極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

デジタル・ケイジアン宣言

2013年02月10日 | 時事書評

 

 


【視力低下 まさか気象病?】

視力低下は気象変化でも起こりうるのか(『乱視下の非攻』)。そんなことがやはり自身にも起こり
えるんじゃないかと思い直し調べる。ネットでは気象の変化によって発病したり、病状が悪化したり
する病気、すなわち病状の変化が天候と密接に結びついているような病気をさして「気象病」と定義
されている。人の体は、気象の変化に対して調整機能を自然に発揮しているが、その調整能力が不充
分な場合には、いろいろな心身変化が起こり、これが病気にまで進行してしまうことがあるという。
気温の上昇や気圧の変化、湿度の急変などがあり、これが気象病を引き起こす要因となると考えられ
ている。しかし、視力低下事例はないようだ。糖尿病でも視力低下が起こりうるということだし、そ
れ以上に目の酷使が原因しているということで、新しい情報がない限るこの悩みは上がりにした。

 

  



 

【デジタル・ケイジアン宣言】

いまさら新自由主義のお復習いというわけではないが“アベノミクス”という表現で保守政権下でイ
ンフレターゲットが導入されたため、さらに一歩踏み込んで脱新自由主義政策の構築(=デジタル・
ケインズ主義的経済政策)を開始するために発注しておいたデヴィッド・ハーヴェイデビットの『新
自由主義』が届く。諄いけれど、新自由主義は、経済の主導権を公的セクターから民間セクターに委
譲することを模索しそれによって更に効率的な政府運営を成し遂げ、かつ国家経済が健全となると提
唱していてその政策提言は、ジョン・ウィリアムソンによるワシントン・コンセンサスとされ、これ
はワシントンに本部を持つ経済組織(IMFや世界銀行など)らのコンセンサスとされる下記の政策提
言からなる。

・金融政策 - 政府は巨額の国債債務を将来の国民に払わせるべきではない。そういった債券発行は
 経済において短期間の雇用レベルを改善するだけに過ぎない。定常的な債券発行はインフレを上昇
 させ生産性を押し下げるため、禁じなければならない。債券発行は一時的な安定化手法として飲み
 用いるべきである。
・政府歳出の補助金(とくに新自由主義者が『無差別補助金』と呼ぶもの)の削減。その他の歳出で
 も、新自由主義者が広範的視点に基づいて浪費だとする、反成長・反貧困なサービスの削減(初等
 教育・プライマリヘルスケア・インフラ投資など)
・税制改革 - 課税ベースの拡大、およびイノベーションと効率性を達成する限界税率の採用リアルタ
 イムなマーケットによって決定される実質的(かつ適正な)金利
・為替の変動相場制
・貿易自由化
・国際収支における資本勘定の自由化。人々が自由に海外に投資し、かつ自国に外国資本が自由に投
 資できるように。
・国営企業の民営化
・規制緩和
・財産権に対しての法的保障

しかし、「社会などというものは無い(There is no such thing as society)」と説き、「市場の代替物は
無い(There is no alternative to market)」としたサッチャーの市場原理主義下、自助の精神が取り戻さ
れたと評価されたものの、日本におけるバブル後不況の克服も新自由主義的改革の成果と評価される。

これは、小泉政権期下の小渕政権期に高止まりしていた実質実効為替レートを押し下げ、輸出の好調
により、失業率・有効求人倍率や中小企業倒産件数は大幅に改善したものの、失業率・有効求人倍率
が改善したとはいえ、1998年(2月)から2007年(1-3月)までの10年間で、非正規雇用が1173万人か
ら1726万人へと増加する一方、正規雇用は同時期に3794万人から3393万人と大幅に減少。デフレ傾向
が続いたため企業が労働者に支払った給与の総額は、1998年から2007年の10年間に222兆8375億円から
201兆2722億円と、約22兆円も減少しており、労働者の平均給与は465万円から437万円に低下するなど、
減少していたのだが、こんなことはもうどうでもいいか。要するに、新自由主義は冷戦に勝利をもた
らした思想として世界中に広まり、1992年頃に思想的に全盛期を迎えたが、労働者に対する「自己責
任」という責任転嫁は、格差社会を拡大したとの批判もあり、また、チリにおけるシカゴ学派の功績
は事実と大きく異なると主張しているジョセフ・E・スティグリッツは新自由主義的な政策で国民経済
が回復した国は存在しないと批判し、元京都大学准教授の中野剛志が新自由主義はインフレ対策であ
り、
バブル崩壊後の新自由主義的な構造改革はデフレの克服に貢献しなかったどころか、デフレの原
因です
らあったと批判し、水岡不二雄は、絶え間ない競争状態におかれ、市場原理主義思想を受け入
れなければ「負け組」になるかも知れないという強迫観念と高度な金融技術で組織された金融業が資
本保障する一方で、資本主義体制を批判を封じ込められてきたが、偽装やインサイダー取引などが数
限りなく起こり、そのたびに監視のための組織やインフラが必要とされて、政府は肥大化し、金融が
不安定化し、公的資金を大々的に注入することを強いられ、高額の財政負担が発生し新自由主義の下
で、かえって「大きな政府」が台頭し、国家財政の危機・国債の信認低下が深刻する「新自由主義の
パラドクス」を生み出したと批判されている。 

以上のことをハーヴェイの中国の現状分析ではどうなるのか?

