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トラキチ酒場せんべろ屋 3月31日

 阪神電車今津駅のほど近く。とある居酒屋。そんなに上等の居酒屋ではおません。1000円札1枚握ってここに来ればベロベロに酔える。だからここはせんべろ屋といいますんや。
「お、おもやん、久しぶりやな」
「ビールやビール」
「どないしたんせえやん」
「阪神負けたわ。けったくそ悪い」
「そやな」
「せっかく糸井が一発打って、順調に加点して田口をKOしたのに。藤浪がぶち壊しや」
「いやあ。あれは藤浪が悪いんちゃうで藤浪の替え時を誤ったベンチが悪いんとちゃうか」
「そやな」
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豚肉のパエリア


 肉のパエリアである。文句あるか。ハラがへった。米のメシと肉をガツガツかっ食らうぞ。丼もんでもええが、ここはスペイン風でいこう。パエリアだ。肉のパエリアだ。
 肉は豚肉を使おう。肩ロースのかたまり肉を用意した。あとマッシュルームだ。玉ねぎは使わん。
 まずパエリアパンにオリーブオイルを流してにんにくを加熱。鷹の爪のちょっと入れよう。にんにくはすぐ焦げて苦くなるので注意。ベーコンを炒めて味出し。サイコロに切った豚肉を入れる。そこに米を投入。洗わんでもええぞ。マッシュルームもいれよう。塩こしょうして煮たら、パセリをふって出来上がり。さて、食らおうぞ。
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西宮八園虎日記 3月30日

 阪急夙川駅のほど近くにその店はある。閑静な場所にひっそりとたたずむ小さな店である。
 小料理屋といっていいだろう。とはいっても和食専門の店ではない。和洋中ジャンルを問わずおいしいものを出す。ただ、酒にはこだわりがあるのか、ビール、日本酒、ウィスキーしか置いてない。焼酎、ワインはこの店にはない。
 店の名を八園(はちえん)という。ここ兵庫県西宮市には西宮七園という高級住宅街があった。甲子園、昭和園、甲風園、香櫨園、甲東園、苦楽園、甲陽園の七つ。いずれもかっての阪神間モダニズム文化圏を形成する高級住宅街であった。甲子園はいわずと知れた虎ファンの聖地、香櫨園は阪神電車の駅名にその名をとどめている。甲東園は関西学院、神戸女学院などの文教地区、甲陽園は、西宮のシンボル甲山の麓で、日本を代表する高級料亭「はり半」があった。苦楽園は関西屈指の高級住宅街で、同じく関西というより日本を代表する超高級住宅街芦屋六麓荘の隣町である。八園は、この西宮の八番目の園ということだ。
 八園の女将は本屋敷千鶴。伯父はかって阪急ブレーブスや阪神タイガースで俊足巧打の内野手としてならした名選手であった。美人で料理のセンスが非常にいい。気さくで客あしらいがうまい。この八園は近郷近在の阪神ファンのたまり場となっているのだ。今夜も虎ファンが集う。
「こんばんは」
「いらっしゃい」
「みんな来てるか」
「来ておられますよ。みなさんご機嫌で」
「そうかそうか」
「お、来た来た。ま、座れ」
「女将、きょうはどんな酒があんねん」
「ウィスキーはどうですか」
「ええな」
「これです」
「サントリーの山崎やんか。よう手に入ったな」
「こないだ私が山崎蒸留所まで行って買ってきた、山崎リミテッドエディションです。阪神開幕戦勝利のお祝いです。今夜は私のおごりですわ。ほほほほ」
「女将ストレートな」
「もちろんですわ」
「しかし気持ちよろしいな」
「そうですね。あの菅野から先発野手全員安打ですかね」
「あのオープン戦の貧打はなんだったんでしょうね」
「う~む。開幕戦で阪神は2018年度の打撃運を使い果たしたんではないでしょうか」
「それが心配ですな」
 八園の夜はふけていく。こうして今年も夜な夜な阪神ファンがつどうのである。
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とつぜんSFノート 第99回

