「美しきアジアの玉手箱」 サントリー美術館

サントリー美術館港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階)
「美しきアジアの玉手箱 - シアトル美術館蔵 日本・東洋美術館名品展」
7/25-9/6



シアトル美術館所蔵の日本、東洋美術品を概観します。サントリー美術館で開催中の「美しきアジアの玉手箱 - シアトル美術館蔵 日本・東洋美術館名品展」へ行ってきました。



ちらし表紙には何やら異様な「烏図」が掲載されていますが、私感ながらも今回の主役は本阿弥光悦書、そして俵屋宗達画による一連の「鹿下絵和歌巻」に他なりません。シアトルの長大な作品を中心に、山種、サントリー、MOA他、個人蔵の品々が、これ見よがしに勢揃いして展示されています。残念ながらシアトルの作品を除くと展示替えがあるため、全てを一度に見ることは叶いませんが、鹿が跳ね、和歌の舞う様には終始うっとりさせられるばかりでした。この作品を見るだけでも、今回のサントリーへ行く価値はあります。

それではその他、印象に残った作品を簡単に挙げておきます。



「石山切」伝藤原定信(平安時代)
胡粉や金銀泥にて描いた花鳥の文様を背景に、定信の書が流麗に泳ぐ。雲母摺もまた美しかった。



「駿牛図」(鎌倉時代)
一見、宗達の描く黒い牛のようにも見えるが、実際には足の筋肉など、細部はなかなかリアルに表現されている。写実的な作品。



「竹に芥子図」狩野重信(江戸時代)
六曲一双の金屏風の大画面に紅白の芥子が咲き誇る。両脇を固めるのは清涼感のある竹林。前もって画像で見た時よりもやや暗い印象を受けたのはライティングが理由なのか。

「酒井抱一像」伝酒井鶯蒲(江戸時代)
まさかこの展覧会で抱一の肖像画が見られるとは思わなかった。弟子の鶯蒲が描いた抱一の像。死後五ヶ月頃に描かれたらしい。キャプションには知的とあったが、むしろ飄々とした好々爺のような雰囲気に好感が持てた。抱一ファンは絶対に見逃せない一枚。

「寒林野行図」与謝蕪村(江戸時代)
このところ赤丸急上昇中の蕪村から一作。深い岩山の小道を進む男二人。草地の表現は点描風。蕪村は日本の印象派と言ったら問題だろうか。

「染付波兎文皿」(江戸時代)
波の上を軽やかに駆ける兎が一匹。古事記に由来する因幡の白兎のモチーフだそう。リズミカルな様子が心地よい。

「波千鳥」都路華香(明治時代)
ほぼ唯一の近代日本画。大好きな都路華香の大作屏風が展示されている。揺らぐ描線がたゆたう波を描き、その上にひらりと鳥が舞っている。波間に見える黒は魚影なのだろうか。

「織部片輪車星文四方鉢」(桃山-江戸時代)
星や天の川の図像が描かれた織部焼。織部の斬新な意匠はむしろ古代的だと思う。



最後にはネパールの仏像なども登場する盛りだくさんの展覧会でした。

9月6日までの開催です。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (せいな)
2009-09-04 20:42:27
遠い昔、まだ佐々木主浩がマリナーズに入ったばかりの頃夫婦でシアトルを訪れた際シアトル美術館には何度か伺いました。
数々の名品が補強もなしに普通に置かれていたことと家族連れが沢山いて「日本の美術館は子連れいないのにすごいな」と思った記憶があります。
宗達ファンの息子は「鹿下絵和歌巻」に大興奮でした。ただ本阿弥光悦の書は「ひらがな読みにくいー」と大胆発言をしておりました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-09-05 21:40:37
せいなさんこんばんは。早速のコメントありがとうございます。

>シアトル

現地もご覧になられましたか!普通に作品が置かれていたとは凄いですね。ですが、そうしたいかにもアメリカらしい雰囲気は好きです。ともかく日本の美術館は色々と厳しすぎますね。

>宗達ファンの息子は「鹿下絵和歌巻」に大興奮

私も大興奮でした。
 
 
 
カラスが良かったですね。 (RICARDO)
2009-09-07 17:05:44
なんで不気味なカラスを!と思いましたが、
そう言えば日本神話のヤタガラス。
決して不幸の鳥ではなかったんですな。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-09-07 22:41:46
RICARDOさんこんばんは。

>決して不幸の鳥ではなかった

そうでしたね。
むしろ烏を忌避していたのは西洋でして…。
いつ頃、今のように烏が嫌われるようになったのかなとも思いました。
 
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