極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

月が近づけば少しは

2019年01月19日 | 時事書評

  

 


                                  
湯  問  とうもん
ことば
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「われの死すといえども、子ありて存す。子また孫を生み、孫また子を生み、子また子あり、子ま
た孫あり。子子孫孫窮匱(きゆうき)なきなり。而して山は増すことを加えず。いかんぞ平らがが
らんや」
「力を量らずして、日の影を迫わんと欲す」「すでに去るに、余音梁欐(りょうれい)を
繞り、三日絶えず。左右その人夫らずと以えり」
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う  た
薛譚(せいたん)は 秦青(いんせい)について歌をならった。ある日、もう薛譚から学ぶものは
なくなったと思いこんで、いとまごいをした。薛譚は別にとめもせず、見送っていった。町はずれ
まできて、薛譚は手ぴょうしをうって悲しげに別れの曲をうたった。その声に林の木々はゆれ動き、
空行く雲も、そのひびきに足をとどめた。その時はじめて、秦青は自分のあやまちをさとり、もと
どおり教えを授けてくださいとたのんだ。それからは、生涯、二度と帰るといわなかった。

ある時、秦青は薛譚にこんな話をした。

「むかし、韓娥(かんが)という人がいた。東の国、斉にいった時、食べ物がなくなってしまった。
雍門(ようもん)をすぎるころは、歌をうたって食べ物をもらい歩いていた。だが韓娥が立ち去っ
ても、余韻が梁や棟木のあたりをただよって三日の問消えなかった。あたりの人は韓娥がまだいる
のだと思っていた。宿屋にとまろうとすると、そこの主人にこじき扱いされた。韓娥は声をあげて
ほえるように泣いた。
一里四方の人々は老いも若きも、顔を見あわせては涙を流し、三日の間物を食おうとしなかった。
みんなはふと気がついて追いかけた。つれもどされた韓餓は、ふたたび声をあげてよろこびの歌を
うたった。それをきくと、一里四方の人々は老いも若きもヽ思わず手をたたいておどりだしヽ以前
の悲しみはすっかり忘れてしまった。そこで人々は韓餓にどっさり贈り物をして出発させた。
雍門の人々がよく歌ったり声はりあげて泣いたりするのはヽ韓娥のなごりが今でものこっているか
らだ。

<薛譚、秦青〉 ともに豪の声楽家。
<雍門〉        斉の国の西にある地名。



薛譚學謳
薛譚學謳於秦青,未窮青之技,自謂盡之,遂辭歸。秦青弗止,餞行於郊衢,撫節悲歌,聲振林木,
響遏行雲。薛譚乃謝,求反,終身不敢言歸。

● 読書日誌:カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』 No.26  

      

第二部 第6章
「ガウェイン聊、お考えの筋書きではブレヌス聊か納得しないのではありませんか」
「納得するさ」と、ガウェインは掘りながら答えた。「わしとあやつの関係は微妙だが、あれはわ
をばかのつく正直者と思っておるからな、話をでっち上げられるとはつゆ思うまい。そうさな、
しの腕の中で血を流しながら死んでいくとき、山賊にやられた、とつぶやいたことにしておいて
いい。嘘は罪深いと思うかもしれぬが、なに、さらなる流血を防ぐためとあれば、神も慈悲の目
見てくださるだろうよ。ブレヌスにはきっと信じさせる。だが、そなたの身が危険であることは
わらぬ。早く国に帰るのがよかろう」

