Various Topics 2

海外、日本、10代から90代までの友人・知人との会話から見えてきたもの
※旧Various Topics(OCN)

福島とセラフィールドと731部隊

2011年08月05日 | 原発・核・311

,6年前、何かの本で731部隊のことを読んだ直後、新聞記事で731部隊について神奈川大学の常石教授の調査の記事を読み、妙にこれが頭にひっかかっていた時期がありました。

そしてこの時、731部隊が駐屯していただろうと思われる場所の鮮明な夢を見ました。

白衣を着た人たちが歩きまわる昔の(木造?)校舎を思わせる建物、コンクリートの煙突、病院のような暗い廊下、芝生の中庭、カラスの鳴き声、青いトラックの荷台に載せられた着の身着のままの人たち-そしてそれを見つめる、やぶ睨みの10代と思われるお下げの女の子-

中学生の頃から子供を産む前まで、数回、正夢や不思議な夢を見ることがあった私(私は超常現象はあまり興味がありませんが、それでも正夢を見たり、自分がいなかった現場の夢をみること、そういったことから第6感のようなものまで、理解できない能力は人間には備わっているのではないか、と思っています。)は、気になってこの夢の話を当時の同僚にしたところ、

「実は、あなたとも仲が良いMさんは、731部隊で保健婦をしていたことがあるのよ。あまり大っぴらには話さないけど、あなたなら、話してくれるんじゃないかしら。」

とMさんのことを教えてくれました。

この時の私は、妙に気になった夢の場面が「果たして731部隊が駐屯していた場所であるかどうか」を確認したくてMさんにこの部隊の話を聞いてみたに過ぎなかったのですが、彼女の731部隊にいたときの話、引揚げの話は大変興味深いものでした。

Mさんは人体実験には携わっていませんが、それでも人体実験の話は関係者以外にも知られていたとのことです。森村誠一の小説の中の話は、ほとんどが真実のようだと思えました。また、この部隊の中は食料もたくさんあり、娯楽施設もあり、運動会のようなこともしたそうです。

そして既婚であったとはいえ(後に離婚)、若い女性で美人の彼女は皆のアイドルでもあり、このコミュニティの中での生活は楽しい面もあったということ言うことを、彼女は話してくれました。

「終戦間際だって、そんな世界にいたのだから、まさか内地があんなことになっていたとは想像すらできなかった」

「引揚げてきたときに、列車で東京に向かう途中、広島の付近を通過したら、ぽっかり何もなくなっているところがあって、その時初めて、『原子爆弾』というものが落とされたことを知った」

彼女は帰国後、結婚前に内地の保健所でお世話になった与謝野光さん(与謝野鉄幹、晶子の長男で、公衆衛生学の権威。)の紹介状を携えて、現在住んでいる町で働くようになりました。

Mさんの話-これを自分だけに残しておくことはもったいないので、偶々知り合った中国近代史の研究者に彼女を紹介したり、2007年の夏には新聞記者さんに取材もしてもらいました。

取材後、記者さんは下記のようなメールをくれました。

「Mさんのお話は本当に楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまいました。機転の良さと明るさで、つらい時代を乗り切ってこられたのだと思いました。

 731部隊にいたことよりも、ご主人が無責任でお祭り騒ぎ好きだったことのほうが、Mさんにとっては災難だったのだと思いました。歴史を織りなすのは生身の人間なのだとあらためて感じました。」

そう、Mさんは、

「戦争中、自分達の部隊で行われていることを薄々感づいてはいたけれど、それでも戦争の為には仕方がないと思った。でも、日本に帰ってきていろいろなことを知って、『人間がいつでも鬼になりえること』を知ったわ。」

「今でも731部隊の記事が新聞に載ると、切り抜いているの。

731部隊の石井隊長他、幹部が人体実験のデータをアメリカに渡して、自分達はのうのうと生き残り、要職についたりしているなんて許せない。しかも、ミドリ十字の薬害エイズ事件まで関係してたり・・・。」

と、731時代のことを振り返ったり、憤ったりしますが、それでも彼女と話していて感じるのは、彼女が731部隊で暮らした数年間は今でも特別でもなくて、自分の身に起こった個人的なことの方が大きなポーションを占めるということ。

