スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

TVの受信料

2006-05-30 05:35:42 | スウェーデン・その他の社会
夜7時半に帰宅。夜といっても、外はまだ真昼間のように明るい。ジムに行った後で腹が減っているので、ラジオを大音量で流しながら、晩ご飯を作っていると、チンッ、と玄関のベルが鳴る。今のアパートに引っ越してから初めてのこと。(そう、3月始めに市内に引っ越したのです)

こうやって突然誰かが訪ねてくるのは、たいていロクなことがない。TV受信料の集金か、イェ○バの会か、モル○ン教と、相場が決まっている。でも、今日はラジオが大音量で鳴っているので、居留守は使えそうにないし、もしかして、同じアパートの隣人かもしれない。近所づきあいは大切にしなくては、と思って、ドアを開けると、案の定、TV受信料の集金。

スウェーデンも日本と同じように、公共のテレビ(SVT = Sveriges Television)とラジオ(SR = Sveriges Radio)に受信料を払うことが法律で義務付けられている。払う義務があるのは、自宅にTV受信機を所有している人、と定められている。日本ではNHKがテレビもラジオも運営しているが、スウェーデンの場合はSVTとSRは別の団体。その両方が、この受信料によって賄われているのだが、払うのはTV受信機を持つ人のみで、ラジオだけを持つ人には義務はない。

受信料は国会で定められる。2006年は1年で1968クローナ(約3万円)となっている。集金を担当しているのはRadiotjänstというSVTやSRの共同出資の団体。なるべく多くの人に払ってもらおうと、CMでは「1日あたりたったの5クローナ(60円)」と言ってはいるけれど、こうやって1年あたりで見るとかなりな額になる。

やはり日本にいたときと同じで、避けられるものなら避けて通りたい。でも、こうしてせっかく訪ねて来てくれているので、別に隠すこともない。スウェーデンでは、テレビも民放を含めていろいろチャンネルがあるものの、やはりSVT(1チャン、2チャン)を見ることが多いし、ラジオのSRにはかなりお世話になっている。TVの所有を認めた上で「実は最近ここに引っ越して来たばかりで・・・」と寝ぼけたことを言うと「じゃあ、今日の分からでいいから」と、かなり優しい返事。法律には「TVの所有を自分から申告しない場合は罰金」と厳しい言葉。

集金を担当しているRadiotjänstは、キルナに本部がある。おそらく地方の過疎・失業対策でそこにわざわざ本部が置かれたのではないかと推測する。Radiotjänstはキルナから、受信料を払っていない家庭に電話をかけて催促する。(スウェーデンでは、国内どこにかけても電話料金は同じなので、キルナから電話を掛けようが費用は一緒。これは地方の過疎対策に意味を持っているのではないかと思う。)私は、現在の新居では固定電話をつけるのをやめたのだけれど、今回のような家庭訪問もあるのだ。

聞いた話だと、特殊な装置で電波を感知して、TVの有無を家の外から調べたりもする。一方で、RadiotjänstはCMやホームページで「今週は××市と××市を重点的にチェックします」と公開しているので、注意していれば、電話や家庭訪問を避けることもできそうな気がする。

スウェーデンの世帯の何%がちゃんと払っているのか、ちょっと明確な数字が分からない。ただ、統計では、スウェーデンの339万世帯が受信料をちゃんと払っているとのこと。スウェーデンの総人口は900万人。ここから、総世帯数を概算すれば、何%か推測がつきそうな気がしますが、それは皆さんにお任せします。

再び優勝!

2006-05-29 16:36:03 | スウェーデン・その他の社会
サッカーのワールド・カップが4年おきに行われるように、アイスホッケーのワールド・カップも4年おき。今年の開催国はラトヴィア。その決勝が首都であるリガで先週日曜日に行われた!

オリンピックでのスウェーデンの優勝がまだ記憶に新しいが、この決勝まで残ったのもまたもやスウェーデン。対するは、チェコ。得点が次々と決まり、なんと4-0で、このワールドカップも制したのだ!


ストックホルムのセルゲル広場。ロータリーの交差点の真ん中に大きな噴水があって、何か祝い事があると、なぜかそこに飛び込んで騒ぐ。

オリンピックとワールドカップの両方で同じ年に優勝するなんて、滅多にないこと。
スウェーデンの強みは次の4点だと、専門家は言う。
① スター選手がいること
Henrik Zetterbergなど。
② ゴール・キーパーの強さ
スウェーデンで一番のキーパーが、このワールドカップでは実は抜けていた。しかし、その代わりにナショナル・チームに加わったキーパーが抜群の強さを発揮した。
③ 辛抱強さ
相手が急(せ)かしてきても、動じることなく、常に冷静に、そしてシステマチックにプレーをする。そして、チャンスが来ると、ここぞとばかりに攻勢をかける。
④ 控えの選手の厚み
アイスホッケーでは、プレーする選手が一つの試合の間に次々と代わるので、控えの選手も重要な要素となる。

