EUのプロジェクトとして、南極の氷を地下3000メートル掘り、取り出された氷に含まれる二酸化炭素の量を測定が続いているそうだ。過去650000年にわたって地球の大気に含まれる二酸化炭素の量の変化が分かるだけでなく、氷に含まれる水素原子の同位体(アイソトープ)を計測することで、気温の変化も分かるのだという。
歴史的に見て分かるのは、二酸化炭素の含有量が増えた時期と地球上の気温が上昇した時期は驚くほど一致しているのだそうだ。両者の増減には定期的な波があり、100000年の周期で氷河期と温暖期を繰り返しているのだという。面白いことに、氷河期から温暖期に移行する時には、これまでは大気の気温の上昇が、600年から1000年ほど二酸化炭素の含有量の上昇に先駆けて起こっていたのらしい。
つまり、仮説はこういうことらしい。地球が太陽を回る軌道は、100000年の周期で円形と楕円を繰り返す。この軌道のズレに応じて、まず大気の気温が上昇し始めるのらしい。そうすると、海水の水温が少しずつ上昇し始め、溶け込んでいた二酸化炭素が大気中に放出される。大気中の二酸化炭素の濃度は次第に上昇していき、温暖化効果を生み出す。既に暖かくなっていた地球の気候が、この温暖化効果によって相乗効果を得て、さらに暖かくなる、ということらしい。つまり、歴史的に見ると、気温の上昇が先(卵)で、二酸化炭素の上昇は次に起こること(ヒヨコ)なのだそうだ。
現在、地球の気候は氷河期から温暖期への移行中で、大気の気温は過去2、3千年の間に上昇してきている。それと共に海水中から二酸化炭素が放出されていき、大気中の濃度が上昇している。
地球温暖化論争で、二酸化炭素の排出削減に消極的な側の論拠の一つは、人間の産業活動に関わらず、地球は氷河期と温暖期を繰り返しているのであり、今はその温暖化移行期なのだから、意味がない、というものであった。しかし、このEUのプロジェクトで明らかになったのは、現在の二酸化炭素濃度の上昇の勢いは、これまでの自然なサイクルでは説明できないほど凄まじいものだということだ。やはり、人間の活動が温暖化のプロセスを促進しているのではないか、という見方がますます有力になってきた。
------
地球温暖化防止のための国連会議が近々、カナダのモントリオールで始まる。今回で11回目の開催だ。第3回の京都会議では、各国の温暖化ガスの削減義務枠が定められたが、それが実際に発効したのは、ロシアが批准した今年の春であったことは記憶に新しいところだ。
京都会議では、削減に積極的なEU(15%削減を主張)と消極的なアメリカ・オーストラリア・日本の対立のために、最終的な合意に至ったのは、期日を一日延長した真夜中だった。その「京都議定書」ではEU・アメリカ・日本がそれぞれ8%・7%・6%削減で確か合意した。
自らに厳しい目標を設定した上で、その達成に向けた具体的な行動計画を作成するというEUの戦略にはとても感心した。そんなの非現実的と、最初っから取り合おうとしない他国の態度との違いがとても顕著だった。
さて、EUは6%削減という目標をEU加盟国に一律に課して達成する、というわけではなく、国ごとに環境技術の水準や経済状態、これまでの省エネ努力などに配慮しながら、国ごとに違った削減目標を設けている。(国によっては排出を増やせる国もある)そして、EU全体として6%削減できればいいという戦略だ。
さてさて、前置きが長くなりましたけれど、スウェーデンや他のEU諸国の進捗状況はどうだろうか。スウェーデンはEUの中でも温暖化ガス排出量を増やしてもよい国の一つで、2010年までに1990年比で4%増に留める、という目標を課せられている。一方で、スウェーデン政府はそれよりも厳しい、4%減という目標を自らに課して、排出量削減に努力してきた。その結果、2002年の時点で、既に2%減を達成するに至っている。
この達成水準は他のEU諸国と比べると顕著で、スウェーデンはイギリスに次いで、ドイツと共に二番目の優等生のようだ。下の図は、2002年の時点で削減目標をどれだけ達成したかを示したもの。グラフが左側に出ていれば、EUの定めた目標を既に超えて、それ以上に削減達成を果たしていることを意味し、一方で、右側にグラフが出ていれば、まだまだ削減が不十分であることを示している。(スウェーデンの場合は、目標の4%増と達成値の2%減を比較して、6%の達成超過ということ) 火力発電の多いドイツがスウェーデンと並んでいるのはちょっと驚きだ。EU全体では目標まで1.9%の削減が必要だとわかる。
削減達成を容易にするために、排出権取引が認められたり、途上国への技術移転や植林の効果なども、自国の“削減”に数えることができるようになった。しかし、スウェーデンの場合にはこれらの措置を加えなくても、自国での努力だけで削減が着実に進んでおり、これは見逃せない。
