と話をする機会があれば、あのときの会話を思い出させてあげたいな。

急激な円高・クローナ安の謎!?

2008-10-20 07:51:51 | スウェーデン・その他の経済
スウェーデンの通貨であるクローナがここ数週間で急落している。

例えば、対日本円で見てみよう。
下のグラフは、1クローナ=??円というレートの、今年の初めから先週までの推移を示したグラフだが、これまで安定的に(若干、円安ぎみに)推移してきたレートが、10週間くらい前から急激に円高傾向に推移している。


実はクローナの為替相場の下落は、に対してだけでなく、ドルに対しても、ユーロに対しても言える。

ということは、スウェーデンの経済が何か大きな構造的問題を抱えており、例えばアイスランド経済のようになりかねない、ということ?

幸い、真相はそうではない。

国際的な金融危機を受けて、世界の金融市場が大きく変動している中、これまで世界各国の国債や社債、株式など様々な金融資産に投資してきた人々が、リスクを減らすために、なるべく安定的で“大きな市場”で取引される資産に投資先を変更しているためのようだ。

世界経済が安定的に推移している間は、世界中の様々な資産に投資を分けることがリスクの分散につながる。しかし、嵐が吹いている間は、小さな国の市場は「波」に弱く、資産価格が乱高下を繰り返しかねない。投資による収益も大きく上下し、ポートフォリオのボラティリティー(volatility)が高まることになる。こういうときは、小さな「船」に乗っているよりも大きな「船」に乗り替えたほうが、リスクを最小限に抑えることができる。そこで投資家は、これまでスウェーデンのような比較的小さな経済の資産(国債・社債・株式等)に投資をしていた部分を、アメリカや日本、ユーロ圏など、大きな経済の資産に移しているのである。その結果として、スウェーデン・クローナが売られ、ドルや円、ユーロなどの通貨が盛んに買われている

もちろん、現在の金融危機で大きな打撃を受けているのはアメリカであるから、アメリカ経済もいくら規模が大きいとはいえ、リスクが伴う。同様に、アメリカの金融危機の余波を大きく受けているヨーロッパ経済も、独・仏・英を初めとして銀行救済が大規模になされるなど、先行きが不透明だ。だから、規模が大きいヨーロッパ経済にもリスクが伴う。

その結果として、ドル・円・ユーロなどの「大きな通貨」の中でも日本円に人気が集中している、と言えるのだと思う。そのために、日本円はドルに対してもユーロに対しても急激に強くなっているようなのだ。

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下のグラフは、5つの通貨対スウェーデン・クローナの為替レートの推移を示したものだ。上に示した日本円のグラフとは逆で、下のグラフはそれぞれの通貨がスウェーデン・クローナに対してどれだけ高いか・安いかを、2008年の年初めの水準を1として、それ以降の推移を示している。そのため、1を上回っていれば、その通貨がスウェーデン・クローナに対して強くなっていることを示し、1を下回っていれば、逆に弱くなっていることを示している。


これを見れば分かるように、円・ドル・ユーロはともにスウェーデン・クローナに対して強くなっているのが分かる。(ユーロはDKK(デンマーク・クローナ)に隠れている。) なかでも、日本円がずば抜けて強くなっている

一方、NOK(ノルウェー・クローナ)は、スウェーデン・クローナに対して弱くなっているのがわかる。ノルウェーは、スウェーデンよりもさらに小さい国。だから、為替レートもスウェーデンよりさらに大きな影響を受けているのだろう。(原油に対する需要の減退、という要因もあると思う)

では、スウェーデンよりも小さいデンマークのDKKが、なぜユーロと一緒に強くなっているのか? 答えは簡単。デンマークの金融政策目標は、ユーロとの為替相場を一定に保つことであるため、為替レートを政策的にユーロに追随させているのだろう。

(それに対し、スウェーデンの金融政策目標は、インフレ・ターゲット(2%±1%)

いずれにしろ、短期的な変動に過ぎないかなと思う。(それとも、私の根拠のない勝手な期待?)

