プルサーマル計画を憂慮する有志の会

原発問題に関して投稿します。

専門家会議「報告書」の虚実

2014-12-20 11:49:38 | 日記
 放射性物質による被曝の健康影響について、健康対策を検討している環境省の「専門家会議」が、「中間報告書」をまとめました。(以下、参照・引用は『朝日新聞』)同会議は、「原発事故こども・被災者支援法」に基づき、福島や近隣県の住民への健康支援を提言するために、昨年11月に設置されたものです。

 同「報告書」では、被爆によってがん全般の罹患率が統計学的に明らかに増加する可能性は低い」と結論付けました。しかしながら、がん全般のデータが出ていない段階で、統計学的なアプローチができるはずもなく、何を根拠に「がん増加の可能性が低い」と結論付けたのかが分かりません。只、一部の子どもは「甲状腺がんのリスクが増加する可能性が理論的にはある」としましたが、「可能性がある」のは当たり前で、チェルノブイリ事故後の事例や報告によって、子どもだけでなく多数の甲状腺がんが発生していることは、「理論」などではなく「事実」です。

 この甲状腺がんの対策について「報告書」では、「福島県の(甲状腺)検査を継続するべき」だとした上で(*この点は賛成です)、「がんの増加の有無と被曝との(因果)関係を科学的に分析できるような枠組み(*どういう枠組みでしょう?)に改善することが望ましいと指摘」、そのため、県外への転居者のフォーローアップを含め臨床データを確実に収集できる体制となるよう国は福島県を支援するべき」だとしています。

 「県外への転居者のフォーローアップ」と「国による福島県への支援」は当然必要なことだと思います。しかし、転居者のデータと(日常的に放射性物質に被曝している)地域に住み続ける住民とのデータを収集したからといって、被曝とがんとの因果関係が分かるわけではありません。放射性ヨウ素は早い段階で放射線を出さなくなりますから、甲状腺がんに関して言えば、初期段階の被曝が問題で、初期被曝のみの住民と被曝し続ける住民との間に有意な「差異」があるとは思えません。

只、転居することで初期被曝後の追加被曝を免れることによって、追加被曝を強いられる住民と転居住民との間では、(実際、低線量に長期に晒されることで、チェルノブイリではそうでしたが)他のがんや様々な疾患の罹患率に「有意」な差が出ると考えられます。ですからその意味でも、転居者の追跡調査とデータ収集、そして比較によって被曝とがんや他の疾患との「因果関係」を証明する貴重なデータとなり得ます。(是非、フォローすべきです)

 (半月以上前でしたかNHKニュースでは)同会議の「報告書案」では、「今後も検査を行って、被爆した子どもたちと、被曝していない子どもたちと比較するなどして、放射性物質による影響で甲状腺がんが増加するかどうか継続して調査していく必要がある」とあったのですが、この点が「報告書」では消えています。(以前も書きましたが)放射性物質による被曝とがんや他の疾患との「因果関係」を明らかにする為には、被曝していない住民との比較が必要です。実態を解明するために、疫学調査は不可欠です。しかし、国は絶対に疫学調査はしないでしょう。同会議の「報告書」を見ても、被爆による影響は見られない、という姿勢です。

 さらに「報告書」では、同「支援法」が国に求めている、被曝に起因する子どもや妊婦の病気の医療費の減免について(私は全ての住民の被曝による疾病の治療費を無料にすべきだと思いますが、その為には因果関係を証明しなければいけません)、(*根拠もなく)「起因する病気が起こるリスクは低い」として治療費等については触れていないそうです。(上記の因果関係を認めない)「姿勢」からして、住民の疾病に対しては(今後、明らかにがんや他の疾病が顕現して来ない限り)今のところ何もしないということのようです・・・

P.S. また、福島近隣県の健康対策に関して「報告書」は、「個別の健康相談をする」とし、甲状腺検査などを(慎重な意見が多かったそうで)実施する「意思」はないようです。検査をすることで、さらに甲状腺がんの子どもたちが見つかることを恐れているのだと思います。福島県での検査で見つかった子どもたちの甲状腺がんも、被曝との因果関係は県も国も否定していますが、やはり疫学調査を実施しない限り、それはあるともないとも「証明」できないものです。甲状腺検査については、少なくとも福島県外のホットスポットだけでなく、少なくとも年間追加被曝が1mSvを超える地域の子どもたち(当然初期被曝量も多かったと思いますから)検査を実施すべきだと思うのです・・・

P.S.2 チェルノブイリ事故後には、放射性ヨウ素による被曝の「実測データ」が豊富にあるのに、日本では殆どないことに非常に「意図的」なものを感じます。最初少し実測ていますが、その後中止しています。余りにも「恣意的」です。只、検査による負担や病気への不安など、子どもたちへの身体的・精神的負担も当然心配です。(検査を信じていない私が言うのもなんですが)、検査をしないと何も分からず、分からない以上手の施しようもなく(分かれば対策や治療ができます)、時が経って知らぬうちに病に冒され、それでも何の賠償もなく(分かっていれば、健康も命も戻りませんが、賠償は求められます)、全て後の祭りということになりかねません。子どもたちの受ける「負担」を考えると、検査なんてしない方が良いのかもしれません。しなくて良い検査なら、しない方が良いに決まっています。でも、少なくともきちんとした検査体制と追跡調査は必要だと思うのです・・・

by「プルサーマル計画を憂慮する有志の会」 (平成26年12月20日)

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