アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

教育再生会議が理想とするのはこんな”実直”な若者だろう

2009年06月08日 23時14分09秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 今回の記事も、当初予定を変更して、今日職場であった事について書きます。
 今回取り上げるのは、以前にも「スポット派遣の残酷」というエントリーで登場した、「どことなくボォーとしていて、少し込み入った話になると途端に『もういいや』とか『そんなん分からない、知らない』とか言い出す」日払い派遣ワーカーだったN君の事です。

 当時、私は彼に、「このままでは派遣会社に良い様にあしらわれるだけだ。いつまで経ってもカネも貯まらないし、仕事も全然覚えられない。早くスポット派遣から足を洗え。」と、折に触れて言ってきました。その甲斐もあってか、その後彼は、ウチの会社に直接雇用される道を選びました。今は、私と同じ業務請負会社の契約社員として働いています。
 しかし、「ボォーとして」使い物にならないのは今も変わらず、正直言って皆からお荷物扱いされています。しかも、ただ仕事が出来ないだけでなく、雑談をしていてもピント外れな事を言う事が多いので、はっきり言って、最近では私も彼の事を疎ましく思い始めていました。

 今日の休憩時間に、休憩室で私とN君がテレビを見ていた時の事。丁度その時に、「非正規のパート・アルバイトも組合に入りましょう」という連合・非正規労働センターのテレビCMが流れました。短い時間でしたが、滅多に無いCMだったので、私もN君もじっとテレビを見ていました。そのCMの後、N君が、またいつもの様に、私に話しかけて来ました。

N:「運送会社なんて、どこも人をモノ扱いだからなあ・・・」
私:(また話しかけて来やがってと思いながら)「そんな事、別に今に始まった話じゃないだろうに・・・」
N:「俺が前に働いていた会社なんて、給料の〆日が毎月20日だったのだけど、最後の5月21日から31日に辞めた時までの給料、まだ払ってくれないのだから・・・」
私:(唖然としながら)「お前、それ何年位前の話なの?」
N:「うーんと、2005年位だったかなあ・・・」
私:(あーあ、2年以上も前の話だから、未払い賃金の請求時効が成立してしまっている、返還される可能性は相当低いものの、しかし回収できるケースも無いとは限らないので)
 「お前、何でそれを、今頃になってから俺に言うの?」「10日間も丸々只働きさせられておきながら、何でその時に何も言わなかったの?」「会社側の完全な違法行為なのだから、労基署に駆け込むなり、組合に相談するなりしていたら、ほぼ100%回収出来たのに」「未払い賃金の請求にも時効があって、如何に正当な要求でも、2年以上も放置していたら、もはや請求の意志無き者と看做されて、権利消滅してしまうのだよ」「どこかに相談するなり行動を起こそうと、何故しなかったの?」「そうやって泣き寝入りして、損するのは結局自分なのだよ」「しかも、それだけではなく、自分が黙っている事で、また別の誰かが同じ被害を蒙る事になる、だから決してこれは自分だけの問題でも無いのだよ」「現時点では回収できる可能性は高くないが、しかし全く無理と言う訳でも無い、まずは相談する事からだ」「君は余りにも何も知らなさ過ぎる、もう少し労働基準法や労働安全衛生法の常識的な知識ぐらい身に付けとけよ、それも全て自分のためだろう」(と、立て続けに言う)
N:「でも、俺って鈍くさくて、納品の時間指定に間に合わなかったり、一杯物損事故を起こして弁償しろと言われたし・・・」
私:(聞いてて段々腹が立ってきて)「お前はアホか!それとこれとは話が別だろう!」「何のために労災保険や自賠責保険があるのか、いずれも経営者は強制加入させられているから、故意でない限り、労働者が自腹切らされる事はないのだよ」「お前の理屈で行けば、俺はアホやから殺されても文句言えませんと、言っているのと同じじゃないか!」

