浅田次郎/講談社文庫
文庫版4冊のうち、あっという間に2冊を読み終わった。
やはり、これを読んでから「珍妃の井戸」を読んだ方がよかったかな。
西太后にしても老仏爺と呼ばれたり、慈禧太后と呼ばれたりする。一人の人物が何通りにも呼ばれるのにこの作品で慣れていれば、珍妃の井戸の導入部で困らなかったのに。
時代的には、幼帝として即位した光緒帝が、西太后による垂簾政治を脱し、そろそろ親政を始めたがっているところ。
糞拾いで生計を立てていた貧民の子・李春雲(春児)は、自ら浄身(去勢)し、宦官の道を目指し、諸芸を身につけ、西太后の目に留まり出世する。
春児と仲は良いが身分ははるかに上である梁文秀は科挙に第一等(状元)で合格し、進士光緒帝に仕える。
ただし、宦官と進士は別世界の人間であり、仲良くしてはいけないこと、片や西太后に支え、片や明治維新同様の立憲君主制による近代化を目指す光緒帝に仕えるという異なった道を歩むことから、彼ら二人は心ならずも袂を分かたざるを得なくなる。
これから先、戊戌の変法や戊戌の政変が待ち構えている訳で、二人の関係がどのようになっていくのかは気になるところである。
また1巻目では、ヌルハチや順治帝や乾隆帝の話、康熙帝〜乾隆帝に仕えたイタリア人カスティリオーネの話、香妃の話なども出てくるので、清朝の歴史をざっと俯瞰することもできる。
日清戦争の相手方である李鴻章は優れた人物として書かれている。日清戦争の実態は日李戦争であった・・つまり李鴻章は他から協力を得られぬまま私兵を率いて日本と戦ったというのである。ここまで貧乏くじを引いた人はいないのではないか・・と思われるが、そんな中でも賢く立ち回った人なのであった。彼の部下が袁世凱であり、案の定、狭量な人物として書かれている。
宦官をどのように作るか・・という部分も事細かに書いてあって興味深い。