写真もいくつか

日本のアイスホッケーも、実はこのワールドカップに毎回参加している。しかし、結果はあまり芳しくない。たしか、いつも全敗だった気が。それでも、毎回参加できる。というのも、アジアから唯一の参加国だからなのだそうだ。

前回のワールド・カップの開催国はスウェーデン。その時は、ストックホルム・ヨーテボリ・ヨンショーピンでグループ予選が行われ、日本を含む4カ国が、ヨンショーピンで白熱する試合を見せてくれました。

真夜中の爆発音

2006-05-27 18:10:49 | スウェーデン・その他の社会
水曜日の深夜1時半に、100を越える通報がストックホルムの警察署と消防署に寄せられた。どれも「近くで“爆発”らしき音が聞こえ、自宅が揺れた。」と言うのだ。

ストックホルム警察はパトカーやヘリコプターを出動させて、その“爆発現場”を突き止めようとしたが、夜中かかってもそれらしきものは発見できなかった。

観測所からの報告で、後になって明らかになったのは、それが地震であったこと。震源はストックホルムの地下3.8キロ。マグニチュードはたったの2。震度は不明。震源が浅いので、このマグニチュード2であっても体感はもうちょっと大きめかもしれない。とはいっても、せいぜい震度2がいいところだろう。(その晩は、私もストックホルムにいたのだけれど、同じ町なのにそこでは何も感じなかった)

スウェーデンでは、地震なんてほとんどない。だから、ちょっとした地震がごくたまに来ると、こうやって飛び上がってしまう。大きな爆発か? それとも、隕石の衝突か? はては、この世の終わりか? と。

今回の地震でも、ある人は「同じアパートの住人がピアノを倒したのか、金庫を落としたのかと思った」とか「突然、床全体がゆれて、何かが崩れ落ちるような音がした。窓を覗いて、隣のアパートがまだ立っているか、確認した。」「まさか、こんな時間にトンネル工事なんてしないとしたら、誰かが勝手にダイナマイトを起爆させたのか・・・?と思った。」 こうやって、新聞が読者からの感想を募っているところが、スウェーデン人にとっての“ことの大きさ”を感じさせてくれる。でも、読んだところによると、振動が続いたのはわずか2、3秒だったらしい。

この程度の小さな地震でも、年に1回あるか無いかだ。一番最近、私が地震の話を耳にしたのは、ちょうど一年前、マルメであったマグニチュード2の地震。このときも、通報が相次いだらしい。

地震が少ない国。だから、ガムラスタンにあるような古い建物が今でも残っているし、現在の住宅も、日本では到底考えられない建築基準で建てられている。

※後記:
今回のようにかなり浅いところで起きる地震の場合は、バイブレーションというよりも、むしろ一瞬の衝撃波のように、感じられるのらしい。

ウォー、落ちる、落ちーるー!

2006-05-24 05:10:09 | スウェーデン・その他の経済
ジェットコースターのことでも、ダイビングのことでもありません。株式市場の話

スウェーデンの企業は2004年、2005年と業績を伸ばし、株価もそれに応じて上昇してきていた。私も貯金のほとんどを投資信託にしている。年始めに買ったのは「スウェーデン中小企業」「ノルウェー資源・IT関連」。両方とも、過去3ヶ月の間に20%も成長してきていた。シメシメ。

ところが先週、ガクンと一発、痛いのがやってきた。4%近い暴落だ。スウェーデン経済も頭打ちか・・・? いやいや、2006年のうちはまだ大丈夫という分析をその前の週に読んでいた。まだ、売らない。

その二日後、またガクンと一発。今度も3%を上回る暴落。まだ落ちるか。いや、もう大丈夫だろう! これから上に向かうはず! 結局、手放さなかった。

そして、月曜日。ウォー、落ちる、落ちーるー! なんと、5.3%、まるまる急降下! ストックホルムの株式インデックスによると、今年始めからの上昇分が、ほとんどパーになったとのこと。現代の歴史の中でもかなり大きな下落幅。こんな風に3段階で落ち続けるのなら、私も最初に手放して置けばよかった。でも、後の祭り。でも、不可解なのは、これといった要因が見つからないこと。ある新聞は、これまで株価が過大評価されていたから、と書くものの、スウェーデン企業の業績は総じてよく、ファンダメンタルズはあるから、あまり納得できない。別の新聞は、最近の石油価格高騰が原因だ、と説明する。あるいは、他の新聞は、半ばやけくそで「株式市場が一時的に風邪を引いてしまったから」と書いてみたり。

ストックホルム市場のインデックス(過去1年間)

スウェーデンでは、個人投資家が直接、もしくは投資信託を通じて、株を保有している率が世界的に見てもかなり高く、株価の変動に対して、彼らが過剰に反応して売り買いするので、小さな変動でもそれが増幅されて、今回の大きな下落をもたらしているとも言えそうだ。

とにかく、私の小さなポートフォリオは、それまでの+20%が、たったの1週間で一気にマイナスに転じていた。決断せねばならない。もう、下がるだけ下がったか・・・? もし、そうだとしたら、そして、スウェーデン(北欧)経済がまだしっかりしているのなら、再び上昇するはず。それなら、今が買い時じゃないのか・・・?