影に隠れてしまった環境政策

2008-10-17 09:14:25 | スウェーデン・その他の環境政策
世界的な金融危機の影響がこんな所にも出てきた。

今年春に、EU温暖化対策として2020年までに達成すべき目標と行動計画を打ち出していた。EU全体として2020年までに温暖化ガスの排出量を1990年比で20%削減すると同時に、使用エネルギー全体に対する再生可能なエネルギー(水力・太陽・風力・バイオ)の割合を20%にまで引き上げる、といった目標が盛り込まれていた。そして、今年12月のEU首脳会議で正式に採択されることになっていた。

<以前の書き込み>
20、20、20・・・ 。EUの新しい温暖化対策(2008-01-26)


しかし、金融危機のために、これを見直すべきではないか?という声がEUの一部の加盟国から上がっているのだ。金融危機に対しては協調した緊急対策を打ち出すことができたEU諸国だったのに、温暖化対策の話になると、途端に足並みが崩れ始めている。

見直すべきだという主張をしているのは、イタリアや、ポーランド、そしてその他の東欧諸国など7カ国。EUの目標を達成するために自国に課せられた義務を達成しようとすれば、様々な形でコストがかかるため、産業の競争力に悪影響を与える。金融危機のおかげで景気が落ち込んでいる今は、景気対策を優先させたい、というのである。また、東欧は石炭による火力発電の割合が西欧よりも高い。だから、その転換にお金をつぎ込むよりも、景気対策に・・・、という思いも強いようだ。

ただ、これは見方を変えれば、金融危機を利用して、自国に課せられた義務をここぞとばかりに緩和させようとする動き、と見ることもできそうだ。今年の春に、上に挙げた20、20、20の新しい政策目標がEU全体として決定された際にも、削減負担を加盟国間でどう配分するか、かなりもめた。だから、一部の不満がいま隙を突いて、動き始めたのかもしれない。上に挙げた7カ国は、EU内で非公式なグループを形成し、温暖化対策目標の緩和に向けて既に動き出したという。


あのー、この意味不明のポーズは何を意味しているの?

写真の出典:Dagens Nyheter

スウェーデンの立場はもちろん、これまでの予定通り12月に正式決定を行う、というもの。ラインフェルト首相は「政治的な大決定をせっかく成し遂げたのに、今また手を加えようとすれば、他の国も一斉に自分たちの都合のよい方向に動き出すだろうから、『パンドラの箱』を開けることになりかねない。」と、他国の動きに釘を刺している。

スウェーデンのある新聞のEU政治の解説者も「イタリア首相のベルルスコーニは、首相を務めてきたこの5年間に、自国産業の競争力強化に繋がるような政策をほとんど行ってこなかったのに、ここぞとばかりEUの温暖化対策目標を槍玉に挙げて、このおかげでイタリアの産業や経済が苦しむことになる、などと不満ばかり言っているのは可笑しい」と皮肉っている。

(イタリアは、ますますEUの中で「困った人」になりつつある気がする・・・)

ともあれ、金融危機のおかげで、これからしばらくは温暖化対策や環境政策が少なからず影に隠れてしまうことは間違いないだろう。2009年の下半期スウェーデンがEUの議長国となり、2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催される気候変動国際会議(COP15)での国際合意の形成に向けて、積極的に動いて行くことが期待されているが、その道もさらに険しいものになりそうだ。

嵐のあとの晴れ間

2008-10-14 08:24:03 | スウェーデン・その他の経済
先週末は、G7の会合と同じ頃、ユーロ圏諸国およびイギリスも大きな会合を開き、金融危機に共同して対処して行くための協議を行った。

そして、英・仏・独などヨーロッパの主要な国では、以前挙げた(1) 政府による債務保証 や、(3) 政府による直接的な資本注入 といった方法による救済策が打ち出されることになった。

<注: 前々回の『銀行救済の様々な手段』は少し書き足しました>


先週は底なし沼のように下落を続けていたヨーロッパの株式市場は、それに呼応するかのように、開くや否や暴騰。夕方までその上げ幅が維持された。


SVTのニュースより

テレビやラジオのニュースを見聞きしていると、伝わってくる雰囲気は「嵐が過ぎ去った後の晴れ間」と呼べるくらい、ニュースを読み上げる人の表情や口調からも安堵感が伝わってくる。手放しで喜ぶのはまだ早いんじゃない、と言いたくなるけど。