 「嗚呼、無知と言うのは恐ろしいものだな」と、その時につくづく思いました。彼、N君との間には他にも幾つか伏線があって、背景事情も知ってもらう為に敢えてその一端を垣間見せると、彼、今の日本の首相(麻生太郎)や米国大統領(バラク・オバマ)の名前を知らなかったのです。それも意外な事に、全くの政治音痴ではなく(その証拠に、与党名=自民党や、野党名=民主党・共産党・社民党などは知っていた)、最新(そんなに新しい出来事でもないと思うが)ニュースなどの新しい知識が、頭からごっそり抜け落ちている感じなのです。
 何故そうなるのかと言えば、本人も言っていた様に、政治が面白くないからでしょう。何を言っても変わらないので、ひたすらジャンクフードをかじりながら、ゲームをしたり、漫画や芸能番組を見るだけの人生になってしまう。

 これは何もN君だけに限った話ではなくて、実際にそういう若者(といっても、20代後半から30歳代の、既にいい年こいたオッサンなのだが)が増えている様なのです。例えば、先日も私の行きつけの鍼灸医さんが語っていた、下記の会話の様に(相手の患者の年齢は27歳=仮にAさんとする、ちなみにN君は37歳)。

医:(経済談義の中で)「最近の日本の失業率ってどれ位だと思う?」
A:「千人位かなあ」
医:(この時点で既に目が点)「あのね、率=割合を聞いているの、100人中10人なら10%とか言う」
A:「40%、いや50%位かなあ」
医:「・・・・・」

 北朝鮮やジンバブエなら、ひょっとしてこれ位行くのかも知れませんが。或いは日本でも、ワーキングプアなどの失業予備軍まで含めて考えれば、この数字もあながち嘘では無いかなとは思いますが。職業訓練生や、ニートなどの求職活動を諦めた人は、最初から統計外として扱われますから。
 しかし、このケースに限って言えば、決してそこまで「深読み」している訳では全くなくて、ただ単に、言葉の意味を解していないだけでしょう。

 そう言えば、「国を引っ張っていくのは百人に一人で良い、それ以外の非才・無才にはせめて”実直な精神”=奴隷根性だけを養ってもらえばよい」と言ったのは、教育課程審議会前会長の三浦朱門でした。
 日本経団連や教育再生会議がこれまで盛んに育成してきたのが、これらの「若者」でした。なるほど、こんな若者ばかりになったら、さぞかし「資本家天国」になるでしょう。グッドウィルやフルキャストが今まで散々したい放題振舞えたのも、偏に、これらの若者を数多く囲い込んでいたからに他なりません。

 はっきり言って、「三角関数の公式」や「鎌倉幕府の成立年」や「君が代の歌詞」なんて、別に知っていなくても、読み書き算数さえ出来れば、人はとりあえずは生きていけます。しかし、憲法や労基法・労安法の基礎的な内容ぐらいは知っていないと、N君の様に、たちまち困窮してしまいます。
 自分にはどんな権利があり、困ったときにはどの法律を調べ、何処に相談に行けば良いのか。そういう事についての最低限の知識がなければ、「人として」生きていくのは困難です。搾取され放題、騙され放題の、奴隷の様な一生を送る破目になります。その挙句に、戦争の消耗品として使われて終わりです。イラク戦争に駆り出された黒人・ヒスパニック・プアホワイト出身の米兵の様に。
 「どうすれば良いか分からないが、兎に角今のままで良いとは思わない」と、「仕方ない、どうせ俺ってダメな人間だから(宿命論・自己責任論)」。「どうすれば良いか分からない」のは同じでも、両者の間には明確な差異がある。奴隷の最も悲惨な点は、奴隷的待遇に在るのではない。自分が奴隷状態にある事にも気付いていない無知にこそ在る。

