票の数え直し作業が金曜日から土曜日にかけて終了し、2014年国政選挙の結果が確定した。即日開票の結果から得票率が僅かに変わった結果、キリスト教民主党の議席が1つ減り、一方、環境党の議席が1つ増えることになった。環境党は4年前の国政選挙に比べてあまり振るわなかったが、同じ議席数を維持することができた。

投票率は、前回お知らせしたとおり1.2%ポイント伸びて、85.8%となった。第二次世界大戦後におけるスウェーデンの国政選挙投票率をグラフにしてみた。70年代・80年代には90%台に達した投票率はその後、80%にまで下がったが、いま再び上昇傾向にある。

今回、なぜ投票率が伸びたかについては様々な意見があるが、主なものを挙げると
・選挙キャンペーンをメディアが集中的に報道し、党首討論や政策ディベート、政党デュエルなど、政策論戦のテレビ・ラジオ番組が今年は特に多く、有権者の関心を惹きつけた。
・社会民主党を中心とする左派ブロックの優勢と、それにラストスパートをかけて果敢に差を縮める穏健党を中心とする右派ブロックの間の戦いがスリリングだった。
・政治に対する関心や信頼が低くて普段はあまり投票に行かない層を、スウェーデン民主党が惹きつけ、投票所に足を運ばせた。
・政治・政治家に対する有権者の信頼が近年、高まる傾向にある。その理由は私も考えている最中だが、簡単に思いつくものとしては、ヨーロッパの国々が経済危機や財政危機にさらされてきた中、スウェーデン政府が歳入・歳出をきちんと管理して盤石な財政を維持し、マクロ的な経済不安を払拭してきたこと。
・期日前投票の利便性の高さ。2010年の選挙では票を投じた人の33.3%が期日前に投票をしているが、今年の選挙ではその割合が36.1%に上昇している。
【 当選議員の男女比 】
当選した349議員のうち、男性は197人、女性は152人で、女性議員の割合は43.6%となった。前回2010年の選挙では45%だったから、若干低下してしまった。政党別に見てみると面白い。

多くの党において女性議員の比率は40-60%のスパンに収まっているのに対し、スウェーデン民主党の22%という低い数字が際立っている。また、自由党も26%と低い。自由党は選挙戦においては自らを右派陣営におけるフェミニズムの党だと主張し、「Feminism utan socialism」(社会主義に依らないフェミニズム)というスローガンを選挙ポスターにも用いていた。だから、この低い女性議員比率は党の自己イメージにとって大きな痛手となったことであろう。
(自由党のこの選挙ポスターを誰かがパロディー化して「Feminism utan feminism」(フェミニズム不在のフェミニズム)とか「Feminism utan kvinnor」(女性不在のフェミニズム)に変えて笑いを誘ったことがあったが、案外まちがいではなかったようだ(笑)。)

【 年齢別の議員比率 】
当選した議員のうち、最年少は21歳、最年長は81歳だ。年齢別に数えてみると、
選挙権も被選挙権も18歳から与えられるので、18歳や19歳の議員が誕生することは珍しいことではないが、今回は10代の国会議員は出てこなかった。一方、上記の「21-30歳」をより詳しく見てみると、21-25歳が12人いることがわかる。
過去の記事
2010-10-20: 18歳の国会議員の誕生
2010-11-08: グスタフ・フリドリーン 「議員が一生の仕事であってはならない」(その1)
2010-11-10: グスタフ・フリドリーン 「議員が一生の仕事であってはならない」(その2)
歳取った長老たちが幅を利かせているどこかの国会とは非常に対照的だが、他方で、スウェーデンの議会には60歳以上の議員がもうちょっといても良いのではないかとも思う。
下は、政党別の年齢比率と、年齢のメディアン(中央値)をまとめたもの。

極右のスウェーデン民主党に若い議員が多く、メディアンの年齢が38歳となっている。その次に若いのが、環境党、左党、自由党だ。
(注:ここでの年齢は生まれた年から割り出したもの。誕生日を一つ一つ調べて選挙投票日時点での年齢を割り出すのは面倒なので、誰もが今年すでに誕生日を迎えたという仮定で計算している)
上のグラフは10年スパンの年齢別グラフだが、5年スパンのグラフも作ってみた。ただ、煩雑で見にくくなってしまった。参考までに。


投票率は、前回お知らせしたとおり1.2%ポイント伸びて、85.8%となった。第二次世界大戦後におけるスウェーデンの国政選挙投票率をグラフにしてみた。70年代・80年代には90%台に達した投票率はその後、80%にまで下がったが、いま再び上昇傾向にある。

