現存最古のジムニーの電気自動車「SJ2001」号を使って、21世紀型のオフロードスクールを開催することになりました。東南アジアのジャングルからロシアのタイガ森、果ては凍り付いた海の上(ロシア・サハリン州間宮海峡)まで走った実績を持つ我々ZEVEXが、そのノウハウを余すところなくお伝えします。特に電気自動車のクロカンではZEVEXは日本の草分けですから、ウインチに関してはモーターの構造やバッテリーの科学も含めて、ZEVEXにしかできない「理論」と「実践」を融合させた内容で行います。
参加費に関しても、最近特に劣化が激しい「4x4クロカン」というカテゴリーの健全な存続と継承を願っての活動ということで、車両搬送費用とコース使用料を参加者全員で頭割りするスタイルで開催します。つまりZEVEXとしての利潤は全く頂かないということです。
上記のように、4x4クロカンの未来の為に、人的にも物的にもちょっと無理して開催するオフロードスクールですので、是非御参加頂ければ嬉しく思います。
詳細は、以下に特設ページを作りましたので御参照下さい。宜しくお願い致します。
4シーズン目に入り、年5戦体制で争われた「ERK Cup Japan 2014シリーズ」、その最終戦が11月30日(日)フェスティカ栃木で開催されました。
(古いEVクラブの仲間、長岡氏率いるSanohチーム、SRモーターを搭載するハイパワーマシンだ)
我々が参戦する2クラスには、今回から新チームのエントリーが有り、また1クラスが不成立だった為、1クラスの「トヨタ東自大DRK」チームが1クラスに編入されて全6台となり、いよいよ混戦の2クラスとなりました。
今回のレース構成も前回と同じスプリント5。但し、各チーム有効ヒート3ヒートを事前に宣言してからレースに臨む為、最終順位に対して戦術の占める重要度が前回よりも増したレースとなりました。本シリーズはERKに造詣が深い(株)プロジェクション丹羽氏、トヨタ東自大森教諭の両名が創意工夫に知恵を絞られているので、毎戦絶妙なバッテリーマネジメントが参加者に求められます。単にマシンのスペックだけではなく、EVに関するトータルの経験値が求められるところが、このシリーズを他では真似ができない電気自動車の通好みなレースにしてくれています(特に2クラス)。
さて正回り6周のヒート1です。我々のチームは捨てヒートでしたが、完走すると1ポイント獲れるので、途中をピット待機してバッテリーを温存し、最後でチェッカーを受ける戦術でした。ところが、ピットクルーが先頭車両の確認を誤り、ヒット出口を閉鎖されて敢無く0ポイントに終わってしまいました。
続いてヒート2、逆回りの6周です。ZEVEX Racing Team は若手助っ人ドライバーの松村隊員にドライブを任せました。最後尾からのスタートでしたが、先行車両を上手く抜いて、JKB(女子カート部)・ZSSの両強豪チームを追う体制に入ります。が、3秒差まで追いすがったところで痛恨のスピン。ハーフウェットだった上に、ヒート1をほぼ走っていなかったことで、タイヤが冷えたままだったのが原因でした。
(ハーフWの路面を攻める松村隊員)
ヒート3逆回り5周、続けて有効ヒートです。ヒート3はJAF公認競技初のEVチャンピオンシップシリーズだった「JMRC神奈川ジムカーナ2010EVクラス」で第3戦に優勝した薄井隊員ドライブでした。
(3周目、ZSSを追い上げる薄井隊員)
JKBが捨てヒートだった為、ZSSと一騎打ちになりました。先行するZSSの後ろに付け、3周目のストレートエンドでインを取って抜き、1周抑えたんですが、そこはZEVEX、最終周に入た直後のストレートエンドでスピンして2位に終わりました。逆回りのストレートエンドは下りの左コーナーで普通は怖くてスピンしない場所なんですが、「久々のクリアラップで興奮した」からなのだそうです。
さて、ヒート4は最年長の藤井隊員にお任せしました。いぶし銀の落ち着いた走りを期待したいところです。正回りに戻ったこのヒート、5周ですがジョーカーLAPの義務(ピットスルー)が有ります。フロントローから順調にスタートした藤井隊員でしたが、松村隊員と同じくハーフウェットに乗ってスピンします。スピンのタイムロスは最小限で済んだのですが、スピンと同時にジョーカーLAPの義務も記憶から抜けた・・・とは本人談です。後続を大きく引き離してゴールしましたが当然の失格に終わりました。
(スタートは2位フロントローからの藤井隊員)
正回り4周の最終ヒートは鈴木がドライブだったのですが、バッテリーがアップアップで取り敢えず完走しただけ、レース以前の問題も含めて、自爆した感のある2014最終戦でした。
