「麻生知子展 『あ、そう』他」 トーキョーワンダーサイト 9/11

トーキョーワンダーサイト文京区本郷2-4-16
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.4」
9/9-10/1

阿部史、越ちひろ、麻生知子の、若手アーティスト三名による展覧会です。今回は、一階に展示されていた麻生知子が印象に残りました。美味しそうなのり巻きやホットケーキなどが、油彩を使いながら日本画のような感触で描かれています。また一見、温かみのある穏やかな作風ですが、時に、ピリリときくスパイスのような皮肉が隠し味のように込められていました。なかなか興味深い表現です。



食べ物シリーズ(?)では、特に「キャベツの千切り」と「ホットケーキ」が記憶に残りました。ともに対象を真上から鳥瞰的に捉え、油彩の質感でキャベツとホットケーキを巧みに描いています。縦方向へ細く伸びた緑の線を、あたかもたくさんの糸を並べるかのように描くことで、キャベツの千切りが易々と表現されてしまう。ただ、麻生はモノの物質感をリアリティーの方向で勝負する作家ではないようです。むしろ、例えばホットケーキの上にのったバターのしみのように、一瞥しただけでは単に抽象的なだけの模様が、いつの間にか具体的なものに見える過程が興味深いのかと思います。それこそホットケーキなどは、言わば楕円形の色彩の積み重ねに過ぎません。しかし、それが不思議と美味しそうに見えてくるわけです。

「煙浴」と題された2点の油彩もなかなか優れていました。一つは、ちょうど浅草寺の前で煙を浴びているような人々の光景が描かれていますが、もう一点はどこかガラスにでも閉ざされた喫煙所の中で、もうもうと立ち上る煙を浴びながらタバコを楽しむ人の姿が描かれています。そして、そこにいる人たちの微妙な距離感。上にアップした「お花見」もそうですが、それぞれが少しずつ距離を置いて、あくまでも緩やかに集団を形成していました。互いに孤独で無関係に生きているようでも、結果として群れなくてはならない都会の生活。そこでの疲労感が伝わってくるかのようです。寂し気な空気が作品を包み込んでいました。

初めて拝見する方でしたが、思いの他楽しむことが出来ました。来月1日までの開催です。

*関連エントリ
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.3」(「マギー 『THIS IS MORE』他」) 8/19
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.2」(「mayu 『mayu展』他」) 7/8
「Emerging Artist Support Program 2006 vol.1」(「山本挙志『いってかえる』他」) 4/23
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
世俗図 (pfaelzerwein)
2006-09-18 15:56:31
上の写真の絵「お花見」は気になります。小さくてよく見えないのですが、車座になって、色からすると裸のようです。上に書き込んであるのは各々の名前なのでしょうか?



極楽図でも地獄図でもない、仰るような世俗図なのでしょうか。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2006-09-18 23:54:42
faelzerweinさん、こんばんは。

ご無沙汰しております。コメントありがとうございました。



>車座になって、色からすると裸



そうですね。

輪郭明確にしないで、

どれもシルエットなどで描いている作品が目立ちました。

それこそ夢の中に出て来る人物のようです…。



>名前なのでしょうか



失礼しました。

これはDMからスキャンしたものなので、

要は展覧会の宣伝文句が書かれています…。

分かりにくくて申し訳ありません。



>世俗図



世俗の儚い賑わいを…、とでも言ったところでしょうか。
 
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