加薬飯

日々雑感 ときどき雑記 愚だくさん

【隠れ里における奇跡的な邂逅】

2023年06月16日 | 雑感・思考・追憶・回想



 西尾市平原町にある平原の滝(ひらはらのたき)へと向かう道の麓に、「無の里」と言う合掌造りの古民家カフェがある。提供されるのは抹茶(300円)のみ。

 ふとした気紛れで娘と一緒に訪れてみたのだが、まだ早い時間とあってか客は私たち二人のみ。静謐な空気のなか縁側に座り、のんびりと抹茶を味わっていたところ、杖をついた高齢男性が下から登って来た。
 その男性はおもむろに私の隣に腰を下ろすと抹茶を注文し、暫くすると私に対して色々と気さくに話し掛けてきた。

 聞けば一か月の内20日程、歩くのを目的にそこを訪れているのだとか。「近くにお住まいですか」と問う私に男性が答えた地名に心当たりがあり、「そこには親戚があるんですよ、〇〇って言うんですけどね」と言うと、「〇〇姓は5軒ある。わたしも〇〇です」との答えに、「〇〇〇〇って言うんですけど」とフルネームを言うと、即座に「〇〇〇〇はわたしです」と返ってきた。

 「えっ???」

 驚きと共に正面に回ってまじまじとその顔を眺めてみれば、確かに面影が見て取れる。「誰だっけ?」と怪訝そうな相手に、「□□□□の息子の□□です」と答えると、「ああっ!」と納得した様子。それから後は一気に時代を遡り、昔のあれこれに話題は尽きない。

 思えば叔母の葬儀に参列して以来の実に20年ぶりの、思いがけないイトコとの邂逅であった。出会った場所が場所だけに、正に奇跡的と言ってもいいだろう。お互いに齢を重ね、随分と風貌も変わってしまっているのは仕方ないとしても、それでも何十年もの時を超えてお互い(イトコ同士)を認識できたことが、懐かしくもあり嬉しくもある。