 余りの沙汰に、今日はN君にきつく当たってしまったが、その一方で、労働基準法などの内容や、困ったときの相談先を記した資料やパンフを探してきてあげる事も、同時に約束しました。それで今日仕事帰りに、市役所の閉庁時間は既に過ぎていたので、市立図書館前のロビーなどに立ち寄って来たのですが、そういう類のパンフは全然置いてませんでした。
 本屋を数軒回るも、店頭の目立つ位置に置いてあるのは、いずれも「派遣村バッシング」で悪名高いWiLLなどのバカウヨ・ゴミダメ雑誌ばかり。労働関係の必須知識を記して、尚且つ誰でも分かる様に書いてあるものとなると、大阪・梅田の民主書店辺りまで行かないと手に入りません。つくづく嫌な世の中になったものです。
 先述した様に、はっきり言って、彼には私も最近ホトホト手を焼いているのですが、そうは言っても乗りかかった舟、次の休みにでも、関連資料を改めて探してこようとは思っています。
 只、一口に労組関連とは言っても、会社丸抱えの御用労組から階級的・戦闘的労働組合まで色々在る訳ですが、○○系や××系が云々なぞと、今のN君にいきなり説明しても、多分理解出来ないでしょう。「労組と言ってもピンキリで、中には裏で会社と結託している御用組合もあるから、労組選びも気を付けた方が良い」とだけ、彼には言っておこう。

(追記:6月10日)

 上記の約束通り、本日の定休日に、大阪市内・天満橋のエル・おおさか(府立労働センター)に出向いて、下記のパンフを貰い受けて来ました。一つは、大阪府商工労働部雇用推進室発行のA4版・薄緑色のハンドブック。もう一つは、連合大阪・非正規労働センター発行の赤色・短冊形のリーフレット。
 特に、前者のハンドブックは、概略的な内容ではあるが、労働法の重要なポイントが一通り網羅されていて、思った以上に充実したものです。この程度の解説書でも、本屋で買ったら千円ぐらいします。自分の分も含めて、二部貰ってきました。それに、これだと「お上お墨付きの印刷物」なので、大っぴらに職場に持ち込んでも、一切会社は文句言えないしね。

  
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2 コメント

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うーん、ちょっと心配・・・ (草加耕助)
2009-06-11 10:41:24
まず、プレカリアートさんのおっしゃることは全く正論で、異議をさしはさむ余地はありません。次に、私は件の青年に当然あったことがないので、具体的には何とも言えず、推測で書くしかありません。ですから見当はずれなかもしれませんが、気になったことを。

以前に私もこの青年に似ているかもしれない「周囲からお荷物扱いされている”実直な精神”の持ち主」の相談に乗ったり、すこし世話をやかせていただいたことがあります。その時の狭い経験からだけ申し上げるならば、このタイプの人に、今回のプレカリアートさんのアプローチで「世話」をすると依存関係が生じてしまい、一生そばについて世話をし続ける覚悟が必要となる。その覚悟がなくて途中でさじを投げるくらいなら、最初から何もしないほうが本人のためにもいくぶんかマシであるということです。特に相手が異性の場合は要注意(笑

特に真面目で誠実なプレカリアートさんらしく、最初に説教(失礼!)からはじめて、次に苦労して世話をやいてやるというパターンはやめたほうがいいかなあと(汗)。最初はあくまでも軽く「お前、ひょっとしたらそれ、とりかえせるんちゃうの?」くらいにしといて、次に「用事で役場にいったついでにもろたんやけど、ここにそんなこと書いてあるで」と、これまた軽く、あくまでも「世話をやく」のではなく、「世間話の延長で相談にのる」というくらいのポジションで話したほうがいいんじゃないでしょうか。

意外にこのタイプの方の中には、「あとは自分でしろよ」「そこまで面倒みれないよ」という態度を示すと、なんか見捨てられた、手のひら返されたみたいに思ってショックを受ける人もおられるように思います。最初から「自分が苦にならない範囲で相談に乗ってるだけ」であって、あくまでも行動は自分でするように、うまく元気づけて誘導してあげたほうがいいですよ。それで成功すれば本人も何かを学ぶでしょうし、労働者の権利を説教するのは、それからのほうが効果的だと思います。

