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巡洋戦闘艦タイガーウィンドウの航海 第1回 出航

 紀元2017年、トリの年、なかつ国は軍港ワイドシマ沖合の停泊中の戦艦カプ。そのカプとの海戦が、巡洋戦闘艦タイガーウィンドウの今年初めての海戦である。そう、タイガーウィンドウの出航は母港コシエンではなく、敵地ワイドシマの軍港からの出航である。
北方の大陸エークラス。その大陸の最高峰ニホンシリズの頂にあるといわれる伝説の秘宝「ワスレモノ」を探し求める143パーセクの航海が始まった。
タイガーウィンドウは新兵器イトが期待通りの性能を発揮。トメ砲、トリ砲も発射。敵戦艦カプに砲撃を加え、効果的に損害を与えた。しかし、撃沈とまではいかなかった。それが災いしカプの反撃にあう。カプの主砲タカヒの砲撃を受けたが損害は軽微。戦闘の後半はトメ砲の巨弾がさく裂。終盤に近接防御用40ミリマテドリ機関砲でカプのとどめを刺した。  
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とつぜんSFノート 第87回

 星群祭。創作集団星群の会が主催したSFイベント。「創作」を主たる話題として年に一度、真夏の京都で行われる。1974年が第1回で1981年までに8回行われた。もちろん1982年も開催された。ところがこの年の星群祭はたいへん異例な星群祭であった。
 第9回星群祭は1982年7月25日、京大会館で行われた。テーマは「書くことの意義」ゲストは、新井素子、荒巻義雄、風見潤、桐山芳男、柴野拓美、高井信、巽孝之、谷甲州、豊田有恒、堀晃、眉村卓、安田均、横田順彌の各氏。ゲストが多く豪華な陣容であったが、この星群祭は通常の星群祭であった。異例でもなんでもない。
 では、なぜこの年の星群祭が異例なのか?この年、星群祭が二度行われた。7月の星群祭が上記の第9回星群祭。8月にも星群祭が行われたのだ。しかも京都ではなく東京で。これが異例なのだ。星群祭が京都以外行われたのは2回だけ。1度目がこの1982年の8月東京。2度目が2002年島根。
 1982年8月。東京で第21回日本SF大会TOKON8が開催された。この大会の主力メンバーはイスカーチェリ、科学魔界、SF論叢といったファングループ。いずれもたいへんにサーコンなグループである。したがってこのTOKON8もサーコンなSF大会である。
 SFファンは大別すれば2種類に分類される。ファンニッシュなファンとサーコンなファン。ファンニッシュなファンはSFをネタに遊ぶ。SFを楽しむ。いわばSFを消費するファンがファンニッシュなファンといえよう。
 サーコンなファンはまじめにSFを創作、評論、研究しようというファン。SFを創る建設的なファン。もちろんSFのためには双方のファンが必要である。
 星群は創作同人誌であるからサーコンな性格のグループである。上記の三つのグループもサーコンなグループで星群の友好団体であった。
 この年の前年、1981年のSF大会は大阪であった。第20回日本SF大会DAICON3だ。あのオープニングアニメのDAICON3である。このDAICON3の中心人物は武田康廣と岡田斗司夫。のちにゼネプロを創り、ガイナックスを創った連中である。この二人とその取り巻き連は典型的なファンニッシュなファンで、とうぜんDAICON3もファンニッシュな大会であった。小生もこのDAICON3には参加したが、少々違和感と不満が残る大会であった。
 だからTOKON8は大きな期待を抱いて参加した。そして、実は科学魔界の主宰者巽孝之氏から星群に協力要請があった。巽氏はいま、慶大の教授でSF評論の第一人者といっていいだろう。彼とは以前からご交誼をいただいている。その巽氏の要請である。聞かねばなるまい。
 巽氏の要請というのはTOKON8内で大会内企画という形で星群祭をやってくれというモノであった。と、いうわけで星群祭が初めて京都を離れて、東京まで出張したのである。
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前立腺風雲録 第6回