 「そうしますよ、ガウェイン卿。用事が終わりしだい、ただちに。馬の足がすぐに治らないような
ら、別の馬と交換することも考えます。沼沢地までは長い道のりですから。ただ、あれは稀有の雌
馬で、できれば手放したくありません」
「まさに稀有の馬だ。わしのホレスには、悲しいかな、もはやあの敏捷さはない。かつては、そな
たの馬のいまの働きにも劣らず、何度もわしを助けてくれたのだが・・・・・・。稀有の馬。失うのは惜
しかろう。とはいえ、いまは速度こそ大事。すぐにでも帰途につき、用事など忘れるがよかろう。
雌竜のことは、わしとホレスで十分よ。そなたまで雌竜のことをあれこれ思い煩う必要はない。い
ずれにせよ、考えてみると、ブレヌス卿がクエリグを自軍に引き込むことなど絶対にありえぬ。あ
れは野生そのもの、手なずけることなど不可能な生き物だ。敵に火を吐くかもしれぬが、ブレヌス
軍にも吐こう。思いつきそのものが愚劣だ。もう忘れることだ、ウィスタン殿。敵に追いつめられ
ぬうち、故郷に急ぐがよい」そして、何も笞えずに掘りつづけるウィスタンを見て付け加えた。「
約束がなったと思ってよいのだな、ウィスタン殿」 

「何の約束です、ガウェイン卿」
「もはや雌竜のことは忘れ、帰途につくという約束だ」
「どうしてもそう約束させたいようですね」
「そなたの安全だけではない。クエリグが怒り狂うとき危険にさらされるすべての民の安全を考え
ておる。それに、同行の旅人はどうするつもりだ」
「そう、あの友人らの安全が気がかりです。修道院まではついていくつもりです。何かあるかわか
らない道を無防備のまま行かせるわけにはいきませんからね。その後は、分かれるのがいいかもし
れません」
「では、修道院から故郷へ向かうか」
「帰る用意ができたら帰ります、ガウェイン卿」 

死者の内臓から立ち上る悪臭に、アクセルはやむをえず死体から数歩離れた。離れることで、ガウ
ェイン卿の姿が目に入った。いま腰まで地中に埋まり、大量の汗で額を濡らしている。表情からい
つもの人の好さが消えているのは、そのせいだろうか。ウィスタンに向けられる硯徐に強烈な敵意
が込められているのが気になった。一方、ウィスタンはそんなことを気にもとめず、ひたすら掘り
つづけていた。

死者の内臓から立ち上る悪臭に、アクセルはやむをえず死体から数歩離れた。離れることで、ガウ
ェイン卿の姿が目に入った。いま腰まで地中に埋まり、大量の汗で額を濡らしている。表情からい
つもの人の好さが消えているのは、そのせいだろうか。ウィスタンに向けられる視線に強烈な敵意
が込められているのが気になった。一方、ウィスタンはそんなことを気にもとめず、ひたすら掘り
つづけていた。

ベアトリスは兵士の死に動揺しているようだった。墓が深く泥られていくのを見ていられないのか
オークの大木までゆっくりと戻ると、またその影にすわって、頭を前に垂れていた。
アクセルも行って一緒にすわってやりたいと思ったが、烏があれだけ集まってきていてはそれもで
きなかった。いま暗闇の中で廣になっていると、殺された兵士への哀れみと悲しみが心に湧き上が
ってくる。小さな橋の上で兵士が二人に礼儀正しく接してくれたこと、ベアトリスヘの語りかけが
やさしかったことを思い出した。初めて空き地に馬を乗り入れてきたときの見事な位置取りが心に
よみがえった。あのとき、兵士の行動の何かが心の奥底から記憶の断片を引き出した。いま、夜の
静けさの中で、アクセルは荒れ地の起伏と、陰借な空と、ヘザーを掻き分けてやってくる羊の群れ
を思い出していた。

あのときアクセルは馬上にいた。すぐ前に、やはり馬に乗った同原がいた。名前はハービー。その
肥満体から故たれる体臭は、馬のそれをも圧倒する。二人は遠方に何かの動きを認め、風の吹き渡
る荒れ野の真ん中に立ち止まっていた。だが、とくに恐れるものではないと見て、すでに長時間馬
に乗りつづけだったアクセルは、思い切り両腕を伸ばし、ハービーの馬が尻尾を左右に振るのを見
ていた。尻に蝿が止まらないよう追い立てているようだと思った。後ろにいてハービーの顔は見え
なかったが、その背中の形に、いや体勢全体に、近づいてくる一
行への悪意がにじんでいるのを見
た。ハービーの背中越しに前方を見るアクセルの目に、黒い点々が映った。これは羊の顔だ。その
点々に交じって四人の男が進んでくる。一人は謐馬に乗り、他の三人は歩いている。大は見当たら
ない。羊飼いには、最前からこちらが見えていたに違いない。空を背景に騎手が二人立っているの
だから、気づかないはずがない。なのに進んでくる。不安を感じなかったのだろうか。それとも不
安を押し隠して、あの恐れ気のないゆっくりした前進をつづけているのだろうか。いずれにせよ、
ここは荒れ野を通る一本道だ。羊飼いが騎手二人を避けようとすれば、道を引き返すしか方法はな
かったのも事実だ………

