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風評被害を口実にした言論弾圧を許すな!

2014年05月12日 22時43分28秒 | 福島の犠牲の上に胡坐をかくな
美味しんぼ 110 (ビッグコミックス)
クリエーター情報なし
小学館


 一週間ほどブログ更新が滞っていました。実はこの間、鼻血描写で今問題になっている「美味しんぼ」と、元福島原発作業員の手による「いちえふ」という、いずれも福島原発問題を取り上げた二つの漫画を読み比べていました。今回のブログにも、当初はその読み比べの感想を書こうと思っていました。
 しかし、「美味しんぼ」の中で、主人公が福島取材中に鼻血を出す場面があり、それが風評被害を煽るという事で環境省までが乗り出す騒ぎになっている事を知り、急遽予定を変更して、「美味しんぼ」からまず取り上げる事にしました。

 そもそも「風評被害を煽る」と言うが、本当に「美味しんぼ」作者の雁屋哲氏は、そんな事を意図してこの漫画を描いたのでしょうか。そう思われた方は、週刊ビッグコミック・スピリッツに連載中の、当該描写のみを見て判断しているのではないでしょうか。その方は、今回の連載に連なる単行本の方の、小学館「美味しんぼ110・福島の真実1」も是非お読みになって下さい。それを読まれたら、そんな「人気取りの為に奇をてらう」かの様な生半可な気持ちで、雁屋氏がこの漫画を描いた訳ではない事がお分かりになると思います。

 ここでは、その単行本のあらすじをかいつまんで紹介しておきます。
 東西新聞のグルメ記者・山岡士郎が福島の被災地取材を思い立ち、帝都新聞との共同企画の形で話が始まります。その共同企画を持ち込んだのが、山岡の実の父親で今までも山岡とは色々確執があった海原雄山なのですが、その点についてはここでは触れません。
 この中でまず登場するのが、会津若松でアイガモ農法を実践している須藤さんの話です。須藤さんは、田んぼでアイガモを飼育し、害虫や雑草を食べさせる事で、農薬や除草剤を使わずにお米を作って来ました。福島原発事故の際も、地形の関係で会津盆地にはそんなに放射性物質は飛散しませんでした。ところが同じ福島産というだけで、放射能不検出の須藤さんのお米も売れなくなってしまったのです。山岡たちもその窮状を救うべく、共同企画でアイガモ米の購入を訴える事になりました。

 この風評被害はアイガモ米だけでなく、喜多方・山都周辺の「もてなしそば」や船引町のエゴマ栽培の取材でも直面します。それどころか、有機農業のネットワークを立ち上げても、ようやく軌道に乗りかけてきた所で原発事故に遭ってしまった為に、せっかくの有機大豆も食用には回せず肥料として使う他なかったり、元の農薬を多用した農業に戻ってしまう人が後を絶たないといった話も登場します。
 その一方で、原発から流入した汚染水の為に、太平洋岸の漁業が壊滅してしまい、魚市場や景勝地・松川浦の復興が全然進まなかったり、被災者同士で魚市場で朝市を行ったりといった話も紹介されます。

 その中でも最も痛ましかったのが、飯館村に伝わる凍(し)み餅などの郷土料理がもう二度と食べれなくなる話です。飯館村と言えば、最初は政府や県の宣伝を信じて安全だと思っていたのが、実際は放射能の雲がモロ上空に押し寄せて来ていた事が分かり、事故から三ヶ月も経ってから全村避難を強いられた所です。福島市に避難していた飯館村の人々の計らいで、山岡たちが郷土料理に舌鼓を打つ事になりますが、この郷土料理も昨年収穫した原材料を使って作ったものでした。既に故郷の飯館村も今は無く、原材料が尽きた時点で郷土料理も消滅してしまうのです。この事に、最初は舌鼓を打っていた山岡たちも、次第にやるせない気持ちになっていきます。この場面では、あの強面で有名な海原雄山ですら、悲しみの余り思わずもらい泣きしてしまいます。



 そんな話の中で、たった一コマ、山岡が鼻血を出す場面が出たからといって、それがなぜ風評被害を煽る事になるのか。私には全然理解できません。この取材は一回きりではありません。足かけ一年かけて、何度も現地に取材に行くのです。放射線濃度を測定する為に国や県が設置したモニタリング・ポストが、なぜ予め除染されコンクリートで固められた土の上に据えられているのか。これでは、在るがままの状態で測定すると言う、モニタリングの意味が全くないじゃないですか。そんな中では、鼻血を出す人がいても一向に不思議ではありません。
 低線量放射能の害については、実は今も未解明の部分が多いのです。放射能の影響を指摘する学者もいれば、それを否定する学者もいる。その中で、架空の主人公がフィクションとして鼻血を出したとしても、一体何が問題なのか。そんな事すら書けないなら、もはや何も書けなくなってしまう。

 確かに、この「福島の真実」シリーズには、実在の人物や団体も数多く登場します。アイガモ米の須藤さんや、「エゴマ」「もてなしそば」「凍み餅」や、福島県有機栽培ネットワークなども、いずれも実在の人物・食材・団体名です。そういう意味では、最初から最後まで全てフィクションである事が自明の、他の「美味しんぼ」シリーズ場合以上に、表現には注意が必要でしょう。でも、その程度の事で、なぜ石原伸晃や橋下徹までがノコノコしゃしゃり出て来て、ここまで雁屋氏を叩かなければならないのか。
 それがいかに異常な事かは、「ミナミの帝王」「ナニワ金融道」や「ゴルゴ13」などの漫画と比べたら良く分かります。あれらの漫画も、主人公たちやその活躍の場は確かに架空の設定にはなっていますが、背景となる多重債務の問題や国際情勢はいずれも現実を題材としたものです。実在の国や人物や団体も多数登場します。その中ではサラ金風刺や大国批判の場面も一杯出てきます。でも、それに対して、大手サラ金や米国大使館がいちいち抗議声明を出したでしょうか。

 原発問題に限っても、あの鼻血程度の事は、別に「美味しんぼ」だけに限らず、小林よしのりの「脱原発論」や、現役官僚によるとされる匿名の告発小説「原発ホワイトアウト」にも一杯出てきます。小林よしのりなぞは、その著書の中で「原発推進は核兵器製造が狙いだ」とあけすけに語っています。それらがなぜお咎めなしで、「美味しんぼ」だけが叩かれなければならないのか。
 「風評被害を煽り被災者を傷つけた」と批判されるが、それを言うなら、「津波は天罰だ」と言い放った右翼ボケ老人(石原慎太郎)こそ一体どれだけの人間を傷つけたか。この様な右翼ボケ老人の暴言は放置して、なぜ「美味しんぼ」だけが叩かれなければならないのか。実際は風評被害なんて口実にしか過ぎず、本当は「美味しんぼ」の口を封じたいだけではないか。当ブログは雁屋哲氏と「美味しんぼ」を断固擁護します。そして、このような陰湿な言論弾圧とは徹底的に闘います。
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