ある法学の先生が言っておられたのですが、身近な人の権利が侵害された時、社会に出てから頼りになるのは「法学部の劣等生」だった人であると。中途半端に「法学部の優等生」だった人は案外頼りにならないんだと。
返信する
神様からの授かりもの (プレカリアート)
2009-07-20 00:07:42
 草加さん、今頃レスして申し訳ない。このN君の「依存癖」については、私も早くから薄々気付いていたので、最初の派遣ワーカーから抜け出す時に、「人にばっかり頼ろうとするな、最終的にどうするかはお前自身で決めろ」と、予め彼に釘を刺していました。でも、あんまり変わらなかったみたい。

 それどころか、更に難儀な問題が持ち上がっています。書こうかどうか迷いましたが、やっぱり書く事にします。
 実は彼、小学校の算数レベルの計算が出来ないのです。九九は一応言えるのですが、25×4とか72÷3とかいうレベルの計算が出来ないのです。だから、はっきり言って仕事になりません。もう、労働法とか教育再生会議がどうたらとかいう以前の問題です。

 それでも、今までは派遣ワーカーだったので、不定期にしかこちらに出勤して来なかったし、来ても補助的な仕事にしか就けなかったし、表面上は読み書きも会話も普通に出来るので、ごく限られた身近なメンバー以外は、みんなその事に最近まで気付かなかったのです。
 それが、私たちと同じ契約社員になり、同じレベルで行動し、会話も本格的に交わすようになってから、「彼、少し変だな」という事に、徐々にみんなも気付き出したという次第です。

 それでも仕事は回さないといけないので、彼にはもっぱら雑用ばかりさせています。それ以上の、作業段取りを立てたりとか、検品などのより責任性を伴う業務については、基本的には全て他の人が肩代わりしています。彼も彼で、自分の置かれた立場を認識して、少しでも努力する姿勢を見せればまだしも、他の皆が仕事を回そうと汲々している傍で、まるで他人事の様に「僕、何をやってもダメだから」とか言って、のんきに構えられるので、みんな頭に来ているのです。
 私も、こんな事を言ってはダメなのは承知の上で、それでも敢えて言いますが、「算数の計算も出来ない奴はクビにされても仕方がない」と思います。

 それを「元祖・猫カフェ」のママに相談したら、ママもそういう人には手を焼かされたとの事。ママの場合はもっと酷くて、パートで来た人に中には、成人にもなって足し算・引き算も満足に出来なかった人がいたそうです。
 まさか「計算が出来ますか?」なんて事を、幾ら面接でも初対面の人に聞く訳にもいかず、「それ位は出来て当然」と高をくくっていたので、大変な事になってしまったそうで。流石にそんな人は、最後にはお引取り願う事になったそうですが。

 N君の場合も、ママ曰く「40歳近くになってもそれでは、もうその人はずっとそのままだ」「それを、今更周囲の人が、変に見るに見かねて騒ぎ立てても(私が労働法の説教をした様な事も含めて)、決してその人の為にはならない」「それでも、その人も生きていかなければならない以上は、無碍に解雇する訳にはいかない」「お兄ちゃん(私の事)も、自分を基準に人を判断したらいかんよ」「幾ら身体は成人でも、精神的には子供みたいな人も現に居るのだから、そういう人に対しては、神様が自分に試練を授けて下さったと思って、多少ムカッと来るような事があっても、相手は子供だと思って、自分が大人になるしか仕方がない」と、諭されてしまいました。

 しかし、もう「神様からの授かりもの」だと、諦める以外に仕方がないのだろうか・・・。今流行のインド式計算法(37×11を、37×10と37×1に、暗算し易い形に分解して計算する方法らしい)で、何とかならないかなあと、ついつい思ってしまう・・・。兎に角、今のままでは、こっちがシンドイですわ。
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