極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

橘とガザとソマリア

2009年01月08日 | 時事書評


パソコンの険しき吾を諭す顔 タチバナの花より白しきみ



橘の花散る里のほととぎす 片恋しつつ鳴く日しそ多き    大伴旅人


もう二十年ほど前、開発機の立会検査に水戸の元吉田に生産担当責
任者の外海青磁をともない井伊家の話は絶対すまいと申し合わせでか
けたが、その夜の会食が始まると依託先の塙技術部長が天狗党の末
裔で井伊直弼に斬首されたことを告げられ思わず後ろに転がってしまっ
た笑えるにも笑えぬ経験をした。天狗党の乱は1864年5月2日に起き、
翌年敦賀で投降処刑される。百年後敦賀市の仲介もあり、1968年に
親善都市提携を行った。


ゆく先は冥土の鬼と一と勝負         山国兵部
引きつれて 死出の旅路も 花ざかり      田丸八重


それから14年後1860年3月3日に享年46歳で、江戸城登城の井伊
直弼が桜田門外で水戸脱藩浪士らに暗殺された。近世大名で徳川
四天王の一人と称された井伊氏の家紋は橘。藤原氏の後裔を称して
いるが、その祖は井戸から生まれたと伝えられ、その手には橘が握
られていたのが、「井桁に橘」の紋の謂われとされるが橘氏から養子
をとったように仮託したと見られている。井伊氏は井桁と橘を別々に
しそれぞれを紋とした。井桁に橘紋は、日蓮宗の寺紋としても知られ
ているが宗祖日連が井伊氏の一族であった証とされる。

世の中をよそに見つつもうもれ木の 埋もれておらむ心なき身は  井伊直弼

   




福井の繋がりで言うと橘曙覧(たちばなのあけみ)が挙げられる。彼
は「たのしみは~とき」で始まる歌を編纂した『独楽吟』があり、死後、
正岡子規に「万葉集や源実朝以来の歌人」として絶賛された。1995
年天皇皇后両陛下が米国を訪問の際に、クリントン大統領が歓迎ス
ピーチで引用した短歌が「独楽吟」の中のひとついわれる。


It is a pleasure when rising in the morning I go outside
   and find a flower that has bloomed that was not there yesterday.


@小泉内閣メールマガジン

天皇の繋がりでいうと、京都御所の紫宸殿の前庭の右には橘、左
には桜が植えられている。橘は、垂仁天皇が田道間守を常世の国
に派遣して求めさせたとあるが、常住不変すなわち皇室の永続を
願っている。桜は、人の命などのはかなさを象徴する意味がある(
鈴木日出男『源氏物語歳時記』)。学名はCitrus tachibana:ミカン科
ミカン属の常緑小高木。別名はヤマトタチバナ、ニッポンタチバナで、
日本に古くから野生していた固有種のカンキツである。近縁種には
コウライタチバナ(C. nipponokoreana)があり、萩市と韓国の済州島に
のみ自生する(萩市に自生しているものは絶滅危惧IA類に指定され
国の天然記念物、果実は滑らかで直径3cmほどだが、酸味が強く
生食用には向かないがマーマレードなどの加工品にされることがあ
る。タチバナの名称で苗が園芸店で売られていることがあるがニホ
ンタチバナではなく、コウライタチバナと区別されず混同されている
ことがある。花言葉はないが松などと同様、常緑イコール「永遠」と
いうことで喜ばれるという。



橘は実さへ花さへその葉さへ 枝に霜降れどいや常葉の樹      聖武天皇
奥山の真木の葉しのぎふる雪の ふりは益すとも地に落ちめやも   橘奈良麻呂

話を戻そう。これをきっかけに、どの様な抗争でもひとりの命を殺
めた場合は和解するのに百年かかるのかという思いを抱いたわけ
だ。イスラエルとパレスチナの抗争が泥沼化し今また停戦協定が
切れ戦闘が続いている様をみるにつけ、親族に十年を経ず戦死者
がでて、国境紛争が百年も続くとなると収拾はつかない。口には出
さぬが日本人ならそう思っている。ではどうすればいいのか。選択
肢は1つしかない。軍事に関わらないことである。関わるとしたら、
世界政府的な機関、国際連合で紛争当時国にいかなる軍事力も
供与しないことを決議する。決議出来なくても、積極的に言い続け
る。そして、出来ることなら各国の軍事力削減プランを公表し地道
であるが実態を公開することだと思う・・・


