「ジェームス・アンソール展」 東京都庭園美術館 6/4

東京都庭園美術館(港区白金台)
「ジェームス・アンソール展」
4/23~6/12

「仮面の画家」とも称されたというベルギーの画家、ジェームス・アンソール(1860-1949)の展覧会を見てきました。Bunkamuraの「ベルギー象徴派展」ではあまり印象に残らなかった彼の作品ですが、油彩画で見せる鮮やかな色彩感には魅せられました。

「異端」や「グロテスク」などという先入観を持って見ると、初期の「リアリズム」の作品群は全くの別世界に映ります。クールベを思わせるような光を大胆に取り込んだ風景画は、丁寧に塗り込まれた油彩の質感と、水平線や地平線を強調した広がりのある構図が、温かみと開放感を感じさせます。特に「海景、日没」(1885年)は、水平線上に僅かに姿を残す夕陽が、空と海とを仄かな朱色で染める大変美しい作品です。また、同じく海を題材とした「嵐の後(虹)」(1880年)や「防波堤」(1878年)も、刷毛で塗ったような面的なタッチが伸びやかに広がりながら、光の反射が繊細に表現されていて見応えがありました。アンソールの自然への讃歌が聞こえてきそうな作品ばかりです。

「リアリズム」を経た彼は、その後「ジャポニスム」を含んだ「シノワズリー」と呼ばれる日本や中国の芸術へ関心を示します。と同時に、初期の風景画や静物画では見られないような奇妙な置物、例えば仮面などが登場しました。私が特に惹かれたのは「シノワズリー」(1907年)です。いかにも東洋的な団扇や置物が、青いクロスをかけたテーブルに置かれていて、その中には大きく口を開けたものや歯を剥き出しにした仮面もありますが、中央に置かれた真っ青な透明感のある瓶の美しさはとても印象に残ります。また、「我が花瓶と花と仮面」(1935年)の鮮やかな色彩感にも魅せられました。白を巧みに配して画面に華をもたらす様が印象的な作品です。

グロテスクとされる作品は、特にエッチングで多く見られます。ただ、私にはグロテスクと言うよりもむしろゴヤの作品を思わせるような諧謔性を感じました。また、仮面や骸骨が登場する油彩画は、初期の風景画でも見せたような色彩感が驚く程明るく鮮やかになってきて、非常に多様な色彩の表現力を見せつけられます。特に「オーステンドのカーニヴァル」(1933年)や「赤キャベツと仮面」(1925-30年)での大胆な「赤」は強く印象に残りました。赤や白を大胆に使用した色彩感と骸骨や仮面の組み合わせ。グロテスクとは一言で片付けられない表現の幅広さを感じました。

アンソールの作品と庭園美術館の重厚な雰囲気は意外にも相性が良いようです。おどろおどろしさよりも、やや皮肉めいた笑いのある世界観がありました。とても楽しめた展覧会でした。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 7 )
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コメント
 
 
 
Unknown (イッセー)
2005-06-12 09:53:12
はろるどさま

コメント&TBありがとうございます。



展示してある作品が、バラエティに富んでいて、見ていて楽しい展覧会でした。



特に、花帽子をかぶった自画像は、良かったです。
 
 
 
アンソール展 (いづつや)
2005-06-12 16:58:49
はろるどさん、こんばんは。TB有難うございました。ベルギーの王立

美術館でアンソールの絵が3点くらい見れると思ってたのですが、

1点のみでした。でも、その絵はアンソールにとっては歴史的な絵

でした。“憤慨した仮面”です。世間に評価されるのはずっと先ですが。



晩年、アンソールは男爵になったり、昔の社会主義に共鳴した心情

はどこに行ったのか、随分豊かな生活を送ります。仮面の絵のおかげで。

いつか、代表作“キリストのブリュッセル入城”(スイス、チューリヒ美術館)

を見たいですね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2005-06-12 21:48:15
@イッセーさん



こんばんは。

花帽子、私も良かったです。

タッチの感触や色合いの素晴らしさに魅了されました。

「レアリスム」に「グロテスク」と、

本当にバラエティに富んでますよね。

これは行って正解でした。





@いづつやさん



コメントありがとうございます。



>晩年、アンソールは男爵になったり、昔の社会主義に共鳴した心情はどこに行ったのか、随分豊かな生活を送ります。仮面の絵のおかげで。



そうなのですか。

「異端」などと称されていましたので、

てっきり晩年まで不遇だったのかと…。

私はそんなに初期と「グロテスク」が断絶した世界には見えなかったのですがどうなのでしょう。
 
 
 
Unknown (Tak)
2005-06-14 07:49:16
こんにちは。

最終日に滑り込みこみで行ってきました。

いつでも行けると思っていて

結局最終日の混雑している日になってしまい

少し後悔しています。



ただ、展覧会自体は見ごたえがあって

大変印象に残りました。

色々な画家さんの影響を受けているのですね。



 
 
 
Unknown (はろるど)
2005-06-14 23:56:46
Takさん、こんばんは。

最終日に行かれましたか。



>色々な画家さんの影響



そうですよね。

ジャポニスムもそうですし。

幅広い作風が持ち味かもしれません。

色彩感は抜群でした。
 
 
 
■はじめまして (goldius)
2005-12-17 15:18:58
「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」のTシャツ着て、某美大の発表会観に行ったら、危ないおっさんに思われて、学生に腹に蹴りいれられたgoldiusと申します。w

TBさせていただきます。

 
 
 
Re.はじめまして。 (はろるど)
2005-12-18 22:02:36
goldius様、こちらこそ初めまして。

TBとコメントをありがとうございます。



>首吊り死体を奪い合う骸骨たち」のTシャツ着て、某美大の発表会観に行ったら、危ないおっさんに思われて、学生に腹に蹴りいれられたgoldiusと申します





あんなに素晴らしい作品なのに(!)、

それは酷いですよね!





早速ブログを拝見させていただきます!
 
 
 
芸術を尊重しない美大生 (goldius)
2005-12-20 18:53:56
単純に美しいものが芸術だと思っている底の浅い美大生の前にグロ系のアンソールのTシャツはまずかったですな。ゴッホのひまわりのTシャツを着ていくべきでしたw私がキムタクのようなハンサムではないので、顔だけで拒否されて不審者扱いされるとは言わないようにww
 
 
 
Re.芸術を尊重しない美大生 (はろるど)
2005-12-20 22:31:50
goldiusさん、再度ありがとうございます。



>グロ系のアンソール



あんなにカワイイ?!のに残念ですよね。

アンソールの諧謔性を受け止めないのはいけませんよね!



ゴッホのひまわり!

ルノアールあたりも良いかもしれません!
 
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