羊飼いの一行が近づいてくる。四人の男はとても年寄りとは言えないが、いずれも不健康に痩せ紐
っている。そう目`てとると、アクセルの心が沈んだ。あの様子ではハービーの残忍さがいっそう
掻き立てられる………アクセルは、声を出せば届くほどの距離に一行が入るのを待ち、馬を少し前
へ促して、慎重にハービーの馬と鼻面を並べさせた。アクセルと馬が占めたこの位置は、本来なら
羊飼い四人と群れの大部分が通っていくはずの場所だ。鼻面を並べたと言っても、ハービーの馬よ
りわずかに後ろに位置し、これで同僚がわずかでも優越感に浸ってくれれば、と願った。大事なこ
とは、自分がいま羊飼い一行の盾になっているということだ。ハービーが突然に鞭で-あるいは、
鞍からぶら下げている但梓で-羊飼いに襲いかかろうとしても、自分の体が邪魔になる。もちろん
、それは秘めた目的であり、表面上は単に二人が仲間として並んでいるようにしか見えなかったろ
う。いずれにしても、隠された目的を察するほどには、ハービーの心は繊細でも鋭くもない。

現に、アクセルが馬を寄せたとき、ハービーはただぼんやりとうなずいただけだ。そして、すぐに
荒れ野に顔を向け、むっつりと前方を見ていた,

アクセルが羊飼いのことを心配していたのにはわけがある。数日前、サクソン人の村であることが
起こった。あの晴れた朝にアクセルが受けた衝撃は、村人の驚きと嘆きに劣らず大きかった。なん
の前触れもなく、ハービーがいきなり馬に拍車をくれると、井戸で水汲みの順番を待っていた人々
の列に突っ込んで、めったやたらに打擲を始めた。あのときハービーが使ったのは鞭だったか、棍
棒だったか………。荒れ野で羊飼い一行と出会ったあのとき、アクセルはそれを必死で思い出そう
とした。通りかかる羊飼いに使うのが鞭なら、攻撃の範囲は広くなり、腕もあまり大きく振らなく
てすむ。その気になれば、アクセルの馬の頭越しに攻撃することもできるだろう。一方、梶棒なら、
アクセルの位置取りからして、ハービーは自分の馬を前に出し、半ば旋回させないと攻撃ができな
い。そんな大きな動きは、意図を見透かされる危険かおるとしてハービーの嫌うところだ。ハービ
ーは残忍だが、自分の残忍さを衝動的、自然発生的なもののように見せかけることを好んだ。

あの予防的な行動で実際に羊飼いの一行が救われたのかどうか、アクセルは思い出せない。羊の群
れが何事もなく通り過ぎていったような感覚は、不破かながら残っている。だが、羊飼いたちのこ
とになると、井戸のわきで襲撃された村人のことと入り交じって、記憶は混乱している。そもそも
、あの朝、二人であの村を訪れたのはどんな用事だったのだろう。アクセルは怒りの叫びと子供の
泣き声、村人の憎しみの表情を覚えている。自身が感じた怒りも覚えている。ハービーヘの怒りと
いうより、こんな同僚を押しつけてきた人々への怒りだった。

二人に与えられた任務は、達成できれば、確かにこれまでに類を見ない偉業となっていただろう。
人間が神に一歩近づいた-そう神ご自身が認めるほどのものになっていたはずだ。だが、こんな野
獣のような同僚を重しにつけてよこして、いったいどうしろというのか………