これは、Mさんが、731部隊にいたとしても、直接人体実験に関わったわけでもなかったからでもありますが、「被害者の側でならなければ、残酷で理不尽な事実も背景に過ぎない」ということであり、記者さんがいうように、「歴史を織り成すのは生身の人間」という証でもあるのでしょう。

現在の福島県の放射線被害、731部隊の石井四郎がダブってしまう山下教授のこと、そして昨日書いたセラフィールドの記事を読み返しながら、ふとMさんの話を思い出してしまいました。

731部隊で働いていて亡くなった兵士達の遺体は遺族に返されなかったようです。下級兵士も実験材料だったのでしょう。実は放射線の影響実験もされていたりして・・・。)

人間は誰でも身勝手な部分を持っていると思います。そして、「歴史を織り成すのは生身の人間」-これは一般人から首相まで。

しかし、『人間の皮を被った悪魔(山下教授だけでなく、電力業界や財政界にもいます)』に、もう一度歴史を織り成させることだけは、断固阻止しなければならないと思います。

追記:私の夢の風景は、一部は実際と合致しているようでした。青いトラックについてはMさんは覚えていないものの、昨年、戦時中の中国を舞台にした映画『太陽の帝国』を見て、これに夢と同じ青いトラックが出ていたのを見て、「731部隊であのトラックを使っていたことは、あり得なくはない」と思いました。

関連:

福島で人体実験?-日本は中国政府を非難できず

http://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/d/20110728

セラフィールドMOX燃料再処理工場-2007年のガーディアン紙の記事

http://blog.goo.ne.jp/afternoon-tea-club-2/d/20110804

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3 コメント

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お疲れ様です. (ST)
2011-08-05 23:15:04
お疲れ様です.
731部隊と今の福島を比較するのは見当違いだとは思いますが,まあそれはおいといて.

731部隊ですが,個人的には怪しいんですよね.関係者の証言以外に証拠が出てこないのがなんとも言えない.(Mさんを信用しないとは言いませんが,手を出していない以上推測なんですよね.)
ほかの資料も推定ばっかりですし,アメリカの機密文書の公開でも出てこなっかた.
また,官僚主義の日本でそれらしき文書が見つからないのも不自然なんですよね.(特にそれらしき金の流れが出てこないのが日本のお家事情では不思議すぎる)

さて,多角的に物事を見る必要があると思いますが,Yukariさんは731部隊に対してどう判断しますか?
返信する
STさん、 (Yukari)
2011-08-05 23:55:39
STさん、

私の日本語が拙いので、うまく主旨が伝わらなくて、すみません。

私は福島とセラフィールドの記事を書きながら、731部隊の話を思い出したのですが、お気に召しませんでしたでしょうか?

731部隊のMさんの話は、確かに人体実験のことについてはそれに携わっていないMさんが言うのは憶測ですが、隊の中での出来事は信憑性がありました。また、人体実験についても調べていくうちに、真実性を感じたので、それも合わせて、「真実のようだ(断定ではない)」と書きました。

本当にこの話に興味があるかわかりませんが、一つ、隊員のインタビューをつけます。
http://www3.coara.or.jp/~makoty/library/memory731.htm

しかしながら、この話をあなたとやり取りする必要も感じないので、申し訳ないですが、(あなたとの)意見交換はパスさせていただきます。

なお、今後“IPアドレスが同じ、投稿名を変えて投稿する方(特に電力・電機関係者の妨害と思われるもの)”のコメントは表示しませんので、ご了承ください。

(“なりすましをしない人”の、まともな批判、反対意見、間違い指摘は歓迎です。)

Yukari

返信する
Unknown (通りすがり)
2020-06-18 19:07:52
731部隊は資料が発見されてましたね…
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/155056

731部隊の事を調べたり、後継機関の感染研の河岡氏の事を知るとこの事件も創設者の石井軍医が関わってそうと勘ぐってしまいます。

http://blog.livedoor.jp/k_guncontrol/archives/51519777.html

アビガンを開発した富山製薬は戦時中覚せい剤を作っていた会社らしく、そこが生き延びて本社は西新宿、731部隊の本拠地だった戸山にそこそこ近い事にも因縁を感じてしまいます。

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