 そういうわけで、北海道から関西まで陸路で帰るハメになった。当時は、青函トンネルはない。北海道新幹線はもちろん東北新幹線も全線開通してなかった。これを陸路で札幌から大阪まで帰る。いかにたいへんかご理解いただけると思う。さいわい一行の1人が旅行代理店でアルバイトをしてたので切符の手配はすぐできた。
 まず、札幌から函館まで列車で移動する。この車内で小生、星群のYS,のちにDAICON5の実行委員長になる山根啓史、山根の同人誌仲間の若いの、の4人でSF大会について話し合う。この話し合いが、第25回日本SF大会DAICON5の最初の実行委員会であった。
 4人の一致した認識は、DAICON5をサーコンな(真面目な)SF大会にしようということ。DAICON3、DAICON4はゼネプロ(今のガイナックスの前身)のSF大会であった。武田、岡田らがやったSF大会である。サーコンな大会になるはずがない。お祭騒ぎのSF大会となった。そもそも小生たちはそういうSF大会に疑問を感じてSF大会招致の立候補をしたのだ。立候補は承認された。あとは2年後の日本SF大会をいかなる大会にするか、これから考えるのである。DAICON5が正式に始動した記念すべき時は北海道の列車の中である。
 この4人のうちの小生、YSは星群の会員だ。しかも二人とも会の役職についている。小生は連絡人、YSは編集人。と、いうことであるが、星群の会はDAICON5に関わらないことが確認された。星群の会は日本SFファンダムでそれなりの立ち位置を持っている会である。老舗の創作同人誌で、SF同人誌としては「宇宙塵」に次ぐ地位の同人誌として認知されている。
 そもそも星群の会の創設者高橋正則氏は1971年のDAICON2の実行委員長だった。創作に専念するということ、それに星群祭という独自のイベントを開催していること。それ以後星群の会は日本SF大会とは距離を置くようにしてきた。
 星群の会が日本SF大会に関わったのは2回だけある。1982年東京で行われたTOKON8。自主企画という名目でTOKON で大会内イベントとして星群祭東京出張版をやった。これは日ごろから親交の深い巽孝之氏への義理を果たすためである。巽氏はTOKON8の幹部実行委員であった。
 2回目は2002年島根で行われたゆーこん。この時は星群祭島根出張版をやった。これは星群の会の同人であり、山陰ファンダムのビッグネームファン故石飛卓美氏の要請によるものだった。
 ともかくDAICO5は既成のファングループ、同人誌、同好会、大学のSF研究会などにツテを求めず、独自に有志を募って実行委員会を組織しようということになった。この場にいた4人、関西に帰ったらさっそく、それぞれの友人知人友だち親戚縁者地縁血縁その他、それぞれの人脈を駆使してSF大会の実行委員になってくれそうな人物に声をかけることした。小生はまずあの男のことが思いうかんだ。
 こんなことをあれこれ話し合っているうちになんか妙にむし暑くなってきた。車内の気温はどんどん上昇。これはただごとではないと思っていたら、車掌のアナウンス「N号車(なん号車か忘れたが小生たちが乗っていた車両だ)のエアコンが故障しました。申しわけありませんが他の車両に移動願います」北海道の炎熱列車の始まりである。
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とつぜん上方落語 第22回 貧乏花見