スウェーデン政府は、削減目標の緩和を期待する産業界と、12%減を主張する環境党の間で板ばさみになりながらも、これまでの4%減という目標をこのまま維持し続ける意向のようだ。
歴史的に見て分かるのは、二酸化炭素の含有量が増えた時期と地球上の気温が上昇した時期は驚くほど一致しているのだそうだ。両者の増減には定期的な波があり、100000年の周期で氷河期と温暖期を繰り返しているのだという。面白いことに、氷河期から温暖期に移行する時には、これまでは大気の気温の上昇が、600年から1000年ほど二酸化炭素の含有量の上昇に先駆けて起こっていたのらしい。
つまり、仮説はこういうことらしい。地球が太陽を回る軌道は、100000年の周期で円形と楕円を繰り返す。この軌道のズレに応じて、まず大気の気温が上昇し始めるのらしい。そうすると、海水の水温が少しずつ上昇し始め、溶け込んでいた二酸化炭素が大気中に放出される。大気中の二酸化炭素の濃度は次第に上昇していき、温暖化効果を生み出す。既に暖かくなっていた地球の気候が、この温暖化効果によって相乗効果を得て、さらに暖かくなる、ということらしい。つまり、歴史的に見ると、気温の上昇が先(卵)で、二酸化炭素の上昇は次に起こること(ヒヨコ)なのだそうだ。
現在、地球の気候は氷河期から温暖期への移行中で、大気の気温は過去2、3千年の間に上昇してきている。それと共に海水中から二酸化炭素が放出されていき、大気中の濃度が上昇している。
地球温暖化論争で、二酸化炭素の排出削減に消極的な側の論拠の一つは、人間の産業活動に関わらず、地球は氷河期と温暖期を繰り返しているのであり、今はその温暖化移行期なのだから、意味がない、というものであった。しかし、このEUのプロジェクトで明らかになったのは、現在の二酸化炭素濃度の上昇の勢いは、これまでの自然なサイクルでは説明できないほど凄まじいものだということだ。やはり、人間の活動が温暖化のプロセスを促進しているのではないか、という見方がますます有力になってきた。
------
地球温暖化防止のための国連会議が近々、カナダのモントリオールで始まる。今回で11回目の開催だ。第3回の京都会議では、各国の温暖化ガスの削減義務枠が定められたが、それが実際に発効したのは、ロシアが批准した今年の春であったことは記憶に新しいところだ。
京都会議では、削減に積極的なEU(15%削減を主張)と消極的なアメリカ・オーストラリア・日本の対立のために、最終的な合意に至ったのは、期日を一日延長した真夜中だった。その「京都議定書」ではEU・アメリカ・日本がそれぞれ8%・7%・6%削減で確か合意した。
自らに厳しい目標を設定した上で、その達成に向けた具体的な行動計画を作成するというEUの戦略にはとても感心した。そんなの非現実的と、最初っから取り合おうとしない他国の態度との違いがとても顕著だった。
さて、EUは6%削減という目標をEU加盟国に一律に課して達成する、というわけではなく、国ごとに環境技術の水準や経済状態、これまでの省エネ努力などに配慮しながら、国ごとに違った削減目標を設けている。(国によっては排出を増やせる国もある)そして、EU全体として6%削減できればいいという戦略だ。
さてさて、前置きが長くなりましたけれど、スウェーデンや他のEU諸国の進捗状況はどうだろうか。スウェーデンはEUの中でも温暖化ガス排出量を増やしてもよい国の一つで、2010年までに1990年比で4%増に留める、という目標を課せられている。一方で、スウェーデン政府はそれよりも厳しい、4%減という目標を自らに課して、排出量削減に努力してきた。その結果、2002年の時点で、既に2%減を達成するに至っている。
この達成水準は他のEU諸国と比べると顕著で、スウェーデンはイギリスに次いで、ドイツと共に二番目の優等生のようだ。下の図は、2002年の時点で削減目標をどれだけ達成したかを示したもの。グラフが左側に出ていれば、EUの定めた目標を既に超えて、それ以上に削減達成を果たしていることを意味し、一方で、右側にグラフが出ていれば、まだまだ削減が不十分であることを示している。(スウェーデンの場合は、目標の4%増と達成値の2%減を比較して、6%の達成超過ということ) 火力発電の多いドイツがスウェーデンと並んでいるのはちょっと驚きだ。EU全体では目標まで1.9%の削減が必要だとわかる。
削減達成を容易にするために、排出権取引が認められたり、途上国への技術移転や植林の効果なども、自国の“削減”に数えることができるようになった。しかし、スウェーデンの場合にはこれらの措置を加えなくても、自国での努力だけで削減が着実に進んでおり、これは見逃せない。
スウェーデン政府は、削減目標の緩和を期待する産業界と、12%減を主張する環境党の間で板ばさみになりながらも、これまでの4%減という目標をこのまま維持し続ける意向のようだ。