 2008年7月18日。会社をおえて、JR芦屋で降りる。駅の北側にラポルテというビルがある。このあたりにはホテル竹園がある。このホテル竹園、巨人が甲子園で試合がある時の宿舎となる。近所のコンビニで菅野がすけべ雑誌を買ったり、近くの飲み屋で阿倍と坂本が高橋の悪口をいったりしてるかも知れない。小生もこのあたりをよくウロウロするが、そういうのを見かけたことはない。連中、ホテルに閉じこもってるのかな。それとも阪神タイガースに負けた反省会をしてたりして。一度、このホテルのレストランで食事をしたが、但馬牛の肉はさすがにおいしかったが、スープやサラダは小生でも出せる味であった。
 それはともかく、JR芦屋の北側出口。地上へ降りないで2階の通路を歩く。まっすぐ行くとホテル竹園。つき当たりで地上へ降りて少し北へ。そこがラポルテ北館。歩いてほんの5分ほど。この5分間はドキドキの5分であった。1週間前に受けた針生検の結果を聞きに行くのである。小生は、どっちかというと楽天的なほうに分類されると自分では思っているが、だいじょうぶ。癌なんかではあるもんか。あははは。と、いう気持ちにはなれない。気分はまっ黒け。雫石には白雫石と黒雫石の2種類あるが、この時の雫石はまっくろくろすけの黒雫石であった。
 吉田泌尿器科に入る。診察券を受付に出す。待合のイスに座る。小生は病院の待ち時間は本を読んでいるのだが、この時は本を読む気分にはとうていなれなかった。
 先生に呼ばれる。診察室に入る。先生が発した言葉が世界を一変させた。暗転というのがあるが、これは光転というのだろうか。
「生検の結果は異常なしです」
 まわりに立ち込めていたまっ黒な霧がさああっと晴れた。光がまわりに満ちた。
「前立腺の10ヶ所から細胞を取りましたが、どれも異常なしです」
 小生、胃潰瘍持ちである。最近こそピロリ菌除菌が効いたのか発症してないが、10年ほど前までは、4回出血入院している。その最初の胃からの出血の時は心配した。胃癌の可能性も否定できないと医者にいわれてたから。
 もちろん胃の内視鏡検査を受けた。小生の胃の中の様子を写すモニターを見ながら医師どうしが言葉をかわしている。聞き耳を立てるがよく聞こえない。内視鏡が動くのが判る。それが止まるとビク。なんぞ異変があるのか。癌ではないか。医者の言葉のハシに「が」という音が聞こえるとドキッ。
 内視鏡の結果はすぐ判る。「異常なしです」ホッ。小さく安心。
「胃壁の細胞を摂取しました。その細胞で癌の検査を行います。結果をまた聞きに来てください」
 結果を聞きにいった。
「異常なしです。癌の所見は認められません」ホッ。大きく安心。
 前立腺の針生検の結果を聞いたときは、あの最初の胃の内視鏡検査の結果を聞いた時以来の、大きな安心であった。
「これで、とりあえず前立腺癌の心配はないですが、PSAは6ですから前立腺肥大は肥大です。1年後にまたPSAを計りに来てください」
 吉田泌尿器科を出てJR芦屋に向かう。その道中は来た時とはまったく違う世界であった。夏の夜ではあるが、こころは快晴であった。
   
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SFマガジン2017年4月号


SFマガジン2017年4月号 №720 早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター

1位 白昼月  六冬和生
2位 航空宇宙軍戦略爆撃隊(後篇) 谷甲州
3位 ルーシィ、月、星、太陽    上田早夕里
4位 最後のウサマ         ラヴィ・ディドハー 小川隆訳
5位 ちょっといいね、小さな人間  ハーラン・エリスン 宮脇孝雄訳
6位 エターナル・レガシー     宮内悠介
7位 ライカの亡霊         カール・シュレイダー 鳴庭真人訳
8位 精神構造相関性物理剛性    野崎まど
9位 製造人間は主張しない     上遠野浩平

