極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

風評とリスクと組織犯罪

2011年04月04日 | 緊急|東日本大震災




【風評 vs. リスク】


    智恵子は東京に空が無いといふ、
    ほんとの空が見たいといふ。
    私は驚いて空を見る。
    桜若葉の間に在るのは、
    切つても切れない
    むかしなじみのきれいな空だ。
    どんよりけむる地平のぼかしは
    うすもも色の朝のしめりだ。
    智恵子は遠くを見ながらいふ。
    阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
    毎日出てゐる青い空が
    智恵子のほんとの空だといふ。
    あどけない空の話である。

      

              高村光太郎「あどけない話」 
  


 

二本松市の岳温泉では 創業百年を超える「松渓苑」が3月23日に廃業
した。建物の修繕費がかさむ上、相次ぐキャンセルで資金繰りがつか
なくなったとみられる。原発の西約70㌔にある郡山市の磐梯熱海温泉
も一般客の姿はなく、原発周辺自治体からの避難者や作業服の人たち
がいるだけだ。温泉街でも屈指の規模の「ホテル華の湯」は、花見シ
ーズンを中心に7月までに1万5千人の予約が入っていたが、ゼロに
なった。温泉街全体が同様だという。

「これは人災。こんなに離れた場所で原発の心配をすることになると
は」。菅野豊社長は風評被害の怖さを実感する。「福島は観光立県。
もう立ち上がれないのか」と怒りが増すばかりだ。県旅館ホテル生活
衛生同業組合の理事長も務める菅野社長は「国が先頭に立って、農業
などと同じように観光業者の損失を補償すべきだ。最低でも金融機関
に当面の運転資金供給と借入金の返済猶予をさせてほしい」と訴える
環境省がまとめた2009年度の温泉利用状況によると、福島県内の温
泉宿泊利用者は延べ476万7千人。2位の山形県に190万人差をつけ 東
北1位だった(「人災だ」 風評被害に温泉地も悲鳴河北新報)。

この記事をみて‘風評被害’という言葉に対する違和感だ。わたした
ちも5月に奥入瀬に行く予定だったが急遽キャンセルした(代わりに
奥飛騨・信州の温泉)。それは次のような理由による。

・浮かれた場合でないという心理的・社会的理由
・余震、群発地震に対する自然災害のリスク
・災害復旧の目途が立たない社会的リスク
・福島原発事故の動向という人災的リスク

これを看てわかるように、サービスの消費者にとってはリスク評価の
結果であり、サービスの提供者側から‘風評被害’といわれても言わ
れても面食らうばかりだ。そこで広域災害に対する保障制度が必要に
なり、1つは公的な繋ぎ資金の社会保障制度であり、2つめは民間・
民営の広域災害保険制度
の整備の議論ということになる。前者は無利
子・無償を前提とし、後者は営業者向けの高額な掛け捨て保険(地震・
津波災害)のようなものだが、即応性を有す。また、復旧・復興後は、
全国の温泉サービス組合が中心となり、当該被災地の年単位復興キャ
ンペーン運動(格安で斡旋など)を展開すれば良いのでは思える。早
ければ早いほうが良い。福島原発事故が4月末終息の見通しが立てば、
秋には東北地方(奥入瀬)の旅を再企画してみたい。



 ■


 4月4日(月)3時8分(読売新聞)
「電源喪失で容器破損」東電報告書検討せず
東京電力福島第一原子力発電所2、3号機で使われている型の原発は、
電源が全て失われて原子炉を冷却できない状態が約3時間半続くと、
原子炉圧力容器が破損するという研究報告を、原子力安全基盤機構が
昨年10月にまとめていたことがわかった。東電は報告書の内容を知り
ながら、電源喪失対策を検討していなかったことを認めている
。国は
2006年に「原発耐震設計審査指針」を改定し、地震の想定規模を引き
上げた。これを受け、国の委託で原発の安全研究に取り組む基盤機構
が、09年度から様々な地震被害を想定した研究を始めた。1970年前後
に開発された、2、3号機の型の沸騰水型原発(出力80万㌔・㍗)につ
いては、地震で電源喪失した場合、原子炉内の温度や水位、圧力など
がどう変化するかを計算した。その結果、3時間40分後には圧力容器
内の圧力が上がって容器が破損し、炉心の核燃料棒も損傷。格納容器
も高圧に耐えきれず、6時間50分後に破損して 燃料棒から溶け出した
放射性物質が外部へ漏れるとした。

