como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

新選組血風録 第6話「沖田総司の恋」

2011-05-14 21:26:40 | 過去作倉庫11~14
 はい、原作片手の「新選組血風録」今週も……
 っと、冷静にはじめたいところですが、いやもう…なんというか、今週は…
 今週は…

 なんだこの萌え萌えワンダーランドは!!!!

 いや、もうゴメン!わたしほんとに反省してます。なにを反省って、第3話でしたかね、
「原作と違うなら違うで、違えたことに納得がいくくらい面白くしてほしいです」
 なぁんて偉そうにほざいたことをです。
 だって、まさかほんとにその3話後の第6話あたりで、原作と違えたことに納得どころか、おなか一杯、おつりがたっぷり出るくらい満足させてくれるなんて思わなかった。いや、また偉そうで悪いんだけど、大河関連のレビューを何年もやってて、一回貶した欠点を完璧に覆して盛り返してくるドラマなんて、まず見たことないもんね。だから安心して批判してた部分もあるんですが…いやもう、ほんと今回は猛省しました。こんなこともあるんですね。
 これはもう、司馬遼太郎先生も天国で、腹を抱えて大笑いなさっているかもしれない。

 いや、わたしね、今回は、これ一人で見ていてホントによかったと思いましたよ。だって、うっきゃー、とか、何コレやめてー、とか奇声をあげながら、悶えまくって時代劇を見ている姿なんて、家人にはとっても見せられない。

 今週の粗筋です。
 池田屋で喀血した沖田総司は、以後ずっと体調を崩し、長いスランプに突入してしまいます。そこに現れたのが、妖しいばかりの美貌の新入隊士・加納惣三郎でした。加納と練習試合して、不覚にも負けをとったことをきっかけに、恐れを知らなかった沖田の剣に迷いが生じます。
 そんな折、近藤と土方に強く言われて診察を受けに行った医者の家で、お悠というそこのお嬢さんと出会ってしまった沖田は、一目ぼれの恋に落ちます。以後、清水寺でデートしたり、明るい生活を取り戻すのですが…。
 加納惣三郎を加えた新選組では陰惨な事件が続きます。惣三郎に懸想したホモ隊士ふたりが、相次いで惨殺されたりするんですね。その犯人が惣三郎であることを、斬殺された死体の傷の傷跡から読んだ沖田は、「加納は私が切ります」と名乗り出るのでしたが…。

 ようするにこれは原作の「沖田総司の恋」「前髪の惣三郎」のミックスなわけですが、原作には出てこない、沖田総司のスランプと、命への諦念と執着の間で揺れ動く気持ち、といったものを糊代にして無理なく合体させて、すごくよかったです。
 原作の「前髪の惣三郎」にはもっとネッチョリでてくる、惣三郎をめぐるホモ痴情のもつれなんかは、尺の都合もあってアッサリでしたが、惣三郎の淫らさは、十分雰囲気出ていたと思います。何よりも、半分は沖田の妄想というか、強迫観念が産んだ怪物、みたいな解釈を加えていたところがクールでした。
 
 …以下、超個人的な感想ですけど…(不要なかたはよまないでね)

〇 沖田総司の恋、って、よーするにそっちの恋だったんかいっっっ!!!!

 いやー、これは意表をつかれました。天国の司馬先生も爆笑されるだろう、というのはそこんとこですね。沖田総司の恋の相手は、医者の家の娘なんかじゃなく、加納惣三郎だった!!!…なんて。 

 惣三郎に練習試合で負けた沖田が、河原で「寒いな…」とかいって遠い目をしているところに、惣三郎がやってきます。
「うらやましいよ。その若さ…瑞々しさ…恐れることを知らない目…」
「沖田先生でも怖いものがあるのですか?」
「無いさ」
…ってなあたりで、ちょ…なんかこの空気変じゃね?やばくね??とザワザワしはじめまして。

 で、後半、医者の娘のお悠と出会って、フォーリンラブして(棒)、そのあとまた同じ河原で惣三郎とデート語り合う場面があるんだけど、そこで、
「このまえ、怖いものは無いと君に言ったよね、あれはウソだ」
 と、なぜか、惣三郎に、死への恐怖を激白してしまう沖田。すると惣三郎は、
「沖田先生……もしや好いたお人が…。好いた人が出来ると人は変わりますから。どんな人なんですか?」 
と誘導尋問。完全に惣三郎のペース。で、寒い冬に凛と咲く花のような、見ているだけで心が暖かくなる人なんだ…かなんとか、なぜか恥ずかしい告白タイムになだれ込む沖田。それをじーーーーーっと見つめて惣三郎は
「よかった…。沖田先生には長生きしてもらわないと困りますから」
 …つって、沖田の袴の上から太股にそっと手を載せるわけだよえ、え、ええええ?なにこの空気は。すげえヤバイ。しかも、その手をどけない沖田。なぜかそっと上から握ったりなんかして。「明日は28日だね8の付く日だ」とか、それもうどうでもいいし…。それより手!手!!

