【サブスリー達成!】
◆プロローグ
2011年1月、55歳で迎えた勝田マラソンで2時間57分04秒と25年ぶりの自己ベスト達成。翌年の別大も兄弟でサブスリーで競い合えた。当時はこの練習でいいのならいつでもサブスリーで走れると思えた。
が、現実は厳しく、「いつでも」なんてあっという間に木っ端微塵に流された。
還暦を迎えてサブスリー復帰を掲げるも、遠い現実は続く。
一昨年(2018年)3月古河はなももマラソンではなんと3時間00分02秒というネタだろう騒動が起きた。スタート時のジョグモードを考えれば実質サブスリーで走れたと強気になって、もうすぐにでも切れる、いや切るつもりだった2018〜19シーズンは後半怪我に泣いたこともあって惨敗。
そんなことしていたらとうとう64歳になってしまった。これから先、当然のことながらチャンスはそう何度も訪れてはくれない。
今シーズンは秋口から愚直に練習を重ねることが出来、順調にここまで来た。
しかし、これまで頼りにしていた基準タイムは練習で何一つ突破出来ていない。そんな大きな不安はぬぐい去れなかったけど、グダグダ言っても得るものは何もない。
自分を信じて勝負に出よ。ここで必ず決めろ。一発で決めろ。自分に大きなプレッシャーをかけ続ける。これを超えられないようでは所詮それまで。
ニコニコしてたけど覚悟を持って迎えた1月26日だったのだ。
真摯にマラソンに取り組んでいる人たちに敬意を表し、久しぶりのランシャツ&ランパンだ。寒いけど。太ももの上の方が焼けてなくて白いけどσ(^_^;)
40分も前からCブロックの真ん中あたりに並び、心静かに時を待つ。心配された天候は最後になって味方してくれた。気温6度、曇り空、微風。絶好の条件か。
マラソンに奇跡はない。やってきたことを過不足なく出し尽くすだけだ。
落ち着き具合は悪くないと冷静に自分観察。
◆スタート〜5km(21:14/ネット)
4'55"→4'13"→4'11"→4'10"→4'09"(5km/21:49)
そして、勝負のスタートは切られた。楽しむというよりは、やっぱりなるべく早くに終わらせたいというのが本音。
スタート地点まで35秒。その後もしばらくは集団ジョグ。そのスピードが徐々に上がり1分ほどで4分台に突入。当然のことながら呼吸も楽でスピードが上がっていく様が心地よい。流れに乗っているだけでも4分ちょうどから3分台に突入。
1km通過時5分弱。想定内。焦ることはない。1km過ぎてからは自分のペースでしっかり走れるようになった。慌てず、欲張らず、心拍数をよく観察して進む。
心拍はまだ140に行くか行かないか程度。このところ続いた序盤の苦しさは微塵もない。いいぞ。体もようやく温まってきた。着ていたウインドブレーカーを脱ぎ、5km付近で応援待機の妻に投げ渡す。
◆6km〜10km(20:41)
4'03"→4'06"→4'09"→4'09"→4'09"(10km/42:30)
しばらく進み鋭角に曲がった後の8.5km付近。レンタサイクルで先回りしてくれている2度目の応援ポイント。調子は上々で思わず安心してもらうためにOKサインを送る。ヴェイパーフライもご機嫌だ。
5km過ぎてからは平均心拍は154付近で。154と言えばLT心拍でちょっと高いかなとも思うが、十分に鼻呼吸レベルなのでこのまま押して行く事にする。
いつも安全に走っていたが今日は少しばかり強気で攻める。今日攻めずにいつ攻めるのかってことだ。絶対に保つはずと自分を信じて。
【Thanks Mr.Haruyama】
◆11km〜15km(20:49)
4'10"→4'09"→4'06"→4'02"→4'20"(15km/1:03:19)
コースは結構うねっていて、前半の一番きつい15km手前付近の上り坂ではラップは落ちたが概ね良好。
2週間前の昭和記念公園での30kmが5km周回だったので、頭の中ではその時の状況を思い返しながら走っていた。15km地点で3周終わった。
◆16km〜20km(20:55)
4'07"→4'08"→4'15"→4'12"→4'10"(20km/1:24:14)
5km周回コースなら4周目突入。調子は悪くないけど、何となく下腹が気になる。どうやらトイレのトラウマか。そう思って無視無視。
4日前の練習ではあんなにきつかったペースが普通に維持できているのは嬉しい。確実に貯金が出来ているし、このままのペースを頑張って維持したい。休養の威力まざまざだ。なんかお腹痛くなりそうで怖いので、エイドでの水はほんの一口だけ。
◆21km〜25km(20:43)
4'09"→4'10"→4'06"→4'07"→4'07"(25km/1:44:57)
