「北斎と広重展」 三越日本橋本店ギャラリー 6/11

三越日本橋本店新館7階ギャラリー（中央区日本橋室町）
「北斎と広重展　幻の肉筆画発見」
6/7～19

日本橋の三越ギャラリーで開催中の「北斎と広重展」を見てきました。新発見されたという「幻の肉筆画」を含めて、約240点の作品が展示されているボリューム満点の展覧会です。有名な「富嶽三十六景」や「東海道五十三次」から「諸国名橋奇覧」まで、まさに諸国漫遊の旅を、北斎と広重の作品で楽しむことができました。

葛飾北斎は力強いタッチが印象的です。大きな波が舟を飲み込む「富嶽三十六景　神奈川沖浪裏」の大胆過ぎる程の構図感は、何度見ても心に残ります。また、「幻の肉筆画」として紹介されていた「滝見巡礼」も、尋常ではない縦長の構図の中に、天から地の底へ落ちるような滝の姿を描いています。「三十六景」や「千絵の海」で見せた、生き物のようにうねるような水面の描写も躍動感がありました。

一方で歌川広重は、大胆な構図の中の、繊細な筆の表現が心に残りました。川や海に配している「青」の絵具が持つ透明感にも惹かれます。また、直線上に落ちる雨の様子と、どことなく動きに愛嬌があって、表情にアニメ的なものすら感じさせる人物の味わいには独特ものを感じました。ゴッホとの関連として紹介されていた「亀戸梅屋舗」では、前面の大胆な梅の木の描写と、それに伴った奥行きのある表現、さらには細かく描かれた梅花の味わいの全てが、作品の極めて高い完成度を生み出しています。これは素晴らしい作品です。

「三十六景」と「五十三次」を同時に見られるだけでも嬉しかったのですが、それ以外の作品も十分に楽しめるものばかりです。浮世絵の世界に浸れる良い展覧会でした。19日までの開催と会期は短いのですが、十分におすすめできます。