保健福祉の現場から

感じるままに

歯科医師

2008年01月28日 | Weblog
「歯科医に広がる〝ワーキングプア〟」(http://news.cabrain.net/article.do?newsId=14151)の記事が目にとまった。<以下引用>
<産科・小児科・救急医療を中心に「医療崩壊」が各地で社会問題化する中、歯科医療がより危機的な状況にあえいでいる。2000年以降の相次ぐ診療報酬のマイナス改定で医療機関の経営が全体的に悪化したばかりでなく、歯科では73項目にわたる保険点数が20年間も据え置かれていることが影響している。歯科医師や歯科技工士らに支払われる診療報酬は先進国に比べ極めて低く、歯科医師の5人に1人が年収300万円以下、歯科技工士の3人に1人が200万円以下の〝ワーキングプア〟状態に置かれているという。歯科の保険点数の据え置きについては、小池晃・参議院議員(共産党)の質問主意書に対する昨年12月の政府答弁で明らかになった。答弁によると、1986年4月時点と同じ保険点数だったのは73項目で、エックス線画像診断・各種検査・フッ素塗布・歯周治療・鋳造歯冠修復など、ほとんどの歯科医療の基本的技術が含まれていた。20年の間には消費者物価が1.5~2倍になり、国民生活も様変わりしている。にもかかわらず、歯科医療の根幹となる保険診療の基本的技術料が変化していないことに関して、小池氏は「20年間も(保険点数の)引き上げが行われていないことは、この間の物価・人件費の伸びなどと比べても、明らかに均衡を欠く」と追及。これに対し厚生労働省は「歯科診療報酬については、物価、賃金等の動向、経営状況、医療保険財政の状況等を総合的に勘案し、(中略)、必要な事項については重点的に評価し、適切に設定している」と答えている。全国保険医団体連合会(保団連)によると、かつては医療費全体の12%あった歯科医療費が06年度は7.7%にまで下落。歯科医師・歯科技工士・歯科衛生士らに支払われる診療報酬は先進国に比べ極めて低く抑えられている。昨年10月に保団連主催で開かれた「歯は命 歯科医療危機突破10.28決起集会」などでは、歯科医師の5人に1人が年収300万円以下、歯科技工士の3人に1人が200万円以下と報告。保団連は「日曜日や深夜まで診療している歯科が増えたのは、(開業時に医療機器等を導入するために負った)借金を返すために寝る時間を削って働かざるを得ない実態がある」と訴えるなど、歯科医業の収支は、歯科医師数の需給バランスの悪化も影響して、全体的に悪化の一途をたどっている。患者と歯科医療担当者で構成する「保険で良い歯科医療を」全国連絡会の06年の調査では、歯科医療に対する患者の要望は「保険のきく範囲を広げてほしい」が00年調査より8ポイント上回って約8割にも達している。保団連は「新しい技術や安全性が確保されている技術を速やかに保険導入すること、臨床の実態に即したものを導入するよう要求することは当然」と指摘。「政府の歯科医療軽視政策のもとで、患者・国民の要求に十分にこたえきれず、歯科医師をはじめ歯科医療従事者が苦悩している。先進国の中で日本は虫歯や歯周病の状況は最悪で、長期にわたり改定が据え置かれた項目をはじめ、歯科の診療報酬について適切な診療を確保するための十分な評価が行われるべき」と強調している。>
 
記事の歯科の診療報酬に関する質問に対する答弁書(http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/168/touh/t168074.htm)のほかに、歯科医療の向上に関する質問主意書に対する答弁書(http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b168363.htm)もみられる。「医療崩壊の先頭に立たされる歯科医師」(http://www.jcj.gr.jp/rupo.html)の記事もみられる。<以下引用>
<産科や小児科をはじめ、医療が崩壊しつつある中、歯科医療はさらに危機的状況にあえいでいる。歯科医師の5人に1人、歯科技工士の3人に1人が年収200万円程度以下にとどまる。日曜日や深夜まで診療している歯科医院が増えたのは、借金を返すために寝る時間を削って働かざるを得ない実態がある。先進国の中で日本はムシ歯や歯周病の状況が最悪なのに、真面目に治療し、できるだけ安くしようと努力すれば個別指導で恫喝される。「指導」名目での医療機関への締め付けは強化される一方だ。このままでは、更なる犠牲者が続くことになるだろう。薬害エイズ、薬害肝炎など国民の生命に関する事項を隠蔽し、職責を果たさなかった厚生労働省。年金問題では度重なる不正行為で社会を不安におとしめた社会保険庁。自らの不正には目をつぶってきた。一方で、「民」へは不正・不当とレッテルを貼り歯科医師らを死に追いやる。逸脱した医療指導官はもちろん、黙認した社会保険庁、厚生労働省の責任は重大だ。厚生官僚は、国民の生命や健康を守るのが任務ではないのか。真摯に反省し、安全・安心な歯科医療を行えるようにすべきだ。10月28日には自殺した歯科医師の妻も参加し、東京・砂防会館で「歯科保険医自殺事件緊急抗議集会」を開いた。集まった歯科関係者ら300人は、人権を無視した個別指導は「行政による殺人だ」と怒りの声を上げた。そして、厚生労働省による真相の究明、事件に関与した指導医療官らの処分、指導・監査の抜本的改善などを求める決議を採択した。>
 
さて、先日、管内の歯科医師と話す機会があった。昨年の通知(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/070330-1.pdf)は、歯科診療所に関わることも大きい。医療機能情報提供制度や安全確保措置のほか、今後、在宅歯科診療の推進を図る必要があり、もっと意見交換が必要なように感じられたところである。
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診療行為に関連した死亡に係る死因究明

