8月2日のWorld Nuclear News(WNN)に、英国セラフィールドにある、MOX燃料再処理工場から再処理をした使用済み核燃料(廃棄物とウラン・プルトニウム)を日本に向けて送り出された記事がでていましたが、
Nuclear waste shipment begins
http://www.world-nuclear-news.org/WR_Nuclear_waste_shipment_begins_0208111.html
8月3日の記事では、この工場が閉鎖になることが書いてありました。
Sellafield MOX plant to close
http://www.world-nuclear-news.org/WR_Sellafield_MOX_plant_to_close_0308111.html
日本の福島原発事故、そしてドイツの脱原発による受注の見込みが減ったことが、経済立て直しを急がされる英国に決断させたようです。
さて、ところでこの3日の記事のなかで、600人のプラントワーカーが失業することを懸念する箇所があります。
しかし、再処理工場で働く人-これも原発従事者と同じで、そもそも安い賃金で健康や命を犠牲にして働いている人たち(特に請負労働者)も多くいると思います。
失業の心配よりも、仕事をしているときのこの状況を、WNNなどは決して取り上げなかったことでしょう。
ちょうど、フランスねこさんが、原発従事者(請負作業員)についての記事を翻訳して紹介してくださっています。リンクと抜粋を貼り付けます。(是非、リンクから全文をお読みください。)
なお、記事中、フランスのストライキに触れていますが、日本では、下請けの人たちがストライキを起こすことさえありせん(「起こせない」という方が正しいか・・)。
『「5月14日、福島原発における請負作業員の死がドイツ人に与えた衝撃/Jungle World &クーリエ・アンテルナショナル(7月28日)』
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/514jungle-world.html
抜粋:
1. 原発で働く請負作業員の現状 ~福島からフランスへ~
5月14日に福島原発で起きた請負作業員の死は(注1・注2)、ドイツ国内に論争を巻き起こした。私たちは突如として、これまでも大した秘密ですらなかった事実に気がついたのである―原子力発電所では、最も困難で最も危険な仕事を、ろくな給料も払われず、社会保障もほとんど受けられず、原発の停止時期に合わせて原発から原発へと渡り歩くしかない、そんな請負作業員たちにやらせている、という事実を、である。
これは、日本だけの問題ではない。たとえばフランスには3万人以上の「原子力の流浪民」がいる。エリザベス・フィロルは「発電所」という題名でこうした請負の原発作業員たちの話を集めた小説を福島原発事故の前に出版していた(Elisabeth Filhol, ? La Centrale ?)。
ドイツ人ジャーナリストのハンス・ヴォレーはフランスの原発で働く請負作業員の状況をドイツ国営放送のために取材した。それによると、燃料棒を入れ替えるため原子炉を停止させる度に、フランス中から何百人という請負作業員たちがやってきて、何週間もしくは何ヶ月もの間、原発の近くにキャンピングカーをとめてキャンプをする。もしくは自分の車の中で眠る者すらいるのである。
ハンス・ヴォレーによれば、彼等は年に4万から7万キロの距離を移動するが、月に手取りで1400ユーロ(約15万4千円)も稼ぐことはない。20年の経験があっても、である。これらの作業員たちは以前よりますます厳しいプレッシャーの中で働かされている。以前は燃料棒をとりかえるのに原子炉を2ヶ月停止させた。現在は同じ作業に原子炉を1ヶ月以上止めることはない。原発の流浪民は常に危険と背中合わせだ。労働法によって決められている「年間20ミリシーベルト」という被曝許容量の上限を超えないよう、びくびくせざるを得ない。この上限被曝量に達した作業員は、仕事を失うのである。
2. ドイツにも存在する「被曝を強制される最底辺労働者」
フランスでは、公営の大グループであるフランス電力公社(EDF)が原子力産業の運営を行っている。しかし、労働者が働く業務環境には何の良い影響も見られない。原発の維持管理のために原子炉を停止する期間中、最も危険な業務は請負作業員たちによってなされる。4月14日付けの「週刊フォーカス」が報じたところでは、国立健康・医療研究所(Inserm)はフランスにある原発で働く関係者全体が受ける放射線量の80%までを請負作業員たちが浴びていると述べている。2年前、請負作業員たちを正式雇用に切り替えるようEDFに求めるストライキがフランス原子力産業に対して起こされたが、むなしい結果に終わった。
ドイツの原発でも同じことが起きているのだろうか?
恐ろしいほどの類似点が存在する。原発で働く関係者のうち、その大多数を外部企業の雇用者が占めている。実際、6月6日にドイツ政府が発表したところでは、一時的に停止されているものを含む全国12基の原発と17基の原子炉において、24,346人の請負作業員が働いているが、これに対し正社員の数は5,298人にすぎない。こうした不安定な契約で雇われた「請負」たちが、燃料棒を取り替え、高い放射線区域で管を修理し、燃料棒保管用プールの洗浄を行っている。
シーメンス社によれば、非常時に原発を停止させるための制御棒の交換もまた、こうした非正規社員によってなされている。ドイツでも、原発を稼働させているのは基本的に低い賃金しか払われていない労働者たちなのである。
外部からやってくる作業員たちが作業を行うのは年一回、原発を止めて検査を行う時である。エーオン、アール・ヴェー・エー 、EnBW(全てヨーロッパ有数のドイツ電力企業)といった原発運営企業が専門技術を持つ労働者のみならず技術レベルの低い作業員についても集合の号令をかける。部品を製造したメーカーより派遣された技術者を除き、これらの労働者の大多数が人材派遣会社から送られてきている。フランス同様ドイツでも、原発の検査期間は過去数年間のうちにどんどん短縮されている。これには原発の停止期間を最小限にとどめ、コストを下げる狙いがある。
たとえばネックカルヴェストハイムにある原発ではこの5年のうちに検査に要する期間が33日から17日に短縮された。検査はますます形骸化しており、事故の危険を高めている。「週刊金曜日」によれば、ドイツでも被曝量の高い作業を請負に出している。1980年以来、一時雇用の作業員たちが浴びる放射線の量は増え続けており、原発がますます最底辺の労働者に危険な仕事をまかせていると推定せざるを得ない。こうした請負作業員たちは生活を維持するために何度も出稼ぎを重ねざるを得ない。しかし働けば働くほど、より多くの放射能にさらされるのである。