2009年に、TBSが城山三郎の『官僚たちの夏』をドラマ化しました。
この第一回を観た後、知人に以下の感想を送りました。
TBS『官僚たちの夏』
http://www.tbs.co.jp/kanryou09/
“○○ 様
昨夜は、城山三郎の「官僚たちの夏」をTVで観ました。
城山三郎の小説では昔「日本銀行」しか読んだことしかありませんでしたが、今度この本を読んでみようと思います。
この「官僚たちの夏」登場人物は実際のモデルがいるとはいえ、細かい部分は大分実際とは違うとは思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%98%E5%83%9A%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%AE%E5%A4%8F
しかし、ドラマの中の登場人物たち-遡れば、 戦後から高度成長期時代までの政治家、官僚、国民・・・日本を発展させたい、豊かになりたい、と同じ目的を持って突き進んできた人がいたことは、確かでしょう。
官僚たちの夏の官僚たち、そして民間社長-
「日本の産業のために国民にも手が届く国産車を。クルマを作ることで、日本の中小企業も潤う」と考える官僚(風越信吾、モデル佐橋滋氏)。
「自動車はアメリカに任せて、日本は繊維等に力をいれていれば良いのだ。どうせ日本の技術はアメリカにかなわない」と言う官僚(玉木、モデル今井善衛氏)。
「大蔵より、通産官僚になりたいと思った。日本が発展するのにはものづくり。」という面接にきた初の女性官僚。
体を壊してまで、官僚と一緒になって国産車造りに挑む自動車会社の社長(モデルはホンダ?)。
(中略)
昔、ある人から「輸銀は今自動車業界にお金を貸さない(貸せない)。それは自動車業界は低金利融資などをつけなくても、独自に売れるから。」というのを聞いたことがありました。
これは80年代半ばでしたが、「官僚たちの夏」で、アメリカに開発した車を「こんなおもちゃなど、我々は車だとは認めない。日本は安商品でも作っていなさい。」といわれた50年代終わりから四半世紀。日本の発展は目を見張るものがありました。
(中略)
ハングリー精神を一旦失ってしまった日本、そして周りの国、とくに中国初め新興国が続々出てきてしまったなかで、日本がどういう形で盛り返していくのか・・・ドラマを見ながらふと考えていました。
(後略)”
結局、私はこの後も原作本を読まずに至ってしまったので原作がどうだったか知りようがないのですが、少なくともこのドラマの中では、
「自動車はアメリカに任せて、日本は繊維等に力をいれていれば良いのだ。どうせ日本の技術はアメリカにかなわない」という意見を述べていた玉木は、主人公のライバルで、見方によっては悪役に描かれていました。
が、実際の評価は、玉木のモデルであった今井善衛氏のほうが主人公風越のモデルであった佐橋滋氏より高かったようです。
それは、結果的に貿易自由化を目指し、米国との絆を大切にした今井氏が『勝ち組』であったからかもしれませんが、視点や見る人、時代によって評価は変わります。
奇しくも、この今井善衛さんの甥である、今井尚哉経産省貿易経済協力局大臣官房審議官は、原発推進派として活躍している人です。
(彼の現在の考え方の大筋は、おそらく変わっていない気がします。これは以前ブログのなかで紹介した、プレジデントの記事です。
http://president.jp.reuters.com/article/2010/12/20/280AF4BC-0904-11E0-87FF-54F73E99CD51.php )
彼などは、原発事故以前と今とでは勢いが違ってきて、それこそ明らかに風向きは悪くなってきていることでしょう。
そして、おそらく経済産業省のなかには、「脱原発派」もいると思われ、逆に彼らには世論が追い風になっていると思います。
それにしても、個人的には「原発擁護派」「原発推進派」についての肩を持つ気がない私でも、これらの人たちのなかの「日本経済のために原発が必要と考える人(時代にあわせた発展の仕方を模索)」と「単なる原発ロビー」「核兵器開発の可能性を残したい人たち」と分けて考える必要は感じています。
(もっとも、「日本経済のために」という思いで原発を推進、擁護してきた人であれば、次の手を模索しだしていることでしょう。)