いろいろ考えた挙句「ノルウェー資源・IT関連」を買い足すことにした。もともと、元手も小さく失うものはあまり無い。それに、原油価格高騰が原因ならば、石油輸出国のノルウェー株は再び上がってくるに違いない。「KÖP」(買い)のボタンを押す。

今日、火曜日はなんと一転。5.5%の急上昇。キター。電車男じゃないけれど、読みが当たりました。このまま上昇して、暴落以前の水準に戻ってくれれば、いいのだけれど。

ちょっとしたギャンブルの話でした。

ヨーロッパの新たな独立国

2006-05-23 05:28:53 | コラム
冷戦の崩壊後は東欧にたくさんの独立国が新たに誕生した。Eurovisionコンテストの書き込みでも触れたけれど、これらの国が大会に加わったおかげで、今では参加国が40カ国近くにも膨れ上がった。

そして、また新たな独立国が誕生することになった。モンテネグロだ。モンテネグロは、これまで隣国セルビアとともに、セルビア・モンテネグロという国を構成していた。それ以前は、ユーゴスラヴィア連邦という国の一部だった。

ユーゴスラヴィア連邦は1990年代前半に、まさに空中分解のように解体を始める。まずは、7日間戦争を経てスロヴェニアが独立し、そして、クロアチアボスニア・ヘルツェゴヴィナが血みどろの内戦の末に独立する。それと前後して、マケドニアも独立を果たす。残ったのはセルビアモンテネグロ。この両地域は「新ユーゴスラヴィア」と称するようになる。しかし、セルビアが再び力を蓄えていくことを恐れた国際社会の意向で、2003年からは「セルビア・モンテネグロ共和国連邦」という、2共和国の連合体に改組され今まで続いてきた。

クロアチアやボスニアでの紛争では、それに関わったそれぞれの側(クロアチア人、ボスニア人、セルビア人)の残虐行為の中でも、特にセルビア人やセルビア軍の残虐行為が、国際的な非難を呼ぶことになる。(サラエヴォの包囲、スレブレニツァの虐殺など) 当時、ボスニア内のセルビア人勢力や軍隊を統治していたカラジッチとムラジッチは、セルビア国内に逃げ込んでいるのではないかとされ、国際社会から引き渡し要求が再三なされていた。

それと同時に、1990年代末にはセルビア・モンテネグロ内のコソヴォ自治州での紛争が激化する。少数のセルビア系住民と多数のアルバニア系住民が衝突し、それにセルビア政府が軍隊を送り込んで鎮圧にかかる。ここでもセルビア側の行為が国際的な非難を集め、NATO軍の空爆やその後は経済制裁を受ける。セルビアは「バルカン半島の悪者」のレッテルを張られ、国際的に孤立してしまう。ミロシェヴィッチが2001年に国際戦犯裁判所に逮捕された後も、国内ではマフィアが暗躍し、経済はガタガタ。

そんな中、ずっとセルビアの影に隠れていたのが、このモンテネグロ。言語的にも宗教的にもセルビアとほとんど違いがなく(正教)、クロアチアやボスニアなどでのような衝突は起きなかった。国民のアイデンティティーとしても、セルビア人との共通性を見出す人が多かったようだ。

しかし、セルビアが国際的に孤立する中で、一緒にとばっちりに遭ってきたモンテネグロの不満は高まる。経済も疲弊し、国(地域)としてのイメージも悪い。観光が主要産業の一つであるモンテネグロにとっては大きな痛手だ。「セルビアに取られた人質同然」と現大統領は嘆く。独立すれば、EU加盟交渉にてこずるセルビアに足を引っ張られることなく、加盟を急ぐことができる。

セルビア・モンテネグロという一つの国ではあっても、先の書いたように2共和国の連合体なので、モンテネグロには独自の政府も軍隊も行政機関も国旗もある。通貨も違う。セルビアはディナー、モンテネグロはユーロ。(ただし、モンテネグロが勝手にユーロを使っているだけで、発券の権利はないはず)だから、2共和国を完全に切り離そうと思えば難しくはない。

2003年に「新ユーゴ」が「2共和国連邦」に改組されたときには、その後3年間は連合を維持することが定められた。その制約が解消した今年、先週日曜日に国民投票が行われ、独立に必要な55%をかろうじて上回って、独立が可決された。

ちょうど先週は、ヨンショーピンに住むボスニア人家族の所に泊めてもらっていたのだが、そこにあるバルカン地方の衛星放送を見ていたら、独立の賛否をめぐって、モンテネグロの政治家二人が、白熱する議論を交わしていた。賛成側の主張は、上に書いたことに加え、モンテネグロは中世に独立王国が存在し、地域的アイデンティティーがセルビアのそれとは違う、云々だった。対する反対側は、セルビアからの経済的援助なしにどうやって経済を維持していくのかだった。この点がモンテネグロにとっては痛いところ。モンテネグロは地元の言葉ではCrna Gora(ツルナ・ゴーラ)と呼ばれる。「黒い山」という意味だ。山岳地帯で、経済的にも後進地帯。人口はわずか65万人。アドリア海に面したところは観光で成り立っている。これからどうやって行くのか、とても見ものだ。

