como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

軍師官兵衛 第8回

2014-02-24 23:03:07 | 過去作倉庫11~14
 今週は、まずまずの回でした。先週があまりにひどかったので、こりゃもうどうしたもんかな、と思ったのですが、持ち直して何よりです。
 いちおう王道織豊ものの鉄板のテンプレをつかっていますので、面白くならないようじゃ非常に困るんですよ。ただ、今回思いましたのは、鉄板のテンプレというものがまずあって、そこに中身を詰めていくという方法は、ほんと残酷なくらい露骨に脚本の偏差値がさらされるなあ、ということでした。
 そういう場面が、今週は特に目立ちましたので、そのへんを中心に書きます。

第8回 秀吉という男

○「兵は詭道なり」問題。

 前回の続きで、御着小寺家が織田方に参陣するについて、官兵衛(岡田准一)が岐阜城に上がって信長(江口洋介)に拝謁し、参陣のメリットをプレゼンする場面からです。
 ここは、いわゆる主役の花道といいますか、絶対はずせない華やかな見せ場だと思うんですよね。若き主人公が、口八丁と若さのパワーで権力者の心を掴む場面。信長(あるいは秀吉)に初対面して初プレゼンをおこなう場面は、過去多くの主役たちが見せ所を競ってきました。
 まあ、今回に関してはもう、そんなに多大な期待はしないけど…兎にも角にも、せっかくの見せ場中の見せ場じゃないですか。これだけバッチリと形式を整えて、岡田君も見せ場にふさわしいドヤ顔をつくってきているじゃないですか。だから、せめて

 もうちょっといいセリフを書いてやれ……

…と、ものすごく残念に感じてしまったのはわたしだけでしょうか。

 御着小寺家の方針を「織田方に参陣」ということでとりまとめた官兵衛は、織田の毛利攻めの援護射撃として、小寺勢の存在がいかに有効か、居並ぶ勇将・名将たちのまえで滔々とプレゼンします。その弁舌の説得力に、歴戦の猛将たちが感心しきり、信長もいたく官兵衛が気に入って、愛用の太刀「圧切(へしきり)」を官兵衛に与えるのでした。

 というのがこの場面の要旨で、そのとおりにやってくれて別に問題ないっちゃないんですが、なんといっても、柴田勝家・丹羽長秀を筆頭とする織田家の猛将たちをうならせ、信長に一発で気に入られるにしては、そのプレゼンの内容がショボすぎます。
 おまえの手勢は何人いるんだ、と突っ込まれた官兵衛は「500でございます」といって織田方の大将たちを失笑させます。500かよ、と嘲笑われても少しも動ぜず、「兵は多ければいいというものではございません。かつて織田さまは、寡兵をもって強大な今川勢を打ち破られた。孫子曰く、兵は詭道なり!

おおおっ…!
 
なんつってそんなもんで感心すんなよ織田方の大将のオッサンたちよ。

 さらに官兵衛は持参の地図をささっと広げ、「毛利の進軍の進路に播磨がございます、ここを押さえれば中国の喉首を押さえたも同様! 諸侯いまだに旗幟が定かではございませんが、わたくしが播磨一国をまとめてお目にかけます!」(細かい内容はわすれたのでいいかげんですが、だいたいこんな感じ)と得々とプレゼンするんですけど、これも

 そんなんで感心するなよ信長よ。

…なんか、この内容のプレゼンでいい大人がそんなに素直に感銘を受けてるのをみると、ここが天下布武をめざす織田軍なんだか、それともまったく全国区の戦をやったことがないローカル大名なんだかわかんなくなってきますね。

「兵は詭道なり!」という、そんなありふれた決まり文句を真正面からドヤ顔で言ったって何にも意味はないのですよ。
かつて「風林火山」で山本勘助(内野聖陽)は、この同じ言葉を表現するために、宍戸開と一対一の公開決闘の場を設け、その満座のなかで宍戸開を湖に付きおとし、驚くギャラリーにむかっておもむろに用意のお習字をガバッと広げて、「孫子曰く、兵は詭道なり!!」
 と、このくらいの凝ったパフォーマンスをやりました。
 そこまで凝れとは要求しませんが、それでも、兵は詭道なりなんてありふれたフレーズを、芸もなくそのまま言って、それで海千山千の猛将たちがオオッ!なんつって感動したら、その猛将たちがバカみたいだし、どうみても強そうに見えんでしょう。
 まあ、信長がバカみたいなのはこのドラマのデフォルトだからいいけどな…。この官兵衛のプレゼンで、「わしの考えておったことと同じだ!面白い気に入った!!」なんていうのも、もう大概わかっちゃいるけど、思わず失笑してしまいましたがな。

 とりあえずこの信長は、できる限りなにもしゃべらず無表情に座っている状態が一番いい、まだしも賢そうに見える、ということは良くわかりました。あとはその信長の無表情をみながら、まわりの家来たちがあーだこーだと憶測して騒いで場面を作れば、たぶんそれで本能寺までのながれはフォローできると思います。っていうか、信長が自分から語ったりアクション起こすより、よりそのほうが絶対いいと思う。
 たのむからこのあと本能寺までなにも喋らないでいてプリーズ。そうすれば史上最もバカそうな信長も、それなりにカッコがつくんじゃないかと…ほのかな希望。