ここまで大規模な共同行動がとられたのは歴史的なこと、とヨーロッパの国々では報じられている。

ターボ資本主義(turbo capitalism)は死んだ。その葬式代を払う羽目になっているのは、今や政府である。」ドイツの新聞はこう風刺したという。

そこまで危機的な状況にはないスウェーデンも、週末のユーロ圏諸国の合意にならって、危機に備えた新しい制度作りを行っていく、と発表している。ついこの間、引き上げられたばかり預金保険の対象額の上限も、再検討され、また引き上げられるかもしれないという。


やっぱり、ソラマメ君が一番「輝いて」いる

あれだけ審議にてこずったアメリカとは違って、ヨーロッパの対応は素早かったように感じる。

こういう書き方をすると大変皮肉になるのだが、今の状況に手をこまねいていると、行き着く先はどうなるのか、どこの国も日本の失敗例を知っているので、その轍を踏まないように躍起になっているのではないかと思う。

観光客のリクルート?

2008-10-13 07:03:06 | コラム
6月下旬に学会でニューヨークへ行ったときに撮った写真から。



アメリカ内外から観光客が押し寄せるタイムズ・スクエア。
こんなところに事務所を構えているとはビックリ。

なるほど、イラクへ送る兵士を確保するために、観光客を徴募!?
隣のHard Rock Cafeでおびき寄せて、出てきたところを一網打尽・・・。

銀行救済の様々な手段

2008-10-10 07:39:00 | スウェーデン・その他の経済
これまで何度か、政府や中央銀行による銀行救済について触れてきたけれど、非常に複雑で私もよく混乱してしまう。しかも、金融危機の渦中にある今、世界中から毎日たくさんのニュースが流れ込んでくる。自分の頭のなかを少し整理するつもりで、簡単にまとめてみたい。


底なし沼? (SVTのニュースサイトより)

銀行救済や公的資金の注入といっても、いくつか異なったパターンがあるようだ。いろんな情報を継ぎはぎしながらまとめてみると・・・

まずは、(0) 中央銀行による特別融資

金融危機によって生じる大きな問題の一つは、金融機関間の資金融通システムが潤滑に機能しなくなること。これは、ある金融機関がたとえ資金を豊富に持っていたとしても、相手先の金融機関が倒れたら困るので、貸し出そうとせず、溜め込んでしまうことである。その結果、資金を必要としており、本来ならこの資金融通システムを使って貸し出しを行えた金融機関が倒れてしまう。このように市場の資金の流動性が低下している場合に、中央銀行が民間銀行に特別融資を行うのである。ただし、あくまで融資なので銀行側は利子をつけて一定期間後に返済するから、公的な負担は伴わない。だから、公的資金の注入とは呼ばない。

スウェーデンでは現在、中央銀行による資金のオークションという形でこれが行われている。


次は、(1) 政府による債務保証

上に挙げた特別融資だけでは不十分であるときに、政府が金融機関に対して債務保証を行うのである。つまり、金融機関同士で資金を融通しあう際に、もし借り手の金融機関が返済不能になっても、政府が責任を持って貸し手に代わりに資金を返済する、という保証を行うのである。そうすることで、資金を持っている金融機関が心配することなく、他の金融機関に資金を提供できるようにして、現在は目詰まりを起こしている銀行同士の資金融通を改善する狙いがある。

どこかの金融機関が、実際に返済不能になるまでは、政府には負担は生じない。政府はその場合に備えて資金を準備しておくだけでよい。

ドイツ、フランスがちょうど今、この手を大規模に用いている。


その次は、(2) 不良債権の買取

銀行や金融機関が抱え込んだ不良債権は経営を圧迫し、また、貸し渋りを引き起こしかねない。そこで、国が公的資金を使ってこの不良債権を買い取る。そうすれば、その銀行に残るのは健全な債権だけになり、経営および貸し出し態度が改善する。国は引き取った不良債権を債権処理公社のもとで少しずつ処理していき、良好になったものから売却していく。