灰色の髪の兵士が橋の上で見せた小さな身振りが思い出された。同僚のずんぐりした兵士がウィス
タンを怒鳴りつけ、その髪を引っ張ったときだ。灰色の髪の兵士は腕を持ち上げかけた。手は何か
を指し示す形を作ろうとし、口からは叱責の言葉が出かかっていた。だが、身振りは完成せず、兵
士は腕を下ろした。あの数瞬間に灰色の髪の兵士が経験したことのすべてを、アクセルは完全に理
解できた。あのあと、兵士は特別にやさしい口調でベアトリスに話しかけた。橋の前に立つベアト
リスの表情が見る見る変わっていった。暗く、警戒した表情から、アクセルが愛してやまない柔ら
かくほほえんだ表情に変わり、アクセルは心の内で兵士に感謝した。いま、あの光景がアクセルの
心をわしづかみにし、同時にアクセルを恐れさせた。

見知らぬ人間から-それも、危険な敵にもなりうる人間から-親切な言葉をニつ三つかけられただ
けで、ベアトリスはすぐに世界への信頼を取り戻した。その考えはアクセルを不安にし、すぐ横に
寝ている肩にそっと手を滑らせたいという思いにさせた。だが、待て。思えば、ベアトリスはいつ
もそうだったのではないか。それもまたベアトリスというかけがえのない存在の一部ではなかった
のか。そうやってとくに大きな痛手も受けず、ベアトリスはこの長い年月を生き抜いてきたのでは
なかったか。

「それがローズマリーのはずはありません」ベアトリスにそう言われたのを思い出す。緊張で強張
った声だった。晴れた日で、地面が乾き、アクセルはその地面に片膝を突いていた。ベアトリスは
アクセルの背後に立っていたに違いない。手で下生えを掻き分けたとき、影が森の地面に伸びてい
たのを覚えている。

「ローズマリーのはずがありません。だって、黄色い花が咲くローズマリーなんて見たことかあり
ませんもの」
「では、わたしの記憶違いか」とアクセルは言った。
「それでも、よく見る花であるのは確かだし娘さんに悪さをする花でもなかろう?」
「あなたは草木に詳しい方ですの? この国に生える野の草のことなら、母から全部教わっていま
すけど、あなたの前にあるそれは見たことかありません」
「では、どこかほかから最近やってきた草なのだろうか。だがなぜそんなに困った顔を、娘さん?」
「困ります。だって、それはたぶん、恐れなさいと母から教わってきた草ですもの」
「なぜ草を恐れる。毒でもあるならわかるが、それでも触れないようにすればいいだけだろう。し
かも、君はいま手を伸ばして触れているし、わたしにも同じことをさせている」
「あら、毒草じやありません。少なくとも、おっしやっているような意味では。でも、母はある草
のことを詳しく話してくれて、若い娘がそれをヘザーの中に見つけたら災難だと言っていました」
「どんな災難です、嬢さん」
「そんなこと言えるほど図々しくありません」

そう言いながら、その若い女は-あの日のベアトリスは-アクセルの横にしやがみ込み、信じて疑
わない目で笑いかけてきた。一瞬、二人の肘と肘が触れ合った。

「見るのが災難? では、わざわざわたしを道から引っ張り込んでまでこれを見させるというのは、
いったいどんな親切ですか」
「あら、あなたにはなんでもありません。未婚の娘にとって災難なんです。でも、あなたみたいな
若い男に災難をもたらす花もあるんですよ」
「それはどんな花か、ぜひ教えてください、娘さん。あなたがこの花を怖がるように、わたしもそ
れを怖がらねば」
「わたしをからかって楽しいですか。でも、きっといつか、転んだ拍子に鼻先にその花を見つけま
すよ。そうしたら笑いごとですむかどうか……」

