プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

被曝線量推計方法の恣意的変更

2013-11-09 11:32:30 | 日記
 原子力規制委員会は、被曝線量推計の方法を変更する方針を示しました。(以下、引用・参照は『朝日新聞』)これまでは、航空機モニタリングなどで測った(1時間当りの)空間線量を基に、屋外に8時間(屋内に16時間)いるとして推定していましたが、それを個人一人一人が線量計を身につけて、それを被曝線量とするとのことです。

 これまで福島県内の市町村で測定された個人線量計による結果によると、空間線量は個人線量計の数値の3~7倍高い傾向があったそうで、これだと個人線量計では年間1mSvの被曝の場合、空間線量は3~7mSvもあることになります。除染目標の年間1mSvが、7mSvでもO.K.ということになり、実質的には大幅な除染目標の「引き上げ」(緩くする)ということになります。

 こうした変更は、住民の方々に不要な混乱と誤解を招くのではないかと危惧します。空間線量で7mSvというのは、チェルノブイリ事故では「強制移住ゾーン」(年間被曝量5mSv以上)です。しかもこれは外部被曝のことだけで、例えば汚染地域で食物を育て、或いは野山の山菜などを摂取すれば、相当の放射性物質を取り込むことになります。

 実質的な住民被曝の「規制緩和」を規制委員会はやろうとしている訳です。これまた自らの職責を放棄しているとしか思えません。政府与党内からは、3兆、或いは5兆円とも言われる除染費用圧縮の圧力が掛かっているようで、事実上、汚染の実態は変わっていないにも拘わらず、推定方法の変更だけで被曝線量が減っているかのような「偽装」を、規制当局が行なおうとしているように思えます。

 検討会では、「県民健康管理調査など長期的な健康影響を見守る仕組みの具体的な改善案は示され」なかったそうで、帰還住民に線量計をぶら下げさせて、それで自分で被曝管理をしなさいというやり方は、(政府はその方針を既に出していましたが)「規制」という言葉の意味すら失わせる蛮行のように思うのです。独立どころか、盲従しているに過ぎないことの証なのでしょう・・・

P.S. (以前も書いたのですが)ウクライナでは、強制移住ゾーンからの移住者よりも、厳重な放射線被曝管理が行われる地域(年間被曝量が1mSv以下)に居住しているか、或いは事故後数年間にわたって住みつづけていた住民では、移住者の33.6%の罹患率に比べて、後者は56.3%と、(様々な病気への)罹患率が「有意」に高くなっているのです。1mSv以下でも、汚染された地域に住み続けることが、如何に健康に悪影響を与えるかは、既に明らかになっている事実だと思います。(何度も繰り返しますが)不必要な除染は止め、戻ってはいけない汚染地域に帰還させるのではなく、汚染のない地域に住居と仕事を提供する支援のあり方を政府には求めたいと思うのです・・・

P.S.2 スリーマイル島事故時にNRCの委員だったピーター氏は、福島第1原発の汚染水問題について、「規制委員会の関与が少ない印象がある。停止中の原発の再稼動に専念するよう求められているかのようだ」、「(地下水など地質学者が不足しているのであれば)米国なら・・・人材をすぐに雇い入れるだろう」、しかし、「東電が海外から専門家を招いても、『日本の原子力村』が『世界の原子力村』に変わるだけ。だからこそ、規制当局のような独立した機関が関与する必要がある」と述べられていますが、同氏もお見通しのように、(原発再稼動認定機関に過ぎない)今の原子力規制委員会には、「独立」も「規制」もないと言わざるを得ないのです・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成25年11月9日)