連載
忘られのリメメント(新連載)    三雲岳斗
小角の城(第43回)         夢枕獏
椎名誠のニュートラル・コーナー 第54回
らくだ               椎名誠
プラスチックの恋人(第2回)    山本弘
幻視百景(第7回)         酉島伝法
近代日本奇想小説史(大正・昭和篇)(第30回) 横田順彌
SFのある文学誌(第51回)     長山靖生
にゅうもん!西田藍の海外SF再入門(第14回) 西田藍
アニメもんのSF散歩(第15回)   藤津亮太
現代日本演劇のSF的諸相(最終回)  山崎健太

正解するカド小特集

 ベスト・オブ・ベスト2016ということで、毎年恒例の企画。「SFが読みたい」2017年版で、2016年国内1位の上田早夕里、ハーラン・エリスン、2位の宮内悠介が短編を発表している。
 小生のひとりカウンターで3位の「ルーシィ、月、星、太陽」5位「ちょっといいね、小さな人間」6位「エターナル・レガシー」がそれである。
「ルーシィ、月、星、太陽」オーシャンクロニクル・シリーズ。「ブルームの冬」のあとの海の中を描く。
「ちょっといいね、小さな人間」小さな人間をつくる。みんなほめてくれた。あのエリスンがトシのせいかずいぶん丸くなったもんだ。 
「エターナル・レガシー」その男はZ80と名のった。そうあのZ80である。しかし宮内悠介ってそんなトシだったのかな。ああ、なつかしのシャープMZ80、NECのPC-8801。
 今号は八つも作品が読めた。とりあえず満足である。8位と9位はまったく面白くない。特に8位。たいそうな名前のショートショートであるが、なんということもない作品。
 甲州の新・航空宇宙軍史。さすがである。特務艦イカロス42の艦長早乙女大尉は軍司令部からの命令に違和感を覚える。どうする。しかし、この作品前篇は昨年の10月に出たのだぞ。甲州が悪いのか編集部が悪いのか知らないが、一挙掲載はできなかったのか。せめて12月に出た2017年2月号に掲載できなかったのか。
 1位にした六冬和生。月面都市在住の女探偵が主人公。この作者、新人ではあるがなかなかの手だれ。デビュー作を読んだときは、なかなかの腕力の持ち主だと思った。軽快な文章でエンタメ作家としての大きな可能性を感じる。方向性はまったく違うが、田中光二がデビューしたときもこんな感じだった。この作家のびるぞ。 
          
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イカナゴ イカナゴ イカナゴ

 18日に播磨灘のイカナゴ新仔漁が終わった。これで大阪湾でのイカナゴ新仔漁は終わり。3月の7日に解禁になって、18日に終了。例年に比べてずいぶん短い漁期であった。来年の漁獲量を確保するための措置だそうだ。
 イカナゴ。われわれ神戸人にとってはソウルフードといってもいいだろう。イカナゴの新仔のクギ煮を食べなくては神戸には春は来ないのだ。
 クギ煮にするための生の新仔。年々高く入手しずらくなってきた。ウチで入手したモノはキロ3000円。神戸市内でところによっては4000円。しかも入荷量が少ない。東灘では少ししか店頭にならんでいなかった。ウチもタッチの差で入手したのだ。
 先日、明石の魚の棚に行った時、明石でもキロ3000円だった。量はさすがに多く店頭にならんでいたが。
 イカナゴの新仔のクギ煮。毎年、2回か3回煮るのだが、今年は1回だけになる。いまタッパに半分ほど有るが、それがなくなれば今年はクギ煮が食べられない。さみしいことだ。
 新仔よりもっと深刻なのがフルセ。イカナゴの成魚をフルセという。これを釜揚げにしたのが以前はよくどこのスーパーでもふんだんに売っていた。小生はアレを2杯酢で食べるのが好きで、この時期、おかずのリクエストを聞かれると、必ずフルセの2杯酢といったものだ。今年は明石で少しだけ売ってたから、それを食べただけ。
 知り合いの兵庫漁協のおじさんに聞くと、イカナゴの成魚は取ってはいけないそうだ。成魚を取ると来年新仔を生む魚が少なくなる。
 なぜこうなったのか。原因として考えられるのは、海水温の変化、餌となるプランクトンの減少、サワラが増えてイカナゴを食べている。
 う~む。日本はいったいどうなってしまうのだろうか。(サントリーの開高健のCMでこんなんあったな)もう、腹いせにサワラを食うのだ。
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あん