 
 間違いなく言えるのは、中国が、後の一九九〇年代に国際通貨基金(IMF)と世界銀行、「ワ
 シントン・コ
ンセンサス」によって、ロシアと中欧に押しつけられたような性急な民営化という
 「ショック療法」の道をとら
なかったおかげで、これらの諸国を襲った経済的崩壊をかろうじて
 避けることができたということである。中国は、「中国的特色のある社会主義」―今日ではむし
 ろ「中国的特色のある民営化」だと呼ぶ人もいるだろうが-に向けた独白の道を歩むことによっ
 て、国家によって操作された市場経済を構築し、二〇年以上にわたってめざましい経済成長(毎
 年平均一〇%近い成長率)を達成するとともに、人口のかなりの部分の生活水準を向上させた。
 しかし改革はまた、環境の悪化と社会的不平等をもたらし、ついには、居心地の悪いことに資本
 家階級の権力の再構築にも似た事態をも招くにいたったのである。

                       デヴィット・ ハーヴェイ著 『新自由主義』


 最新の推計によると、中国では「一万五千以上のハイウェイ事業が進行中であり、国の道路を一
 六万二千キロメートル延長する予定である。これは地球の赤道四周分に等しい」。この事業の総
 規模は、アメリカが一九五〇~六〇年代に企てた州際高速道路網の建設よりもはるかに大きなも
 のであり、今後何年にもわたって過剰資本と過剰労働力とを吸収する可能性をもっている。しか
 しながら、それは借金財政にもとづいている(古典的なケインズ主義スタイルである)。また、
 それは大きなリスクをもはらんでいる。もし投資に費やされた価値が順調に還流してこないなら
 ば、たちまち国家の財政危機が起こるだろう。



                      デヴィット・ ハーヴェイ著  『新自由主義』

 現在の中国政府がそのような道徳的主張にもとづいて行動し、それによって自己の正統性を維持
 することができるのか、あるいはそうする気があるのか、これはまったくもって不確かである。
 暴力的な工場ストライキを指導したとして裁判にかけられた一人の労働者の弁護に立ったある著
 名な弁護士は、次のように述べた。革命以前は「共産党は労働者の味方であり、資本家の搾取と
 闘っていた。ところが今日では共産党は、冷血な資本家といっしょに肩を並べて労働者と闘って
 いる」。たしかに、一方では共産党の諸政策のいくつかの側面は資本家階級の形成を阻止するこ
 とを意図したものであったが、他方では共産党は中国労働者の大規模なプロレタリア化を受け入
 れてもきたのである。つまり、「鉄飯碗」を割り、社会的保護を骨抜きにし、受益者負担を押し
 つけ、フレキシブルな労働市場体制をつくり出し、かつて共同で保有されていた資産の私有化を
 推進してきたのである。共産党は、資本主義企業が形成され自由に活動できる社会体制を生み出
 した。そうすることによって急速な成長を達成し、多くの貧困を多少なりとも解消してきた。し
 かし同時に、共産党は、社会の上層に巨大な富が集中するのを受け入れた。さらに、企業家内部
 で党員の割合が増加している(一九九三年の一三・一%から二〇〇〇年には一九・八%に上昇)。
 しかし、これが党への資本主義的企業家の流入を反映しているのか、それとも、多くの党員が、
 その特権を利用して怪しげな手段によって資本家になったということなのか、断言するのは難し
 い。いずれにしてもこれは、アメリカでごく一般的に見られる政党とビジネス・エリートとの統
 合が進展していることの表われである。他方で、労働者と党組織との結びつきは緊張をはらむよ
 うになってきている。こうした党内部の構造転換が、メキシコの制度的革命党(PRI)を完全
 な新自由主義へと向かわせたのと同じ種類のテクノクラートの台頭を強化することになるのかど
 うかは、まだ未知数である。しかし、「大衆」自らが〔共産党を通じてではなく〕独自の形態で
 自分自身の階級権力の回復を目指すということを、考慮から外してしまうわけにもいかない。


                       デヴィット・ ハーヴェイ著 『新自由主義』




以上、要点だけはしおってまとめてみた。そして、「共産党は今では一致して彼ら大衆に対立し、そ
の独占された暴力を用いて反対行動を鎮圧し、農民を土地から追い出し、民主化要求だけでなく分配
の公正というささやかな要求の高まりをも抑圧する姿勢をはっきりと固めているからである。こう結
論することができるだろう。中国は明らかに新自由主義化と階級権力の再構築の方向に向かって進ん
できた。たしかに、そこには「はっきりとした中国的特色」が見られる。しかしながら、中国で権威
主義体制が強化され、ナショナリズムヘの訴えが頻繁になされ、帝国主義的傾向が一定復活してきて
いることから、中国が、まったく違った方向からではあるが、今日アメリカで強力に席巻している新
保守主義的潮流との合流に向かいつつあるのではないか、と。これは未来にとってあまり良い兆しで
はない」と評価を下しているが、これはほぼ、わたし(たち)が考えていることと一致してることを
書いておき、いずれ彼とわたし(たち)の考え方の違いを明らかにしてみたいが、今夜はこの辺で。
 

 

 

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