手で掻き分けたヘザーの感触、頭上の枝を吹き抜ける風、すぐ横にいる若い女-アクセルはいま思
い出すことができた。あれは、二人が初めて口をきき合ったときだったろうか。いや、それ以前か
ら、少なくとも互いに見かけてはいたはずだ。いくらベアトリスでも、まったく初対面の男にあれ
ほど親しげに接するということはあるまい………

しばらくやんでいた薪割りの音がまた始まった。ウィスタンは今晩一晩ずっと外で過ごすつもりか
もしれない-アクセルはふとそう思った。戦いの中でさえ冷静沈着な男だが、それでも昨夜から今
日一日は緊張の連続で、さすがに神経が昂ぶっているのではなかろうか。ああやって単調な動作を
繰り返すことで昂ぶりを静めようとしているのかもしれない。それにしても、ウィスタンの行動は
妙だったと思う。ジョナス神父から、もう薪割りをしないようはっきりと注意されたのに、またや
っている。それも日がすっかり暮れたこの時刻に。今日の午後、ここに到着した直後には、修道院
への単なるお礼の行為のように見えた。だが、すでにその時点で、ウィスタンには薪割りをする理
由があったのだと知った。

                          カズオ・イシグロ著『忘れられた巨人』

古代-中世の英国島の深い霧に舞いよう込んだままで、強弱(抑揚)のない曖昧な世界で置いてき
ぼりのまんまま。ここまできて放り出すの嫌だから最後まで読み切ろうと奮起する。
                                                                       この項つづく

 

  ●今夜の一品

防寒具の端切れから作られたハンドウォーマー

 ●今夜の一つの提案

地球のための食事治療法
2050年までに百億人を快適に養い、気候変動を封じ込め、年間1,100万人の早死を防ぐこ
とができるかもしれない。
健康科学者と気候研究者の学際パネルは地球のために新しい食事療法を処方法――より多くの野菜
より少ない肉、新鮮な果物、全粒穀物と豆類、砂糖を捨てて、より少なく無駄にしてカロリー
計量――を提案しています(上写真参照)。

 

【読書録:2019年の経済予測Ⅱ】

高橋の消費税の考え方は次の6点に要約されている(「高橋洋一の俗論を撃つ!消費税の地方税化
に対する反論に反論する」ダイヤモンド・オンライン、2012.05.02)。❶消費税の社会保障目的税
化は世界の流れに逆行している。❷歳入庁の創設は財務省にとって都合が悪い。❸財務省にとって
歳入庁潰しは一石三鳥の妙手を指定している。❹地方分権度が高い国ほど国としての消費税のウエ
イトが低い。❺消費税の地方税化の問題点はいずれも克服可能、❻20兆円の税源移譲を賄えるの
は消費税だけ、である。

まず、❶1つめは、日本を含めて給付と負担に関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多
いが、保険料を払えない低所得者に対し、税が投入される。ただし、日本のように社会保険方式と
いいながら、税金が半分近く投入される国はあまりない。税の投入が多いと、給付と負担が不明確
になり社会保障費はドンドン膨らむ。その一部は業界の利益になり、社会保障の効果が出にくくな
る(例:特別養護老人ホームの内部留保が一施設当たり3億円(収入1年分)で、業界全体で2兆
円と過大
になっている。これは税投入が末端に行き届かず、中間業者の懐を潤し、結果として社会
保障費の増大につながっている)。❷2つめは、消費税の社会保障目的税化は、社会保障を保険方
で運営す
るという世界の流れに逆行し(例:ドイツのように消費税引き上げの増収分の一部を、
特定用途にする)。こうした理論から、保険料を徴収できれば、消費税を社会保障目的税ではなく
保険料で賄うほうが望ましく、今の日本では世界の常識になっている税・保険料の徴収インフラは
ない。このために、税・保険料の徴収漏れが予想されており、これは不公平感につながる。
税・保
険料の徴収インフラとは国税庁と年金機構が一体化する歳入庁だ。歳入庁は国民にとっても一ヵ所
で納税と保険料納付が済むし、行革の観点からも行政の効率化になる。海外では、国、カナダ、ア
イルランド、イギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ハンガリー、アイ
スランド、ノルウェーが、歳入庁で税と社会保険料の徴収の一元化を行っている。東ヨーロッパの
国々でも傾向は同じで、歳入庁による徴収一元化は世界の潮流と言ってよい。