監督 河瀬直美
出演 樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、浅田美代子、水野真紀
 
長い芸歴の樹木希林。私もいろんな映画で彼女を見てきたが、この「あん」の徳江役は、間違いなく樹木希林の代表作となるだろう。
 仕事で人を感動させる。プロ野球選手のホームラン、画家の絵、落語家の高座、料理人の料理などなど。俳優は演技で人を感動させることができるわけだが、この映画がもたらす感動は、樹木の演技に負うところが大きい。
 ワケ有りの過去を持つどら焼屋千太郎の店に老婆がアルバイトに雇ってくれと来る。千太郎は最初は断るが、次に来た時、老婆徳江が自分でつくったといって、あんを置いてった。一口たべてびっくり。ものすごくおいしい。そのあんでどら焼きを作って食う。ドラ焼き屋のくせに甘いものが苦手の千太郎がどら焼き1個初めて完食。千太郎は徳江を雇う。うまいどら焼きだということで店は繁昌。それまで中学生の女の子ぐらいしか客はいなかったのが店の前には行列ができる。
 常連客にカナリアだけが友だちの女子中学生ワカナがいる。ワカナは千太郎とも徳江とも仲良し。この店にとって徳江はなくてはならない存在になるが、あるウワサで徳江は店を辞める。千太郎とワカナは徳江に会いに行く。徳江のいたところというのは・・・。
 徳江はなぜ店を辞めざるを得なかったのか。その理由に静かな怒りを覚える。なにはともあれ、樹木希林の演技力である。それまで業務用のあんを使っていた千太郎に手作りのあんの作り方を伝授するシーンは、ていねいに、詳細にあんづくりを描写していくのだが、徳江はあんの原料小豆をいつくしむがごとく、小豆に語りかけながら、あんを炊いていく。この場面はまるで、樹木希林自身があん作りの名人のようだ。
 カメラは接写ぎみ、音声もマイクを近づけて録音したような、河瀬監督の演出はリアルで、説得力のある画面となっている。感動的な秀作である。

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クロワッサンすしねたサンド


 2月にせぷさんが紹介していた、禁断のスシネタクロワッサンサンド。小生もまねして作った。このサンドのもとはロスアンジェルスだというから、たぶん、すしといってもカリフォルニアロールみたいなものではないか。
 クロワッサンに切れ込みをいれてバターを塗っておく。具はマグロの刺身。アボガド、卵焼き。マグロの刺身はづけにしておく。醬油と酒に30分ほどつけておく。アボガドはカットして、マヨネーズに醬油を少し、それにわさび。アボガドにはわさびがあう、まぶしておく。卵は焼く。少し薄めの厚焼きにする。卵焼き器に入れて加熱。これで卵液の下面が焼ける。ここでひっくり返す必要なし。そのままガスレンジ付属の魚焼きグリルにつっこむ。これで上面が焼ける。あとはレタスとこれらの具をクロワッサンにはさめばできあがり。
 で、食べた。まずくはないが、うまくもない。マグロがもったいないという印象。生魚はサンドイッチにあわない。せっかくのマグロの刺身。鉄火丼にしたほうがずっとおいしい。
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スペアリブの鍋


 にんじんの皮、長ネギの青いとこ、大根の皮、キャベツの芯、かぼちゃのへた。みなさん、こんな野菜のクズをどうしてはる。え、捨ててる。なんとまあ、もったいないこと。ウチは捨てんと置いてありまっせ。野菜を切ったあと、まな板の上に残る、こないなもんはみんなビニール袋に入れて冷蔵庫で保管してある。
 これでスープ取ったら滋味豊かなええスープができるんや。別にむつかしいことあらへん。これら野菜クズを水に入れて煮るだけや。どれぐらい煮るんか気にしたことないなあ。そやな。10分か20分ぐらいやな。
 この鍋のスープも野菜クズで取ったスープや。具は豚スペアリブと白菜、長ネギ、これだけ。シンプルなもんや。
 まずスペアリブをスープで煮る。30分も煮ればええんとちゃうやろか。もっと長いこと煮てもええで。野菜スープにスペアリブからええダシがでて、野菜と肉の複合ワザで、えもいわれん、ええ味のスープになるで。肉は骨付き肉の方がええ味が出るで。調味料は、ナンプラ、オイスターソース、醬油や。しめはラーメンやな。ウチは東洋水産の鍋用ラーメンをつかっとる。ちびまるこちゃんの絵が描いてあるヤツや。このラーメンけっこうおいしいで。
 この鍋、ワシのオリジナルやけど、ごっついうまいで。マネしてや。
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酒の味

