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「北朝鮮で権力闘争が幕開け②」

2011-12-25 19:19:59 | 日本
「北朝鮮で権力闘争が幕開け②」

こうして晩年の金正日に取り立ててもらった幹部がいる一方で、冷や飯を食わされた者も多数存在する。
彼らは新体制の政権運営がつまずいた場合、批判勢力に転じる可能性が高い。中でもその動向が注目されるのは、金格植・前総参謀長だ。現在71歳の彼は、現場の軍団長を長く務めた対外強硬派として知られ、2007年に総参謀長に上り詰めたものの、2009年に西海方面を担当する第4軍団長に左遷された。

北朝鮮軍内の反正恩派という話になると、しばしば長男・正男やその後ろ盾である中国と通じる改革開放派といったイメージで語られることが多い。もちろんそうした勢力も無視できないが、現在の軍指導部がこの数年で一気に世代交代したことを勘案すると、新体制指導部への批判勢力は、むしろ対外強硬派側から出てくるのではないかと思える。

また、こうして軍部内に軋轢が生じた場合には、最近は発言の機会が減っているものの、軍の実力派長老と言える呉克烈・国防委員会副委員長(前党作戦部長・大将)や、金永春・人民武力部長(国防委員会副委員長・元総参謀長・次帥)の動向も要注目だ。

他方、ロイヤルファミリーの金敬姫と張成沢は、当然ながら北朝鮮指導部では別格の地位にある。張成沢は長年にわたって実務トップの党行政部長を務め、党の実権の多くを握っている。今回の葬儀委員会の上位に名を連ねた党長老たちよりも、実際には張成沢の方が発言力はある。だが、その威光も、もとはと言えば金正日あってのものだ。“婿”にすぎない張成沢には軍や党の内部に反対勢力もあり、失政があれば批判の対象になり得る。金敬姫も兄によって強引に高い地位を得たが、実績は何もないただの女性にすぎない。本格的な権力闘争が平壌で始まれば、幹部たちの支持を集め続けられるかどうかは未知数だ。

おそらく金正日自身、自身の死後の世襲政権が安泰だとは信じていなかったはずだ。そこで彼が重視したのが、いわば“影の機関”の役割だった。
例えば、今年に入ってから、特殊部隊の精鋭から成る「暴風軍団」を金正恩の指揮下に置き、中朝国境地帯などで秘密警察的な監視業務にあたらせてきた。暴風軍団は金正恩の親衛隊的な存在でもあり、軍や治安機関よりも上位の権限を与えられていると見られる。また、金正日は秘密警察「国家安全保衛部」の権限を強化し、正恩の後ろ盾としてきた。今年春までに、正恩を同部の事実上の指導者とする措置も済ませている。今後しばらくは、国家安全保衛部が軍や党の幹部、および国民への監視を強化することになるだろう。同部のトップは禹東測・第1副部長だが、彼は金正日によって党中央軍事委員会委員・国防委員会委員・党政治局員候補・大将に任命されており、今や軍・党の両方で最高幹部レベルの地位に上り詰めている。彼自身が権力闘争の局面で、重要な役割を果たすことになるかもしれない。




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