竹田淳一郎/講談社ブルーバックス
小学校の時、めっちゃ理科好きだった私は、中学でつまづいた。
生物は一時期生物部にいたほど、大好きだったけど、化学は、物理よりはましではあったけども不得意科目に。
モルとかアボガドロ数が出て来てから、なんとなくすべての話が観念的に思えてきて面白くなくなったんだな。
それでも有機化学の初歩・・炭化水素やアルコール、芳香族化合物あたりまでは習った。文系だけど高3まではちゃんと化学とお付き合いし、大学の一般教養のテストでは100点満点を取って久々に教授に褒められた。
でもこの本を読むと、悔しいかな・・相当忘れている。
周期表・・私の習った頃は原子番号103のローレンシウムまでだったけど、今や118まであるのか。(ウィキペディアを見ると、さらに予測されている元素が173番まであるとか。ひぇぇ~!)
細かいところは読み飛ばしても、この本、なかなか面白い。
オトナになったからこそ興味を持つようになったことが、チラチラと挟まれている。
例えば、浸透圧のところで、梅酒を作るのに氷砂糖ではなく、粉砂糖を使うとどうなるか・・という話があった。
氷砂糖ならゆっくり溶けるので、最初焼酎がより濃度の濃い梅の実の中に入り込み、氷砂糖が十分に溶けた頃に逆に梅の実のエキスを含んだ焼酎が外部に染み出して美味しい梅酒になるんだとか。
もし粉砂糖を使うと、砂糖がすぐに焼酎に溶けてしまい、焼酎は梅の実の中に入れず、梅の実の水分だけが外にでてしぼんでしまい、梅の香りをあまり含まない甘いだけの焼酎が出来上がるんだそうだ。
またアルミニウムの話。
アルミニウムは電気分解で生産されているが、アルミニウムイオンが3価であることを考えただけでも銅の3倍以上の電気を食うが、そもそも電気分解をするためにアルミナを高温で融解し、溶融塩電解を行えるようにするのにさらに電気を食うこともあり、作るのに大量の電気を消費する。だがもし使用済みのアルミニウムを回収して元の地金にするのであれば、必要な電気量はアルミナから作る場合の3%にとどまるとのことで、リサイクルがいかに大事かということに納得した。
だが、私がもっともショックだったのは、遷移金属元素のところで出てきた銅の話。
ここからいきなり話がプリミティブになるが・・・10円玉って銅だと思ってたら、青銅だったの?
実は亜鉛と錫が数パーセントずつ混ぜられてるから、厳密には青銅なんだって。
純銅だと融点は1000度を超えるが、青銅にすれば融点は700度まで下げることが出来、かつ硬度も増して道具として使いやすくなる。
私は、ここまで来て、自分の受けた学校教育にちょっと腹が立ってきた。小学校の日本史の教科書にいきなり青銅器の話が出てきた時、土器の次が何で青銅なのとか、何で銅じゃなくて青銅なの?とかいろいろ思ったけれども、その疑問はずっと解消されなかった。
またよくわからない青銅で作られた剣や矛、銅鐸などが祭祀などに使われたことで、妙なオカルト的な魅力も感じたものだが、あの時「10円玉も厳密には青銅ですよ」と言ってもらえたら、もっと現実的なイメージを膨らませることが出来ただろうに。
さらに言うと、銅メダルも通常は青銅。英語だとBronze medalであり、Copper medalではないわけだ。美術の時間等に、この像はブロンズで出来ている云々というのが出てきたが、青銅で出来ていると言ってくれれば、もっと世界が広がったのに。
ひょっとして常識? 知らなかったの私だけ?
ということで、56歳になってもいまだにプリミティブな私なのである。