先週、アメリカ議会がやっとのことで可決した7000億ドルの銀行救済パッケージは、このタイプ。


次は、(3) 資金繰りが難しくなった金融機関に、国が公的な融資を使って直接的に資本注入を行う、というもの。

目的は、資金繰りを改善し、その金融機関に対する信頼を回復させること。形としては、金融機関が新株を発行し、それを政府が買い取り、出資する。そのため、政府はその金融機関の部分所有者ということなり、部分的に国有化したことになる。この政策手段が成功を奏し、経営状態が改善すれば、株や資産の価格は値上がりするため、政府および国民は後で売却益を得ることが期待される。

イギリスでは、現在この手を使って、破綻しかかっている金融機関の救済を行おうとしている。破綻しかかった3つの銀行が政府からの資金注入を受け、部分的に国有化されることになった。(政府の所有分は4割から6割)

アメリカでも、上に挙げた不良債権の買取だけでは市場の信頼回復が難しいとみられ、現在、財務省が、この手を使って国が資本を直接注入するかどうかを真剣に議論しているという。これまで自由市場経済を標榜してきた国だけに、たとえ部分的であれ「国有化」などという言葉を聞くと、条件反射的に「社会主義的!」という批判が飛んできそうだが、金融システムが破綻しかかっている現状を前にして、そんな理念にこだわっている時間はない、と財務省は考えているようだ。


4つ目は、(4) 完全国有化である。

破綻した金融機関の経営を国が引き継ぐ。株は紙切れ同然となり、株主の利益はゼロになるが、一方でその金融機関に対する債権者や預金者の資産は保障される。金融機関が持っていた債権は、良好なものと不良なものに分けられ、後者は政府の管理する債権処理公社のもとで処理し、前者は金融機関のもとに残し、再建を試みる。これも成功すれば、数年後に再び株式市場に上場して、株を売却できるので、国や国民も当初のコストをある程度は取り戻せるかもしれない。

今ちょうど、混乱の渦中にあるアイスランドが、破綻した主要3銀行(グリトニール、ランスバンキン、カウプティング)を完全に国有化した。経営を引き継ぎ、新しい執行部を編成したのは金融監督庁だとか。


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1990年代初めに金融危機に見舞われたスウェーデンではどうしたかと言うと・・・。早い話、上のほとんど全部やったのだ。

そこそこにヤバイ銀行は(1)で救済し、かなりヤバイ銀行には(2)で救済し、それでもダメで破綻した銀行は(3)で救済したのである。(3)の救済を受けたのは、NordbankenとGöta bankenだ(両者は今のNordeaになっている)。

私も「the Stockholm Solution」が注目される理由が、やっと実感できるようになってきた。

国際的金融危機の中でのスウェーデンの現状

2008-10-09 03:59:57 | スウェーデン・その他の経済
坂道を転がる石のように、世界中の株価の急落が止まらない。

今日(水曜日)は、アメリカ、カナダ、ECB(ヨーロッパ)、イギリス、スウェーデン、スイスの6つの中央銀行が協調して同時利下げを行い、政策金利をそれぞれ0.5%ポイント引き下げた。スウェーデンの中央銀行(Riksbanken)は1ヶ月ほど前に0.25%ポイント引き上げ、大きな批判を浴びていたが、次の定例会合を待つことなく、急遽引き下げられることになったわけだ。

ストックホルム株式市場は、今日は取引開始直後から7%も暴落していた。利下げのニュースを受けて、一時的に昨日の終値の水準まで7%上昇したものの、再び下落を続け、今日の終値はマイナス6.4%。


過去20年のストックホルム株式市場のインデックス

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ちなみに、アメリカやヨーロッパで銀行や金融機関の破産が相次いでいるとはいえ、スウェーデンの金融機関は磐石で今のところ問題ない、と見られている。ただし、もちろん不安材料はある。スウェーデンの大手銀行はアメリカのリーマン・ブラザーズに貸付を行っていたのだが、破綻によってこれが焦げ付いてしまった。なかでも大きな打撃を受けたのはSwedbankだ。その額は90億クローナ(約1600億円)にのぼると見られている。

また、スウェーデンの金融機関はバルト三国にかなり進出しており、これらの国々の金融資本の9割がスウェーデン系だといわれている。これまで急成長を遂げてきたバルト三国の経済だが、それまでの成長が急激だったぶん、落ち込みもかなり大きいと見られており、これらの市場での損失がスウェーデン本国の親会社を危機に引きずり込む可能性もある。

