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「改憲か、延命解散か 与野党に飛び交う臆測」

2017-09-08 06:50:11 | 日本

現職衆院議員の任期満了まであと1年3カ月あまり。安倍晋三首相がいつ衆院解散・総選挙に踏み切るのか、与野党でさまざまな説が飛び交い始めた。首相は「まったく白紙」と繰り返すが、2018年末までの政治日程を考えると、三つのパターンが浮かび上がる。


◎補選回避へ今月説 パターン1

最も早いケースは9月25日に召集される見通しの臨時国会冒頭での解散だ。

その狙いは、10月22日投開票予定の衆院3補選(青森4区、新潟5区、愛媛3区)の回避にある。いずれも自民党現職の死去に伴うもので、安倍晋三首相は同党に全勝するよう指示した。

しかし、愛媛3区は、学校法人「加計学園」が獣医学部新設を計画する愛媛県今治市に近く、補選は激しい与野党対決になる見込み。昨年の参院選新潟選挙区(改選数1)では民進党など野党4党が推す無所属候補に自民党候補が敗れており、新潟5区も予断を許さない。与党幹部は「勝てる選挙を落とすほど政権にダメージになるものはない」と危機感を隠さない。

補選だと自民党の「1敗」はクローズアップされるが、289小選挙区の一つと考えれば、仮に落としても目立たずにすむ。そんな与党内の思惑が冒頭解散説につながる。8月の内閣改造・自民党役員人事で内閣支持率がやや持ち直し、同月の茨城県知事選で与党推薦候補が勝利したこともあって、首相に近い閣僚経験者は「選挙用のポスターはすでに準備した」と早期解散に備える。

ただ、首相が「仕事人内閣」を掲げたにもかかわらず臨時国会冒頭で解散すれば、働き方改革など看板政策の実現を棚上げすることになる。しかも、自民党が議席を減らした場合、改憲勢力は衆院の「3分の2」を割り込む可能性が出てくる。

改憲をあきらめてでも早期解散に踏み切るのは政権の延命のためだと受け取られたら、自民党が300近い今の議席を維持しない限り、選挙後に首相の求心力は低下する。

このため与党内には、まず衆院3補選に全力を注ぎ、内政・外交で一定の成果を上げたうえで、臨時国会会期末か来年の通常国会冒頭で解散するという見立てが一方にある。

改憲論議が拙速に進むことを警戒する公明党からは、早期解散を容認する声が漏れる。

野党の動向も首相の解散戦略に影響する。民進党代表選で優位に立つ前原誠司元外相は共産党との選挙協力に慎重だ。一方、小池百合子東京都知事に近い若狭勝衆院議員が設立した政治団体「日本ファーストの会」は次期衆院選で国政進出を目指している。与党には、野党の態勢が整う前に解散した方が有利という計算も働いている。


◎来年春…自民総裁3選にらみ パターン2

早期解散がなければ、18年春の18年度予算成立後、通常国会会期末までの間が次のパターンとして考えられる。政権の経済最優先の姿勢をアピールしやすいうえ、自民党が衆院選に勝てば、同年9月の総裁選で安倍首相は3選をほぼ手中にできる。

首相は来年の通常国会に、他党の協力を得て憲法改正原案を提出したい考えだ。次期衆院選で改憲勢力が引き続き衆院の「3分の2」を占める見通しがあれば、解散前に改憲案の国会発議を急ぐ必要はない。一方、「3分の2」の維持が微妙な情勢なら、首相は国会が改憲案を発議するのを待って解散に踏み切るとみられる。自民党幹部は「首相が改憲を諦めることはない」と断言する。

とはいえ、自民党が強引に発議に持ち込めば、次期衆院選や国民投票で有権者の反発を招きかねない。首相が宿願の改憲を優先する場合、解散時期の判断は難しくなる。

19年10月には消費税率10%への引き上げが予定されている。しかし、首相がまた増税を先送りするのではないかという観測は消えていない。来年春以降の解散は19年度予算編成の時期と重なってくるだけに、消費増税が衆院選の争点になるのは確実だ。首相は逆風覚悟で増税方針を維持するのか、増税延期の信を問い大勝した14年衆院選と同じ手法をとるのかも注目される。


◎来年9月以降…新総裁の可能性 パターン3

政権が安定していたころは、安倍首相が自民党総裁に3選したうえで解散するパターンが有力だった。国会が改憲案の発議に至る時間を確保できるうえ、首相自身も21年9月までの政権運営に道が開けるからだ。しかし、今や改憲と長期政権の両方を求める戦術はとりにくい。

過去には麻生内閣が解散を任期満了近くまで先送りした結果、09年衆院選で自公両党が大敗し、下野した例がある。

この先、安倍内閣が高支持率を回復しない限り、総裁選を過ぎると「追い込まれ解散」色が濃くなる。逆に政権が失速するようだと、自民党は新総裁を選出して衆院選に臨む可能性が高い。同党関係者は「総裁選後の解散は、新しい首相による解散とほぼ同義語だ」と指摘する。

政府内では18年末の天皇陛下の退位と、19年1月1日の改元が有力視される。皇室日程も首相の解散の判断に影響しそうだ。