 まだ3月ですが、桜が満開でんな。いろんな人がお花見にくりだしております。落語でおなじみの裏長屋のみなさんは、お酒ならぬ「お茶け」かまぼこならぬ「カマゾコ」素麺やのうて「はそうめん」卵の巻き焼きの代わりに「こうこ」を持って桜ノ宮へんにやって来ました。「♪花見じゃ花見じゃ、ちょ
いとちょいと、こらこら……」あ、そのにぎやかなこと。
 この裏長屋のみなさんがお花見をしている桜ノ宮から環状線に乗って大阪まで。梅田で阪急電車に乗り換えて芦屋川。そこで降りてずずと山の方に向かうと、芦屋の六麓荘という街に着きます。大きなお屋敷が立ち並ぶお屋敷街です。
 その六麓荘の住人たちが話し合っております。
「良いお天気ざますね」
「そ、ざます」
「下々の者が行うお花見をわたくしたちもしませんこと」
「賛成ざます」
「では、今度の日曜ということで」
「どこでやるざます」
「手近なとこで芦屋川は」
「いっぱいじゃないですか庶民たちの花見で」
「あ、大臣につないでちょうだい」
「どこに電話してるんですか」
「国交省」
「あ、こんどの日曜、わたくしたち芦屋川でお花見ですのでよろしく」
「河川敷は国交省の管轄だから、大臣が忖度してくれますわ。これで場所取りはOKざます」
「芦屋川まで車で移動するのでしょう。道が混むんじゃないですか」
「あ、長官をお願い」
「警察庁に電話ね」
「あ、芦屋の六麓荘から芦屋川まで交通規制お願いね」
「これで道路は警察庁長官が忖度してくれますわ」
「イシグロ、イシグロ」
「はい奥様」
「こんどの日曜外出しますからロールスを用意しておいてね」
「わたくしは執事のイシグロにロールスを運転してもらいますが、あなたはどうされます」
「わたくしは運転が好きだからランボルギーニを運転していきますわ」
「おくさまは?」
「わたくしは久しぶりにデューセンバーグに乗ってみようかしら」
「こちらは」
「わたくし、ここは、ひとつ優雅に牛車で行くざますわ」

 さて、当日になりました。六麓荘の広場には、ロールスロイス、ランボルギーニ、デューセンバーグ、牛車といった車が並んでおります。ベンツ、BMWといった大衆車はみかけません。ここから芦屋川まで警察庁長官の忖度で交通規制がしかれております。これらの車しか通りません。
「さ、行くざます。ちょっと岩園町のひかりスーパーに寄ってちょっとお買物をしますざます」
「わたくし、スーパーなんかで買物したことないですわ」
「買物は執事のイシグロにやってもらいますわ」
 芦屋川に着きました。花見客でいっぱいですが、芦屋川の月若橋から大正橋の区画に赤い毛氈がひかれております。
「さ、座りましょ」
「まずはビールで乾杯」
「ん。このビールは?」
「ネイル・ブリューイングの『アンタークティック・ネイル・エール』」
「ふうん。ちょっとしたビールね」
「これ、イシグロ、どんなお酒を持ってきたの」
「はい。奥様、ウィスキーはダルモア・シリウスの58年もの。ワインはロマネコンティ1945。日本酒は十四代本丸秘伝玉返しなどを持ってきました」
「さ、乾杯もすんだし何か食べましょう」
「パンパン」
 イシグロが手をたたくと光頭の老人が来た。鮨職人のようだ。
「東京は数寄屋橋の『三郎」から小野三郎さんに来ていただきました。ネタは朝早く明石の漁師に漁に出てもらってとって来た魚です』
「ふうんお料理はお鮨だけ」
「いえ。日本料理の『はだ万』の花板さんを呼んでおります。ステーキは「はら皮のシェフに神戸牛を焼いてもらいます」
「ああ、もうお腹一杯。なにか余興が欲しいね」
「あ、あそこのルナホールで欅麦団治が独演会をやってますが」
「ふうん。たまには落語もいいわね」
「あ、欅麦朝事務所ですか。ちょっとお願いが」
「すぐ来るそうです」
 六甲山が夕陽に染まるころ、六麓荘の住人たちのお花見もめでたくおひらきになりました。みなさん、満足して帰っていったようです。