今回、なぜ投票率が伸びたかについては様々な意見があるが、主なものを挙げると
・選挙キャンペーンをメディアが集中的に報道し、党首討論や政策ディベート、政党デュエルなど、政策論戦のテレビ・ラジオ番組が今年は特に多く、有権者の関心を惹きつけた。
・社会民主党を中心とする左派ブロックの優勢と、それにラストスパートをかけて果敢に差を縮める穏健党を中心とする右派ブロックの間の戦いがスリリングだった。
・政治に対する関心や信頼が低くて普段はあまり投票に行かない層を、スウェーデン民主党が惹きつけ、投票所に足を運ばせた。
・政治・政治家に対する有権者の信頼が近年、高まる傾向にある。その理由は私も考えている最中だが、簡単に思いつくものとしては、ヨーロッパの国々が経済危機や財政危機にさらされてきた中、スウェーデン政府が歳入・歳出をきちんと管理して盤石な財政を維持し、マクロ的な経済不安を払拭してきたこと。
・期日前投票の利便性の高さ。2010年の選挙では票を投じた人の33.3%が期日前に投票をしているが、今年の選挙ではその割合が36.1%に上昇している。
【 当選議員の男女比 】
当選した349議員のうち、男性は197人、女性は152人で、女性議員の割合は43.6%となった。前回2010年の選挙では45%だったから、若干低下してしまった。政党別に見てみると面白い。

多くの党において女性議員の比率は40-60%のスパンに収まっているのに対し、スウェーデン民主党の22%という低い数字が際立っている。また、自由党も26%と低い。自由党は選挙戦においては自らを右派陣営におけるフェミニズムの党だと主張し、「Feminism utan socialism」(社会主義に依らないフェミニズム)というスローガンを選挙ポスターにも用いていた。だから、この低い女性議員比率は党の自己イメージにとって大きな痛手となったことであろう。
(自由党のこの選挙ポスターを誰かがパロディー化して「Feminism utan feminism」(フェミニズム不在のフェミニズム)とか「Feminism utan kvinnor」(女性不在のフェミニズム)に変えて笑いを誘ったことがあったが、案外まちがいではなかったようだ(笑)。)

【 年齢別の議員比率 】
当選した議員のうち、最年少は21歳、最年長は81歳だ。年齢別に数えてみると、
21-30歳: 42人(12.0%)
31-40歳: 77人(22.1%)
41-50歳:104人(29.8%)
51-60歳:101人(28.9%)
61-70歳: 23人( 6.6%)
71-80歳: 1人( 0.3%)
81歳- : 1人( 0.3%)
31-40歳: 77人(22.1%)
41-50歳:104人(29.8%)
51-60歳:101人(28.9%)
61-70歳: 23人( 6.6%)
71-80歳: 1人( 0.3%)
81歳- : 1人( 0.3%)
選挙権も被選挙権も18歳から与えられるので、18歳や19歳の議員が誕生することは珍しいことではないが、今回は10代の国会議員は出てこなかった。一方、上記の「21-30歳」をより詳しく見てみると、21-25歳が12人いることがわかる。
過去の記事
2010-10-20: 18歳の国会議員の誕生
2010-11-08: グスタフ・フリドリーン 「議員が一生の仕事であってはならない」(その1)
2010-11-10: グスタフ・フリドリーン 「議員が一生の仕事であってはならない」(その2)
歳取った長老たちが幅を利かせているどこかの国会とは非常に対照的だが、他方で、スウェーデンの議会には60歳以上の議員がもうちょっといても良いのではないかとも思う。
下は、政党別の年齢比率と、年齢のメディアン(中央値)をまとめたもの。

極右のスウェーデン民主党に若い議員が多く、メディアンの年齢が38歳となっている。その次に若いのが、環境党、左党、自由党だ。
(注:ここでの年齢は生まれた年から割り出したもの。誕生日を一つ一つ調べて選挙投票日時点での年齢を割り出すのは面倒なので、誰もが今年すでに誕生日を迎えたという仮定で計算している)
上のグラフは10年スパンの年齢別グラフだが、5年スパンのグラフも作ってみた。ただ、煩雑で見にくくなってしまった。参考までに。

さて、女性議員の比率が高いことには毎度感心させられます。本来は男女比は50対50であるべきなのですから、感心するばかりではいけないのですが、女性国会議員の比率がとうとう一割を切ってしまった日本と比べるとうらやましい限りです(しかも、わずかな女性議員の中には「名誉男性」みたいな者も多い)。
驚いたのは女性議員の比率が過半数を超えている政党の中に穏健党がいること。保守政党と言っても日本でいうところの「保守」とはかなり違うことがわかりました。極右の民主党ですら22%ですし。
高齢の議員が少ないのも問題がないわけではありませんが(高齢者の立場が議会に反映されにくくなるおそれがある)、スウェーデンの議員はあまりその地位に拘泥せず一定期間勤めたら身を引く方が少なくないので結果として高齢議員が減るという側面もあるのではないでしょうか。同じ人が何十年も議員であり続けるよりは新陳代謝が進むので、長い目で見るとメリットも多いと思います。
そうですね。日本では小選挙区制度が障害になっているように思います。
>驚いたのは女性議員の比率が過半数を超えている政党の中に穏健党がいること。
ただ、先ほど掲載した記事で書いたのですが、穏健党は候補者全体に占める女性の割合は40%を少し上回る程度ですし、トップ候補者に絞るとその割合は30%を切るので、男女平等という点では他の主要政党に劣っているようです。議員の女性比率が今回、過半数を超えたのは偶発的要因によるものだと思います。
>スウェーデンの議員はあまりその地位に拘泥せず一定期間勤めたら身を引く方が少なくないので結果として高齢議員が減るという側面もあるのではないでしょうか。
はい。そうだと思います。