(最終戦優勝は常勝JKBチーム、今回お見事だったのは2位のトヨタ東自大「We Are Novi Novi」チーム。圧倒的に少ないバッテリー量ながら、他チームの間隙を縫う戦術でヒート4では1位を取り、見事な2位表彰台でした)
(こちらはシリーズ表彰。シリーズタイトルはトヨタ東自大「We Are Novi Novi」チーム、・・・ですが、こちらは戦術の勝利ではなく第3戦の白馬大会に唯一参加した皆勤賞。モータースポーツ的な意味で言えば、JKBとZSSが同ポイント37点で、最終戦順位優先なのでJKBでした。ちなみに我々はシリーズ4位/6台中、実質はドベです。来期は1回くらい優勝したいなあ~)
(こちらはリチウムイオン搭載のSPクラス、こちらは常に全開勝負なので、さしものリチウムイオンでも時々ブローします。こちらも激戦でシリーズチャンピオンはチーム「パレット」松永(左)。/田中(右)組。)
日本の4x4クロカン界はイビツな構造をしていると感じます。面積は狭くとも、有料のオフロードコースで行う走行も4x4クロカンの一部だと思いますし、1泊2日で行く郊外の山へのアタックは日本のオフローダーがイメージするクロカンそのものでしょう。ただ、それを越えてに広い面積と長い時間軸を持った4WDクロカンが日本の4x4クロカン界には極端に少ないのです。
(ロシアのタイガ森を往くZEVEX遠征チーム。ここはまだ「道」っぽいが、この後森の防火帯となる。そもそも「道」を作ったのではなく、防火帯として造った森の隙間を道として使っているだけだ、とは途中で逢った猟師さんの話。)
だからなのか?5000km・10000kmというスケールの4X4クロカンで必要な技が日本のオフローダーにはほとんど知られていません。8000m級の山は存在しない日本でも、登山をする方は高度順応の必要性を理解しています。「無いから知らなくても良い、だから知らないままでも上級者だ。」という理屈はオカシイと私は思いますし「500kmなら走破できますが5000kmは出来ません」ではオフローダーとして未完成と言わざるを得ないと思いますので、そんな日本の4X4クロカン界に足らない部分を補う一助になればと、東南アジアのジャングルからロシアのタイガ森、果ては氷結した海の上までも4WDで走ったZEVEXの経験を伝える講習会を行いました。
(草原を堂々と走り回れる場所は日本では極めて珍しい。講習会の会場として、ここ桧山高原を使わせて頂けたのは幸いだった。)
今回の講習会は、我々ZEVEXと、F3というクロカン催事を長年運営している福島県のオフロードチーム「パイナップルレンジャー」のコラボ企画として実現しました。催事としてはZEVEXのEVジムニー1号機「SJ2001」号のデータ取りやパイナップルレンジャーさん運営の芋煮会でもあった為、限られた時間で有効な講習会とすべく、内容をウインチワークに限定し、特に1万kmスケールの4X4クロカンで必須となるポイントを選び、座学を中心に構成しました。
(時間軸が短いクロカンでは誤魔化しが効くポイントが、1万kmスケールのクロカンを実行するには不可欠の知識となる。)
幸い今回の参加者にはPTOウインチユーザーは居なかったので、講義は電動ウインチに限定しました。特に一定の水準でクロカンを実践する人達だったので、「皮手袋をしましょう」的な初歩の話は端折って、モーターの構造やバッテリーの科学を中心に講義しました。リップサービスも含むのでしょうが、この講義内容は概ね好評で、感覚でしかわかっていなかったウインチの駆動特性が、何故そうなるか原理が分かったと言って頂けました。
(翌朝、早速マスター巻をするF3実行委員長の青山氏。ZEVEXのメンバーでもある。)
(電動ジムニーを使ってのフィールド講義。パイナップルレンジャー会長の菅野氏も参加。彼もZEVEXメンバーである。クロカンだから当然土木作業も有り。)
2日目は15年前に造ったEVジムニーに搭載された電動ウインチを使って、短いながらもフィールド講義も行いました。この後パイナップルレンジャーさんが段取りして下さったこの催事の会場「桧山高原」の広大なフィールドを皆で移動しながらオフロード走行を楽しんで、今回の催事は幕となりました。
1万kmスケールの4X4クロカンに必要なのはウインチワークだけではないので、機会を作って第2回を行いその他のノウハウも伝えられる機会を作りたいと考えています。