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そろそろパッチを脱ごうかな

えらいもので、季節の移り変わりは早いですね。1週間前は春の嵐で、強風が吹き冷たい雨が降っておりました。寒さに縮こまっておりました。21日の春分の日は、須磨海浜水族園か、御影の香雪美術館が大阪は中ノ島に分館を開設したので、どちらかに行く予定をしたおりましたが、寒さに耐え、嵐をついて外出する気にならず、家にひっこんでおりました。
あれから1週間が経ちました。うって変わってよいお天気で温かいです。ハクモクレンは散って、桜がだいぶん満開に近くなっております。今週中にお花見に行く算段をしています。
会社の自室のダイキンくんもお休みさせてます。さて、これで本当に春が来たのでしょうか。私の中ではまだ春は来てません。なぜならパッチをまだはいているからです。パッチ、ももひきのことです。これを脱がないと、本当に春が来たことになりません。もうそろそろ脱ごうかなと思ってるのですが、まだ決断がつきません。パッチを脱いで軽快になると、本物の春が来たことになるのです。

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プラダを着た悪魔


監督 デヴィッド・フランケル
出演 アン・ハサウェイ、メリル・ストリーブ、エミリー・ブラント

 ぽっと出のさえない女の子アンディが、花のニューヨークへやってきた。彼女はジャーナリス志望。出版社で面接。そこは人気ファッション雑誌「ランウェイ」志望とは違うが面接を受ける。編集長が面接してくれた。第2アシスタントとして採用される。「ランウェイ」の編集部。そこはあこがれのまと。そこで1年勤まればどこでも勤まれる。
 で、その編集長というのが鬼みたいな編集長。おばさんだが、ものすごく横暴。仕事に対する厳格さは尋常じゃない。相手のことは一切考えずに、仕事はもちろん、私的な用事も、ときところおかまいなしにいいつける。アンディの携帯電話は鳴りっぱなし。しかも、鬼編集長の命令は無理難題ばかり。ハリケーンで悪天候なのに、マイアミからニューヨークへ飛ぶ飛行機を手配しろ。娘が読みたがってる。出版前の新作ハリー・ポッターを手に入れろ。
 そうこうしているうちに、さえないアンディもだんだんサマになってくる。若い娘の成長物語であるが、ちょっと主人公に都合がよくお話が進む。先輩アシスタントにイヤなことをいわなければならない。都合よく、その先輩が事故にあって入院。友人、彼氏とも気まずくなるが、なんとなく関係修復。ま、おとぎ話だと思ってみれば、ご愛嬌な映画である。
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マンハッタン風クラムチャウダー


 春である。アサリがうまい。アサリの旬は3月から5月にかけて。夏が近づくと貝毒が発生することがあるので要注意。今のうちにせいぜいアサリを食べよう。
 さて、きょうは洋風のアサリ料理だ。クラムチャウダーといこう。ま、ようするにアメリカの貝汁だ。
 クラムチャウダーには2種類ある。ニューイングランド風とマンハッタン風だ。ニューイングランド風は牛乳を使った白いスープ。マンハッタン風はトマト味の赤いスープだ。
 アサリは少量の白ワインでワイン蒸しにする。口を開けたらすぐ取り出す。汁は置いておく。別の鍋でベーコンと玉ねぎを炒める。貝の汁とトマトを入れる。缶詰のカットトマトを使った。じゃがいも、にんじん。セロリを入れて煮る。
 皿に盛りつけ、アサリを入れコーンと砕いたクラッカーを散らす。できあがり。
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2018年の阪神タイガースはどうかな