中間点は1時間28分49秒。久々の前半からのサブスリーペース。そうじゃなきゃ今日は困るのだけど、とりあえず少しの安心。だけどここから気を引き締めて。
前方にウルトラのガンちゃんが見えてきた。や、これはいい感じなのだ、きっと。
ここ数年のレース中、彼からはいつもサブスリーを応援してもらっているが果たせず。今日こそは。25kmの線路をまたぐ坂で追いついた。少し話をしていると気が紛れていいもんだ。
2週間前に転倒して肋骨折ったとか。だけど逞しく走っていて勇気もらう。そして今日はハリ天さんのサブスリーの見届け人になると言ってくれる。そうか、頑張ろう。
◆25km〜30km(20:44)
4'08"→4'05"→4'06"→4'11"→4'11"(30km/2:05:41)
キツくなっているが後ろからはガンちゃんがピタリついて煽ってくれる。28km地点では妻たちの先回り応援隊が待っている。やや上がり気味のペース。
元気よく応援団の前を通過。さぁ、ここからが正念場だ。
沿道で移動応援してくれている故障DNSの春山くんからも「ハリ天さん!56分切り行けるペース!」と檄が。そうか、行けそうか。足にはかなり来てるが頑張れ頑張れ。
いつもの30kmまでは知らん顔作戦ではなく、ここまでも十分にしっかり走ってきた。30km通過タイムが先日の西東京30Kとほぼ同タイムの2時間05分台。いいじゃないか。もうかなりキツイのだけど気分は盛り上がって来た。何が何でも踏ん張れ。気分は髪振り乱して!って感じ。
【Thanks Mr.Haruyama】
◆31km〜35km(21:09)
4'09"→4'14"→4'13"→4'10"→4'17"(35km/2:26:50)
この勝田マラソンでは一番の難所という印象がある32kmあたりからの坂。だけど上り坂というより連続するうねりだった。いつもボーッとしてたのか。
でもここさえ乗り切ればと走る前は思い描いていたので、思っていたよりあっさりクリア出来ると少々拍子抜けの気分だった。
ちょっと離れていたガンちゃんが再び追いついて来た。喰らい付くぞ。
◆36km40km(22:36)
4'15"→4'23"→4'23"→4'30"→4'38"(40km/2:49:26)
昭和記念公園のコースならあと1周半。36km通過時点ではまだ4分15秒キープ。ペースがズルズルと落ちて来た37km。泣いても笑ってもあと5km。何としても粘れ。
念のためとアームカバーの下に入れておいたジェルを一つ投入。しかしペース上がらない。くっそぉ。
あと3km。沿道からトライアスロン友人のTさんから檄。
よしと最後の力を振り絞る。
【Thanks Mr.Tsukamura】
ペースが上がったかと思った40km手前、突如左ハムストに痙攣の鉄槌が振り下ろされた。何?何?何だとっ!
ゼッケンの安全ピンを一つ引きちぎって手に取り、例のツンツンを。でも手がかじかんで上手く当たらない。このままではダメだ、走れない。ストップだ。
止まって処置。いつものようには上手く行かないが、早く走り出そうと体が動き出す。左足を引きずり、負担をかけないように必死で腕だけでもと前に前に。
◆41km〜Finish(10:18)
4'55"→4'40"→4'42"
40km地点通過が2時間49分!?。働かない頭で必死に計算。5分とかで走っていたんじゃ危ないのか。突きつけられた現実に一瞬真っ白に。コツコツ貯めてきた貯金も痙攣で一気に吐き出してしまった。
残るはどれだけ3時間を切りたいかというお前の「執念」「気迫」それだけだ。
神に祈っても通じることはない。走るのは自分だ。自力本願。
ラスト1km。こういう展開だけは避けたかったのに、またもや引き込まれるようにドラマ仕立てな展開だ。
あと800mだよ!と声をかけてもらうが、こちとら泣きそうだ。
痙攣は何とか大人しくなってくれて4分半まで速度回復。ゴールがもうすぐあそこに見えているのに進みが遅い。
最後の角を曲がってフィニッシュラインが目の前に飛び込んで来た。
妻たちの絶叫に近い声援だけはしっかり耳に届いていた。しかし余裕がなくて姿は探すことが出来ない。かっこよくガッツポーズで決めることをイメージしていたのにそれどころじゃなくなった。
転げる寸前のていでようやくゴール。グロスタイム2時間59分44秒。
【腰落ち、ヨレヨレ】
何故かこみあげるかと思った涙は現われず、ただひたすら安堵感の漂うゴールだった。サブスリーようやくここに実現。
ゴールを大喜びで迎えてくれたガンちゃん、ウサミくん、タザワくんとの握手でようやく心震えた勝田マラソンだった。