 夜の9時を過ぎた。そろそろ店をしめよう。最後のグラスをみがき終えた鏑木はカウンターの外に出ようとした。
 風が入ってきた。桜のはなびらが1枚飛んできて、カウンターに舞い降りた。店の入り口に男が立っている。ドアが開いたときカウベルが鳴らなかったのはなぜだろう。ここは商店街の中だ。近くに桜の木はない。今は3月だ。早咲きの桜がどこかにあるのか。
「いいかな」
「どうぞ」
 男はカウンターに座った。男の肩にも桜の花びらが1枚。
「お飲み物は」
「バーボン。なんでもいい。ストレート」
 鏑木はメーカーズマークをグラスに入れてカウンターに置いた。初めての客だ。男はひと息で飲んだ。カタン。グラスを置いた。
「マスター」
「はい」
「この店は何年になる」
「そうですね。20年以上になりますね」
「20年か」
「おかわりしますか」
「たのむ」
 2杯目を置く。男はグラスを持つ。琥珀色の液体を見る。グラスの向こうに何かを見ているようだ。ゆっくりとグラスに口をつける。
「ふうう」
 軽い溜息をつく。
「なにかつまむものを出しましょうか」
「そうだな」
 グラスを傾ける。バーボンが半分になった。
「ピーナッツでももらおう」
 男は出されたピーナッツをふた粒つまんで食べる。
 2杯目のグラスが空になった。
「もう1杯」
 カタン。
 グラスを見つめる。
「なにが見えますか」
「過去だ」
 3杯目は、ゆっくりと途切れなく飲んだ。
「マスター」
「はい」
「俺はいままで酒は苦いもんだと思って飲んでいた」
「いまはどうですか」
「酒とは甘いもんだな」
「そうですか。酒はいつも同じ味ですよ」
「そうだな。ありがとう」
「いえ」
 男はだまって代金を置いて出て行った。春の夜風が吹き込んだ。桜の花びらが1枚、店の中に舞い込んだ。
「さて、しめようか」
 鏑木はスイッチを押した。玄関の「海神」とあるランタンの灯が消えた。

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とつぜん上方落語 第10回 寝床

 趣味。楽しみごとは自分だけで自己完結すべきや。自分がいくら好きで楽しいといっても人が好きかどうかわからへんやろ。失業中、契約で下半身の病気専門の薬屋でコピーライターとして働いたことがあった。そこの当主(社長やのうて当主)は詩吟が好きで、半強制で詩吟のクラブに入れられ、昼休みにうごうごと詩吟をうならされた。ワシ、それまで詩吟なんて縁のないもんやったんやけど、これですっかり詩吟が嫌いになってもた。おっさん、自分が詩吟が好きかも知れんが、せっせと詩吟嫌いを増やしとる。あほなおっさんや。
 このバカ当主と同じような旦那がでてくる落語があんねん。「寝床」や。これに出てくる旦那は大店の旦那で、アレさえなければ、なかなかけっこうな旦那やろな。アレとは旦那の趣味、浄瑠璃。おっさん自分ひとりで浄瑠璃をおごおごやってりゃええんやけど、素人浄瑠璃を人に聞かせたいちゅう欲望をおさえきれん。で、貸家の住人や店のもんを集めて浄瑠璃をむりやり聞かす。うまけりゃええけど、これが殺人的にヘタ。みんななんやかんや理由をつけて来やへん。すると旦那怒って、貸家の店子は店だてをくらわす、店のもんにはヒマを出すと、大騒ぎ。
 これ、浄瑠璃やからまだマシやけど、料理やったらもっとたいへんやな。ワシも料理するけど、食べるのはワシと家族だけや。だから被害はウチだけでおさまっとる。ワシのまずい料理で人様に迷惑はかけん。ところが「寝床」の旦那みたいなおっさんがおんねん。