そういえば、スウェーデンの中央銀行は経営が行き詰った金融機関に公的資金を使って融資することを今日決めた。といっても、スウェーデンの金融機関ではない。国が丸ごと破産しかかっているとも言われるアイスランドの金融機関カウプティング(Kaupthing)のスウェーデン子会社である。

それから、本来は資金振りの良好な金融機関も、信用危機が発生し、預金者が預金の引き出しを一挙に行ってしまえば、やはり倒れてしまう。そのため、スウェーデン政府は、預金保護の上限額をこれまで25万クローナ(440万円)から50万クローナ(880万円)に引き上げることを一昨日発表した。(一方、ヨーロッパの多くの国々は10万ユーロくらいまで引き上げるようだから、それに比べても、また日本に比べてもスウェーデンの水準はまだ低いようだ。)

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それから、一般家計にとって気がかりなのは、住宅ローンの利率が上昇していること。これは、ローンを貸し出す際に金融機関が発行している住宅債券に買い手がなかなかつかず、債券市場で値下がりしているためのようだ。リスクが高いと敬遠されているのだろう。(注:債券の価格と利率は反比例の関係)

一方、リスクが低い債券といえば、やっぱり国債だ。特に満期が1年未満の短期国債(スウェーデン語では、statsskuldväxel)に人気が殺到し、市場価格が高騰している。9月下旬には需給バランスが崩れて、値段がつけられない事態が発生し、取引が一時的にストップされたほどである。


国際管理庁の長官は、前の保守党党首Bo Lundgren

国債の発行や管理を行っているのは、中央銀行ではなく国債管理庁(Riksgäldskontoret)だ。では、この国債管理庁はどう対応したかというと、短期国債を新たに発行して、国債市場で大量に売却したのである。そして、売却で得られた資金を使って、債券市場で住宅債券を買い上げたのである。つまり、国債市場を沈静化し、同時に債券市場でも介入をして、住宅ローンの利率を抑えるという、一石二鳥の手を使ったのである。(おそらく、日本語でいう“買いオペ”“売りオペ”に含まれる手段だと思う)

不況に襲われているとはいえ、スウェーデンの国家財政は今のところ安定しており、国債の新規発行の必要性は本来はないため、市場安定化だけを目的とした国債発行である。

ノーベル賞 物理学賞

2008-10-07 09:12:25 | コラム
スウェーデン王立科学アカデミーは、今年のノーベル賞物理学賞を日本人の3人に授与すると決定した。素粒子理論での功績が評価されたという。

この素粒子理論は、物質を構成している最小単位を解き明かすだけでなく、宇宙の創造やビッグバンの解明にもつながる、まさに超ミクロ超マクロの理論のようだ。

ナショナル・ジオグラフィックより
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私がまだ小さかった頃、おそらく小学校に入るか入らないかの頃に、とても衝撃的なことを知った。

TVで何かの科学番組を放送していた。今から遥かに時間が経った後の宇宙を映していた。太陽系では太陽が次第に膨張し、周りのものを次第に飲み込んでいったため、地球はもはや存在しないという。「その頃、みんなはどこにいるの?」と私が尋ねると「人間はもういないんだろうね。そもそも、私たちはもう生きてはいないよ。」という答えが返ってきた。

大人としては何ともない答えだったのだろうが、その時の私にはとても衝撃的だった。私と両親や兄弟、そしてそれを取り巻く幸せな日常生活が、実は永遠には続かず、いつかは終わりが来るという事実に気がついたからだ。そして、自分自身にもやがては終わりが訪れることも知ったのだった。「死」を意識することは、幼い私にとっては天地がひっくり返るほどの衝撃的な出来事だった。