ともあれ、旧ユーゴスラヴィアを構成していた6つの共和国が、これですべてバラバラになることになった。幸い、今回は無血だ。あと残るのは1自治州。そうコソヴォ自治州。この将来が厄介な問題。ここは今だセルビア領内だけれど、事実上、国連の統治下だ。

Eurovision 2006

2006-05-22 06:58:33 | スウェーデン・その他の社会

Eurovision といえば、言わずと知れた(!)ヨーロッパの音楽の祭典。ヨーロッパ各国が、国内で選び抜いた歌手やグループに自国を代表させて、ヨーロッパNo.1を競うのだ。1955年から続く、歴史の長い大会だ。曲の種類としては、ポップもあればロックもあり、バラードもあれば、Folk音楽系もある。競う歌手やグループも、その国ではそこそこ知られている二流歌手であることもあるし、全くの新人であることもある。ある年は、大物が登場することもある。2003年のロシア代表はTatuだった。ステージでレズビアン・キスをするのかと話題になったものだ(結局なかったけど)。でも、基本的にCardigansのような大物は、他の代表に勝ち目がなくなってしまうためか、出さないことになっている。一方で、74年にスウェーデンを代表したのは(たぶん活動を始めたばかりの)ABBA。Eurovisionコンテストで見事No.1に輝き、ここから大ヒットの歴史が始まっていく。

最初は西欧の国々で始まったEurovisionも、冷戦の崩壊後は東欧諸国を始め、トルコやロシア、アルメニアなどの国も加わるようになり、参加国が40を越えるに至った。そのため、前年の大会で上位に輝いた14カ国と、予選を見事通過した10カ国の合わせて24カ国が決勝に参加できるというシステムになっている(毎年、システムの微調整がある)。

大会の開催地は、前回の優勝国。だから今年はギリシャで。その前年はウクライナだった。24カ国が次々と曲を披露し、その後、各国で電話による人気投票が行われるのだ(自国には投票できない)。集計した投票を国ごとに加算していって、ヨーロッパ全体の順位が決まるのだ。(国によっては電話投票の技術が発達していないとこもあり、そんな国では審査員が得点をつける)

去年のスウェーデン代表は、悲劇的な結果に終わり、最下位に近いところに落ち着いた。だから、今年の代表であるCarolaはまず、木曜日の予選を通過しなければならない羽目になったのだけれど、これを難なくクリアし、土曜日の決勝に挑むことになった。

各国の代表を見ていると、笑ってしまう。何でこんなのがいいの? といいたくなるのもいれば、リッキー・マ○ティンやシャキ○ラもどきもいる。それぞれの国での選抜を勝ち抜いてきたのだから、その国ではすごくカッコいいと思われて、人気があっても、ヨーロッパの他の国の人から見れば、全然たいしたことない、ということはザラにある。

この大会の表面的な部分だけでなくて、その裏側にある見えない力関係に目を向けると面白いことがたくさんあるのだけれど、長くなるので、それは別の機会に譲るとして。結果を簡単に。

今年の優勝はフィンランド。(私自身、まさかこんなのが、と思ったけれど優勝してしまった)以下、
2位:ロシア
3位:ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(← 私のFavorite)
4位:ルーマニア
5位:スウェーデン

以下、私のおススメの国の曲を見ることができます。(ビデオのための新しいウィンドウが開きます)

スウェーデン
Carolaを語らずして、スウェーデンを語れない!(次次回あたりの書き込みを乞うご期待)。15年ぶりのSchulagerカムバック。健闘、第5位でした。スウェーデン語版のほうがよかった。
ノルウェー
隣国ノルウェーは、北欧のノスタルジーを感じさせてくれる曲を披露。ノルウェー語が美しい。でも、14位と苦闘・・・。
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ちょっとだけバルカンびいき
ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
奥の深いバラードです。このミュージック・ビデオに登場するのはMostar(モスタル)という町。泣けてきます。あぁ、バルカンが懐かしい。旧ユーゴでは、地元のバーでお酒を飲んでいると、こんな音調の曲がよく流れていました。第3位。
クロアチア
去年と一昨年は確か、冴えないポップで登場したクロアチアは、今年は民俗音楽で挑戦。歌っているのは、Severina。地元の元アイドルです。私がクロアチアに住んでいた2004年には、愛人との“極秘”ビデオが巷に出回って、大騒ぎでした。13位。
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フィンランド
別にお勧めではないのですが、一応No.1に輝いた以上、紹介しておきましょう。最初は何だか「 Lord of the Ring」の収録と勘違いして来たのかと思ったけれど。第一印象とは裏腹に、今日のジムで、曲だけをBGMで聴いてみると、まんざら悪くない、と思ったりして。

脱石油依存のための委員会

2006-05-21 00:02:16 | スウェーデン・その他の環境政策
一見無理そうに見える目標を立てて、それを実際に達成するためには何が必要かと、現実的な方策を探っていくのはヨーロッパ諸国の得意技。1997年の京都議定書作成のときにEUが提案した「温暖化ガス15%減」がいい例だ。

