東京国立近代美術館 「木村伊兵衛展」

東京国立近代美術館(千代田区)
「木村伊兵衛展」
2004/10/9~12/19

こんにちは。

先日、草間彌生展を見た時にあわせて、写真家の木村伊兵衛の展覧会も見ました。前回感想を書き損ねてしまったので少し記録に残しておこうと思います。

木村伊兵衛は、近代日本写真史にとって絶対外すことの出来ない大きな存在だそうです。写真に疎い私にとっては、失礼ながらあまり馴染みのない方だったのですが、味わいのあるモノクロームの画面からは、どこか人懐っこい雰囲気が感じられました。自己主張は決して強くないのに、いつの間にか見る者を写真の中の世界へ誘っている。肩の力を抜いて見ることの出来る写真展だったと思います。

上の写真は「板塀、秋田」(1953)という作品です。過ぎ去ろうとしている馬の尻と尾が少しかわいいのですが、その後ろにある板塀と木の質感が素晴らしい・・・。ここにアップした写真では、どうしても作品の質感が損なわれて分かりにくいのですが、荒々しい木と地面と格闘しているようなその根、背後の風景の一切を遮断して凛然と立つ塀、そして不思議とそれらに溶け込んで、人間の生活感を絶妙に醸し出しているポスト。(控えめに置かれているのがまた良い。)ここにある全てのものが美しく、そして調和的にこの写真を構成していると思いました。一つでも欠けるとバランスが崩れそうです。

会場は常設展の中にあります。全部で二部構成ですが、常設の時代区分と合わせるかのようになっていたのが面白いと思いました。私はどちらかというと、人が写っている作品に惹かれるものが多くて、少し無造作でやや隙があるようなアングルから撮られたいくつかの写真が印象に残りました。私は「上手い写真」の定義を厳密に出来ないので、その漠然としたイメージしか考えることができませんが、木村氏の写真の多くは、いわゆる「上手い写真」ではないように思いました。しかし、被写体の中のドラマや動きを穏やかに自己主張させて調和させていく手腕が素晴らしいと思いました。構図やら何やら色々考えて撮られた完璧な写真では得にくい魅力。そういった魅力があったように思います。

*草間展と同じチケットで観覧できます。頭の切り替えが大変ですが・・・。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
gee03534@nifty.com (自由なランナー)
2004-12-14 07:35:45
こんにちは。

私も木村伊兵衛展、みてきました。草間のあとに見たので、おっしゃるとおり頭の切りかえが大変でした。

うちのブログでも拙い文を書いたのでTBさせてください。
 
 
 
自由なランナーさん、こんばんは。 (はろるど・わーど)
2004-12-15 22:06:52
こんばんは。TBありがとうございます。



木村さんの展覧会、ご覧になったようですね。

かつてアサヒカメラで、色々お世話になったとか。



メッセージ性を持たせながら、自然な写真を撮った、というご感想には、同感です。そのバランスが素晴らしいのかもしれません。
 
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