函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

夕張メロン二玉500万円

2019年05月30日 09時08分13秒 | えいこう語る

▼夕張メロンが初セリで最高値『500万円』だという。水産加工場で、小箱に詰めた100万円程のウニを移動させようとし、落としたというのは聞いたことがあるが、500万円のメロンなら、手に取るのも緊張するだろう。

▼1000円以下でも、充分美味しいメロンがあるのに、なぜこんな高値を付けるのだろうと、メロンの法外な値段に、親近感が薄れてしまう。畑仕事に精を出していた近所の娘が、皇室にでもお嫁に行ったという感情に似た、嫉妬を覚えるからだ。

▼私の高額なメロンに対する気持ちは、こんな程度のものだが、直木賞作家・故向田邦子さんに「メロン」という文章がある。向田さんの直木賞受賞の時の話だが、短文しか書いていないのに、表現力の見事さに選考員はうなったという。

▼「お恥ずかしい話だが、私は平常心をもってメロンに向かい合うことができない。なんだこんなもの、偉そうな顔をするな。たかが、しわの寄った瓜じゃないか、と無理をして見下す態度をとりながら、手は、わが志を裏切って、さも大事そうに、ビクビクしながら、メロンを取り扱っている」。

▼「ところが病気をして、入院ということになった。花とメロンが病室に溢れた。食べようと思えば、一度に三つでも四つでも食べられる。幸い、外科系の病気で、胃腸は大丈夫なので食欲はある。それなのに食べたくなかった。メロンは、病室で、パジャマ姿で食べても少しもおいしくないのである。高い値段を気にしながら、六分の一ほどを、劣等感と虚栄心と戦いながら食べるところに、この果物の本当の味があるらしい」。

▼さすが、エッセイの名手である。今日のブログは、向田邦子さんに登場していただき、終了とさせていただきたい。と思ったが、やはり私のでしゃばり癖が、頭を持ち上げる。

▼800円ほどの、懐に優しいメロンを購入し、仏前に供える。数日してメロンが熟れたように匂いを発した時、半分に切って種を取り出し、ラップをかけ冷蔵庫で冷やす。数時間後そのくぼみに、ウイスキーをたっぷり注ぎ、スプーンで果肉を削ぎながらいただく。この【ウイスキー・メロン】の値段は、半分で一万円といっても妥当だろう。

▼この【ウイスキー・メロン】の作者は私だが、料理好きの向田さんもこのような食しかたは、したことがなかったに違いない。

▼8月11日は私の誕生日だが、8月22日は向田さんが台湾で、51歳で飛行機事故で亡くなった日だ。向田さんには天国で、冷えた【ウイスキー・メロン】を味わってほしい。