戦国の世は花ならで一刻も早橘の叢(くさむら)さして駈く

@歌集木乃精 




これは日本には憲法九条があるから言うのではない。パリ不戦条約
(ケロッグ=ブリアン条約)第1条を米国が強要したからだ。これは農
地解放と同様、一時的には恩恵に預かったが、いまでは農業は根ご
そぎだめになりそうだし、なし崩し的な海外派遣状態が続いている。
へーゲル的に言えば共同体からの‘暴力’の外化である以上、外に
押し出された‘暴力’がどうなるのかは、いままた、海洋警察部隊を
派遣しようとする‘ソマリア海賊’をみれば分かる。だから、‘暴力’の
外化は共同体内部で消化すべき宿命を負っているというのが結論で
で、世界的な規範構築のための‘警察権’の行使を、国連に依託・付
託することを条件付けるが、‘軍事権’の行使にはその都度国内で判
断するというものだ。

@パリ不戦条約 



たれかまた花橘に思ひいでむ 我もむかしの人となりなば  藤原俊成


原爆を直接投下された国民が「羮に懲りて鱠を吹く」ことは当然だと
思うし、国是とすべきは「墨守」だと思う。あの兼愛と非戦の墨子の
思想(
松岡正剛の千夜千冊『墨子』)だ。それに気付いた時、西欧列
強の餌食になった清は遅かった。皮肉にも「専守防衛」がすでに成功
した例としてインターネットを挙げることができる。専守防衛の実現の
ために、‘トップランナー方式’を採用してみてはどうだろうか・・・


我がやどの花橘のいつしかも 玉に貫くべくその実なりなむ  大伴家持


かくして、常敗プロシアのカール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論
』の「戦略」に行き着き、ナポレオンの仏国のシモーヌ・ヴェイユの絶
対不戦に行き着くが(残念ながら、『重力と恩寵』を読んだことはない
が・・・)、リアルな世界ではいまなお残忍・陰惨な行為が止むことが
ない。

  魂の自然な動きはすべて、物質における重力の法則と類似
  の法則に支配されている。恩寵だけが、そこから除外される
                                                   
                                                            『重力と恩寵』





さつきまつ花たちばなの香をかげば 昔の人の袖の香ぞする  作者不詳/古今集


ところで、タチバナの果実の薬用はカンキツ果実に含まれる主要な
機能性成分であるフラボノイドはカンキツ果実を代表する生理機能
性成分である。例えば、代表的なフラボノイドであるヘスペリジンや
ナリンギンは肥満に関与する前駆脂肪細胞の分化促進効果をもち、
ポリメトキシフラボンのノビレチンは血糖値上昇抑制及び血圧降下
作用をもつこと等が報告されているが、これはビタミンP類或いは、
ルチン(Rutin:ルトサイド、ケルセチン-3-ルチノシド)が主成分とさ
れる。ミカン科の植物に限らずマメ科のエンジュやタデ科のソバな
どからも見出されているという。このように隠れている薬理効果を
開発することは大切だが、見て、口にすることで伝承された‘薬用’
が「こころ」と「身体」を一体化することを初めて知った・・・


ルチン:
分子式は C27H30O16 で、クエルセチン
3位の
酸素にβ-ルチノース(6-O-α-L-
ラムノシル-D-β-グルコース)が結合した
配糖体

さて、昨年末、24日に世界的なベストセラー「文明の衝突」の著書
で知られる米国の政治学者、サミュエル・ハンチントンが亡くなった。
この著書には疑問があり、また別の機会に考えてみたい。


 

 

 

 

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