それから間もなくして「自分がこの世に生まれてこなかった世界」があり得たことにも気づいて、それを考えただけでも怖くなって、夜も眠れなくなったことがあった。

それからしばらくして、何かの科学雑誌(子供向けだったかどうかは忘れた)で、この世はすべて「ビッグバン」という大爆発から始まったのだ、という記事を読んだ。では、ビッグバン以前には「この世(?)」には何があったのかというと、「無」の世界があり、そこにわずかな「揺らぎ」が生じて、「ビッグバン」が起こり、様々な物質が生まれ、今の宇宙ができ上がったというではないか!!! しかも、そのスピードたるや凄まじく、何千何万分の一秒という速さで様々なモノが作り出され、四方八方に飛び散り、宇宙がもの凄い速さで膨張を続け始めたらしい。

小学生の自分には、とても重過ぎる情報だった。そもそも「無」という世界が何なのか、想像の域を超えていたし、そもそもそのようなことを考えて、分析して、観察して、議論する私たち人間がこの世に生まれてこなかったとすれば、その「無」の世界にしたって、この宇宙にしたって、太陽系にしたって、地球にしたって、何のために存在したのか、全く意味が分からなかった(その場合、そもそも「存在」したのだろうか? それとも、そんな問題提起をすること自体、意味がないことなのか?)。とにかく、それまでは「私」という存在にしても、私たち「人間」という存在にしても、しっかりした土台の上に成り立っているものだと思っていたけれど、実は「それらが存在しない世界」もありえたくらい非常に脆弱なものだということが分かった。しかも、その事実というか発見自体も「私という存在」が存在しなければ気づかれることすらなかった、と考え始めたら、頭が混乱してきた。

小学校の高学年のとき、ある同級生が「俺たちが住んでいるこの地球にしても、それを取り巻くでっかい宇宙にしても、実はどっかの沼の底に住んでいるナマズの胃袋の中かも知れないぞ!」とふと言っているのを聞いて、こいつ、凄いな!、と感心した。(でも、二人でそんな話をしたのは一回きりだったけど)

高校のときに、永井均さんという方が書いた『<子ども>のための哲学』(講談社現代新書)を読んだ。カッコ付きの<子ども>というのは、「子どものときの純粋な疑問をいまだに抱いている人」を指しており、大人も含む。実に面白い内容の本だった。それまで抱いていた「自分の存在」に関するモヤモヤした疑問というのは、こういう形で表現できるんだ、と納得した。

でも、疑問に対する答えが見つかったわけではない。

私に限らず多くの人は「自分という存在のちっぽけさ」を多かれ少なかれ感じているのだと思う。そして、それによって生まれるある種の「虚しさ」をどうにかして克服しようと、もがいているんだと思う。ある人は宗教に、ある人は哲学に、ある人は科学に解決策を見つけようとしているのかもしれない。また、ある人は自分の周りの人に権力を振って優越感を得ることで「虚しさ」を紛らわそうとしているかもしれないし、ある人は「ちっぽけな自分」を越えた大きなものの一部になることで、「自分」という存在にそれ以上の意味を与えようとしているのかもしれない。

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ノーベル賞に話を戻そう。素粒子理論によってこの大宇宙の起源を突き詰めていけば、とんでもない事実が明らかになるかもしれない。ビッグバン以前の世界を辿ってみると、実はわれわれ人類のような知性を持った生き物が運営する「物理研究所」の加速器の中にたどり着く、ということはないのだろうか?

大型ハドロン衝突型加速器が今年9月から始動し、素粒子理論の実験しているというが、もしかしたらそのような加速器がビッグバンを通じて、この宇宙を作ったということはないのだろうか? もしくは、未来と過去という時空が繋がっていて、これから実験的に作るビッグバンが140億年前に起きたといわれるビッグバンと同じということはないのだろうか? と無限にファンタジーが広がって行く。

そういえば、ハドロン加速器の始動を目前に控え、「実験過程で生成したブラックホールが地球を丸ごと飲み込んでしまう可能性もある」という記事を目にした。地球全体をのみ込んだブラックホールは、ゴルフボール程度の大きさでありながら、地球と同じ質量に達するらしい。そうなると、太陽系の地球があった場所には、その小さなブラックホールが代わりに居座ることになるという。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=5410713&ST=yahoo_headlines

私は思う。もし、極小のブラックホールが生まれ、それが周りの物をどんどん吸い込み、しまいには地球を飲み込んでしまったとしても、私たちはそれに気づく暇があるのだろうか? 140億年前のビッグバンも、数千数万分の一秒という速さで進んだというから、加速器の中で生まれたブラックホールも、あっという間に成長して地球を飲み込んでしまうかもしれない。もしかして、もう飲み込まれた後で、我々がいるのはブラックホールの中だったりして。

大宇宙のあちこちに散在するといわれるブラックホールも、もしかしたら、知能を発達させた生命体が文明発達の究極の末に、宇宙の謎を解明すべく「加速器」を作って実験して、失敗して生成された、なんてことはないのかな?


