何気なく新聞を捲っていたら、とある名前に目が留まった。その名は「内藤ルネ」。
内藤ルネさん(故人)は岡崎市出身の著名なイラストレーターだが、わたしが生まれ育った家の二軒隣りが、内藤ルネさんの実家だったため、母親からその名前だけは聞いて知っていたのである。
ルネと言う名前から当初わたしは女性かと思っていたのだが、その後母親から男性(本名:功)で、オカマちゃんだったと聞かされたことがあった。子どもの頃のわたしは、その意味もよく解らなかったのであるが、後年ルネさん自身が自伝の中で、同性愛者であったとカミングアウトしている。
わたしが生まれた時には既に上京されていたため、内藤ルネさん本人とは一面識もないのであるが、ルネさんのお母さんとは毎日のように顔を合わせていた。
二軒隣りのルネさんの実家は八百屋兼乾物屋を営んでおり、子どもの頃のわたしは「ツケ」の帳面を持って、豆腐やら野菜やらを買いに遣わされていたのである。
まだ各家庭に電話が普及していない頃には、(呼)というのがあって、親戚などから電話が掛かってくると、ルネさんのお母さんが「電話だよー」と言ってわが家まで呼びに来てくれたことが思い出される。新聞に掲載された「内藤ルネ」の名前から、遥か昔の子どもの頃に思いを馳せたのであった。