「日本画満開」 山種美術館

山種美術館千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「日本画満開 - 牡丹・菖蒲・紫陽花・芥子 - 」
6/14-7/27

山種美術館では紫陽花もまだ見頃です。館蔵の日本画より、時候の花々を展観します。「日本画満開」へ行ってきました。





平八郎の「芥子花」(1940)からしてノックアウトです。まるでツクシのようににょろりと伸びる茎の先には紅色やピンク色の花が咲き、それと対比的な蕾みがリズミカルに突き出して連なっています。また彼と言えば、その作風の変遷、もしくは差異も興味深いところですが、大作の「牡丹」(1948)の艶やかさにも強く魅せられました。花々が溢れんばかりに咲き誇りながらも、どこか儚さを思わせるのは、その抑制された色調の効果によるのかもしれません。夜、誰もいない場所にて人知れず咲く牡丹のようでもあります。

右に本画、左に下絵を並べた、古径の「菖蒲」(1952)は見応えがありました。涼し気な菖蒲が優雅な花瓶にさされた美しい作品ですが、下絵の方を見ると本画よりももう少し花瓶の位置が上にあったことが分かります。こうした下絵と本画を見比べられるのも、また館蔵品の豊富な山種ならではのことかもしれません。

図版がありませんが、今回のベストに挙げたいのは土牛の「罌粟」(1936)です。お馴染みのたらし込みによってケシの花が象られていますが、その土色を帯びたワインレッドの濃厚さと言ったら他の作品に例がありません。やや白んだ淡い葉の描写との対比も鮮やかでした。



山種と言えば御舟です。彼の花の画の最高峰と言っても良い「黒牡丹」(1934)にも強く惹かれましたが、その滲みの牡丹とは対照的な「牡丹」(1934)も印象に残りました。この牡丹の花に見る立体的な息遣いは、やはり西洋画への関心もあった御舟ならでの表現とも言えるのではないでしょうか。

異彩を放つのはやはり龍子の「牡丹」(1961)です。跳ね上がる花びらと葉が、牡丹の一瞬の艶やかさをダイナミックに表現します。花の画に良く有りがちな静けさなどを吹き飛ばす見事な作品です。



今月27日までの開催です。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (キリル)
2008-07-22 00:27:59
こんばんは。
福田平八郎、大好きです。どうしたら芥子がこんな風になるのだろうと楽しくなります。大作の牡丹にも驚きました。平八郎を追ってみたことがないので、こういう作風の時期があったとは考えたこともありませんでした。
龍子の牡丹は花弁なんかの緻密な描写に迫力がありました。たしかにダイナミックですね。
 
 
 
Unknown (遊行七恵)
2008-07-22 12:47:25
こちらにもこんにちは
山種コレクションだけで、1エーカーの花畑がありそうな感じです。

平八郎の牡丹は去年の回顧展でもとても人気でした。
裏彩色があんなにも幻想的な世界を生み出すんですね。

つくづくいい気持ちでした。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-22 22:25:18
@キリルさん

こんばんは。
平八郎の二枚は、本当に同一の画家なのかと思ってしまうほど雰囲気が異なりますよね。私も彼の作風の変遷をあまり知らなかったのですが、以前京近美の回顧展に接してその魅力に虜となりました。いつか東京でも展示があると良いのですが…。


@遊行さん

こんばんは。こちらにもありがとうございます。
なるほど裏彩色の効果だったのですね。とても色調が落ち着いているというのか、薄暗い趣がとても魅力的に思えました。やはり夜を表したのでしょうか。好きな作品の一つです。
 
 
 
Unknown (すぴか)
2008-07-23 10:40:09
こんにちは。

お暑いですね、でもこの展覧会思い出して
ほうっとしています。あのすばらしい花ばな達。

「百花繚乱」(山種)の小冊子に
平八郎・麦僊・土牛の芥子の花が並べて
出ていますが、土牛の《罌粟》、あの
ワインレッドをよみがえらせてくれます。
小さな図版でも記憶を反芻できるのは
ありがたいです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-23 21:19:55
すぴかさんこんばんは。

>「百花繚乱」(山種)の小冊子に
平八郎・麦僊・土牛の芥子の花が並べて

図版が出ておりましたか。
確かその展示の時に買ったような記憶があるので、これから少し探してみたいと思います。情報をありがとうございました。

>小さな図版でも記憶を反芻

山種の小冊子はいつも良く出来ていますよね。
お得です。
 
 
 
Unknown (oki)
2008-07-23 21:48:27
この展覧会のチケット新聞屋から入りました、早く行かないとー。
チケットの裏面に「毎日フレンド」ってあるのですよね。
「毎日フレンド」って会員情報流出でなくなつて「まいまいクラブ」に移行したと思っていたのですが―謎だ。
小冊子を作るようになりましたか、山種も、かねがね図録を用意してくれないのを不満に感じていたのでうれしいです。
チラシも毎回作るようになりましたねー。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-23 22:03:45
okiさんこんばんは。

>小冊子を作るようになりましたか

残念ながら今回の小冊子はありません。
ただコメントですぴかさんが仰るように、以前の百花繚乱展の冊子に今回の出品作がいくつか掲載されています。会場でも紹介されていました。

>山種も、かねがね図録を用意してくれない

そうですね。ただリニューアル移転後は毎回図録が出たりするかもしれませんが…。

>チラシも毎回作るよう

お値段が上がってからがチラシが毎回欠かさず出ていますよね。
今回のはなかなか見事です。
 
 
 
Unknown (ruru)
2008-07-27 16:52:52
外の暑さとは無関係な展示室内。
優しい花々が程良くクールダウンさせてくれましたね。

「牡丹」の妖艶さは素晴らしかったです。薄い衣をまとった中国美人を思わせる作品でした。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-28 21:40:51
ruruさんこんばんは。

日本画のお花は不思議と清涼感がありますよね。
牡丹の色味も、何故か日本画の顔料にかかると落ち着いて見えます。

>薄い衣をまとった中国美人を思わせる作品

なるほどそんな風情があったかもしれません。
素敵でしたね。
 
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