東京電力は1966年の福島第一原発の設置許可申請時、60年のチリ地震
津波での水位変動を考慮して、津波の高さを想定しているが、福島県
小名浜地方の年平均潮位より3.1m高い水位。引き波時の下降水位はマ
イナス1.9mと想定。その後、土木学会が2002年に「原子力発電所の津
波評価技術
」をまとめたのを受けて、東電は津波に対する安全性評価
を見直した。マグニチュード 8.0の地震による津波を想定し、津波の
最大高さは5.7m、
引き波時の下降水位はマイナス3.0mとした。東電に
よればこの時、原子炉の冷却に必要な取水ポンプの設置方法を見直す
などの対策を講じている。

06年9月、政府の原子力安全委員会は新耐震指針を制定し、経済産業省
原子力安全・保安院が各原発事業者に耐震安全性の再評価を指示した。
新耐震指針のポイントは、重要な構造物や設備の耐震性を評価する際
の入力地震動をより精緻により厳格に設定するというもの。さらに、
津波や周辺斜面の崩壊についても考慮するよう求めているたが、津波
に関しては「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能
性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が
重大な影響を受けるおそれがないこと
」という表現に留まる。


 8.地震随伴事象に対する考慮

 施設は、地震随伴事象について、次に示す事項を十分考慮したう
 えで設計されなければならない。

 (1) 施設の周辺斜面で地震時に想定しうる崩壊等によっても、施
   設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと。
 (2) 施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性が
    あると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能
   が重大な影響を受けるおそれがないこと。

                      平成18年9月19日
                    原子力安全委員会決定
                  「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針
 


東電は福島第一原発に関して、まず5号機の中間評価を08年3月に保安
院に報告し、09年7月に保安院から「妥当である」という内容の審査
結果を受けている。3号機と4号機についても同様に、中間評価までは
」)審査を終えていたという(「特報:福島第一原発、津波を「再評価
中だった」(「ケンプラッツ」03.23付)。



 、上記の結論は「 津波に対する再評価が間に合っていたとしても
高さ14m と推定される今回の大津波を防げなかったかもしれない。政
府の地震調査委員会が「想定外」と言う四つ以上の震源域が連動して
動く巨大地震を想定するはずがないからだ」としているが「想定外」
だから対策が後手に回ったとしたら、日本の政府、原子力委員会、東
京電力に責任はないのだと擁護したことになる
。それで納得できるだ
ろうか。わたし(たち)には到底納得できるものではない。確かに、
「海溝型地震の長期評価の概要(算定基準日 2011年1月1日)」(政
府地震委員会)によれば宮城沖の10年以内派生確率は70%(M8.0前後
)だったが、2011年は70%で発生する。どうも、これを10年で割った
7%想定で対応したのではないかと勘ぐられ、組織的な不作為であっ
たならこれは犯罪だと言われても仕方がない程だ。





東北地方太平洋沖地震にともなって発生した福島第一原子力発電所事
故で、
菅直人により内閣府原子力安全委員会委員長の班目春樹や内閣
府原子力委員会委員長の近藤駿介、原子力安全・保安院の原子力安全・
保安院会長の寺坂信昭らが招集
、菅から3機関が連携を強化し事態に
対処するよう指示されているがいずれも東大出身の官僚や学者であり、
3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故の2日後、社長職のまま
公の場から姿を消した東京電力社長のコストカッターとの異名をとる
清水正孝
だけが慶応大学であるが、清水政孝の異名を知った時、同じ
異名をとった福知山線脱線事故責任者の元JR西日本社長の井手正敬
思い出したのはわたしだけだろうか。

※「東京電力福島第一原発の何が問題だったのか」
SYNODOS JOURNAL(1) 3月31日(木)13時38分
SYNODOS JOURNAL(2) 3月31日(木)13時39分








保安院は工事現場で泥の遮蔽などに用いられるシルト・フェンスで汚
染水の拡散を防ぎ、水中に滞留させる効果を狙っているというがどれ
ほどの効果があるかわたしにはわからないが、データを正確に捕捉す
れば今後の参考になるで注視している。


※ Sediment Control Silt Fences 
 “ Silt fence

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