スウェーデン政府が2005年12月に発足させた「Kommissionen mot oljeberoendet(脱石油依存のための委員会)」の活動内容は、

Kommissionens uppdrag är att vara rådgivande och att bistå regeringen i arbetet med att peka ut vägar som till år 2020 påtagligt minskar Sveriges beroende av olja.
スウェーデンの石油依存度を2020年までに劇的に減らすための方策を政府に助言する

こととしている。この委員会の戦術も、それと同じくらい画期的だ。


「脱石油依存のための委員会」は再生可能なエネルギー源として、風力発電などのほかに、森林資源の活用に関しても積極的な提案をしている。

① 20分の1の森林で、杉をスピード栽培することで、収穫までの時期をこれまでの60~70年から40~45年に短縮する。

② 成長の早いポプラやアスペンなどの広葉樹の植樹を50万ヘクタールを目標に促進する。

③ 間伐材や打ち落とした枝の、エネルギー源としての利用率を高める。

これらの方法によって、バイオマス(生物系エネルギー源)の利用量を拡大して、エタノール熱源に変えていこうというのだ。バイオマスによるディーゼル燃料の生産も可能になるという。

推計によれば、技術革新や価格設定、供給がうまくいけば、現在使われているガソリンやディーゼル燃料の2/3を、2020年までにバイオマス燃料でまかなっていけそうなのらしい。

これらの提案は、議論も呼ぶ。森林の生態系を劇的に変えてしまう恐れもあるからだ。森林における多様性も失われかねない。スピード育成を図るために多量に肥料を散布すれば、川や湖の富栄養化も心配される。

こういった懸念にも関わらず「脱石油依存のための委員会」の議長は動じない。「石油への依存を劇的に断ち切ろうと思えば、思い切った発想の転換が必要であり、しかも、これらの計画の発表は、いわばビジョンにしか過ぎず、これから具体的な案の策定をしていくからだ」というのだ。

スウェーデン語にförsöksballong(試験的に打ち上げられる気球)という言葉がある。センセーショナルで一見して突拍子もない計画を立ち上げ、世論や専門家からの反応を見ながら、さらに計画を深めていく、という戦術を喩えてこう呼ぶのだ。将来に関してペシミスティックであるよりはオプティミスティックであったほうがよい。このような戦術で、これからも積極的な提言をしていってほしいものだ。

新しいディーゼル車の導入

2006-05-19 15:55:49 | スウェーデン・その他の環境政策
ディーゼル・エンジンに対する環境基準は、EUがEuro3という基準を現在設けているが、2009年からEuro5という基準に格上げされることが決まっている。Euro5はEuro3に比べ、窒素酸化物が60%減、微小粒子の排出も80%減という、きわめて厳しい環境基準だ。

しかし、Volvoはヨーテボリ市周辺のゴミ収集を行っている企業との連携で、この新しい環境基準Euro5を満たしたゴミ収集車を既に開発し、ヨーテボリ市周辺で実用化を始めている。

お金のかかる環境投資をなぜ民間主体がそんなに急げるのか。その背後には、環境行政側の強い意向もある。

この新しいゴミ収集車が搭載しているディーゼル・エンジンは、排気ガスを尿素に一度通すことで、上に挙げた有害物質の排出を抑えている。しかし、尿素は消耗品で補充が必要となる。そのため、尿素の補充がどこでも容易にできるように、ガソリンスタンドに似た補充ネットワークを今後、構築していかなければならない。行政側の意向としては、まずゴミ収集車を手始めに新しいディーゼル車を導入し、尿素の補充ネットワークをヨーテボリ周辺、そしてスウェーデン中に既に築いていくことで、近い将来Euro5が一般の長距離トラックにも適用されるようになった時に、新しいディーゼル・トラックがスムーズに導入されることを狙っているのだ。

新しい技術を開発する側と、それを実際に使う側、そして、環境政策を推進する側の3主体の協力があってこそ、こうした思い切ったことができるようだ。もちろん、Volvoにとっても、新しい環境技術に力を入れることで、将来、EU内で需要が膨らんだときに、価格と技術面で優位に立てることは言うまでもない。

ツイている日

2006-05-18 07:10:20 | Yoshiの生活 (mitt liv)
毎朝ぎりぎりのところで逃してしまう16番バスが、今朝はなぜかちゃんと待ってくれて、乗ったとたんに出発。途中の乗換駅でも、バスを降りたら、すぐに路面電車1番がやって来て、待ち時間なしで乗り換え。

夕方のジムでは、90分間の自転車耐久に見事、耐え抜くことができ、しかも、帰りにバス停に向かう途中で、後ろからYoshi!と叫ぶ声がするので、振り返ると、そこにはJohan。旧ユーゴでのインターンシップの半年間を一緒に頑張ったスウェーデン人。ストックホルムに住んでいるのだけれど、今日はたまたまヨーテボリに。スウェーデンの世間は相変わらず小さい。

彼との立ち話のために逃した、と思ったバスも、私がバス停に着くと同時にやって来た。

それにしても、ツイている日はとことんツイているのはとても不思議。サイコロでゾロ目が6回連続で出たときの気分。それと同じ確率的なことなのだろうけれど。

スタジアムに漂う 魚の香り・・・?