 このあやしい河原の場面は、三度繰り返されます。三度目は、惣三郎を斬るためにそこに連れ出すわけですね。死んだ二人のホモ隊士のことに触れ、
「湯沢に気が移ったから田代を斬ったのか、田代を斬ったのは…」
「湯沢さんと田代さんのことなら、私は悪くない。沖田さんのためなんです。だから助けて下さい…」
…っつって、惣三郎は沖田の唇に、ツツッ、と指を……。ひょええ!!!!。これは、ちょっと、一線超えちゃってないか。つか、もうこの段階になると、うひゃあ、もう好きにしてーー、と頭の中ヒャッハー状態だったわけですが。

 まあ、原作の「前髪の惣三郎」の内容は、このような感じに、あまりセリフや、ドラマ内での事件を大きく関わらせず、ちょっとしたディテールを重ねて視聴者の気持ちを弄ぶことで(!!)うまくフォローしてたっつう話です。
 ちなみに、この惣三郎役は、組紐屋の竜とか、加納姉妹の男版とか、そんなルックスなんだけどね。少女漫画か(笑)と思うよーでしたが、それでもヘンじゃなかったよ。

〇 この辺の話が濃厚すぎるんで、本筋のはずの医者の娘お悠の件は、かなりバックグラウンド扱いでしたけど(笑)、それでも、なかなか初々しくて良かったですね。原作にある以上にベタベタにしなかったのが良かった。
 こう、べつに出番も多くないし、セリフもわずかなのに、ちょっと顔に両手を当てるとか、水桶にボロッと涙を落とすとか、そういう仕草で、なんともいえない清純な感じが出てて良かったですよ。惣三郎のエロさとの対象効果もかなりあるしね。
 で、ほんのちょっとの時間で、この医者の娘に沖田の結婚話を持ち込む近藤という、KYにもほどがあるエピソードを挿入したのも巧みでした。
「私は、あの人をただ遠くから見ている、それだけでよかったのに」
 とか言われて、「勇み足だったか……」とオヤジギャグかまして真顔で落ち込む近藤。いや、なんか…いいわ、この天然ボケ味。近藤勇botとか貶してホント悪かったです。原作の近藤にぐっと近づいて来たよ!

〇 で、今回、おおイイじゃんイイじゃん、と思ったのは、近藤・土方・沖田の中に流れる空気ですよね。なんてえの、家族同様、完全に安心し切ってる空気感。これが黙ってても出るっていうのは、ちょっと凄いんじゃない?

 近藤にしても土方にしても、沖田は実の弟のような気がする。現実、どちらも末弟のうまれで、弟というものを持たなかったから、そういう実感でいた。
(中略)当時は「忠孝」というタテのモラルが男子の絶対の道徳である。しかし、「友情」は現実には存在した。上州、武州の若い連中のあいだでとくにその色彩が濃厚であった。が、「友情」とか、「友愛」とはいわない。
― 義兄弟。
 という。この同流儀の四人は、たがいに義兄弟のつもりでいた。

(「沖田総司の恋」)


 今回、最後のほう、加納惣三郎を処刑すると決めたところで、「山崎君、ご苦労だった」といって山崎に席を外させるところがあるんですが、こことか、身内三人以外の隊士にピッと一線を引くかんじでね。で、三人になったところで、お前ほんとに大丈夫?みたいな本音の話になるわけ。その辺の独特な、ウチとソトの空気の落差、すごく出てました。これはもう脚本と、役者さんの演技の妙ですし、過剰な心理描写をしない、司馬遼太郎原作の淡淡とした空気にも通じるものがあると思う。
 今回のテーマがホモ話だったってこともあるけど、三人の間に漂う、ある意味ホモチックな一体感というか…スレスレな感じ?そこまで迫ったのも秀逸でしたよ。だって、
「衆道など新選組にあるまじきことだっ!!」
 と、ここで土方がいうんですけど……いや、そういうあんたらのほうが相当ヤバイですぜ、みたいな。
 
〇 ある程度、自分たちにその気がないでもない…というか、新選組という組織の性質上、どうしてもそっちに引っ張られちゃうという、土方の無意識の不安を、的確に表現してたのが以下の場面です。

(惣三郎め、美男すぎた。男どもに弄られているうちに、化け物が棲み込んだのだろう)
 土方は、和泉守兼定の鯉口を、そっと左手の指でゆるめた。
 抜きうちに、斬った。おさめた。桜の若木が、梢で天を掃いて倒れた。
 胸中の何を斬ったのか、当の土方自身にもわからない。

(「前髪の惣三郎」)


 ここを、土方の心理も含めて、サッと的確に表現してくれたのはうれしかったですね。なんか、土方歳三コンテストとか言って申し訳なかったわ。原作の土方歳三にググッと近づいてきたよ!!

〇 沖田の刀の白鞘は、「新選組!」見てた人は反応しちゃうところですよね。こういう小ネタうれしい。

〇 原作にない山南敬助の脱走と処刑を、下手なオリジナル話作ったりしないで、ナレーションだけでスルーしたのはほんとに良かった。それを、沖田の鬱にうまく絡めたのもお上手でした。なんか、だんだん原作片手に読まなくても、原作と一体で味わってる感じになってきてる。

 …といったところで、あと無用にハデなエフェクト使いだとか、いろいろツッコミどころもあって今回は楽しかったのですが、このくらいにしときますね。いやー満足だなあ。毎週こういうレビューがかけると楽しいなあ。
 次回は、「胡沙笛を吹く武士」、原作の中ではわりと地味な、しっとりしたエピソードですが、どんな感じの仕上がりかな。楽しみです。
 ではではっ。


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