先日、岡山国際サーキットで「国民文化祭・おかやま2010」の中で行われた電気自動車レースを見に行って来た。夏に袖ヶ浦サーキットで行われたレースの第2戦になるらしく、今年から始まったEVの新しいレースだ。我がチームにも「出ませんか?」というお声賭けを頂いた(事務局の方とツイッターで繋がっていたので)為、一度どんなレースなのか見て今後の参加を検討しようと考えたのだ。
(スタート風景。予選最下位が鉛のポルシェ916ではなくて、三菱アイミーブだったのは、バッテリー温存作戦か?)
ソーラーカーやエコノムーブ系のマシンではなくて、ちゃんと人が乗れる外見普通な車両で行われる電気自動車のレースは別に珍しいものではない。一部の報道では今回のレースが「電気自動車レースの幕開け」みたいなことを言っていたが、それは間違い。新しいようで電気自動車は古いし、少数だが昔から熱心なマニアは居たので、90年代後半には富士スピードウェイでもレースが有ったし(確かJAF公認)、東コースだったけど鈴鹿サーキットでも有った。今年で16回目を迎える「日本EVフェスティバル」のレースは、2002年からは筑波サーキット本コースだ。
さてレース本番、参加車両は、テスラ3台と地元岡山水島工場に生産ラインを持つアイミーブ3台、そして4日前にEVフェスティバルのレースを走ってバッテリーを完全放電させたばかり(最後の最後で電欠停止)のポルシェ916コンバートEVの計7台・・・の予定だったが、テスラの1台はキャンセル、後で調べたら、ドライバーが中国で別のレースに出ていたようだ(未確認)。
(EVフェスティバルで最速チャレンジに出る直前の赤テスラ。ドライバーは飯田章氏だ。筑波のタイムは1分11秒391、速いけど、予想した位の速さだった。ちなみに02年に最速チャレンジに登場したVITZのコンバートEVは1分13秒304だったので、VITZから8年経って2秒縮まった)
(ZEVEX的に一番気になったマシンは、JAFジムカーナ参加の為に1年間三菱さんからお借りしたこのアイミーブ。今回は雑誌ザッカーチームとしてエントリーしていた)
(そして、今回唯一の市販車改造クラス、TAISAN PORSCHE916EV。914じゃなくて916ってところがクールだが、流石に鉛ー酸バッテリーでは勝負にならない)
この陣容だと、50kmというレース距離と合わせて、スタート前からレースの展開は分かってしまう。当然テスラがどんどん行き、見えないくらい離れてアイミーブ勢が続き、遥か後方にポルシェがゆるゆると走る、という展開。
特にポルシェは昨年EVフェスで見た時よりも、バッテリーを倍積んだらしいので、見ていても重そうなのがわかる。
結果はバッテリーの調子が良さそうな赤テスラの飯田選手が優勝。2位も白テスラだが、ゴール後バッテリーを冷やしていた。ちなみに赤テスラの最速は練習走行時の1分58秒台だったらしい。
(上が2009年のEVフェス、下が2010年。バッテリーの重さ分確かに沈んでいるか!?)
まあ車種が無いんだから、今の段階では致し方無い。と言えば確かにそうなのだが、何とも盛り上がりに欠けるレースだった。テスラが10台も集まれば、それなりに見応えが出るのかも知れないが、テスラ10台が一斉に充電したら、サーキットのブレーカーが落ちまくってレースどころではなくなる気もする。かと言ってパドック裏に建設工事用のディーゼル発電機をズラズラ並べて充電すれば、それはそれでエコカーレースとしての醍醐味に欠けることになるので痛し痒しだ。(個人的には“可能性を証明する為”ってことで、サーキットに充電インフラが整うまでの暫定措置としてそれは有りだと思う。)
中国製の安いリチウムイオンを積み、バッテリーは壊しても構わない覚悟で走るつもりでマシンを造れば、それなりにテスラに肉薄できるマシンが造れそうな気もするが、そんな「資金力勝負」なレースが続かないことは、ガソリン車レースの凋落ぶりを見れば分かることだし、げに、電気自動車のレースは難しい。
16回もやっているEVフェスティバルのレースだって、バッテリーやモーターの種類でハンデを付けたり、バッテリー搭載可能量を重量で縛り、総電力量でハンデを付け、と色々工夫をしているし、それも毎年実態にアジャストさせている。
ま、長く電気自動車をやるマニアとしては、参加できるレースが増えることはありがたい話なので、JEVRAさんには今後色々工夫して頂いて、面白いレースを開催して欲しいと願う。
(レース中、鉛のポルシェは「動くシケイン」と化していた)