歳入庁の創設は税と保険料の歳入増にもつながる。国税庁が把握している法人数と、年金機構(旧
社保庁)が把握する法人数は80万件も違うことから、保険料の徴収漏れは10兆円程度。また、
歳入庁になると年金番号を利用できるが、一方、納税者番号制度がないため所得補足不十分に、加
えて消費税インボイスが導入されていないことから、さらに10兆円程度の税の徴収漏れがある。
税・保険料で合計20兆円程度増収できる。こうした仕組み整備で、社会保障を保険方式で行いつ
つ、同時に不公平も解消できるが、
歳入庁の創設は財務省にとり都合が悪い。国税庁は財務省の植
民地であり、国税権力が財務省が手放さない(例:安部政権で旧社保庁を解体し、歳入庁を創設し
ようとした時に激しく抵抗している)。

❸3つめは、
民主党内で歳入庁創設の動きが出ると、財務省は自民党側から潰しさせる(例:消費
税の逆進性を給付制度(低所得層に税を還付する制度など)で補わず、個別物品の税率軽減措置
やらせる手法、
軽減措置は個別物品ごととの「租税特別措置」であり、どの物品に軽減税率を適用
するかを決める際に、官僚裁量が入り官僚利権の確保になるり、軽減税率は消費税支持してきた新
聞協会
への見返りになり、軽減税率は、歳入庁潰し、官僚利権作り、新聞へのご褒美という一石三
鳥の妙手。

❹4つめは、
消費税を目的税にする国はなく、一般財源である。そこで、国が取るか地方が取るか
という問題になる。地方分権が進んだ国では、国でなく地方の税源とみなせる。国と地方の税金は、
国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税
理論にも合致。
もっとも現実には、各国の歴史的な経緯もある。

第1にヨーロッパの小国や中央集権が強いイギリス、フランスでは消費税は国に割り当てられてい
る。EU各国の消費税標準税率は、キプロス15%が最低でデンマーク、スウェーデン25%が最高で
あり、他国はその間で、ドイツ19%、フランス19.6%、イタリア20%、イギリス20%などと、だい
たい20%程度となっている。
しかし、ヨーロッパの国は一国の規模が小さく、GDPでみても日本
は欧州の国が7つ、8つくらい集まった規模だ。ヨーロッパの場合にはサイズが小さく日本からみれ
ば地方単位であるので、EUを一つの国として、その中に地方があり、それぞれで消費税を導入す
るという見方がある。

第2に、地方分権の進んだ国では、オーストラリアのように国のみが消費税を課税し地方に税収を
分与する方式、ドイツ、オーストリアのように国と地方が消費税を共同税として課税し、税収を国
と地方で配分する方式、カナダのように国が消費税を課税し、その上に地方が課税する方式、アメ
リカのように国は消費税を課税せず、地方が消費税を課税する方式がある。世界をみても、分権度
が高い国ほど、国としての消費税のウエイトが低い。
日本も上の方式に当てはめると、5%のうち
4%は国税であるが、1%は地方税であるので、カナダ方式といえる。さらに4%分の3割程度を地方
交付税として配分であるが、額地方税化してしまえばいい。その代わりに、総務省官僚の裁量の
余地が大きい地方交付税を減らす方、はるかに地方分権に即している

❺つめは、日本維新の会の元
橋下大阪市長長は、本格的な地方分権・道州制を前提とし、これに対
し反論しても、今の中央集権を前提では反論で不可。
まず、地方に消費税を任せると、地方自治体
の間で税率の引き下げ競争になるというもの。それに、地方ごとにバラバラの税率になれば、混乱
する。
民間経済なら、値下げ競争は歓迎のはず(※これは消費者の経済行動を一面的にみていない
だろう)。競争前提でも価格ゼロにならない。多少価格が違っても経済に大きな混乱はない。地方
税率も、地方自治体が切磋琢磨し、自ずとだいたい似たような水準になる(例、
地方債金利を自由
化した際に、総務省が自治体が破綻すると反対だったが、各自治体の金利差は、予想された範囲内
で総務省の予測とは違た)。