 来週の金曜日から、また阪神タイガースを応援する日々が始まる。楽しみなことだ。わが阪神タイガース、昨年2017年は2位貯金17という成績であった。おしくも優勝は逃したが、ファンとして充分に満足のいく成績であったといえよう。
 さて、今年はどうであろうか。残念ながら今年2018年は貯金はできるが、昨年より順位が下がるのではないだろうか。
 野球は点取りゲームである。1点でも多く点を取った方が勝つ。点を取るには、まず塁に出て、ホームまで戻ってこなくてはいけない。ホームラン以外で点を取ろうとするのなら、複数の安打を連続して打つ必要がある。たとえ4割バッターがいても1人では点は入らない。
 阪神はどうか。残念ながら4割バッターはいない。4割バッターどころか3割バッターも昨年はいなかった。10回打席が回ってきて3回も打てない選手ばかりということだ。
 でも、打つことは打っている。ようはランナーが塁にいるときに打てばいいのだ。チャンスを作る打者とそれをかえす打者。二人いれば最低2点取れるわけだ。昨年の阪神の試合を思い起こしてみればチャンスは作るが点にならないという試合が多かった。勝負強い打者がいなかったということ。福留、糸井といった選手がその任を担っていたが、今年もこの二人が頼りということになるのだろう。
 オープン戦の具合を見れば、どうも今年の阪神タイガースも貧打に悩まされることになりそうだ。
 昨年の阪神の好成績はいちにもににもリリーフ投手の功績が大きい。特に桑原の働きが大きい。今年の阪神の成績は、このリリーフ陣の働きいかんだろう。先発投手がさして強力ではなく、打線も頼りない。これで結果を出そうとすれば先発がなんとか6回ぐらいまでがんばって、弱打線が取った少ない得点を、リリーフでなんとかしのいで勝ちにつなげる。こういう勝ち方しかできないのではないだろうか。

2018年阪神タイガース開幕スタメン予想

1番 2塁   鳥谷
2番 ショート 糸原
3番 ライト  糸井
4番 1塁   ロザリオ
5番 レフト  福留
6番 3塁   大山
7番 センター 俊介
8番 キャッチャー 梅野

先発ローテーション投手

メッセンジャー
能見
秋山
小野
岩貞
青柳

2018年セリーグ順位予想

1位 広島カープ
2位 DeNAベイスターズ
3位 読売ジャイアンツ
4位 阪神タイガース
5位 ヤクルトスワローズ
6位 中日ドラゴンズ 
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SFマガジン2018年4月号


SFマガジン2018年4月号 №726   早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター
1位 博物館惑星2・ルーキー
   第2話 お開きはまだ      菅浩江
2位 魔術師             小川哲
3位 「方霊船」始末         飛浩隆
4位 9と11のあいだ         アダム・ロバーツ 内田昌之訳
5位 邪魔にもならない        赤野工作
6位 宇宙ラーメン重油味       柞刈湯葉
7位 骨のカンテレを抱いて      エンミ・イタランテ 古市真由美訳
8位 1カップの世界         長谷敏司
9位 憎悪人間は怒らない       上遠野浩平

連載
椎名誠のニュートラル・コーナー(第59回)
謎の周回飛行物体物          椎名誠
先をゆくもの達(第2回)       神林長平 
マルドゥック・アノニマス(第19回)  冲方丁
忘られのリリメント(最終回)     三雲岳斗
マン・カインド(第4回)       藤井大洋
幻視百景(第12回)         酉島伝法
SFのある文芸誌(第57回)     長山靖生
筒井康隆自作を語る(第6回)
「『虚人たち』『虚航船団』の時代」  筒井康隆
アニメもんのSF散歩(第21回)   藤津亮太  

