「施井泰平展 - Binoculars」 YUKARI ART CONTEMPORARY

YUKARI ART CONTEMPORARY目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階)
「施井泰平展 - Binoculars」
8/23-9/20



白で埋め尽くされた本の背表紙は見る者を圧倒します。施井泰平の個展へ行ってきました。

上にDM画像、また下にお許しをいただいて撮影した展示の様子をアップしましたが、これを一見しただけで何の展示であるのかを理解するのは困難かもしれません。白一色の世界に黒い縦線がつながり、それらが無限ループするかのようにして画面全体を埋め尽くしています。モノクロの抽象画、はたまた幾何学的な何らかの記号ともとれるのではないでしょうか。



実際のところ種明かしをしてしまうと、これらの白は文庫本、ようは新潮文庫の白の背表紙を切り取ってずらりと並べたものでした。その数は何と約三千。新潮の海外版の白をちょうど巨大な本棚に押し込んだかのようにして横一列、また縦にも寸分違わぬ直線をひいてまさにひしめき合うようにして揃っています。そして目を近づけるとようやくタイトルが浮かび上がり、紛れもなく文庫本であるということが分かりました。それにしても約4メートルはある画廊の壁面を天井まで埋め尽くし、さらには横に置かれた鏡の効果によって永遠に連なっていく様子は圧巻の一言です。背表紙のタイトルの群れは、本来、そこに秘められているであろう意味内容を簡単に吹き飛ばしてしまいました。



ところでサブタイトルにBinoculars、つまりは双眼鏡とありますが、それは、この文庫本と対比的な世界が、衝立てを挟んだ反対側に広がっていることに由来しています。同画廊には二つの展示室がありますが、手前に文庫本(表面)、そして奥はもう一方の不思議なわら(裏面)の空間が、それぞれ主役になっているのです。ちょうど双眼鏡を覘き、各々から別の光景が広がっている様を想像していただければ問題ないでしょう。またわらの中では「卵」がいくつか包まっていました。知識とは所詮、そのようなものにすぎないのかもしれません。

今月20日までの開催です。
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