こんなことを考え始めたら、ますます眠れなくなってしまう。
明日もどうか良い一日が始まりますように・・・。

10月

2008-10-05 07:37:14 | Yoshiの生活 (mitt liv)
忙しくて更新する時間がないので、今回は先週末の結婚式の写真をいくつか。




季節はすっかり秋。会場はLångholmen。対岸に見えるのはKungsholmen。


こじんまりとした式の後に晩餐会。親戚と近しい友達が招かれた。私の友人は実は母親がアイスランド人なので、アイスランドの親戚も3人出席していた。

ストックホルムへ

2008-10-04 18:11:36 | Yoshiの生活 (mitt liv)
この週末はストックホルムへ。ヨンショーピン大学で勉強していたときに知り合ったスウェーデン人の友達が結婚するため。

彼はヨンショーピンで修士号をとったあと、EUでインターシップをしたり、スウェーデンの行政機関で短期間働いたりしたあと、今は環境省で政策秘書として環境政策の立案に携わっている。

これからの活躍が楽しみだ。

『SAME, SAME BUT BETTER?』

2008-10-01 06:25:26 | コラム
今日は、ヨーテボリのヴァーサ通りにあるRöhsska museet(ロスカ美術館)のイベントに招かれた。明日から始まる新しい展示『SAME, SAME BUT BETTER?』のオープニング・セレモニーが夜に開かれたのだ。


芸術家やデザイナーが、アクセサリーの新しいデザインを考案して、手間隙かけて貴重な作品を作り上げる。材料の調達も作業も自分で行い、またそもそものアイデアを生み出すまでに相当の苦労を要しているわけだから、一つ一つの作品に価値があるわけだ。しかし、それを大企業がいとも簡単に真似をして、自分たちの製品に勝手に取り込んでしまうことがよくあるのだという。そして、大量生産のラインに乗せ、破格の値段で作り、私たちの大量消費社会でたたき売りをする

デザイナーが著作権侵害を訴えようにも、多額の費用がかかるし、相手は大きな企業であることが多い。また、コピーしている企業のほうも、訴えられにくいように巧みにデザインを盗んでいる。もしくは、作品のコピーではなく、作品からインスピレーションを得ただけだ、と答えるかもしれない。そんな場合、デザイナーは泣き寝入りするしかない。

そこで、スウェーデンで新進気鋭の若手デザイナーTitti Bjernérは考えた。「もし、デザイナーの側が大企業の大量生産商品のデザインを盗んで、自分たちの作品に生かすとしたら、どうなるだろうか?」

彼女は、デザイナー仲間と12人で、大企業が大量生産のもとで販売しているアクセサリーを購入して、それと全く同じものを、もしくはそのデザインを自分なりに工夫しながら、新しい作品を作り上げる、という挑戦を行ったのである。そうすることで、そもそもの問題を全く逆の立場から検証してみよう、という大胆なチャレンジを試みたのである。

展示のタイトル『SAME, SAME BUT BETTER?』のサブタイトルは「Var går gränsen mellan kopia och inspiration?」(模写とインスピレーションの境界はどこにあるのだろう?)だ。


展示期間:1 oktober – 9 november


『SAME, SAME BUT BETTER?』

Var går gränsen mellan kopiering och inspiration? Titti Bjernér, konstnär och formgivare av smycken tar upp det känsliga ämnet kopiering. Många företag, kedjor använder redan befintliga designprodukter som förlagor. Titti Bjernér har bjudit in formgivare att välja var sitt massproducerat smycke inköpt på ett storföretag, ett smycke som de sedan skapar ett exklusivt och unikt plagiat av. På så sätt vänder Titti Bjernér på frågeställningen. I workshops, happenings och paneldebatter blir våra besökare delaktiga.