「野球と鉄道ー幻の球場と思い出の球団」 鉄道歴史展示室(新橋)

旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
「野球と鉄道ー幻の球場と思い出の球団」
4/7-7/20



鉄道歴史展示室(旧新橋停車場)で開催中の「野球と鉄道ー幻の球場と思い出の球団」を見てきました。

日本初の本格的野球チームは、明治時代、鉄道技師の平岡ひろしが結成した「新橋アスレチック倶楽部」に遡ります。

振り返ってみれば、現在の西武、阪神をはじめ、過去には近鉄、阪急、南海、さらには西鉄など、多くの鉄道会社が球団経営に携わっていました。一見、あまり接点のないように見える野球と鉄道ですが、実は深い関わりがあると言えるのかもしれません。


「藤井寺付近を走るデニ506(大阪鉄道)」 昭和12年5月 近畿日本鉄道

「鉄道を切り口に野球史を振り返る」(チラシより)展覧会です。中でも主に鉄道会社が所有していた球場について細かく紹介しています。

冒頭は新橋に野球チームを作った平岡ひろしです。明治4年に渡米。現地の機関車製造所で学んだ彼は、帰国後、鉄道技師として鉄道局に入ります。その後、独立し、自らの経営する鉄道車両会社を興しました。

平岡は当時、アメリカでも黎明期であったメジャーリーグで野球の面白さに魅せられたそうです。日本でも普及させたいと願ったのかもしれません。帰国した後には車両会社の工員たちへ熱心に野球を教えます。


「新橋アスレチック倶楽部」 明治13年 野球殿堂博物館

「新橋アスレチック倶楽部」の集合写真に目が止まりました。中央前列が平岡本人です。選手たちがバットや旗を持ってはポーズを構えています。何ともスタイリッシュ、まるでセーラ服を思わせるユニフォームではありませんか。この頃に平岡は、旧新橋駅構内に日本初の野球場ことリクエリエーションパーク、訳して保健場を作りました。


ポスター「阪急西宮球場五月一日開場」 昭和12年 阪急文化財団

さて本題の野球場の歴史です。最も古いものでは明治42年に京浜電車(現、京急)が羽田グラウンドを建設。また大正2年には阪神急行電鉄(現、阪急)が豊中にグラウンドを作ります。さらに大正5年には阪神が鳴尾、大正11年に今度は阪急が宝塚に球場を開設するなど、まるで鉄道会社が競いあうかのように次々と野球場をつくりました。


「鳴海球場 東京巨人軍対名古屋金鯱軍の試合」 昭和11年2月9日

こうした球場、今でこそ既に失われていますが、それを会場では「幻の球場」と題して紹介。在りし日の球場写真や野球大会などの入場券、はたまた落成記念の鉄道案内図や路線図、それに新聞記事の切り抜きなどの資料などを展示しています。


「上井草東京球場落成記念 東西対抗職業野球パンフレット」 昭和11年 杉並区立郷土博物館

杉並に球場があったとは知りませんでした。上井草球場です。所有したのは西武鉄道。ちょうど沿線の上井草駅の駅前にありました。開設はプロ野球がリーグ戦をはじめた昭和11年です。両翼100メートル、中堅119メートルというから立派です。しかも収容人員は3万人。西武鉄道も球場を積極的に宣伝、高田馬場より急行運転するなどして観客を輸送していました。


「東京第二次リーグ戦 指定席券(洲崎球場)」 昭和11年 個人蔵

東陽町にも球場があったことをご存知でしょうか。洲崎球場です。大東京軍、現ベイスターズの本拠地として建設されたプロ野球専用の球場。さすがに東陽町ということもあってか都心も近く、当時の市電やバスなどのアクセスも良好。立地としては申し分ありませんでしたが、埋め立て地のために水はけが悪かった上、観客が座るとギシギシと音をたてるスタンドなど、設備面に難があったそうです。

よって一年後に後楽園球場が出来てからは試合数も激減。2年後には球史からも消えてしまいます。これぞ「幻の球場」と言ったところかもしれません。

洲崎球場の復元模型が出ていました。ともかく資料の乏しい同球場のことです。当時の新聞のマイクロフィルムや古地図、さらには航空写真までを分析。ここに200分の1スケールで再現しました。


「藤井寺球場パンフレット」 昭和3年以降 個人蔵

西宮や藤井寺、大阪スタジアムなどは実際に行った方もおられるのではないでしょうか。また平和台、そして甲子園球場に関しても、鉄道会社関連の資料から紹介。完成時の姿を写した絵はがきの「阪神電車 甲子園停留所」からは今の甲子園駅の面影を見ることが出来ます。


絵はがき「大阪スタジアム」 個人蔵

現在のなんばパークス、かつての大阪スタジアムの設計が坂倉準三であることも初めて知りました。言うまでもなく南海ホークスの本拠地、後の近鉄と広島の日本シリーズでは「江夏の21球」の舞台ともなった球場です。実は私も一度、行ったことがあり、微かに記憶があります。坂倉の設計の立体面のデザイン図は目を引きました。

ほかには今年の3月のダイヤ改正により姿を消した「甲子園団体臨時列車」の展示も面白いのではないでしょうか。ずばり甲子園の応援のための列車、昭和後期から平成初期にはよく運行されたそうです。旧国鉄の583系の団体電車の鉄道模型にはつい見入ってしまいます。


「野球と鉄道」展カタログ

カタログが700円で発売されていました。写真図版、テキストもなかなか充実。展示内容にほぼ準拠しています。購入したのは言うまでもありません。



野球好きには楽しめる展示だと思います。7月20日まで開催されています。

「野球と鉄道ー幻の球場と思い出の球団」 旧新橋停車場 鉄道歴史展示室
会期:4月7日(火)~7月20日(月・祝)
休館:月曜日。但し祝祭日の場合は開館。翌日休館。
時間:10:00~17:00。*入館は閉館の15分前まで。
料金:無料。
住所:港区東新橋1-5-3
交通:東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩4分。JR線新橋駅銀座口より徒歩5分。
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