2006-05-17 16:20:01 | スウェーデン・その他の社会
東のストックホルムと、西のヨーテボリが対抗意識を燃やしているのは、以前に書いたけれど、それを象徴する笑える話を聞いた。

週末、サッカーの第1リーグを観戦しに行った友達の話。彼はストックホルムの老舗AIKの大ファン。対戦相手は、遥々ヨーテボリからやってきたGAISだ。(このGAISは前シーズン、第2リーグで優秀な成績を収めて、第1リーグに昇格してきたばかり。)

地元ストックホルムのAIKファンがスタジアムを占拠し、遥々やってきたヨーテボリ・GAISのファンは肩身が狭い。そんな中、AIKファンのスタンドからは、試合の間ずっと、こんな声援が聞こえてきたと言う・・・。

"♪~Alla som kommer från Göteborg luktar fisk~♪"
"♪~ ALLA SOM KOMMER FRÅN GÖTEBORG LUKTAR FISK~♪"
"♪~ALLA SOM KOMMER FRÅN GÖTEBORG LUKTAR FISK~♪"

♪~ ヨーテボリからやって来る奴らは、魚臭いぞ ~♪

これに対抗して、GAISの側も、盛んに何か言い返していたらしいけれど、多勢に無勢、ほとんど聞こえなかった。

これがジョークで済めばいいのだけれど、対抗意識も白熱してくると度を越し、乱闘になることもよくある。だから、スタジアム周辺には、いつも試合の前後に、数十人もの機動隊が構えている。

Goteborgsvarvet(ハーフマラソン)

2006-05-14 06:23:57 | スウェーデン・その他の社会
一般の人が参加できる夏のスポーツ・イベントは、多くが5月、6月に集中している。スウェーデンでは6月後半から7月終わりまでは夏休みになり、国内・外を問わず、あちこちに出かけてしまう。だから、それまでに開催してしまうのだ。もしくは、8月以降に行われるものもあるけれど、こちらはちょっと稀。(そう、スウェーデンでは今の季節を既に夏と呼ぶのです!)


ヨーテボリの一大イベント「Göteborgsvarvet」が晴天下で行われた。ハーフ・マラソンの大会なのだ。市内に近いSlottsskogenという市民公園からスタートして、橋で運河の対岸へ渡り、Lindholmenの造船所跡を走り、再び橋を渡り、アベニューを突破し、ポセイドン像を拝んでから、今度はヨーテボリ大学のHandels校舎で左折して、再びSlottsskogenでゴールする、という運河と市内の一部を一周するコース。でかいのはコースだけでなく、参加者の数も! なんと、4万人近くが参加するのだ。

スタートは一斉ではなく、グループごと。
15:00 ・・・ エリート・グループ1000人
15:03 ・・・ スピードを競うその他の人たち 2500人、警察官・消防隊員1000人
15:06 ・・・ 過去26回すべての大会に参加してきたベテラン 約500人
その後は、主に楽しみで走る人々が6分ごとに、3000人ずつのグループでスタートを切っていく。最後のグループがスタートするのは16:10。

私は自転車で参加。いや、もちろん観客として。自転車で移動しながら、いくつかのポイントで応援。やっぱり、見ているだけでも血が騒ぎます。21kmなんて、走る身になれば途方もない距離だけれど、一歩一歩前に進むことで、着実にゴールに近づいていく。その粘り強さ。私の自転車乗りにも通じるところがある。

Göteborgsvarvet(ヨーテボシュヴァルヴェット)というネーミングが面白い。"varv"というのは2つの意味があり、①造船所、と②周回、の意。ヨーテボリはもともと造船業が盛んで、運河に沿って、あちこち造船工場があって、それに従事している市民もたくさんいた。だから、"Göteborgsvarvet"はヨーテボリの心そのものなのだ。その意味を、市内を一周する(varv)、ハーフマラソン大会と掛けてあるのだ。

写真を撮ったので、以下のリンクからどうぞ。20枚の写真がアルバム形式になっています。右下の矢印で前後ができます。(コースの前半のみ。)


あと一ヶ月で今度は私の出番。自転車で300km駆け抜けます!

