さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】コン・ティキ号探検記

2023-04-22 09:12:24 | 読書録

トール・ヘイエルダール/河出文庫

先日、子供用に2/3のボリュームに要約された翻訳を読んで面白かったので、今回は大人用に全量訳したものを読んでみた。

大人用だから確かに言い回しが難しい。ただ印象としては、1つ1つの事象について子供用よりも事細かに書いてあり、著者の興味の深さが知れて面白いと思った。

特に感動したのは可動竜骨に関する話。竜骨というよりもセンターボードと言った方が良いのかもしれないが、例えば船を進ませたい方向があるとすると、可動竜骨をしっかり下げて運行する。まるで舵のような働きをする。逆に全て引き上げてしまうと、潮や風の誘うままに筏は進む。半分だけ下げると、進ませたい方向と潮や風に任せる場合の半分くらいの効果が出るという話だ。その竜骨も筏の前後に複数枚あるから、組み合わせればバリエーションができてくる。ただ、筏から落ちた人がいる場合、筏をくるっと回してその人を拾いに行くような機動性は期待できないようだ。

子供用からは全く省かれている話がある。それは大きなバルサの木を切るためにエクアドルに行った時のこと。その山の奥地は、雨季になると人が入れるような場所じゃなくなること、またとんでもなく残虐な民族が住んでいることから、ヘイエルダールは周りの人たちにめちゃくちゃ反対されるのである。そのとんでもなく残虐な民族が行うことを事細かに具体的に書いてあって、私もかなりショックを受けた。確かにこれは子供に読ませてはトラウマになってしまうかもしれない。

(なので、その件は薄く小さい字で表示するので、読みたくない人は飛ばしていただきたい。)

要は首狩り族のような人たちがいて、外部から入ってきた人の首を切っては頭蓋骨を砕き、代わりに砂を詰めると、生首のミニチュア(本作では「縮んだ頭」と称す)が出来上がる。それは拳大の大きさになっても、一目で誰の首かはわかるようなものらしく、実際に自分の友人が殺され、しばらく経ってから縮んだ頭となってマーケットに出てきた話を、現地の人がヘイエルダールに話している。買い取った後、最後は丁重に葬ったとのことであるが、そこまでの経緯が事細かに書かれており、私自身も数日はゾッとした気分が続いた。なのでヘイエルダールの頼みを聞いてジープを貸し出した軍人さんは、めちゃくちゃ武装した上で、ヘイエルダールに付き添って奥地へ行ったのである。ということで、そもそもコン・ティキ号が生まれる前から彼らの冒険は始まっていたのである。

子供用よりも写真が豊富なのも良い。丸太の写っている写真からは、筏がどれくらいの大きさであったかをしっかり認識でき、よかったと思う。私が想像していたものよりもずっと大きかった。

ヘイエルダールはコン・ティキ号以外にも、葦船とか、原始的な船による大洋横断をやっているようなので、その本もぜひ読んでみたいと思った。

 


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