「BEATLESS」&長谷敏司特集
ポーランドの作家スタニスワフ・レムをめぐって 沼野充義×巽孝之×円城塔

 今号は毎年吉例「ベスト・オブ・ベスト2017」「SFが読みたい2018年版」で上位にあがった作家の読み切り短篇の特集である。書き下ろし4本と訳しおろし1本である。飛浩隆、小川哲、赤野工作、柞刈湯葉、アダム・ロバーツの作品がその特集企画の作品である。
 その特集企画の作品をおさえて人気カウンターの1位に輝いたのは、菅浩江の「博物館惑星2」の2作目。ずいぶん久しぶり。1年ぶりかな。もう少し発表の頻度をあげてもらいたい。今回は全盲のミュージカル評論家のお話。視覚、聴覚、触覚などの人間の感覚をいかに数値化して頭脳に伝達するか。
「魔術師」天才マジシャン、タイムマシンの手品。ほんとうにタイムマシンを発明したのか、それとも・・・・。
「『方霊船』始末」女傑ワンダ・フェアフーフェンへのインタビュー。「零號琴」のキャラ二人の出会い。飛さん、早く「零號琴」を読ませて。
「邪魔にもならない」ゲームを始めて終わるまでの時間を競う。トイレの時間も食事も睡眠時間もすべて競技時間。ロスタイムはいっさい認められない。
「宇宙ラーメン重油味」小惑星群の都市「エキチカ」のラーメン屋。消化管のある生物はすべて客だ。
「9と11のあいだ」トレフォイル族との戦争。連中は偶数が苦手か。
 特集企画の5編はいずれも面白かった。それから「骨のカンテレを抱いて」はめずらしやフィンランドのSF。小生も長年SFファンをやっているがフィンランドのSFを読むのは初めて。高野史緒さんが紹介した作品。オーソドックスなホラーであるが毛色が少し変わってて面白かった。
 今号は久しぶりに読みごたえがあった。やはり読み切り短篇が多いと満腹する。またフィンランドSFの紹介という目新しいSFも読むことができた。じつにけっこうな号であった。  

                                                                                                                                                                                                                                                                  
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ハクモクレンの花が咲きました

 
3月23日の神戸の空です。ことしも私のお友だち、ハクモクレンの木がきれいな花を咲かせてくれました。この木は地下鉄の駅を降りて会社へ行く途中にあります。ですから毎日朝と夕方、この木の前を通ります。
 ここ数日は春の嵐でしたね。冷たい雨が降り、強い風が吹いてました。今日は久しぶりの良いお天気です。ハクモクレンの花も雨にも風にも負けずに花を咲かせてくれました。
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まぶたの星

「好きにさせてあげてください」
 診察を終えた先生は、悲しそうな表情でいった。
「あと、どれぐらいですか」
「長くて半年」
 覚悟はしていたが、さすがにショックだ。あれほど元気だった父が、わずか三ヶ月で、これほど深刻な病状になるのだろうか。
 最近は、一日のほとんどをベッドですごしている。
「おおい」
 父が呼んでいる。
「それでは先生、ありがとうございました」
「お父上の望むことは、できるだけ叶えてあげればいいと思いますよ」
「なんですか、お父さん」
「星が見たい」
「え?」
「星が見たいんじゃ」
「ほしって、あの空の星ですか」
「そうじゃ」
 考えこんでしまう。何かが食べたいとか、何かが欲しいというのなら、なんとしてでも手に入れてやるんだが、「星が見たい」こればかりは無理だ。星ではなく、虹が見たいとか、雲が見たい、というのであれば、お金を使えば可能だ。ところが星となると、ここでは不可能だ。ここにはそういう設定が成されていない。
「兄さん。茂子さんから聞いたけど、お父さん、そんなに悪いのか」
 弟がビールを注いでくれながらいった。
「職業病じゃないの。療養費は軍から出るんでしょ」
 妹は、なにかと金勘定を心配する。
「うん。先週、主計局に行って来た。退役軍人福利厚生課の大尉に聞いたら、全額、軍から出るそうだ」
「ふーん。それなら安心ね」
「その大尉、オヤジの後輩なんだ。ちかぢか、見舞いに来るといっていた」
 玄関のチャイムが鳴った。来客だ。ドアを開けると制服を着た軍人が立っていた。先日の大尉だ。
「こんなかっこうで失礼します。私服に着替
える時間がありませんでした」 
 大尉を父の部屋に連れていく。
「中佐、失礼します。お体をこわされたと聞きました。いかがですか」
「ワシは中佐ではない。元中佐だ。自分の身体のことは判っておる。ワシはもう長くない」
「そんなことはありませんよ。お元気そうじゃないですか」
「気休めはいい。ワシはもう船には乗れん。せめて星が見たいんじゃ」
 父の部屋を出た大尉は、茶菓子を丁重に断り、玄関に行き靴をはきながらいった。
「軍務の合間に抜け出してきました。早々に失礼します」
「あのう、父は『星が見たい』といってますが」
「なんとか叶えてあげたいと思います。中佐は輸送船のパイロットとしては超一流でした。先のベルガ戦役では中佐が指揮する輸送船キタマエは、護衛艦なしでたった一隻で十五光年を八連続ワープで航行。孤立したベルガ守備隊千五百名の命を救ったのです」