もちろん、ZEVEXに入隊して頂ければ、常の活動で身に付けて頂ける機会は多々有る訳ですが、非隊員のオフローダーの皆様にも、ZEVEXの長いクロカン経験から得たノウハウをお伝えできる機会を持ちたいと考えています。
(SJ2001を囲んで記念撮影。今回は告知が不十分で少人数でしたが、その分濃い内容が出来ました。)
(パイナップルレンジャー女性スタッフ力作の芋煮。美味でした。女性スタッフの力量が厚いこともパイナップルレンジャーがリスペクトされるべきポイントだと思います。)
運営側に回った第3戦から1ヶ月、ERK Cup Japan第4戦に再び「選手」で参加しました。今回の構成はスプリントレース5ヒート、それも正回り6LAP、逆回り6LAP、逆回り5LAP、正回り5LAP(ジョーカーLAP有り)、正回り4LAP(ラッキーLAP有り)というバラエティーに富んだ構成でした。
リチウムを積んだスペシャルクラスは電力量的には余裕なので、基本常に全開でのバトルになりますが、鉛ー酸バッテリーの02クラスは全ヒート全開では電力量が足りません。そこで、攻めるヒート退くヒートの戦術を考える必要に迫られることになります。
(ZEVEX Racing Teamの第1ヒート担当は藤井尚孝隊員。前回はグリップの切れたタイヤで散々だったが、今回はタイヤの状態もバッチリ。)
02クラスは他のチームがどのヒートを勝ちに来るかも重要です。同じ勝つでも他のチームとバトルして電力を消費して勝ったのでは、他のヒートの戦術に影響が出てしまうからです。その辺の様子を見つつスタートした第1ヒートは、現役ガソリンカーターのZSSチームがストレートでもぐいぐいアクセルを踏んで来たので勝負は諦め、スタートグリッドで前に居たアドバンテージを生かして強豪JKB(女子カート部)を何とか抑えて2位でまとめて上々の滑り出しとなりました。
そして第2ヒート、逆回りを得意とする内山豊隊員のドライブです。第2戦ではTOPを走っていながらも、残り200mでハーフスピンして3位に留まったので、その雪辱戦でもあります。
(常にも増して気合いが感じられるスタート前の内山隊員。スタートはヒート1のチェッカー順なのでフロントローアウト側だ。奥に見えるのが強豪女子カート部。)
詳細は下の動画をご覧頂くとして、このヒート踏んで来た女子カート部との一騎打ちを3周目にかわして、そのまま逃げ切って見事1位を取りました。トランスポッダーの調子が悪くて一部タイムが取れてないLAPが有りますが、このヒートで出した内山選手の38秒650が、この日の02クラスファステストだった様子です。
第3ヒートはバッテリー温存の為にDNSして、私の乗る後半2ヒートです。1・3ヒートを取ったZSSチームと競うには、この第3ヒートは落とせません。スタートグリッドは最後尾でしたが、スタート直後からZSSの後ろに付けてジョーカーLAPも後ろに付けたままこなします。1ヒート目で明らかな速度差が有ったストレートでもZSSチームとの差が開かないので「このヒートは抑えている」と判断して前に出ました。そしてそのままチェッカーを受けて1位。この時点で、2位・1位・DNS・1位なので、最終ヒートで1位を取れば初優勝の目も出て来ました。
そして最終ヒート、スタートで飛び出した女子カート部の後ろに付けますが既にパワーが出ません。練習走行用のバッテリーが不調で、6LAPを決勝用のこのバッテリーで走ったのが響いている様子です。ピット無線を繋いでいる女子カート部が上手くラッキーラップに入ったところで勝負有りでした。レースに「たられば」は有りませんが、練習走行で使った6LAP分が無ければ計算通りこの最終ヒートもレーシング速度を維持できたと思われるので残念でした。
ま、それでもこの日は2位表彰台。第2戦が3位で、欠席の第3戦を挟んで第4戦で2位。徐々にセッティングが出て来た手応えが有ります。
(2位表彰台は久々。2014のシリーズタイトルは全戦出場の東自大チームと中央のZSSチームに可能性が有ります)
(ちょっとはレーシングチームっぽくなって来たか?「ZEVEX Racing Team」 でも主戦場はオフロードでの4x4クロカンEVなチームです。)
ERK Cup Japan 4th Oct 2014 [The Sprint5] heat2 ~ZEVEX Racing Team win~
(大型の四駆なら楽々なんだろうが、ジムニーだとトレッドがギリギリ)