○「そなたの家来を儂にくれ」問題。

 そうはいっても秀吉(竹中直人)は、さすがに秀吉慣れしている(笑)というか、この面子のなかでは抜群に安定していて、あまりに安定してるのでひとりだけ別の次元でセルフパロディ大会をやってるみたいでしたけど、やっと話と噛みあってきた感があります。
 信長へのプレゼンを大成功で終えた官兵衛を、秀吉は、新築のマイ城・長浜城につれていきます。その前に、建設途上の城下を官兵衛にみせ、キャバクラみたいなところに連れて行って接待。城でも飲めやうたえやの宴会三昧を繰り広げ、そこで母里太兵衛(速水もこみち)の豪傑ぶりに目を止めた秀吉は、「こいつ気に入った。わしにくれ。500石で召し抱える」と言い出します。
 当然ながら拒否しますね。保護者の善助(濱田岳)が「こいつはワシの言うことしか聞かないんで」というと、それではお主も一緒に召し抱える、千石でどうだとかいって、どんどん値段を釣り上げていく。
 っと、この、秀吉が主人公の家臣(あるいは家臣たる主人公)を、「欲しい、儂にくれ、○千石やる、もっとやる」といって無理押ししていくという展開は、かならず出てくる織豊もののテンプレートのひとつであります。まあ、長浜城主になったばかりのタイミングではちょっと早すぎる気はしますけど…。
 で、主人公の家臣(あるいは主人公)が拒むと、「儂の命は聞けぬと申すのか!」とかいって、主従ともどもピンチに陥るというのがお約束の展開なのですが、そこまで深刻な事態になるのは、秀吉がもっと絶対的な天下人になってからで、とりあえずいまの長浜城主の段階では、官兵衛主従もそんなに困惑しなくていいと思うのですが。
 でもまあ、テンプレはテンプレです。ここでは、この古今使われたテンプレのなかで主人公とその忠臣がどのようにリアクションするか、どういう機知をもって切り抜けるかが脚本のみどころですが、さきの「兵は詭道なり」じゃないけど、このリアクションも、主従でギュッと固まって、「我らは一心同体!」というだけの、ぜんぜん芸のないものでした。
 かつて「独眼竜政宗」で、秀吉に同じことを言われて脅迫された片倉小十郎(西郷輝彦)は、「伊達家に忠義を尽くすのが殿下に忠義を尽くす道。伊達家で不要と言われたならば、己の不忠を恥じて腹を切りまする」と見得を切りました。速水もこみちにあそこまでカッコいい見得の切り方を望むのは酷だとしても、せめて、

もうちょっといいセリフを書いてやれや…

 と思いますよ。秀吉に高禄でせまられて、だまってブンブン首振るだけじゃ、ほんとアタマの弱い子みたいじゃん、もこみち(多少そういうキャラといいう味付けあるかもしれんが…)。

 こういうとこに脚本の実力はさらされると思うんですよね。昔からの鉄板のテンプレをつかっていながら、中身につめるものがなくスカスカ、という。
 この脚本、けっしてトンデモということはないのですけど、なんというか、書いている人が面白がって、興味を持って歴史ドラマを書いているという感じが全然しない。最近の例だと「八重の桜」の後半がそうでしたけど、義務的に歴史の年表に書いてあることを丸うつしして、あとは適宜に思いついたセリフを入れ込んでいくみたいな方法だと、役者さんたちがいくら魅力を振りまいても、面白くなりようがないと思うのですが。
 だから、どんな原作でもとりあえず原作はあったほうがいいと思うんだよなワタシは…。原作さえあれば、固定のテンプレに最低限のドラマは詰められるじゃないですか。
 脚本家が勘違いした方向に暴走してトンチンカンな作家性を発揮するのも困りものですが、このように、なんにも考えてなくて前例通りのものしかやる気がない、というのも、これはこれで問題だ…と、だんだんアタマ抱える局面が多くなってきたな…。

 しいて言えば今週は、光(中谷美紀)が薙刀をひっからげて、幼い後藤又兵衛に、「女や子供を弱いものと侮っては、戦場で死を招くことになる」とうことを教え諭す場面は、セリフもよく、よかったと思います。
 あと、石田三成(田中圭)が登場したのと、竹中半兵衛(谷原章介)も出番がありました。「(官兵衛は)使える男ですか?試してみてもようございますか?」と言って、そのあとが突然官兵衛の寝所に飛ぶもんだから、え、よ、夜這い…?と無駄にドキドキしてしまいましたが(ヲイ)。
 とりあえず来週は、半兵衛が官兵衛をピンチに陥れ、実力のほどをためす、という展開になるようです。シチュエーションと、予告編を見る限り面白そうです。っていうか、これで面白くならないようじゃほんとに困る。

 また来週!


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