エチオピア・ディナー

2006-05-13 18:07:45 | Yoshiの生活 (mitt liv)
博士課程にいるエチオピア出身のMuluが論文の最終発表をして、無事に博士号を取得した。今日、金曜日はその祝賀会があった。彼は去年は長らくエチオピアに帰っていたから、ヨーテボリ大学の研究棟の喫茶ルームで顔を合せるようになったのは最近のこと。彼とはそれほど面識があるわけでもなかったけれど、祝賀会がヨーテボリ市内のエチオピア・レストランで開かれると聞いて、急に心が弾んだ。エチオピアの料理なんて、こんな機会が無い限り、滅多に味わえないはず・・・。

集まったのは、30人あまり。博士課程の同僚だけでなく、市内に住むエチオピア人も彼の祝賀に駆けつけた。人数は少ないものの、エチオピア人のコミュニティーもヨーテボリに存在して、ここ4年間、見知らぬ国スウェーデンに住むMuluの生活を家族さながら支えてくれたのらしい。(スウェーデンの生活で何が一番難しかったか、という問いに、彼曰く、スウェーデン社会が全く異質なものであること、そして、自国の料理がなかなか食べられなかったことだ、と言っていた。前者に関しては、スウェーデン語ができるようになると、社会に溶け込みやすくなると思う。)



料理は、鶏肉、そして牛肉をカレーで煮込んだもの。ご飯もバスマティ米をカレーで炊いたもの。ショウガとカレーの効いたシチュー、などなど、インド料理を思わせる物が多かった。蒸しパンのように柔らかいパンがあったが、これは発酵させられて酸味を帯びており、ナンほどおいしいとは思えなかった。具の無いシチューもあり、これはパンといっしょに食べるのらしい。



隣に座ったエチオピア人で、スウェーデンに長く住むという人と話をしたけれど、エチオピアはアフリカにある国と言えども、文化的には中東圏に近く、彼らが話すチグリニア語(ウル覚え)は、古ヘブライ語と関係が深いセム語系言語だと言っていた。じゃあ、宗教はというと、オーソドックス(正教)のキリスト教。また新しいことを耳にした。

それにしても、食事はビュッフェ形式で食べ放題、それに、今日は昼ごはん抜きで研究室にこもり、夕方は1時間、ジムでトレーニングをしていたので、腹はペコペコ。調子にのって、おかわりにおかわりを重ねて、ふと気づいたときには、もう手遅れ。食べ過ぎてしまった。食べた物が、胃に入りきらず、食道に達しているような感じ。苦しいので、水を飲もうと思っても、飲めない。まわりとの会話どころでは無くなってしまった。どこかで、しばらく横になりたいものの、そんな場所はない。

酒の飲みすぎのためにせっかくのパーティーを台無しにする人はよくいるけれど、私はこの数年、お酒に関しては全く大丈夫だった、と自負していた。まさか、食べすぎで、パーティーの後まで続かなくなるとは思ってもいなかった。

賑やかな席で、ちょっと顔を青くしながら、何とか切り抜け、ほうほうの態で家までたどり着くことができた。

特急X2000の一新

2006-05-11 07:38:31 | スウェーデン・その他の社会
1990年にデビューした時速200km級の特急X2000はここ2年の間に、旧車両を改装して新しいデザインに変えている。車体が灰色と銀色でコーティングされているのが改装後の車両の特徴。これに対し、改装前の車体は先頭車両と最後尾に白いコーティング、そして全体に青色の線が入っている。

リンクのページの下部に写真があります

車体のデザインと内装の一新だけでなく、新しいサービスも装備している。

インターネット・アクセス
車内に無線LANアンテナが設置され、ネットへのアクセスが可能に。無線LAN付きのノートパソコンを持っていれば、車内で使える。一等車の乗客には無料で、また、二等車の乗客は追加料金を払えば、接続のための暗証番号が提供される。

スウェーデンの鉄道は森と湖の大自然の中を駆け抜けるため、携帯電話網ですら届いていない所が多い。車内で携帯を使うとよく途切れてしまう。だから、インターネットなんか、さらに使い物にならないんじゃないか、と思われるかもしれないが、大丈夫。車体に衛星アンテナが取り付けられており、3GやGPRSなどの地上波による交信の補完として、衛星通信も利用するのだそうだ。そして、それを車内で利用者が分け合うのだ。ただ、回線の容量が限られているので、だいたい56kモデム程度の速さとか。メールや新聞を読むくらいなら事足りる。

私自身、まだこのサービスを利用したことが無いので、サービスの質のほうは分からない。


電源コンセント
私にとってはインターネットよりも嬉しいのが、各座席に備え付けられた電源コンセント。旧車両では一等車にしかなかったコンセントが、改装車両には二等車にも完備。これがあれば、ノートパソコンのバッテリー残量を気にせずに、使用ができる。DVDを見たりする時には最高。バッテリーのことを考えて、液晶の明るさを落とす必要が無くなる。

ただ、2006年5月の時点で、改装済みはすべてのX2000のだいたい7割か8割。さあ、帰りは借りておいたDVDを見るぞ、と思って張り切っていると、ホームに入ってきたのは旧車両。しかも、こういうときに限って、バッテリーが残りわずかで、期待していたDVDが見られなかったことが、何回あったことか・・・。

携帯禁止座席
これは新しいサービスかどうか分からないが、X2000の一部に携帯電話使用禁止の区画が設けられている。電車をしょっちゅう使う身としては、これはかなり有り難い。以前のブログにも書いたけれど、スウェーデンでの携帯マナーの悪さは特にひどい。あちこちで呼び出し音が鳴って、みんなかなり大声で話をするので、本や新聞を読もうと思ってもなかなか集中できないのだ。