「総務部長」
「はい、専務」
「こんどの日曜、総務部員全員、社長宅集合な」
「え、まさか」
「そや、そのまさかや」
「なんで総務だけ」
「総務だけやないで。ワシや常務、部長、課長、管理職全員や」
「他の社員は」
「考えてみいや。総務部員は組合員やない。管理職もや。あんなんに組合員を巻き込んでみい。ストライキおこされるで」
「あの専務」
「なんや」
「わたし、この前の健康診断で、血圧高め、血糖値糖尿1軍レベル、尿に潜血、GTP,中性脂肪、要精密検査、尿酸値35.PSA21という結果です」
「それがどうした」

「社長、本日はお招きいただきまして、まことにありがとうございます。ひさしぶりに社長のお料理をいただける。こんなうれしいことはありません」
「専務のいうとおりです。社長の手料理。ミシュラン五つ星もはだしで逃げ出しますからな」
「本日は特選素材を取り寄せて、ワシが特に腕によりをかけて作った。こころして食ってくれ」

本日のメニュー

前菜 くたくた菜の花のチョコレート和え
主菜 ポークソテー 大納言小豆のあんこソース 
スープ カツオの血合肉のオレンジ風味スープ
パスタ 鶏レバーと明石鯛の八丁味噌のフィットチーネ
パン  豆板醤クリームパン
デザート イワシのアイスクリーム なまこのジャム入り
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前立腺風雲録 第5回

 2008年7月11日、芦屋の吉田泌尿器科へ行く。前立腺の針生検の日である。名前を聞くだに痛そう。この日が早く来てとっとと終わらせたい。あるいは、こんなイヤな体験はできるだけ先になればいい。できれば、こんな日はずっと来ない方がいい。先生から電話がかかってきて、MRIを見直したが針生検は必要ないと判断しました。また、最悪は、想像以上に痛い検査で、のたうちまわりながら検査を受けたら、癌が見つかった。良い想像、悪い想像、さまざまな想いが頭を巡ったが、検査当日になってしまったのである。
 吉田泌尿器科の処置室に入る。まず浣腸されお腹の中を空っぽにされる。主たる目的は前立腺の針生検だが、念のため膀胱も見ましょう。と、いうことで膀胱の内視鏡検査も受けることになった。
 尿道にゼリー状の薬を入れられる。潤滑を良くして少しでも痛くないようにとのこと。内視鏡を尿道に突っ込まれる。小生、胃潰瘍持ちで憩室所有者だから大腸や胃といった消化器系の内視鏡検査は経験豊富だが、泌尿器系の内視鏡検査は初めて。痛い。膀胱は異常なしと判る。とりあえず、ホッ。
 ひき続き前立腺の針生検。いよいよ本番である。ドキドキ。お尻に麻酔を注射され、肛門にエコーを入れられる。先生がエコーを見ながら針を肛門近くに刺していくのである。30センチほどの長さの針である。それを突き刺して前立腺の細胞を採集するのである。痛そうだろう。痛いのである。麻酔をしているとはいえ痛い。痛く怖い。バチンと大きな音がする。バネ仕掛けで前立腺の細胞をはさみ取っているのであろう。10回ほど針を刺される。1時間近くかかった。こういう体験は初めてである。
 検査終了後は2時間ほど医院で休み。タクシーで芦屋から神戸の自宅へ帰宅。家でおしっこをしたら便器が真っ赤になった。出血はしばらく続くとのこと。なにせ身体に30センチもの針をブスブス突き刺されあたのだから、抗生物質をしばらく服用する。出血が止まるまで、風呂、酒、自転車はダメ。針生検の結果は1週間後。心配なような安心なような。やっぱり心配である。
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ハクモクレンの花が咲きました