 惑星アタゴは夜のない星である。三つの太陽を持つアタゴの表面には、常に太陽の光が当たる。地球からの移民が暮らすこの星の空一面には青い幕が張られていて、いつも青空である。少なくない金を払えば虹や雲を空に映写できるが、星の映写はできない。
 長年の宇宙船乗りの職業病というべき宇宙線障害におかされた父の最後の願いは星をみること。現役時代は星の海を駆け巡った父は、生涯の最後に、現役時代の想い出にひたりたいようだ。

 父をキャスター付のベッドに寝かせた。ガラガラと押して庭まで出る。庭では大尉が待っている。
「さあ。お父さん。星空ですよ」
 大尉がパチと指を鳴らすと、空がかき曇り真っ黒になった。次の瞬間、満点の星が輝いた。父の目に涙が浮かんだ。
「大尉。どうしたんですか」
「隣のラグン星系にダイソン環が設置してある惑星があります。ダイソン環の素材は極薄のカーボンファイバーです。それをもらってきて、上空を覆って、穴を開けたのです」
「あの穴は、この星の昼がもれているのですね」
 父は満足した表情を見せた。閉じたまぶたの裏にも星が映っているのだろう。
 大尉が静かに敬礼した。父は、いった。星の海へ。
 

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駅のトイレの貼紙


 これは地下鉄のトイレの個室の扉に貼られた貼紙である。ようするにトイレは禁煙ということだ。地下鉄の駅は禁煙である。駅のトイレも駅の一部だからとうぜん禁煙。だから、トイレ内も、と「も」がついてある。禁煙というからにはタバコを吸う人が対象の貼紙であることがわかる。タバコを吸う人は大人である。大の大人が駅のトイレが駅の一部かどうか判断できないということはないだろう。この貼紙の存在そのものが不可解である。
 最初の2行。トイレをきれいに使う人のほうが多いだろう。しかし、トイレを汚すだらしない人もいる。そんな人もいるのに、なんともイヤミに読める。
 駅のトイレは禁煙であることは判っている。しかしタバコを吸う欲望に勝てない弱い輩がいるわけ。不良高校生みたいに個室でこっそり吸うバカもいるだろう。そんなバカに向かってなぜ「申し訳ございません」とあやまっているのだろう。この貼紙の主はなにも悪いことをしてない。あやまる必要はない。あやまるのは個室でタバコを吸うバカだ。
 そもそも常識ある人なら地下鉄の駅は禁煙であることが判っているはず。だからこんな貼紙は不要だ。でも、なかにはバカもいるだろう。そんなヤツに知らしめるためには「トイレも禁煙」と、これだけ書けばいいんではないか。
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笑福亭鶴笑のパペット落語「あたま山」を観た

