スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

ウプサラ大学 特別講義

2005-02-11 06:03:40 | コラム

この春学期は実は特別コースを一つ遠く離れたウプサラ大学でとっている。特別コースの名前は「株価変動のテクニカル分析」。僕の専門のテーマが雇用対策や産業創出だから、ちょっとかけ離れている。でも、日々の株式取引が資産の価値を左右し、それがバブルを生んだり、大不況を引き起こしたりし、経済全体に大きな影響を与えるのが株式市場なので、そこで実際に取引をする人がどんな考え方で売り買いをしているのかを知りたいと思った。それに、株式の売買でどこまで儲けることができるのか、これを解明するのは前々からの夢だった。

このコースの情報をくれたのはヨンショーピン大学で一緒に学んだことのあるJonas(ヨナス)。彼は酒の席で、以前に名前を漢字で書いて欲しいというので、その場の思いつきで「酔茄子」と書き、”drunken eggplant”だと教えてあげたら呆れていた。それはいいとして、その彼と一緒にこの特別コースをクリアすることを誓った!

彼の実家はウプサラとストックホルムの間の小さな町にあるので、そこの泊めてもらう。それに、この講義を聴講するついでにウプサラに住む友達にも会える。

数週間前にあった第一回目の講義は参加者が40人近く集まり、熱気ムンムン。というのも、この特別コースの売りは、理論を学ぶだけではなく、株式取引の第一線で働いている人を講師に呼んで、体験談を交えながら、売りチャンス・買いチャンスの見極め方を熱く講義してもらうというものだ。だから、参加者には経済・経営学部の学生で日頃からパソコンに向かってコツコツと個人取引をしている人もいれば、学生時代からスウェーデン大手の証券会社や銀行でトレイニーとして研修を積んでいる人、さらには大学卒業の前から既に正社員としてトレーダーをしている強者までいる。(ウプサラ大学は北欧最古の大学とあって、さすが!!) そんな中で、僕はそこまで経験もないし、株で将来、ボロ儲けをしてやろうという野望もない。ちょっと肩身が狭くなる。それに、講師として呼ばれてくる30代後半のスウェーデン人現役トレーダーは、講義中に参加者をバンバン当てて、コメントを求める。ひゃ~><; 穴があれば隠れたい気分だ。それに僕はウプサラ大学の学生のフリをしているだけの「もぐり」の参加者。ここはひたすら「low profile」を保つことに努めよう・・・。

(注):「目立たないようにする」・・・「keep a low profile」、スウェーデン語でも「hålla en låg profil」というこの表現。「profile」はこの場合、輪郭、外形の意。もともとは戦車や装甲車の車高を低くして、敵に発見されにくくしたり、砲弾が当たる確率を低くするところから来ている、といった話をず~っと前に、読んだ覚えがある。雑学でした。

第2回目の講義は僕は都合が合わず、参加できず。そして、今週木曜に第3回の講義があった。講義の前にJonas(ヨナス)に会うやいなや、「ウプサラに来る途中の電車の中で講師に遭遇して、車中ずっと個人的に話をしてきたよ」と、ちょっと興奮気味。その業界での仕事の見つけ方とか、どんなタイプの人間が働いているのか、などなど、いろんな内部事情を聞いたのだそうだ。彼は僕よりも一つ上。人生経験も豊富で、人慣れしている。初めて会う人間でも、自然に会話をこなし、落ち着いて話ができる。うわべだけの話し方をしないから、相手も心を開いていろんな話をしてくれる、という場面にも何度か遭遇したことがある。Jonasが最後に「彼にとっては、お金がすべてで、お金で何でも買えてしまうみたいだ。」と、ポツリと講師に対する印象をまとめてくれた。

そして、この回の講義もバンバン進む。市場のトレンドの探り方、変動性、取引の「幅広さ」、山の読み方、などいろんな要素を勘案しながら、売りや買いのタイミングを見極めること。さらに、判断を誤って損失が出始めた場合、価格が再び上昇をして損失が穴埋めされるのを待つべきか、それとも、もうその銘柄には見切りを付け、損失を確定してしまうのか、という判断のしかた、などなど、いろんなことを考慮せねばならず頭が整理しきれない。参加者と講師の間で、質問とコメントの応酬もあり今回も熱い雰囲気なる。そんな中で、あぁ今回も指名されなくてよかった、と胸をなで下ろす私。面白いことに、第1回目に二人ほどいた女子の参加者が2回目以降、姿を消してしまった。だから、教室がちょっとむさ苦しかった。

さて今回は、その日の夜行バスでヨンショーピンに戻らなければならない。まず、電車でストックホルムまで出てから、夜行バスを捕まえるのだが、その前に一杯、Jonasとビールを飲む。さて、ちょっと酔いが回ったところで、駅に向かい切符を買う。さて、同じ方向の電車に乗るはずのJonasのもとへ戻ってみると、なんと例の講師と待合室でまたもや話をしているではないか。Jonasは有名人を引き付ける磁石みたいだと感嘆! こうやって、思いがけない人とよく平然と話をしている。結局、その講師も含めてわれわれ3人は同じストックホルム方面に向かうので、さぁいざ電車に乗ろうとすると、Jonasが突然、「この電車、空港経由で俺の町には停車しないから、俺は次の便に乗る。じゃあな!」。あれっ・・・、酔いが一気に引く。

・・・というわけで、ストックホルムまでの40分間、この大物トレーダーと二人きりで経済について熱~く語ってきました。というのは、ちょっと大げさ。僕は未だに初対面の人間との会話は苦手で、何を話したらいいものか頭が真っ白になる。しかも、今日の講義も半分ほどしかついていけなかったので、うかつに講義の話でもすればとたんにボロが出てしまう。それでも、自分の関心を語ったり、疑問に思っていたことを尋ねてみたり、日本の経済についていろんな話をしたら興味を持って聞いてくれた。今までの「目立たない」作戦は見事に崩壊! でも、彼にとっても、ヨンショーピンからはるばる聴講に来てくれている参加者がいることが、励みになったようだった! ぼくにとっても、やる気を与えてもらった40分間であった。

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1 コメント

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はじめまして (tvillingar)
2005-02-12 18:06:18
はじめまして、佐藤さん。

tvillingarと申します。

gooブログを見て歩いていたらたどり着きました。



この12月からヨンショーピンに住んでいます。

その前はヨーテボリ近くのAlingsasでした。その前はウプサラ近くのKnivsta。佐藤さんと行動範囲が近いですね。



夫はHuskvarnaで働いていて、私は1歳9ヶ月の双子育児におわれています。

またそのうちお会いしたいですね!

ブログこれからも楽しみにしています。



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