現在の好景気は、大学教育にも大きな影響を与えている。スウェーデンの大学学部教育の多くが定員割れしているのだ。その結果、各種コースの10分の1が秋学期はキャンセルされるという。
ヨーテボリ大学本館
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スウェーデンの大学教育の近年の傾向から簡単に。
スウェーデンの大学教育は、80年代後半から徐々に拡大していき、2000年代前半には大学生の数が拡大以前の2倍にも膨れ上がったのだ。労働市場において、より高度な技能を身につけた労働力が必要とされるようになった(なるだろうと予想された)ことに加え、「知識社会」への転換を促進するために、政府が大学教育の拡大に力を注いだためだ。「知識社会」への転換とは、つまり、単純な製造業などは機械化が進んだり、どんどん東欧やアジアなど賃金の安い国へ流出していくため、スウェーデンが生き残っていくためには、より高い付加価値を生み出す産業の育成が不可欠だ、それが「知識集約的産業(kunskapsintensiv industri)」と考えられたのだ。
ちょうど、大学教育の拡大が続いた90年代はバブルがはじけた後で、雇用があまり伸びなかった。特に、若い人が就職に苦労した。だから、高校を卒業しても職がない、もしくはこれまで高卒で働いてきたけれど、解雇された。それなら、大学で勉強しようか! と多くの若者が考えた。(もちろん、大学に進学した者の中には、将来の夢を叶えるために、大学でしっかり技能をつけたい熱心な若者もいただろう)
だから、90年代以降の大学教育拡大は、国の社会・産業戦略と国民の意向がうまくかみ合う形で、実現して行ったのだった。(ここでの国民とは主に若者のことだが、彼らに限らず、30代・40代の人が大学で勉強するのは珍しいことではない。)
結果として、それまでは、高校を卒業してからしばらく働いたり、旅行をしたりしてから、自分の本当にしたいことが頭の中である程度形になってから、大学に進学するというスタイルが多かったが、近年では高校卒業後、すぐに大学進学するケースが非常に増えた。大学生も全体としてみると随分若くなったのだ。
しかし、やはり若者は正直だ。今のように雇用が伸びていて(以前の書き込みの通り、今年の就業者数は1990年の水準を上回った)、就職が比較的容易になると、大学にはあまり見向きもせず、とりあえず働いてお金を稼ぎたい、と多くの若者が考えているようだ。高校卒業まで何年も勉強してきたのだから、今は別のことをしたい、というのが本音ではなかろうか?(知り合いの高校生もそう言っていた) だから、現状を見ていると、少しずつ以前の大学進学スタイルに戻りつつあるのかもしれない。
その結果として、上記の通り、各種コースの10分の1が秋学期はキャンセルされることになった。特に小さな地方大学の定員割れがひどく、カルマル(Kalmar)大学などに至っては4分の1のコースをキャンセルせざるを得ないとか。(地方大学の多くは、大学予算を国から得るべく、需要以上に大学を拡大してきたツケが回ってきたともいえる)
就きたい職業を得るために、大学教育を受ける。それなしでも就職が可能なら、大学教育は受けない、という考え方は悪くないと思う。ただ、社会全体で長い目で見た場合には、もしかしたら労働力の技能の低下につながるかもしれない。心配なことに、定員割れが激しいのは、技術系、理科・生物系のコースだというではないか! 産業立国としては危機感を持ったほうがよさそうだ。
ヨーテボリ大学本館
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スウェーデンの大学教育の近年の傾向から簡単に。
スウェーデンの大学教育は、80年代後半から徐々に拡大していき、2000年代前半には大学生の数が拡大以前の2倍にも膨れ上がったのだ。労働市場において、より高度な技能を身につけた労働力が必要とされるようになった(なるだろうと予想された)ことに加え、「知識社会」への転換を促進するために、政府が大学教育の拡大に力を注いだためだ。「知識社会」への転換とは、つまり、単純な製造業などは機械化が進んだり、どんどん東欧やアジアなど賃金の安い国へ流出していくため、スウェーデンが生き残っていくためには、より高い付加価値を生み出す産業の育成が不可欠だ、それが「知識集約的産業(kunskapsintensiv industri)」と考えられたのだ。
ちょうど、大学教育の拡大が続いた90年代はバブルがはじけた後で、雇用があまり伸びなかった。特に、若い人が就職に苦労した。だから、高校を卒業しても職がない、もしくはこれまで高卒で働いてきたけれど、解雇された。それなら、大学で勉強しようか! と多くの若者が考えた。(もちろん、大学に進学した者の中には、将来の夢を叶えるために、大学でしっかり技能をつけたい熱心な若者もいただろう)
だから、90年代以降の大学教育拡大は、国の社会・産業戦略と国民の意向がうまくかみ合う形で、実現して行ったのだった。(ここでの国民とは主に若者のことだが、彼らに限らず、30代・40代の人が大学で勉強するのは珍しいことではない。)
結果として、それまでは、高校を卒業してからしばらく働いたり、旅行をしたりしてから、自分の本当にしたいことが頭の中である程度形になってから、大学に進学するというスタイルが多かったが、近年では高校卒業後、すぐに大学進学するケースが非常に増えた。大学生も全体としてみると随分若くなったのだ。
しかし、やはり若者は正直だ。今のように雇用が伸びていて(以前の書き込みの通り、今年の就業者数は1990年の水準を上回った)、就職が比較的容易になると、大学にはあまり見向きもせず、とりあえず働いてお金を稼ぎたい、と多くの若者が考えているようだ。高校卒業まで何年も勉強してきたのだから、今は別のことをしたい、というのが本音ではなかろうか?(知り合いの高校生もそう言っていた) だから、現状を見ていると、少しずつ以前の大学進学スタイルに戻りつつあるのかもしれない。
その結果として、上記の通り、各種コースの10分の1が秋学期はキャンセルされることになった。特に小さな地方大学の定員割れがひどく、カルマル(Kalmar)大学などに至っては4分の1のコースをキャンセルせざるを得ないとか。(地方大学の多くは、大学予算を国から得るべく、需要以上に大学を拡大してきたツケが回ってきたともいえる)
就きたい職業を得るために、大学教育を受ける。それなしでも就職が可能なら、大学教育は受けない、という考え方は悪くないと思う。ただ、社会全体で長い目で見た場合には、もしかしたら労働力の技能の低下につながるかもしれない。心配なことに、定員割れが激しいのは、技術系、理科・生物系のコースだというではないか! 産業立国としては危機感を持ったほうがよさそうだ。