次は、消費税を地方に移し地方交付税をなくすと、地方自治体間の格差が広がるという意見。これ
に対し、地方財政調整制度という答えがある。望ましい財政調整制度のために客観基準による新型
交付税を作るふぁ、総務省の権益を損なうとして総務省が反対。新型交付税でなくても、地方の間
で財政調整制度を考えることもできる。今の交付税より規模が小さく、官僚の裁量がない財政調整
制度に替わるだけ。
また、地方ごとの消費税にすると「国境調整措置」(輸出入時と同じ扱い)が
必要になるという技術論もある。カナダは州ごとに税率が違う(国境調整措置の有無については不
明)。日本は1%を地方消費税とし地方配分しているが、この場合でも国境調整措置はなく、商業
統計などにより計算配分され、計算措置で十分。
橋下元大阪市長の直球をきちんと受け止められる
のか。

❻6つめは、道州制のような本格的な地方分権をしようとすれば、三ゲン(権限、人間、財源)の
地方移管が必要になり、人間の面では、おおよそ20万人の国家公務員が地方公務員へ、財源の面
では20兆円の税源移譲が必要になる。
中央省庁でいえば、国交省、農水省、経産省は道州へ移管
される。厚労省も多くの業務は道州になる。その業務を地方で行うために、国から20兆円の税源
移譲になるが、消費税を除いて、それを達成するのは不可能だ。結局、消費税の地方税化反対とは
奇妙な屁理屈である。

さらに、高橋は氏、財務省は、社会保障財源の確保について、歳入庁創設による保険料という正道ではな
く、消費税の社会保障目的税化という邪道を進めているが、実は、経済団体が消費増税に賛成している理
由についても、鍵はここにある。保険料は労使が折半するので企業負担もあるが、消費税は企業負担がな
いと経済界は考えて、消費増税に前向きだで、財務省が消費増税と法人税減税のバーターを持ち出すの
で、さらに経済界は消費増税に前のめりになっているのではと指摘ているが、以上のことをふまえ、今回の
タイミングでの増税に反対している。紙面に都合上、今夜はここまで。
                                                          この項つづく

  ●今夜の一曲

ASKA   月が近づけば少しはましだろう  Music Writers: 飛鳥涼、十川知司 

ASKAは具体例こそ挙げてはいないが、生きていく上で誰もが経験し、誰もが思っていることを表
した楽曲になる。ファンの間で人気が高い楽曲で、2012年発売のMOOK本『ぴあ&ASKA』発行の際
web上で募ったアンケートで、ASKAのソロ曲で一番好きな楽曲第1位にランクインしている。

いろんなこと言われる度に やっぱり弱くなる
いろんなこと考える度に Ah ah 撃ち抜かれて
恋人も知らないひとりの男になる
壁にもたれてもう一度受け止める

小さな滝のあたりで
角を曲がるといつも 消え失せてしまう言葉だけど
心の中では 切れて仕方ない

この指の先でそっと拭きとれるはずの言葉だけど
積もり始めたら 泣けて仕方ない
Ah wow wow woo…

ごまかしながら生きて来たなんて思わないけど
夢まみれで滑り込むような事ばかりで
毎日の自分をどこか 振り分けてた

僕の中を通り過ぎ行く人
ほんの 一瞬の人
あさの改札では 大勢の人が流れて行く

カーテンを引いて ベッドに転がる
☆静かに変わる時間を 閉じるように瞼を閉じる
月が近づけば 少しはましだろう

動きたくない身体を Wow 毛布に沈めて聞いてた Wow
鳴り止まないサイレンの音 胸の音なのか Wow

Wow woo…少しはましだろう
Lu lu…泣けて仕方ない
Wow woo…泣けて仕方ない

※ 歌詞とティンパニーの鼓動が絶妙な楽曲ですよね。

 

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