2008年01月28日 | Weblog
「医学論文:急減 処分恐れ医師ら萎縮?」(http://mainichi.jp/select/today/news/20080127k0000m040123000c.html)の記事が目にとまった。<以下引用>
<治療の副作用や合併症に関する医学論文の数が昨年後半から急激に減少したことが、東京大医科学研究所の上(かみ)昌広客員准教授(医療ガバナンス論)らのグループの調査で分かった。このうち、診療中に起きた個別の事例を取り上げた「症例報告」はゼロに近づいた。グループは、厚生労働省が検討する医療事故調査委員会の発足後、行政処分や刑事責任の追及につながることを医師が恐れて萎縮(いしゅく)し、発表を控えたためと推測している。グループは昨年12月中旬、国内の医学論文のデータベースを使って、06年1月~07年10月に出された副作用や合併症などに関する論文を探し、総論文数に対する割合を月ごとに調べた。その結果、国内では毎月、1万~4万件前後の医学論文が発表され、一昨年から昨年前半までは合併症の論文が全体の13~17%あった。しかし、昨夏ごろから急減し、10月には約2%になった。副作用の論文も以前は4~6%あったが、昨年10月には約2%に減った。特に、副作用の症例報告は、以前は1%前後あったが、昨年10月にはゼロになった。合併症の症例報告も、以前は5~9%あったが、昨年10月には0.1%しかなかった。厚労省は昨年10月、診療中の予期せぬ死亡事故の原因を究明するために創設する医療事故調査委員会の第2次試案を公表した。死亡事故の国への届け出を医療機関に義務付け、調査報告書は行政処分や刑事責任追及にも活用する場合もあることを盛り込んだ。10年度をめどに発足を目指している。上客員准教授は「副作用や合併症が報告されない状態が続くと、医学が発展せず、国民の被害は大きい。リスクの高い診療科からの医師離れも促す。調査報告書は行政処分や刑事責任追及に使われないようにすべきだ」と訴えている。>
 
「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/s1227-8.html)では、医療安全調査委員会(仮称)への届出範囲案(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8a.pdf)について、「①誤った医療を行ったことが明らかであり、その行った医療に起因して、患者が死亡した事案。②誤った医療を行ったことは明らかではないが、行った医療に起因して、患者が死亡した事案(行った医療に起因すると疑われるものを含み、死亡を予期しなかったものに限る。)」とし、「判断は、死亡を診断した医師(主治医等)ではなく、当該医療機関の管理者が行うこととしてはどうか。 委員会へ届け出るべき事例として具体的な事例を通知等において例示することとしてはどうか。遺族からの調査依頼についても委員会は原則として解剖を前提とした調査を行うこととしてはどうか。 医療機関においては患者が死亡した場合、委員会による調査の仕組みについて遺族に必ず説明することとしてはどうか。届出範囲(①②)に該当すると医療機関において判断したにもかかわらず、故意に届出を怠った場合又は虚偽の届出を行った場合は何らかのペナルティを科すことができることとしてはどうか。医療機関においては届出範囲(①②)に該当するとは判断していないが遺族が調査を望む場合には医療機関からの届出ができることとしてはどうか。」とされている。但し、「委員会へ届け出るべきか否かについて、例えば以下のような事例についてはどう考えるか。委員会において受理した事例に関して、委員会での調査の必要性のスクリーニングを行う仕組みを設けることは可能か。」とされていることから、悩ましいところなのであろう。会議資料(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8a.pdf)では、関連学会の見解や声明も掲載されているが、簡単にはいかない感じがする。昨年10月の第二次試案(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/dl/s1108-8c.pdf)に対して、「日本医師会の大罪」(http://plaza.umin.ac.jp/~perinate/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%BE%AE%BE%BE%BD%A8%BC%F9%B0%E5%BB%D5%A4%E8%A4%EA)とする厳しい意見もみられる。報道のように、副作用や合併症が報告されないようになれば、かえって死因究明がしにくくなるようにも感じるところである。ところで、平成17年5月に出された「地域保健対策検討会 中間報告」(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/s0523-4.html)においても死因調査について記されていたところである(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/dl/s0523-4b.pdf)。<以下引用>
<公衆衛生上、問題のあると考えられる死体の死因調査 ○死因を公正かつ中立的・科学的に解明することは、公衆衛生上の危害の拡大防止のために極めて重要であり、同様の要因に基づく死亡の再発を防止することができる。現在は、「死体解剖保存法」により監察医を置く地域以外では、「食品衛生法」及び「検疫法」の定めを除き、行政が解剖を行う権限は規定されていないが、今後、行政によって、死因の不確定な要素を調査することが望ましい。 ○公衆衛生上、問題のあると考えられる死体として、既存の行政解剖に該当するもの以外には、死亡原因が明らかではない死体が該当する。 ○死亡という重篤な事象を正確に分析することは、公衆衛生的対応の「端緒」として重要である。この対応は、必要な行政的対応を行うことができる保健所において行うことが適当と考えられるが、届出の方式、専門的判断の仕組みなど、今後、関連制度の整備や人材の養成に関する具体的な検討が必要である。 ○なお、公衆衛生上、問題の可能性がある死体として、診療行為に関連した死亡(医療関連死)があるが、これについては、平成17年度から国において、「診療行為に関連した死亡の調査分析に係るモデル事業」が、関連学会等の協力を得て実施されることとなっており、当該モデル事業の実施状況やそこから得られる問題点の整理などを踏まえ、別途、検討が行われるべきである。>

今通常国会で医療安全調査委員会設置法案が提出され、医療事故等の届出を医療機関に義務付けされるようであるが、「刑事手続きとの関係6割が懸念」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/14218.html;jsessionid=A633E3BB875DA4C41B0989D90E11746E)と報じられている。
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