 ハクモクレンの木です。3月16日はまだつぼみでしたが、ほぼ満開となりました。きょうは春とはいえ、冷たい雨が降っております。春の雨にぬれたハクモクレンの花です。清楚なきれいな花です。水もしたたる美人とはこういうことをいうのでしょうか。
 この木は会社と最寄の地下鉄の駅の間にあります。毎日、この木を見ながら通勤してます。この木は私のお友だちといってもいいでしょう。
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「人間国宝 桂米朝とその時代」展に行く


 休日出勤なり。9時まで1時間だけ会社で仕事をする。それから姫路まで行く。行先は県立歴史博物館。JRの姫路からタクシーに乗る。いい天気。姫路城がきれい。観光客いっぱい。駐車場は長蛇の列。あれじゃ、車を駐車場に入れるためだけに来たようなもの。こんな日に人気の観光地に車で行くのは愚の骨頂なり。
 歴史博物館で開催されている「人間国宝 桂米朝とその時代」展を見に行く。今日が最終日なり。この企画展、行きたいと思いつつなかなかヒマが取れんかった。きょう、やっと来れた。
 館内に入ると、1階ロビーで、阪大の石黒先生制作の米朝アンドロイドがお出迎え。これは撮影OKである。米朝展の展示は2階。出生から葬儀の模様まで。年代別に詳細な資料が展示されている。大東文化学院入学のために上京。そこで最初の師平岡容との出会い入門。平岡の紹介で5代目笑福亭松鶴と知己を得る。
 軍隊に入るが病で療養所生活。この時中川清(米朝師の本名)青年19歳。その療養所で落語をやる。おどろくのはその演目である。立ちぎれ線香、くっしゃみ講釈、千両みかん、阿弥陀池、親子酒、抜け雀、高津の富。まるでベテラン噺家である。これが19歳の青年が演じていたわけ。立ちぎれ線香や高津の富はある程度年を取ってからでないとできないと思うが。栴檀は双葉より芳し、とはこのことである。
 米朝師匠自身の肉筆原稿も多数あった。師匠作の代表的な噺「一文笛」の生原稿もあった。あと、米朝独演会、米朝一門会のポスター、パンフレット類も古いモノから順々に。いくつか覚えているモノも。そういえば小生(雫石)もけっこう独演会一門会には行ってるんだな。
 図録を買ったが、気になる記述があった。米朝師匠はSF大会にも出演されている。神戸でおこなわれた第14回日本SF大会で小松左京と対談、お茶子筒井康隆という陣容で「地獄八景亡者戯」をやらはった。そのSF大会のポスターも展示されていたが、図録では「SF作家の全国大会」との記述があるがまちがい。SF大会は作家ではなく、「SFファンの全国大会」である。
 なにはともあれ、彼岸の墓参りをさぼって行っただけのことはあった。大変に興味深く有意義な展覧会であった。
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ワカメそば


 ワカメそばでおます。いまはワカメがごっついうまい。今の時期ワカメを食わんといつ食うねん。そら乾燥のカットワカメやったら年中あるけど、やっぱ生のワカメがいっちゃんうまい。
 生のワカメは今しか食えんのやからせいぜいワカメを食おうぞ。というわけで、その生のワカメをワシの好きな麺類と組み合わせたで。去年はうどんにしたから、今年はそばや。ワカメそば。うまいで。
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マグロとワカメの中華風サラダ


 春はワカメがおいしゅうございます。今回は、この海の野菜ワカメを海の王者マグロと組み合わせました。サラダです。海の中華風サラダに仕上げました。
 まず、材料ですが、主役はマグロとワカメです。脇役はトマト、しそ、三つ葉、絹さやに脇をかためてもらいました。調味料は醬油、酢、ゴマ油です。
 マグロとトマトはひと口大に切りました。ワカメはさっと熱湯にくぐらせます。熱湯に入れた瞬間に鮮やかな緑色になります。食べやすい大きさに切りましょう。絹さやはゆでて半分ぐらいにカット。しそと三つ葉は細かく切ります。
 お皿に盛って、醬油、酢、ゴマ油で作ったドレッシングをかければできあがりです。
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