NHK「日本の話芸」笑福亭鶴笑の「あたま山」を観た。パペット落語である。鶴笑さんのパペット落語は少し前に生で観たことがある。天満の繁昌亭で「夏の医者」をやらはった。たいへんな熱演であった。あの時はしゃべりながらパペットを動かしてはったが、今回は趣向をこらしたパペット落語であった。
「あたま山」あまたある落語の中でも屈指の不条理ネタ。奇想天外は噺である。
 さくらんぼの種を飲み込んだ男の頭から桜の木がはえて大きな木に育つ。花が咲いて花見客がおしよせる。うるさいわいといって頭の木を抜く。抜いた後に大きな池ができる。こんどは水遊びの客が大騒ぎ。がまんならんといって、自分の頭の池に身投げした。
 不可思議な噺であるから、この噺をやるとき、先に解説して始める演者がいるが、この噺に解説は不要だと思う。鶴笑さんも、「だいじょうぶですか。ついてこれますか?」といってはったが、そんな心配も無用であろう。落語を楽しもうかという客に「あたま山」の不可解さについていけない人は少ないであろう。別にグレッグ・イーガンや円城塔じゃないんだから。
 このときの鶴笑さんも内弟子時代の松鶴ネタのまくらのあと、「解説」から始めはった。おや?と思ってたら、どんどん噺は進む。こりゃ「解説」ではなく本編に入っているのではないと思っている。あれ、いつまでたってもパペットが出てこない。パペットをいつ出すねんやろと思っているうちに下げまでいってしまった。
 あれれと思っていたら、ここからパペットを出して最初からやらはった。今度は無言でパペットを操りながらしぐさだけで「あたま山」を演じはった。最後の下げ「自分の頭の池に身投げした」をどうパペットでどう表現するのか興味深く観た。メビウスの輪というかトポロジーというか、なるほど。あの下げをこう表現するか。これはパペット落語ならではの下げである。鶴笑さん、見事なり。

星群の会ホームページ連載の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。

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カサブランカ


監督 マイケル・カーティス
出演 ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン

 うう、かっこええなボギー。きれいだなバーグマン。この映画のレビューはこれだけいえば充分ではあるが、主演男優と女優の魅力だけでみせる映画ではない。映像、テーマ、脚本、客が映画を観る時に要求するいろんな要素を高いレベルで創っている映画だ。基本的にはラブロマンスだが、背景にナチスドイツと戦う自由フランスを支援する当時のアメリカの心情を吐露した映画ともいえる。
 第2次世界大戦のころ。アフリカはモロッコのカサブランカ。フランス領だが、当時のフランスの政権はナチスの傀儡政権。だからカサブランカもフランス領といいつつもナチスドイツの息がかかっている。
このカサブランカはナチスドイツの迫害を逃れてアメリカへ向かう人たちの集結地。こんなカサブランカで酒場を経営しているのがアメリカ人のリック。リックの酒場「カフェ・アメリカン」には夜な夜なナチスドイツと戦うレジスタンスたちがやってくる。
「カフェ・アメリカン」に美しい女性がやってきた。その女性イルザはリックとワケ有。昔、パリで二人の間になにかあったらしい。イルザの夫はチェコスロバキア人レジスタンスのラズロ。リック、イルザ、ラズロ、この3人のドラマが北アフリカの都市カサブランカで展開する。
この映画セリフが魅力である。登場人物どうしの会話がたいへんに面白い。名セリフの宝庫である。小生の一番のお気に入りがこれ。
「きのうの夜はどこにいたの」
「そんな昔のことは覚えていない」
「今晩会える?」
「そんな遠い将来のことは判らない」
 そして、この映画で一番有名な名セリフがこれだろう。
「君の瞳に乾杯」
 いま、バーで彼女にこんなことをいうと、プッと彼女の口から水割りが吹き出してあんたの顔にかかるだけだが、ハンフリー・ボガートがイングリッド・バーグマンにいうと様になっていた。かっこいいのである。
 宮崎駿の「紅の豚」のキャッチコピーが「カッコイイとは、こういうことさ」だが、このキャッチ、この映画にこそふさわしい。コピーライターの糸井重里この「カサブランカ」を観てて思いついたのではないか。
「君の瞳に乾杯」
 
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