だから、X2000の切符を予約するときは、必ず“mobilfri(携帯禁止)”の座席を指定している。まだ知名度が低いのか、それとも、そもそも携帯禁止座席に対する需要が少ないのか、ここの区画は割合空いている。たまに、普通の座席が満席で、あふれた乗客がこの区画にやってきて、そうと知らずにベチャクチャと携帯で喋られるのには頭に来るけど。

最近、SJ(国鉄)もこの携帯禁止座席の知名度を上げるべく、TVコマーシャルを始めた。隣に座った女の子が、四六時中、電話相手に大声で叫んでいて、乗客がうんざりしている、という設定。最後に「X2000なら"mobilfri"が選べますよ」とテロップが流れる。そういえば、SL(ストックホルム県地方交通)も、バスの座席の一部を"mobilfri"にしたとか。スウェーデン人も携帯マナーのひどさを意識するようになったことを、一連のこういった動きが意味しているのだといいけど。(そういや、1年前に新聞に載った私の投書、あれから紙面には何の反応も見られなかったけれど、少しは効果が現れ始めたかな・・・?)

静かな夕暮れ時

2006-05-09 06:48:27 | Yoshiの生活 (mitt liv)
日がどんどん長くなっていくこの季節。
太陽は夜の9時ごろまで顔を出し、黄昏の空も10時を過ぎるまで明るい。

透き通った空。
太陽に焼き焦がれる澄んだ空気。

シーンとした街。
時折あらわれる人影もまばら。
いつも不思議な気分になる。

まだ明るいのに誰もいない街並み。

日本であれば、明るい間は街はにぎやかな雑踏に包まれ、
日が落ちた後も、静けさの中に熱気が残る。

しかし、スウェーデンでは、
まだ明るいのに街はもぬけの殻。
皆、家路につき、
家族といっしょに夜の明るい時間を楽しんでいるのだろう。
もしくは、
街の一角のバーで、
外に椅子を並べてビールを飲んでいるのだろう。

そもそも、人口が少ないのもこの静けさの原因。
日本では到底味わえない、この不思議な感覚。

夕方、研究室をあとにし、
友人とSkålのジョッキを交わし、
もしくは、外でトレーニングに励み、
もしくは、研究室で徒然な時間を過ごし、

いざ暗くなった頃に家路に着くと・・・
あっ、もうこんな時間!
- テレビ番組、見逃した!!
- メールに返事を書く暇ない!!!
- ブログを更新する時間がない!!!!

と、
次の日、また寝不足の一日が始まるのである。


スウェーデンって、夜は今頃どのくらい明るいんですか? という質問を頂いたので。
5月8日 午後8時半ごろ です。

ストックホルム県内一律運賃

2006-05-07 03:54:38 | スウェーデン・その他の社会
ストックホルム県の公共交通(バス・地下鉄・近郊電車)を管理するSL (Stockholms lokaltrafik) が5月1日から思い切った料金制度を導入した。距離に関わらずすべての運賃を一律20kr(=300円)としたのだ。

距離に関わらないのだから、どこからどこまで行こうが20kr。ストックホルム県内で一番短い区間は127番バス沿線のTyska BottensVäg – Nockebyhov間の65メートル。キロ当たりの運賃に換算すれば307kr。一方、長い区間となると例えば861番バスの始点から終点、Kullstaplan – Gullmarsplan間の60キロ。キロ当たりの運賃は0.3kr。この差なんと1000倍。(もちろん、たった65メートルのためにバスに乗る人はいないだろうから、極端な比較であることは承知の上で)


随分思い切った運賃改正だが、これは乗車の都度に切符を買う場合の話。月間定期券のほうは、35年前からずっと県内一律料金だった(現在600kr)。だから、“県内一律料金”制度が、その都度買う切符にも適用された、というだけのことなのだ。

県内一律だと、ストックホルム市内に住んでいて短い距離を行ったり来たりする人は損をし、郊外から遥々やってくる通勤者などが得をする。だから、狙いの一つは、市内に住む人と、郊外に住む人に対する通勤費用の均等化だと言えるかもしれない。市内に住むことの経済的メリットが減れば、過密を緩和できる、ということだろうか(郊外からの通勤にかかる時間的費用は変わらないが・・・)。さらに、ストックホルム市内の住宅費用は高く、高所得者が主に住んでいるとし、一方で低所得者は郊外の比較的安い住宅に住んでいるとすれば、所得の再配分効果もあるのだろう。

とにかく、この改正で、公共交通の運賃が大幅に低下する。(というのも、20krと言えば、これまでは市内の初乗りがこれくらいの値段だったので) これで、マイカーの利用を控えて、公共交通に切り替える通勤客が増えることが、一番の狙いかもしれない。ただし、SLはそもそも採算が採れるのか、その議論はあまり聞かれないのだが、どうなのだろう?

最後に、ストックホルム県の北端から南端までの160kmも、20krで行けるのか!と期待される方もおられるかもしれないが、残念ながら無理。この場合、何度も乗り換えなければならない。一枚の切符で乗換えができるのは1時間以内。だから、単純計算で所要4時間とすれば、80krかかるということになる。