現存最古のクロカン四駆電気自動車、EVジムニー「SJ2001」号。ジムニーのコンバートはやり易いので、ここ数年でかなりのEVジムニーが誕生したようだが、どの個体もウインチは搭載していない様子だ。 「クロカン」を標榜するならウインチは必須で、どんなトラクションデバイスを使用しようとも、斜度70度15mの斜面はウインチ無しでは登れない。我々の「厳冬期ロシア氷結間宮海峡アタック」のように、命懸けで「チルホールだけで行く」という選択肢も場合によっては有り得るが、それは極限の選択であり、その水準で4X4クロカンを実践している集団を、少なくとも日本の四駆業界内では私は知らない。
「手造りPHEV日本列島縦断の旅」以来、車検を取る活動費が無くて、川崎のピットで惰眠をむさぼっていたこの元祖電動ジムニーを整備して久々にオフロードへ持ち出してみた。オフロードと言っても広大なロシアの大地ではなく、狭く「正解のライン取り」もちゃんと有る有料のコースだが、土の匂いを感じながら電動4WDの強大なトルクを味わう走りは楽しい時間だった。
(足廻りはオフロードサービス・タニグチのソルブスペシャル、もちろん公認だ。15年前、四駆業界にEVの「イ」の字も無かった時代に、あまた有った四駆ショップの中でこのマシンの製作に唯一資金的援助を下さったのが谷口社長だった。)
この日の会場はスポーツランド岡山だったので、ZEVEXの母体となった極限走破の4X4クロカン競技会「アイアン・バール・カップ」時代の仲間である西村君(ランドクルーザークラブ岡山の初代会長)にも声をかけ、広島県三次市から竹藤隊員も参加して、ワイワイと交代でEVジムニーのハンドルを握るほのぼのした走行会となった。
(モーグルのラインを誘導するLCCO初代会長の西村君。「ロバQ」というロックバンドのドラマーでもある。)
SUVと呼ばれる貧弱な「砂利道四駆」が幅を利かせ、ありのままの地球の表面~すなわちオフロード~を走れる堅牢なクロカン四駆が減少して行く中で、各地のオフロードコースが閉鎖に追い込まれた。そんな現状にあって、このスポーツランド岡山はそこそこの面積も有り、V字・モーグル・ロック等サーフェスのバリエーションも豊富で楽しいコースだ。確か2000年だったと思うが「オフロードサービス・タニグチ」さんのクロカン講習会にこのSJ2001を持って来たことが有って、SJ2001にとっても懐かしいコースだった。
(参加者に一番人気だったのがロックセクション。直流直巻を積んだ電気自動車特有の強大なトルクでグイグイ押して行けるので走り易いのだ。ヨンマルの2B3.2Lディーゼルの低速は確かに太いが、5rpmで安定したトルクを出すことはできない。)
上にも書いたが、電気自動車のジムニー自体は現在日本国内に10台近くは存在する。中には多少クロカンっぽいのを売りにしている個体も有る様子だが、そのEVジムニーを使って21世紀に相応しい4X4クロカンを啓発するような試乗会の話は聞いたことが無い。各地の四駆仲間に聞いてみても「EVジムニー試乗会」とか「EVジムニーに乗れるクロカン走行会」というのは聞いたことが無いと言う。
「4x4クロカン」というカテゴリー自体が存続の危機に瀕している今、この状態は非常にマズい。本来は資金力も有り、それが商売のネタになって投資を回収できるビジネスサイドの人がやれば良いと思うが、それはクロカンに対する「志」の問題なのでボヤいても仕方が無い。
そんな「4X4クロカン」への想いも有り、普段は隊員だけで行う走行会に今回は外部のメンバーを誘ってみた。
慢性的な資金不足をメンバーの小遣いを出し合い都度都度誤魔化し、スタッフの力量も貧弱なZEVEXだが、極限の4X4クロカンを額に汗して体現しているチームとして、EVジムニーを使った21世紀型のクロカン走行会やオフロード講習会等も、人・物・金の配分を少しだけ見直して強化して行きたいな、と今回の走行会を通じて感じた。
(この日の「傾き一番」は兵庫の織邊隊員。ランクルロクマルを新車から60万km超で乗る日本屈指のロクマル乗りだ。JAFのA級ライセンスホルダーでもある。)
(「ひっぱり系」らしくウインチも使ってみた。トップレンジャーの24V物を搭載。)
そんな訳なので、21世紀型のオフロードを体験してみたい、という御要望が有れば、可能な範囲でお答して行く所存です。できれば「自分の為の4X4クロカン」だけではなくて、活動の1割2割を「4x4クロカン」全体の為に頑張っている人やクラブと係わりたいというのがこちらの願いです。
別に難しいことではなくて、定期的にクロカンイベントを主催しているとか、河川敷の清掃に四駆で参加しているとかで十分な話です。御興味のある方はZEVEXの公式サイトからメールを下さい。
(ZEVEXの設立15周年記念Tシャツを着て記念撮影。左端が三次から参加の竹藤隊員。ドライバーは保田隊員、助手席は間もなくの嫁さんだ。)